第113話 バレンタインデー1
ある日の朝。
朝、教室に着いて、体を温めていると。
「伊倉君、先輩が呼んでいるよ」
クラスメイトの女子がそう言って、廊下を指差した。
”はっ!”、と思い、廊下の方を見ると。
僕に向かって、小さく手を振る、恵先輩と有佐先輩の姿があった。
その姿を認めると、僕は席を立って、廊下の方に向かった。
「先輩! どうしたんですか今日は?」
「うん、今日は朝から、学校に用があったから、それに今日は」
「バレンタインデーばい」
「そう言えば、そうでしたね・・・」
僕がそう言うと、恵先輩と有佐先輩が続けてそう答えた。
そうだった、今日は2月14日でした・・・。
そう思うと、背後から殺気がする。
”はっ!”として、後ろを見ると。
何人ものクラスの男子が、どす黒いオーラを纏わせながら、こちらを睨んでいる。
「(ヒエーーー!)」
「せ、先輩、こっちにいきましょう!」
「ちょっ、ちょっと、あーちゃん」
「どぎゃんしたと? 急に」
男子連中の圧力に抗しきれず、僕は、先輩達を廊下の角の向こうへと、背中を押した。
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「ここまで来れば大丈夫」
そう言って僕は、一息付く。
不思議そうな顔をしながら、先輩達が。
「それでは、改めまして」
「はい、チョコレート」
と、僕にチョコレートを手渡せてくれた。
「どうも、ありがとうございます」
僕がお礼を言うと、先輩達はそんな僕を見て、ニコニコと笑顔を見せる。
「それに、あーちゃん」
「これだけじゃ、無かとたい」
「むんぎゅ」
そして、恵先輩と有佐先輩がそう言うと、僕に抱き付いた。
恵先輩が前、有佐先輩が後ろから抱き付いて、丁度、僕は先輩達から前後に挟まれた、サンドウイッチ状態になる。
「久しぶりに合ったから」
「こぎゃんしても、よかよね」
僕に抱き付いたまま、先輩達がそう言った。
何だか廊下の角から、殺気がするので見ていると。
教室から付けて来たのだろう、廊下の角から、何人もの男子がこちらを睨みつけている。
「(ちょ、ちょっとぉ)」
恐らく、このまま教室に帰っても、無事に済みそうに無いなあ・・・。
その事を知ってか知らずか、先輩達は、相変わらずに僕の前後から抱き付いている。
「ハハハハ・・・」
僕は、今の天国の様な状況と、教室に帰ってからの地獄を考えると、乾いた笑いが自然に出て来たのだった。




