第4話 ある日の天然天使
入部して数日が経った。
いつもの様に、図書室で部活動をしている。
部活動と言っても、読書をして時々レポートをだしたり(感想文でないのは、実用書や専門書でも提出できる為)と言う感じだが。
実は、図書委員としての役割の方がウェイトが高かったりする。
各クラスで図書委員がいるけれど、特に放課後は塾や習い事と称して図書室に来ないことが多い。
その分、読書部として図書室にいるこのメンバーが、負担する事になる。
顧問の先生に改善を要望しているが、相手が成績を盾に取るので、ナカナカ良くならない。
なので今は、カウンターの中で図書委員の仕事をしながら読書中。
「いつも、このメンバーなんですね」
「・・・うん、こんな感じかな」
「他の委員は来るんですか?」
「・・・週に2、3人、体裁を取り繕うのにね」
と、静先輩が答えていた。
あれから比べると、顔をこちらに向けて会話してるけど、やはりまだ余所余所しい感じは抜けない。
まだ数日だし、気長に待つしか無いのかな?
しばらく、一緒にカウンターに居たけど、居づらくなったのか。
「ちょっと、のどかの所を手伝って来るね」
と言って、書棚を整理している、のどか先輩の所に行った。
「ふう、嫌われて無いよな・・・」
無意識に独り言が出ると、耳のすぐ側から。
「大丈夫よ、嫌っているんじゃ無いのよ」
と、突然、恵先輩の声が聞こえた。
「ビクッ」その声にビックリして、僕は椅子から落ちそうになる。
(あらら、びっくりしちゃって、もうかわいいなあ〜。
この隙に、もう少しくっついちゃおう。)
恵先輩は僕にさらに密着して、会話を続けた。
「ビックリした?ごめんね〜。
ん〜、例えるなら、あの子ね頭を撫でたくてしょうがないけど、噛まれるのが怖くて手が出ない状態かな。」
「僕は犬ですか!」
「うん、犬種で言うならコーギーかミニチュアダックスかな?」
「せめて柴犬ぐらい言ってもらいたかった・・・」
「それに、あっちゃんと始めて会った後、静ね、あっちゃんの事を頬ず・・・」
「イヤーーーーーー!止めてぇ!」
書棚の方から悲鳴が聞こえた。
すると、けたたましい足音を立てて、静先輩が走って来た。
・・・静先輩、ここ図書室ですよ。
静先輩は、恵先輩めがけて凄い勢いで走り寄った。
しかし、恵先輩はその勢いに押されて、壁際に後ろ向きで追い詰められる。
「ゼエ、ゼエ、ゼエ、ゼエ」
追い詰めた静先輩が、息を切らせて恵先輩の前で仁王立ちし、そして低く響く声で言った。
「め・ぐ・み・せ・ん・ぱ・い、 や・め・て・く・だ・さ・い!」
後ろ向きになっているので、表情が分からないけど、有無を言わせぬオーラを放っている。
あまりの迫力に恵先輩は、ただ頭をカクカク縦に動かすだけだった。
・・・普段、大人しい人を怒らせると怖いなあ〜。