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崩壊家族  作者: 日向七帆
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4.恵茉ちゃんのほうが好きなお菓子の種類が多いでしょ?

「ちょっと!それ私のポテトチップスじゃん!食べないで!」

「僕のだ!うるさい!」

武の平手が恵茉の頬を直撃した。

小学生時代の武はおやつが足りないと、恵茉の分を取り上げて食べるのが常である。しかも無断。そして無断どころか”僕のだ”と嘘をついて食べてしまう上に、こうして恵茉が怒ると恵茉を殴ってまでも食べ続ける。”噓つきは泥棒の始まり”という言葉があるが、まさにその通りである。しかも厳密に言うと、恐喝とも言える状況。

ある日、またしてもその状況が起こり、恵茉は祖母のたま子に助けを求めた。今日ばかりは武を叱ってくれるだろうと信じて。

「おばあちゃん!お兄ちゃんが私の分のポテトチップス食べてるの!」

「いいじゃないの。武君はこれしか食べないんだから。恵茉ちゃんの方が好きなお菓子の種類が多いでしょ?許してあげなさい。意地悪言わないの!」

恵茉は目が点になった。何故?私が悪いの?勝手に食べて、さらには”僕のだ”なんて嘘までついて、殴られたのに。

「お兄ちゃんは嘘をついて食べてるから泥棒じゃん!しかもどうして私が殴られないといけないの!」

恵茉はこの日は食い下がった。どうしても納得がいかなかったからだ。

「どうしてそんなに意地を張るの?女の子なんだからもっと優しくならなきゃ。」

たま子は、食い下がる恵茉に対して謎の諭しをする始末。

こんなことを繰り返しているので、恵茉は自分の分のお菓子を自分の部屋に置きたいと恵理子に話したが、恵理子は聞く耳を持たず。結果、恵茉は常に武の横取りの対象となり、殴られ、祖母にもかばってもらえないことも度々あった。

さすがにその夜は、たま子から報告があったようだが、公平とは言い難い報告だったことは光一の話しっぷりから察しられた。

「それは武が悪い。じゃあ、お前にポテトチップスの分のお金をあげるから、もう武のことは許してあげなさい。たった二人の兄妹なんだから仲良くしなさい。」

光一はまだふくれっ面で涙を浮かべている恵茉にポテトチップスを買えるだけの小銭をくれた。

たま子よりは公平ではあるが、やはり丸く収めたい気持ちが優先していた。

まとまらない家族を無理矢理まとめるには、恵茉を丸め込むしかない、というのはこの家の大人の統一された意思だった。

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