第8話 天然天使とお弁当1
4時限の終鈴が鳴ると同時に、食堂へと向かう。
食堂に向かうけど、学食を利用する訳じゃない。
この学校の学食は、不味いので有名だから。
不味いのを我慢して食べる人間も多いが、僕はどうしても舌が受け付けないので食べる気がしない。
では、なぜ食堂に向かうかと言うと。
食堂に併設されている、購買を利用するから。
購買でパンを買って、食堂で食べている。
教室で食べても良いけど、時間短縮の為に食堂を利用している。
図書館に移動するだけでも、時間が掛かってしまう。
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食堂のテーブルに座って、パンを”モグモグ”と食べてると、向こうから誰かが近づいて来た。
良く見慣れた、ロングとボブの女の子。
静先輩とのどか先輩だ。
二人は近づいて来て、そして、静先輩が言った。
「あーちゃん、ここ良いかな?」
「あ、良いですよ」
僕がそう言うと、先輩達は僕が座っているテーブルの目の前に座った。
二人を見れば、小さい可愛らしい包の弁当箱を持っている。
「あれ、二人は、お弁当持参なんですか」
「そうだよ〜、あれ、あーちゃんはパンなんだ(フムフム)」
「はい、何か、学食は食べる気がしなくて」
「・・・分かるなあ」
などと話ながら、パンを両手で持って”モグモグ”と頬張って食べてると。
包を解こうとした二人の手が止まり、こちらをニコニコしながら見ている。
「どうしたんですか?」
「ん、いやね、あーちゃんの食べてる姿、かわいいなって」
「うん、かわいい、まるでリスみたい(キュン)」
「そうそう、両手でパンを持って、モグモグと頬張ってると、まるでリスみたいだよ」
・・・僕は赤くなりながら、パンを食べた。
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しばらく僕を観察すると、ようやく包を解いて、弁当箱を開けた。
「へー、やっぱり手作りなんですね」
と僕が言うと。
「当然だよ(エッヘン)」
「とは、言っても、冷凍食品を使ったりするけど。
あ、もちろん、だし巻き卵とかは自分で作るよ」
と二人は答えた。
二人の弁当の中身を見ると。
静先輩はウインナー、ミニハンバーグ、だし巻き卵とオーソドックスな内容で。
のどか先輩のは、ん、中に変わった物がある。
良く見ると、揚げたちくわの中にポテトサラダが入っている物だ。
「のどか先輩、なんですか、これ」
「ん、あ〜、これね〜。
これは、この間テレビでやっていた、とある地方の独特な料理だって。
昨日、試しに作ったら美味しかったから、今日、お弁当に詰めて来たの(どうだい)」
「へ〜、」
「あーちゃんも食べてみる(どぞどぞ)」
「いいんですか」
「はい、あーーん(ブイ)」
僕が食べますと言いきる前に、のどか先輩はちくわを箸に取って、僕に付きだして来た。
「パク、ハムハム、あ、結構美味しいですね」
「でしょう(エヘヘ)」
僕は、突き出されたちくわをパクリと食べた。
前隣の静先輩は、「うらやましいな。」とボソリと呟いたのが聞こえた。
「それでは、あーちゃんにも喜んでもらえたし(パク)」
「「え!」」
のどか先輩は、僕が口を付けた箸でちくわを取り、それを口に運んだ。
のどか先輩、それは間接キ・・・。
「どうしたの、二人とも?(はてな?)」
しかし、その本人は、それの事に気づく気配は無い。
僕と静先輩の二人は固まってしまったが、のどか先輩はマイペースで箸を進めて行った。
話の中で出て来た、ちくわの中にポテトサラダを入れ油で揚げる料理は、私(作者)の地元に実在する料理です。