第6話 天然天使の嫉妬
予備校の設定がカナリ怪しい。
のどか先輩から、恥ずかしいハグをされて数日後。
今日の放課後は、恵先輩と2人きりだ。
静先輩とのどか先輩は、予備校に講義を受けに行っている。
講義は予約制らしいので、予備校に行くは不定期になる。
二人は成績が常にベストテンに入る位なのであり、予備校に行くのも弱点の補強が目的であるから、頻繁に行く訳ではない。
(失礼だけど、しかし、あの、のどか先輩がねえ・・・)
そう言う訳なので、静先輩は自分が予備校に行ってる合間に、毎日の様に図書室に顔を出しているから、塾や習い事を盾に図書室に出てこない、他の図書委員に対して物凄く腹を立てている。
のどか先輩は、まあ、あの人はマイペースだから人の事なんか・・・。
「はい、その本お願いね」
「は〜い、どうぞ〜」
で、僕は何をしているかと言うと、恵先輩と一緒に本棚の整理をしている所だ。
利用している内に、本が本来の場所から別の場所に置かれている事が良くあるので、それを元に戻している。
「恵先輩、聞いていいですか?」
「ん、なあに」
「先輩、今年受験でしょ、勉強大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫、今、家庭教師が夜に来るから、夕方は余裕があるのよ」
「へ〜」
「それに、これでも私は学年トップの座をキープしてるのよ、油断は出来ないけど、X大の推薦も目前よ」
「ハハハハハハ・・・」
などと、会話をしていると。
「ねえ、あっちゃん、この間、のどかにハグされたでしょ」
ビクッ、何でその事を。
「のどかが言ってたの、臭くないし、ツルツルサラサラで気持ちよかったって」
のどか先輩ィ・・・・・。
「で、どうなの?」
と、恵先輩がジト目で尋ねて来た。
「あ、あれは、ぼ、僕が居眠りして倒れて来た所を、のどか先輩が・・・」
シドロモドロになりながら答えると。
「うらやましい」
へっ?
「うらやましいーーーー!」
と、恵先輩が絶叫した。
「だって、一番最初にあっちゃんを見つけて勧誘したのは、この私なのに」
「もう少し、親密になってからモフモフしたかったのに、のどかったらズルいよ〜」
・・・先輩は、欲望を全開させていた。
「辛抱たまらん、あーちゃん、モフらせてぇ〜!」
と叫びながら、先輩は突然、僕に抱きついて来た。
抱きつくと先輩は、背中に回した腕に力を込め、さらに密着して来る。
密着すると今度は、頬ずりをし出した。
先輩は女子にしては身長が高い方なので、頭の位置が僕の首の位置になり、頬ずりするたびに髪の毛が僕の首筋に当たりくすぐったい。
目の前には、ポニーテールの尻尾が、左右にユラユラ揺れている。
「あ〜、気持ちいいよ〜」
まるで温泉にでも浸かるかの様な声を出しながら、先輩は呟いた。
気をつけないと、先輩が突進する勢いで抱きつくので、倒れない様に僕も先輩の体に手を回し支えていた。
しばらくの間、そうしているとイキナリ図書室の扉が開いた。
見ると、一人の女子生徒が入る所が見える。
その女子生徒は僕らを見て、しばらくの間、固まると次の瞬間。
「ごめんなさーーーい!」
と叫んだ後、扉を勢いよく閉めて、廊下を全速力で走って行った。
どうやら、盛大に誤解されたみたいだ。
僕は慌てて。
「誤解だーーーーー!」
と絶叫したが、もうすでに届かなくなった。
「気持ちいいよ〜(スリスリ)」
しかし、この状況を生み出したその張本人は、自分の世界に入り込み、状況を全く理解していなかった。