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第9話 天然天使と噂話

今回は、あの3人は出て来ません。

 ある日の昼休み時間、僕はいつもの様に図書室へと向かって行くと。


 目の前の教室の出入り口から、クイクイと手が上下するのが見えた。


 どうやら、僕を呼んでいるみたいだ。


 とりあえず呼ばれるがまま、その教室の中に入る事にした。



 ***************



 教室の中に入ると教室は空き教室だけど、換気の為に開け放たれてる様だ。


 中には女の子が3人いた。


 いずれも上靴の色から、3年生で上級生だ。



 「ごめんなさいね、呼び止めちゃって」



 と、髪を肩口で切り揃えた、ツリ目の女の子が言った。



 「いえ、なんでしょうか?」


 「失礼だけど、名前はなんて言うの?」



 さらに、髪を後ろで(まと)めた、眼鏡の女の子が言った。



 「はい、伊倉 秋人と言います」


 「へえ、秋人くんか、かわいいね」



 今度は、頭の上に大きなお団子の女の子が言った。



 「ちょっと、余計な事は言わないで」


 「そうそう、本題に入らないと」



 と、ツリ目と眼鏡の女の子が言った。


 

 「こほん、秋人くん、あなたをここに呼んだのは、聞きたい事があるからなの」


 「一体、何ですか?」


 ツリ目の女の子がそう言ったので、僕は尋ねた。



 「あなた、恵とつきあってるの?」



 と、ツリ目の女の子が聞いて来た。



 「へっ?」



 はい?何の事ですか?



 「この間、二人が抱き合っていたのを、見た子がいるのよ」



 クイっと眼鏡を押し上げながら、眼鏡の女の子が言って来た。



 「で、どうなの?」



 好奇心丸だしで、お団子の女の子が聞いて来た。


 どうやらこの間、恵先輩にモフられている時に、その場面を見られた時の話のようだ(第6話、天然天使の嫉妬参照)。



 「いえ、つきあってはいません」


 「じゃあ、なぜ、抱き合ってたのよ」


 「そうよ、そうよ」


 ツリ目と眼鏡の女の子が問い詰めて来た。



 「ち、違いますよ、のどか先輩がハグしたのが(うらや)ましかったから、僕をモフりに来たんですよ!」


 「「「???」」」


 

 3人は頭にクエスチョンマークを浮かべた。



 「ハグ、モフり?」


 「のどかって?」


 「読書部の2年生の」


 「ああ、あの子」


 「そう言えば、もう1人、2年生がいたね」


 「そうそう、静って子」



 3人は固まって、ヒソヒソ話をしている。


 そのうち、ツリ目の女の子が僕に聞いて来た。



 「それじゃあ、静って子は、ハグしたりモフったりしないの?」


 「静先輩は、ハグしたりモフったりしないけど、くっついてきて僕の手を両手で握ってきたりはします」



 と僕が答えると、3人は何か分かった様だ。


 

 「わかったわ、つまりあの子は」


 「読書部のペットな訳ね」


 「いや、この場合、日本語の”愛玩動物”と言うのが正解ね」


 「でも、この子の場合、愛玩動物と書いて、"かわいがるいきもの"と言うのが似合いそう」



 などと、かなり失礼な事を言いながら、また固まって話し合った。


 ひとしきり話合うと、3人はこちらを向いて聞いて来た。



 「ねえ、秋人くん、お願いがあるけれど、いい?」


 「はい、何ですか?」



 一瞬、背中に冷たい物が走った。



 「いつも、あの娘たちにモフられてるんでしょ」


 「だからお願い、私たちにもモフらせてよ」


 「こんな可愛い子といつもいるだけでもズルいのに、それに好きなだけモフれるなんて羨ましい」



 3人は邪悪なオーラを放ちながら近づいて来る。

 


 「ねえ」


 「お願い」


 「「「モフらせてぇーーー!」」」



 ひえーーーーー!



 「し、失礼しまーーす!」



 身の危険を感じ、僕は脱兎の如く走り去った。



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