第51話 遠い昔の天然天使1
夏休みのある日。
今日は僕の当番日なので、朝から図書室にやって来ていた。
また今日も、カウンターで勉強していると、いつの間にか、隣に誰かの気配がするのに気付く。
ふっと、そちらを見ると、良子先輩が僕の横に立っている。
「先輩、あなたは一体」
ふふふ、と微笑む良子先輩。
「うーん、そうね、あなた達の大先輩と言ったところかな」
と言って、僕の顔を覗き込んだ。
「え、それは・・・」
「うすうす感づいているでしょ、私はもう生きていない存在だと言う事は」
「は、はい・・・」
「でも、私の事は怖くないの?」
「何だか得体の知れない存在だとは思いましたが、でも先輩といて楽しかったのは事実です」
「ふふふ、正直ね。
私も、こんな食べちゃいたい位可愛い子に、危害を加えたく無いわ」
そう言いながらニコニコする、先輩。
「そうね、私の事を話した方が良いかな。
あれは、1974年だから、丁度40年も前になるかな」
「私は元々から、心臓が悪くて、小さい頃は余り学校に出て来てなかったの。
でも、大きくなって病状も安定して来たので、学校に出て来れる様にはなった。」
「それでも、時々発作が起きてはいたんだけど。
だけど、少しでも楽しい学校生活を送りたいから、お医者さんに無理を言って学校に来ていたのよ」
窓の外を見ながら、過去の事を語る良子先輩。
「そう40年前の、丁度今頃。
私は、あなたと同じ読書部だったのよ、それで一人で図書室に出て来て本を読んでいたら、急に発作が来て。
でも周りには誰もいなくて、そのまま私はこの世の人間じゃ無くなってしまった・・・」
そう言って、俯いてしまった先輩。
「それからかな、夏休みでも利用者が一人にならないように、図書委員が出て来てくる様になったのは。
ごめんね、私が原因で、あなた達に迷惑をかけるようになっちゃって」
と言って頭を下げた、先輩。
言われて見れば、夏休み前に図書委員(と言っても、ほとんど読書部員に)に健康状態をついて、川尻先生が聞いて来たっけ。
それはきっと、そう言う訳なのかな?
「でも、どうしてそんな状態になったのですか?」
疑問に思い、先輩に尋ねてみると。
「多分、もっと学校生活を楽しみたいと言う思いが、強いからのだと思うの。
特に、男の子とイチャイチャしたり、デートしたりとか・・・」
そう言いながら、両手を頬に当てた顔を真っ赤にさせて、先輩が体を左右にクネらせる・・・。
「特に、秋人君、あなたみたいな可愛い男の子と、そう言う事をしてみたかったのよ。
でも、昔は、可愛い男の子どころか、同じ歳頃の男子は不格好で、不潔で汗臭いし、乱暴だし、とても近寄りたくなかった」
「ホント、今の時代は良いわね、あなたみたいに可愛い男の子はいるし。
普通の男の子でも、ツルツルサラサラな子が多いもの」
僕の頬を白くて綺麗な手で撫でながら、そう言う先輩。
「秋人君、あなたとは波長が合うみたいなの、だから私の姿が見えたのね」
僕の頬を撫でがら、先輩が僕の顔をジッと見つめる。
「だから、これからチョクチョク、あなたの所に姿を現すからね。
だから、今度はもっと良い事をしましょう」
そう言って、チロリと舌を出した先輩。
僕がその言葉にドギマギしていると、いつの間にか先輩の姿が見えなくなった。
「ある意味トンでもない人?に、取り憑かれたのかな」
僕はそう言って、溜め息を付いた。




