第109話 もう一度ギュっとして
ある日の昼休み。
昼食を取って、図書室に向かっていると。
「あーちゃん、こんにちは」
複数の部の共用部室である、空き教室から、翠先輩が出て来た。
この間と同じ様に、髪を下ろして、眼鏡を外している。
が、しかし、今日の服装は。
白を基調にし、赤のリボンで飾り付けられたロリータドレスに、白のタイツ、頭には赤いリボンが黒髪に映えていた。
「あれ、先輩、今日はどうしたんですか?」
「うん、あーちゃんに合いたくなったの」
普段とは違う、可愛らしい表情で、僕に言った。
「・・・、別にその格好で無くても」
「あーちゃんには、本当の私を知ってもらいたくて。
それに、この格好の方が、あーちゃんに可愛がってもらえるから」
「・・・」
そうなのだ、先輩は普段、野暮ったくて、押しが強いキャラでいるが、内面は、人から可愛がられたい、甘えん坊なのだ。
「この間、あーちゃんに抱き締められた時の事が、忘れられないの」(第85話参照)
「だからお願い、また、ギュっとしてぇ」
そう言って、先輩が、僕に抱きついて来た。
僕は、そんな先輩に応える様に、先輩を抱き締めた。
「あーちゃん、気持ち良いよ」
僕の耳元で、囁く様に先輩がそう言った。
だが、先輩がそう言うと同時に、体を振るわせた。
「先輩、寒いんですか」
「・・・うん、少し」
「その格好で、どれ位いたのですか?」
「30分位かな・・・」
「今の時期に、その格好でいたら、冷えますよ」
「あそこで、毛布を被って待っていたから」
そう言って、空き教室の一つの机に上に置いてある、毛布を指差した。
「ダメですよ、女の子が体を冷やしたら。
先輩、こっちに来てください」
僕はそう言うと、先輩と一緒に教室の中に入る。
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「先輩、少し待って下さい」
教室に入ると、僕は、学生服の上着を脱いで、毛布が置いてある机の近くの椅子を引いた。
「先輩、少し失礼します」
「きゃっ」
僕は、先輩の背中と膝の後ろを持ち抱えると、先輩が小さく驚きの声を上げた。
そして、お姫様抱っこの体勢で先輩を運ぶと、そのまま、さっき僕が引いた椅子に座る。
そうすると、椅子に座った僕の上に、先輩が横座りに座った状態になった。
僕は、近くにある毛布を取ると、先輩もろとも毛布を被りながら。
「先輩、これで暖かくなりますよ」
「・・・あーちゃん、ありがとう」
熱を帯びた瞳で、僕を見詰めながらそう言う先輩。
上着を脱いだのは、その方が、先輩が温まると思ったからだ。
「あーちゃん、暖かいよぉ」
先輩が僕にしなだれると、僕の耳元で、ウットリとした声でそう言った。
その言葉を聞いて、僕は先輩をもっと温めてやりたいと思って、先輩を自分の方に引き寄せて、更に密着する。
しばらくの間、そうやって僕は、冷えた先輩の体を温めていた。




