番外編9 原水 良子
これで、天然天使は終了します。
最後の話を、楽しんで下さい。
21XX年の4月のある日。
「シュッ、シュッ」
一人、廊下を歩いている。
これから、僕は図書室へと行く所だ。
僕の名前は、伊倉 明。
今年、この高校に入学して、まだ一週間である。
なぜ、図書室に行くかと言うと、読書部に入部するためだ。
現在では、携帯端末もペーパー型になり、重い本なんかを持ち歩く事は無くなった。
僕が持っている携帯端末も、折り曲げ自由自在な上、大きさも手帳サイズからA3サイズにまで変える事が出来る物だ。
これを、ライブラリーサーバーに接続すれば、あらゆる種類の電子書籍を読むことが出来る。
従って従来の、紙を纏めた本は、その重さゆえ次第に敬遠されて行った。
では、なぜ紙を使った本を保管している、図書室があるかと言うと、電子化しきれない本を保管したり。
あえて、不便な本を愛好すると言う、好事家のためである。
そして僕が向かう、読書部は、なんでも100年以上の歴史がある部活で。
その割には、少人数の部員で構成されているらしい。
その活動内容は、不便で重い本をタダひたすら読むと言う、ある意味、暇人のあつまりとも言える集団である。
***************
ではなぜ、僕がそんな暇人の集まりに、入部しようとしているのかと言えば。
あれは、この学校に合格して、しばらく経ったある夜の事だった。
・・・・・・
僕は夢を見ていた。
恐らく、100年位昔の事だろう。
昔のこの学校に入学していて、それから読書部に入部していたのだ。
そこで、部の先輩に当たる、女の子達と色々な事があった。
何かに付けて、くっ付いて来たり。
胸に押し付けられて、恥ずかしい、または、死ぬ様な思いをしたり。
女装をさせられて、晒し者にされたり。
そして、ある夏休みに、幽霊の女の子と淡い恋をした。
・・・・・・
「ガバッ!」
僕は、目が覚めると、思わず体を起こした。
それから、顔を拭うと、顔が濡れている。
・・・涙を流していたみたいだ。
それからしばらくして、僕が見た夢が、前世の僕が体験していた事だと、何となく理解した。
その後、この学校に入学して、現在でも読書部が存在する事が分かると。
読書部に興味が湧き、入部しようと思い立った。
そう言う訳で、僕は読書部に入部しようと、図書室に向かっている。
その途中、片側全面、特殊ガラス張りの、校舎の校庭側を見た。
校舎の片側が、UV対策と、採光及び太陽熱の取り込みの為に、全面、特殊ガラス張りになっている。
これは紫外線遮断は元より、光が強すぎたり、気温が高くなると、ガラスが黒くなって、光や赤外線を遮断するものだ。
そのガラスから見える、校庭を見ながら、僕は図書室へと急いだ。
***************
目の前に、図書室が見えてきた。
図書室の扉の前に立つと、扉が自動で開いた。
それから、図書室の中に入ると、中は記録写真なんかで見た様な光景が見える。
そして、読書部に入部しようとしたが、よく考えたら、どうしたら良いか分からなかった。
仕方が無いので、本を読んで見ようと、本棚から本を取り出すと、テーブルに座って、本を読んだ。
しかし、紙の本は重くてしょうが無いなあ。
テーブルに座って、下と向いて本を読んでいると、カウンターの方で3人の女生徒が、何やら話をしている様だ。
そして、その中の一人が僕の所にやって来た。
「あのー、チョット良いかな」
と、僕に尋ねてきたので、僕が顔を上げると。
そこには、髪は背中までのストレートで、スカートが微妙な長さのこの学校の制服を着た女生徒であるが、夢で見た事がある顔があった。
「良子先輩!」
彼女の顔を見た瞬間思わず、その言葉が口から出てきた。
その言葉を聞くと、彼女は僕の顔を見ながら目を見開いた。
「どうして、私の名前を・・・。
・・・その顔は、もしかして、あーちゃん!」
・・・そして、二人はお互いに顔を見合っていた・・・。
それからしばらくして、目の前の人物が、僕だと完全に理解すると、先輩の目から涙が流れた。
「先輩、どうしてこんな所に!」
「・・・うん、どうやら私、転生したみたいなの。
そう言う、あーちゃんこそ、どうなの?」
「はい、僕も転生したみたいんですよ。
ただし、思い出したのは、つい数ヶ月の事ですけど」
「私も、この学校に入る前に思い出したの。
だから、読書部に入って、今は部の部長よ」
「そうなんですか、僕も読書部に入部しようと思って、ここに来たんです」
僕とそんな会話をする先輩だが、目から涙を流したままだあった。
「でも何で、僕の所に来たんですか?」
「あっ、そうだね、あなたの事を勧誘しに来たの」
「読書部の?」
「うん、そうだよ」
先輩がそう言うと、僕らはお互いに顔を見合わせて、笑い出した。
それをカウンターの方で、怪訝そうにして見ている、女の子達。
先輩は笑いながら、涙を拭っていた。
「ねえ、こっちに来て頂戴。
あの娘たちに紹介したいのよ」
「分かりました、でも、先輩。
でも、今の名前は、何て言うんですか」
「私の今の世での名前は、水前寺 涼子って言うの。
字の方は、涼しい子って書くんだよ。
あーちゃんは、何て言うの」
「僕は、伊倉 明って言うんですよ」
「じゃあ、あーちゃんで良いんだ」
「先輩も、読みは変わらないんですね。
でも、字が涼しい子と書くんですか」
「そう言う事なのよ」
先輩がそう言うと、僕達は、またお互いに笑い出した。
「じゃあ、行きましょうか、あーちゃん」
「はい、分かりました、涼子先輩」
僕は立ち上がると、先輩が僕の手を取った。
そして僕達は手を握りながら、カウンターの方へと歩き出した。
皆様、図書室の天然天使を読んでいただき、有難う御座いました。
こんな、何を書いているのか分からない物を呼んでいただき、本当に申し訳御座いません。
でも、100話を越え、しかも基本的に毎日更新の作品を続けて行けたのは、ひとえに、皆様のおかげであります。
それでは、皆様のご健康とご発展をお祈りしまして、物語を終了させて頂きます。




