幽霊の出る町
その町は幽霊が出ることで有名だった。
故に怖いもの知らずの若者がその町へ行くのだ。
「この町のどこに幽霊が出るんですか?」
無遠慮に尋ねる若者へ住民は苦笑いをする。
「どこと言われてもね。どう答えていいものか」
「教えてくださいよ。夜になったら見に行くつもりなんですから」
「そんな不謹慎なことをする輩に教えるわけないだろう?」
これでは話にならない。
若者は別の住民に声をかける。
「私からは何とも言えないよ。他の人に聞いてごらん」
若者はさらに別の人に話を聞く。
しかし、返ってくるのは同じような答えばかり。
仕方なしとばかりに若者は町中を歩き回るが、どこを歩いても平和な町でしかない。
幽霊どころか墓一つだってありゃしない。
その姿を見た町の住民は苦笑いをしたり、ひそひそ声で話したり、あるいは無視をしたりしていた。
小さな町だ。
やがてもう見る場所もなくなった頃、若者の前に一人の少女が現れて言った。
「もう気はすんだ?」
「あぁ。噂は噂のようだな」
少女は意図の掴めない表情のまま頷き、そして躊躇いがちに言った。
「夜になる前に帰った方がいいよ」
「あぁ、そうするよ」
なんて若者は言ったものの帰るつもりはなかった。
ここまで来たらせっかくだし夜の町を歩いてみよう、なんて思ったのだ。
*
そして夜。
若者は悲鳴を上げながら逃げていた。
町は真っ暗だ。
電気は一つもついていない。
誰もいないかのように。
いや、違う。
実際に誰もいないのだ。
人の息遣いや生活音が何もしないなんて。
こんなおかしなことあるはずない。
もし、このような状況が成立するとしたら?
そこまで考えた時、若者は答えに気づいて逃げ出したのだ。
だって、まさか、考えもしないだろう?
昼間に出会った町の人間、全員が。
――幽霊なんて。
*
翌朝。
その町は何事もなかったように人影で満ちていた。




