12.無茶ぶりにもほどがある。
「お料理を教えてくれたこと、ないよね?なのに全部作れっていうの?」
高校生2年生のある日、恵茉はすっとんきょうな悲鳴をあげた。
恵理子はフルタイムで働いているために、それまでは夕食の支度は、たま子の役目だったのだが、年齢的にキッチンに立つのもしんどいので、恵理子にバトンタッチしたのだ。しかしフルタイムで働いている恵理子としても、また体力的にきつい。
そこで恵茉を頼ろうとしたところ、冒頭のような悲鳴をあげたのだ。正直なところ、料理を教えてもらったわけでもないのに、これは恵茉としても困惑というよりも迷惑とか無茶ぶりの類である。一品だけならまだしも、初心者にメニューを全部作れというのだから。
このように、恵理子は相手の背景などの事情を考えずに、自分の要望を平気で押し付けることろがある。さらには「NO!」と言ったところで彼女の耳にはフタがされており、その声は一切受け付けない。
仕方なくカレーライスとサラダというあたりから、徐々に恵茉がキッチンに立つようになっていったのだが、何も教えずにこういうことを言い出す恵理子に対して、恵茉の不信感はさらに強まった。
それでも恵茉は3年生になってからも、受験勉強もしながらキッチンに立って、恵理子を助けようと努力し続け、次第に「この前のハンバーグにかけていたソースはどうやって作ったの?」などと恵理子から聞かれるようになったときは心の中でガッツポーズをしたものである。




