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第31話 天然天使とお弁当3

 4時限の終鈴がなった。


 雨降りの中、食堂への渡り廊下を、足早に食堂へと向かった。


 食堂の入り口に到着すると、そこで見覚えのあるお下げ髪の女の子と、バッタリ出会った。



 「あれ、有佐先輩」


 「あ、秋人くんね」



 小さなお弁当箱を持った、有佐先輩がそこにいた。



 「偶然ですね」


 「うん、偶然やねぇ、食堂に食べに来たとね?」


 「はい、でも、購買でパンを買ってですけど」


 「じゃあ、一緒に(たぶ)んね」


 「はい、お願いします」



 と言う訳で、先輩と一緒に食堂で、食べる事になった。



 ***************



 「すいません、お待たせしました」


 「よかよ、じゃあ、食よっかねぇ〜」



 パンを買って来た僕は、待たせていた先輩に軽く謝った後、一緒に食べ始める。


 僕がパンの袋を破ると、先輩が可愛い弁当の包を解いて、蓋を開けた。


 弁当の中身は、だし巻き卵と肉じゃが、餃子、何か弁当で、余り見られない組み合わせのオカズだけど。



 「先輩、何か、珍しい組み合わせのオカズですね」


 「ああ、これね、昨夜(ゆうべ)の残りたい」



 へえ、盛り付けが上手だから、残り物を詰めた時の、ゴチャゴチャ感が無いなあ。


 先輩は、家事の一切をやってるから、こう言う所は家庭的だなあ。


 そんな事を思いながら、パンを両手で持って、モグモグと食べていると、先輩がニコニコしながら、僕を見ていた。



 「ん、先輩どうしたんですか?」


 「いやね、秋人くんが食ぶる姿(すがた)ん、可愛かけんがら見よったとたい。

恵ん言よるごつ、ほんなこて、リスんごたる」


 (いやね、秋人くんが食べてる姿が、可愛いから見ていたんだよ。

恵の言っていた様に、本当に、リスみたいだね)



 ・・・僕は赤くなりがら、パンを食べた。



 ****************



 食事が済んで、一服していると。



 「先輩、弟さんとは、どうなりましたか?」



 僕は、少し気に掛かっていた事を聞いてみた。



 「うん、少しね、あん子に手ば出さんごつしたと。

そぎゃんしたら、あん子ね、”ごめんなさい”って謝って来たったい」


 (うん、少しね、あの子に手を出さない様にしたら。

そうしたら、あの子ね、”ごめんなさい”って謝って来たの)



 「そっでね、なんでねって、聞いたら。

“お姉ちゃんが構って来んとは、何かして怒らせたけんじゃなかと?”って言うたとたい」


 (それでね、どうしてって、聞いたら。

“お姉ちゃんが構って来ないのは、何にかして怒らせたからじゃないの?”って言うの)


 

 「だけん、”お姉ちゃんがギュっとすると、嫌がるけんがらたい”って言うたら」


 (だから、”お姉ちゃんがギュっとすると、嫌がるからだよ”って言ったら)



 「あん子、顔ば赤こうして、小さか声で”・・・お姉ちゃんの胸が恥ずかしかけん”って言うと。

そうたいね、あん子も年頃やけんね」


 (あの子、顔を赤くして、小さな声で”・・・お姉ちゃんの胸が恥ずかしいから”って言うのよ。

そうだよね、あの子も年頃だからね)



 と言いながら、先輩は自分の胸を両腕で抱えて、強調させた。


 ・・・それがダメなんでしょうが。



 「キュってせん代わりに、頭ば撫でさせてんね、て言うたら、渋々承知したばい。」


 (ギュってしない代わりに、頭を撫でさせてね、て言ったら、渋々、承知したよ)


 


 先輩が笑って、そう言った。


 先輩の様子を見る限りでは、とりあえずはこの問題は良さそうだ。



 「秋人くんがあん時、私ば慰めてくれたけん、あん子の事ば冷静になれたと、ありがとうね」


 (秋人くんがあの時、私を慰めてくれたから、あの子の事を冷静になれたの、ありがとうね)



 先輩があの時を思えば、考えられない位の明るい笑顔で笑った。



 「今日は図書室行くけど、一緒に行かんね?」



 と先輩が誘うので、僕は、



 「はい、一緒に行きましょう」



 と答えた。


 雨が上がり、雲間から日が差し込む空をみながら、僕らは渡り廊下を通り、図書室へと向かった。



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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
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