第15話 がーるずとーく1
今回は主人公は出て来ません。
とある日の放課後。
「(ガラッ)」
図書室の入り口が静かに開いた。
すると、ややツリ目でポニーテールを揺らした女生徒が、入って来た。
その女生徒は、入り口を閉じると、図書室の通路を通り、カウンターへと向かう。
カウンターに入ると、準備室の方に行き、ドアを開いて、挨拶した。
「おまたせ、みんな」
「恵先輩、遅かったですね」
「恵先輩、遅いですよ(ぷんぷん)」
「ごめん、ごめん、ちょっと先生と話してて」
静とのどかは、恵にそう言った。
二人は新入荷の本に、保護シールを貼り付ける作業の途中だった。
「じゃあ、私も手伝うね」
「それなら先輩は、シールをカットして下さい」
****************
3人は作業をやりながら。
「今日は、あーちゃんが居ないんだっけ、静」
「はい、そうです、先輩」
「そう言えば、お家の用事とか言ってたね(ざんねん)」
この日は、秋人が居なかったのだ。
「そう言えば、少し前まで部の人間は実質、この3人だけだったね」
「あーちゃんいるのが、当たり前になってたけど、確かにそうですね、先輩」
「うん、そうだね(そうそう)」
「でも、前まで、あんなに可愛い男の子が入るなんて、夢にも思わなかったなあ。
しかし、始めて見た時は、なぜか体が自然に、あーちゃんの所に行ったんだよね」
「あの時はビックリしましたよ、先輩、イキナリ勧誘するなんて」
「ごめん、ごめん、静、ビックリした?」
「二人が可愛い可愛いと言うから、どんな子かと思ったら、本当に可愛かったな(きゃわわ)。
あ、何か、あーちゃんの事、”愛玩動物と書いて、かわいがるいきものと呼ぶ”って言うらしいね(ぴったり)」
「あっ、その話聞いたことがあるよ、のどか」
「あはは、何それ、でもピッタリじゃないの」
「笑っちゃダメですよ先輩、確かに間違ってはないですけど」
「静もそう思ってるじゃない〜」
3人は作業をしながら、秋人の可愛さについて、語り合ってたが。
「でもね、あーちゃん、可愛いだけじゃなく、イザと言うとき頼りになるんだよ」
と静は言った。
あの脚立から落ちた時の事を、思い起こしたのだ(第7話 天然天使の感謝参照)。
見た目は華奢だけど、落ちてくる自分を受け止めようとした腕。
勢いを殺しきれず、床にぶつかろうした時、自分を庇おうとして、自分の下になってくれた事。
庇って、自分を下から受け止めた時の、まるでクッションが効いたベッドの上にダイブする様な、心地良い体の感触。
その時の秋人の事を考えると、急に恥ずかしくなって、両手を自らの頬に当てて、俯きながら赤くなり、まるでイヤイヤする様に身を捩らせた。
その様子を唖然として二人は見ていたけど、静のセリフからある事に気付く。
静が脚立から落ちた時、秋人が怪我をした事は知っていたが、詳しい事までは知らない二人は、その時に何かあったと思った。
「ねえ、静、あーちゃんと何かあったでしょ」
「そうだよ、なんか怪しいぞ(ジトー)」
「べ、べ、別に、な、な、何も無いわよ」
「あー、キョドってると、余計に怪しいわよ、静」
「さあ、何を隠してるのさ(さあ、さあ、さあ)」
「本当に、何も無いわよーーーーーー!」
二人の静に対する尋問は、その後しばらく続いたのだった(笑)。




