第5話 日溜まりの天然天使
今回は、はっきり言ってベタな話です。
昼休み時間。
今、僕は図書室のカウンターの中にいる。
右隣には、のどか先輩が座ってる。
恵先輩と静先輩は、昼休みは用事があって図書室には来ていない。
つまりは、現在ここにいるのは2人きりである。
「のどか先輩、暇ですね」
「うん、ひまだねぇ〜(ふあ〜)」
図書室の中は、いつも通り人気がない。
試験前とかなら、チラホラ姿も見えるが、普段はこんな物である。
この学校の図書室は校舎の端にある上、教室から行くのに時間が掛かると言うロケーションの悪さもあり、普通の生徒は利用したがらない。
従って、暇を持て余す事が多い。
もちろん、本の整理や管理、資料の作成などの仕事もあるが。
それらが無いときは、暇になってしまう。
それで本を見ながら、来るかどうか分からない、貸出希望者を待っている。
「(・・・コクリ、コクリ)」
昼食後で満腹なのと、窓から入る春に日差しに、次第に睡魔に襲われていった。
「あっちゃん、ねむいの?(ん〜)」
「ハッ、はぁ〜、びっくりした〜」
思わず、前に寝落ちそうになった瞬間、のどか先輩から呼び止められて、慌てて目を覚ました。
「ご飯食べて、お腹一杯で、それにここは暖かいから」
「そうだね〜、ここはポカポカだよね〜(ぬくぬく)」
そう言って気合を入れたが、押し寄せる睡魔にまた襲われる。
「(・・・カク、カク、カク)」
今度は右側、つまり、のどか先輩の方に倒れそうになった。
「っっ、ああ、あぶない」
慌てて、体勢を立て直した。
しかし、その時、のどか先輩は、何か良からぬ事を企んだかの様な笑顔を浮かべたのを、僕は気づかなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
それからしばらくして、またもや睡魔が襲ってきた。
「(・・・カク、カク、カク)」
また、のどか先輩の方に倒れそうになった。
また、慌てて、体勢を立て直そうとしたが、しかし。
「(ギュウウウウウ〜)」
??、いきなり何かに抱きしめられた。
「どうしたの、あっちゃん(しれ〜)」
何と、僕の頭は、のどか先輩に抱きしめられていた。
「(んーーーーー!)」
慌てて、僕は急いで脱出しようとしたが、そうすると僕の頭をのどか先輩の腕が締め付けてくる。
「暴れちゃダメよ!あーちゃん(ビシ!)」
と、僕を叱ってきた。
僕はその言葉に大人しく従った。
「そうそう、じっとしてね(はーと)」
のどか先輩は、僕の頭を胸に抱きしめながら、頬ずりをしたり、撫でたり、匂いを嗅いだりしていた。
「あーちゃんて、全然、汗臭くないんだね(くんくん)」
「それに髪の毛もサラサラで、頬ずりすると気持ちいいよ〜(すりすり)」
「ほっぺたもスベスベして、女の子みたい(なでなで)」
と言いながら、僕の感触と手触りと匂いを堪能していた。
それで僕はと言うと。
「(む、むねがーーー!)」
顔を真っ赤にしながら、後頭部に当たる柔らかな感触とほのかな体温、頬を撫でるくすぐたさ、そして鼻腔を突く甘い香りに、心臓の鼓動が激しくなるのを感じた。
そして、午後の予鈴がなるまで、心臓が破裂しそうな思いに耐えた。