102は小説家
102______田辺
「へーい俊ーいるかー。」
「うるせぇな……。」
「おお怖っ。」
おにの形相で部屋から出てきたボサボサの頭の青年。彼が田辺俊。先輩と同じ歳で、只今執筆中とのこと。
「なんだよー俊介先生ー……差し入れ持ってきたのに。」
「……菓子か。」
「チョコとクッキーと……あ、あと店で見つけた綿飴。」
「さぁ!入りたまえ!!そちらの青年も一緒に!」
なんだこの人……。別人になったぞ……!
あとでこっそりと倉本先輩が教えてくれたことだが、この田辺さんは甘いものが大好物で甘いものを与えると機嫌が良くなる……らしい。
ちなみに、苦いものが苦手でとくにコーヒーはダメらしい。見た目からだとコーヒーはブラックで飲んでそうな人だが。
「んで優介さんよ、そっちの奴は?後輩か。」
「そうそう。201の。」
「なーるほど。えっと、名前は?書いて。」
「え、あ、はい。」
書いて……と言われたのは初めてだ。
読めるか心配だったからフリガナふっとこ……。
「はい。できました。」
「どーも。……蓼丸蓮くんか。いい名前だね。」
「あ、ありがとうございます。あの、何を書かれているんですか?田辺さんは……。」
「俺は俊でいい。今は編集さんと戦ってるとこ。」
俊さんは机を指さした。机には要望が書かれた付箋、ココアが入ったカップ、作文の用紙と、ペンが置かれていた。
小説家っぽい机だった。
そして机の隅に透明な箱があった。中には夜空の様な藍色に金の部分が少しある石が飾られていた。
箱には『lapis lazuli/瑠璃』と書かれたシールが貼ってあった。
「瑠璃……?」
「あ、それはガキの頃に隣の蛍から貰ったんだ。」
「蛍さん……。」
「あとで紹介するよ。ほら、俊介先生?頑張ってください。」
俊介というのは俊さんのペンネーム。投稿する時に間違えて介も入れてしまったから俊介なのだとか。
「じゃ、お邪魔しました!蓮くん行くよ!」
「はい!じゃあまた、俊さん。」
「おう。また来いよ。」