再会その1
私の場合は前世の記憶があるんです。とは違うかな?自分の意志がはっきりしたのは3歳の記憶から。
あれ?ここで何してんだ?…あぁ、この棚の中のお菓子食べたいのか。
いやに高い棚だなぁ…届かないし飛ぶかと箒に跨った瞬間に「…!!僕の天使が箒で飛ぼうとしてる!どこまで僕の心を捕らえて離さないんだっ…」と、なかなか頭イカれた発言をされた所からです。
この人物はこの世での父親である。固まったまま背中がゾワゾワしてたのを覚えてるな…
箒を持ったまま抱きしめられヒゲのジョリジョリ攻撃を受けてお菓子も食べれず、飛ぶことも出来ず…。
解放された後に色んな魔法を試したがどれも成功しなかったし
今の現状も何がなんだかわからないまま自分が小さな子供になっていたことに気付くのは夕ご飯のハンバーグをお行儀良く頬張っていた時だった。
月日は経ち、魔法の練習を続けていた私はある日我が母から渡された一冊で今違う世界にいることを知った、小学3年生のときである。
目の前に前世の私が魔女として存在していた筈の世界【2人の王子様とお姫様】が童話になっていたのだ。
そう、完全な私の黒歴史。あの時の発狂しそうな感情は忘れられない。消し去りたい過去が不特定多数に知れ渡るように、わざわざ書籍化されちゃってたのである。今でも思う、人権侵害だ!プライバシー保護法はいずこにと。
あの頃は幼心で幾度となく考えていた。確かに魔女としての記憶だってある。…けど私は今ここに存在しているし、前世が童話の魔女だなんてあり得ないだろう。
魔法だって結局使えなかったし…
そう思い、普通の子供として過ごそうとしたが友達?に誘われても嬉し恥ずかし鼻息荒く緊張でハァハァし
柱の陰に隠れて会話出来ない私は気持ち悪がられ、それ以降ひっそりと誰とも関わらず過ごしエリートぼっちの才能を開花させていた。
そんな新しい黒歴史を作り上げていく私の運命は、転校した中学である人物と再開することで変わっていく。
私が間違いなく魔女であったことを確信させる出逢いだった。
----【再会その1】
春は出逢いの季節、新しい予感に胸はいっぱいだぁ
誰だよ、そんなポジティブな事言った奴は?足取りも心がいっぱいで重くてしょうがないんですが。
「新しい家、新しい学校、新しいクラスメイト……恐怖の大王ピンポイントで学校に降って来い…」新しい予感に胸がワクワクなんてキャラでない私は不吉な言葉を吐きながら職員室で震えが止まらない。
そんな事が叶うはずもなく、担任の先生がクラスメイトを紹介してくれた。
「…何かあったら委員長に聞いて下さいね?よろしくね藤宮くん」と下を向いていた私に視線を合わせてから、恐らく前に立っている委員長とやらにお願いしている。先生、呪いの言葉はスルーなんですね?
「あ、はい。…藤宮絢人です、よろしくね」
そんな負のオーラの私に少し笑いながら乙女ゲーにでも出て来そうな優しい甘い声の持ち主が手を差し出した。…恋愛も友達も画面の中だよ!な私は萌えてしまい気付くのが遅れた。
その声に聞き覚えがあった事を。
「………っ…な、……ひゃあぁああぁぁぉぉ…おぇぇ?!!!」
急に手を掴まれてビックリして顔を上げた私の目に映った人物、吐くかと思ったよ。女子としてギリギリ抑えたよ。目に溜まった涙がヤバイですけど。
忘れようもない、童話【2人の王子様とお姫様】に出てくる王子様の1人。
光の王子様は元魔女の前に記憶と変わらない姿で現れた。