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幽霊の出る町

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/01/11

 その町は幽霊が出ることで有名だった。

 故に怖いもの知らずの若者がその町へ行くのだ。


「この町のどこに幽霊が出るんですか?」


 無遠慮に尋ねる若者へ住民は苦笑いをする。


「どこと言われてもね。どう答えていいものか」

「教えてくださいよ。夜になったら見に行くつもりなんですから」

「そんな不謹慎なことをする輩に教えるわけないだろう?」


 これでは話にならない。

 若者は別の住民に声をかける。


「私からは何とも言えないよ。他の人に聞いてごらん」


 若者はさらに別の人に話を聞く。

 しかし、返ってくるのは同じような答えばかり。


 仕方なしとばかりに若者は町中を歩き回るが、どこを歩いても平和な町でしかない。

 幽霊どころか墓一つだってありゃしない。

 その姿を見た町の住民は苦笑いをしたり、ひそひそ声で話したり、あるいは無視をしたりしていた。


 小さな町だ。

 やがてもう見る場所もなくなった頃、若者の前に一人の少女が現れて言った。


「もう気はすんだ?」

「あぁ。噂は噂のようだな」


 少女は意図の掴めない表情のまま頷き、そして躊躇いがちに言った。


「夜になる前に帰った方がいいよ」

「あぁ、そうするよ」


 なんて若者は言ったものの帰るつもりはなかった。

 ここまで来たらせっかくだし夜の町を歩いてみよう、なんて思ったのだ。



 *



 そして夜。

 若者は悲鳴を上げながら逃げていた。


 町は真っ暗だ。

 電気は一つもついていない。

 誰もいないかのように。


 いや、違う。

 実際に誰もいないのだ。

 人の息遣いや生活音が何もしないなんて。


 こんなおかしなことあるはずない。

 もし、このような状況が成立するとしたら?


 そこまで考えた時、若者は答えに気づいて逃げ出したのだ。


 だって、まさか、考えもしないだろう?


 昼間に出会った町の人間、全員が。


 ――幽霊なんて。



 *



 翌朝。

 その町は何事もなかったように人影で満ちていた。

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― 新着の感想 ―
 昭和のラジオに流れる怪談のようでもあり、劇画タッチの絵で観たくなる、私が好きなタイプのホラーです。
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