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第7話 天然天使の感謝

 いつもの放課後がやってきた。


 今日は恵先輩とのどか先輩は、生徒会の会議に図書委員長とその付き添いで出かけている。


 となると当然、静先輩と2人きりになる。


 今日は図書の先生から、”生徒から本棚の上から埃が落ちて来るという苦情が寄せれてる”と言う事を聞いたので、臨時で本棚の上の掃除をしている所だ。


 別に今日でなくて良かったけど、静先輩の"早めにやった方が良い"と言う意見で決定した。




 それで脚立に乗って、本棚の上を化学モップで掃くのだけど。


 問題は誰が乗るのかだ。


 体重や力の関係で、華奢とは言っても、男の僕が下で支えるのは当然だけど。


 けど、上に乗る、静先輩の格好が問題だ。


 先輩の服装は、別に奇をてらったデザインでない、ごく普通のセーラー服だけど、問題はそのスカートの長さ。


 別に、ミニスカートとか言う訳でもないが、結構短かったりする。


 その長さで脚立の上に乗れば、位置によっては、間違いなく中が見える。


 しかも、運が悪い事に、今日は体育の授業が無かった日で、当然、体操服を持って来ていないので、体操服と言う逃げ道が無くなった。


 だから、別の日が良い様な気がするが、先輩の”上を見なければ良い”と言う意見で強行した。


 そう言う訳で、「上を見ちゃダメ」と言う厳命の元に、作業を行う事になった。



 ***************



 「・・・あっちゃん、上を見ちゃダメよ」



 と何回、このセリフを聞いたのやら。


 そう言う位なら、別の日にした方が良かったのに。


 先輩って、意外に融通が聞かない所があるから、一度決めた事はナカナカ変えたがらないみたいだ。


 ちなみに、僕の事を最近ようやく”あっちゃん”と呼ぶようになった。


 最初は「秋人君」と言っていたが、他の2人に「あっちゃん」と呼ぶように矯正させられた結果だけども。


 それでも、まだ完全には、打ち解け切れずにいた。



 「あっちゃん、見ちゃダメ!」



 僕が少しでも動くと、上から注意してくるから、脚立を支えている時は固まっていなければならない。


 けれども、脚立の上がユラユラと揺れて危ない。


 先輩は運動神経が無いらしく、当然、平衡感覚も無いようだ。


 上がユラユラ揺れて、突然、ガタッと音がして上を見ようとするが、

その途端、「見ちゃダメ!」となるので我慢せざるを得ない。


 そうやって、脚立の下で必死で動かない様に固まっていた。




 ・・・すると突然。



 「きゃあーーーー!」



 脚立が大きく傾き出した。


 僕は、落下する先輩を受け止めようと踏み出した。


 倒れていく脚立、その上で身を縮める先輩。


 空中で先輩をキャッチした。


 地面に激突する前に、先輩が上になるように回転した。




 「ガッシャアーーーーーン」



 けたたましい音を立てて、脚立が倒れた。


 僕は地面に叩きつけられたが、先輩は?



 「っっっ、先輩、大丈夫ですか?」


 「んんん〜、大丈夫よ」


 「ふう、良かった〜」



 僕の上になったおかげで、怪我は無いようだ。


 よかった、取りあえず先輩が無事で。


 起き上がろうと手を床に着いた瞬間。

 


 「イテテ」


 「ちょっと、あーちゃん、どうしたの!」



 どうやら、先輩を受け止めた時に右手首を捻ったようだ。



 「いや、チョット、ぶつけただけですよ」



 先輩を不安がらせないために、何でも無いように言ったけど。


 先輩は何かを察した様で、僕の右手を取って、眼鏡が外れた顔に近づけた。



 「チョットじゃないわ!こんなに腫れているじゃない」



 と先輩は、強い口調で言った。


 そして、僕の右手を両手で握ると。



 「ごめんね、ごめんね、私の為にこんな事になるなんて・・・」



 と言いながら、ぽろぽろ泣き出した。



 「別に、先輩のせいじゃないですよ」



 僕は言うけど。



 「ううん、別に、今日無理にする必要も無いのに、私が無理を言うから・・・」



 先輩は自分を責めた。



 「でも、あーちゃんが助けてくれて、本当に嬉しかった・・・」



 先輩は僕の右手を両手で持って、ひたすら僕の右手に頬ずりした。



 「本当に、ありがとう・・・」



 そして、先輩は泣きながら、僕に感謝の言葉を繰り返した。

 


 ***************



 あれから、静先輩は変わった。


 前の様な、余所余所しい部分が無くなり、女の子と同じように普通に会話したり、冗談も言う様になった。


 けど、他の男子には近寄ろうとしない所を見ると、僕だけの様である。


 しかし、事あるごとに僕の手を両手で握ったり、やたらに密着する様にもなった。


 ・・・でも、以前までの関係の事を考えると、これでも良いかなとも思う。



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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
夏の涼風
姉弟物の短編を取り揃えていますので、どうか、お越し下さい。
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