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戸惑い


       1ヶ月後 テトラガーデン


 ルークとシルファが廊下を歩いていると…


「巫山戯るのも大概にしやがれ!!さっさと俺の前から消え失せろ!」


 ルイの部屋から怒鳴り声が響く。


 バタンッ! 扉が開き役人らしき男が逃げ帰って行く。


(何だ?気になるな…覗いて行くか)


 部屋に入るとソファーにドーラが黙って座っていた。


「何かあったのか?」


 ドーラは手をヒラヒラと振る、答えたく無い様子だ。


「はぁ…役人のクソ共が…」


「かなりのご立腹だな」


 ルイは椅子に座り直し話し始めた。


「この街のカジノ、アミューズメント施設化の構想も目処が立ってきた所で役人共が邪魔しに来やがった」


「ん?ステラの許可は得てるだろ?何が問題なんだ?」


「女王には王国に売上の15%の納税で話は纏まったんだが…此処の役人共が更に40%上乗せしろと言ってきやがった!」


「はあ!?40??」


 ルイは思い出し怒りがまた沸き起こる。


「貴族出身のガキ共が!商売舐めるのも大概にしやがれ…」


「無視は出来ないのか?」


「無理だ、此処の行政が建築許可を下ろさないと何も出来ん」


 ルークは先程の言葉が気になった。


「貴族出が多いのか?」


「多いどころじゃない、ルークこの街に役人は何人居ると思う?」


「この規模の街だと…500人位か?」


 ルイは首を振る。


「聞いて驚くな…5000人強だ」


「は??それは王国兵や医療、消防含めてだよな?」


「いや、役所の公務員のみでこの数だ」


 ルークは唖然とする…いくら何でも多すぎる。


「嘘だろ…この街に5000人分の仕事なんて無いだろ」

 

「此処は天下りの天国だ、自ずと貴族の跡目争いから脱落した奴等が辿り着く」


「4大商会がその受け皿か…」


 ルイは苦笑いを見せながら話を続ける。


「普通新規採用は40人程だが、あのボンボン共友人や召使まで一緒に連れて入って来やがる…毎年500人近くワラワラと此処に群がって、まるでアリだ」


「酷いな…大臣達は何をしてるんだ?」


「見て見ぬ振りだな、取り締まれば貴族から代わりの天下り先を斡旋しろと積められるだけだ」


 黙って聞いていたドーラが口を開く。


「兄貴〜だから言っただろ?ドサクサに紛れてボンボン共も殺っちまおうってさ」


「お前なあ…殺してたら今頃貴族共の報復でこの街は無くなってるぞ?」


「はぁ〜女王も使えない小娘だし難儀だねぇ」


 ルークはステラの評判があまり良くない事に引っかかる。


「ステラはこの事を知らないのか?」


「見て見ぬ振りさね、あの小娘は戦争の事しか考えてないよ」


 ステラのイメージと重ならない。


「ルークには悪いが女王は頼りにならん…今回の騒動でも有力貴族のお咎めは無し、4大商人に全て押し付けて終わりだ」


「ん?処罰があったと聞いたが」


「表向きはな」


「実際は違うと?」


 ルイは頷いた。


「これは言いたく無かったが…娯楽関係の話は前から何度もアプローチしてたんだ、だが返って来るのは「武器を作れ」それ一辺倒…話にならん」


「ん?だったら何で今回は通ったんだ?」


 2人はルークを見る。


「俺?」


 理由も分からずキョトンとしていると、後から声が掛かる。


「ここに居ったのか探したぞ」


「マモン良い所に来た!」


「何じゃ?お主も用があるのか?」


 ルークはマモンに問う。


「ステラの話をしていたんだが…俺の知ってるステラが皆の言う話と重ならなくてな、マモンにはどう見えてる?」


「あぁ〜等々お主の耳に入ったか…ハッキリ言おう、アレは独裁者で無能な呪われた操り人形じゃ」


 マモンの口から信じられない言葉が発せられた…


「…本気で言ってるのか??」


「アレは女神の玉座に選ばれ、サタンに仕える為に存在しておる」


「それは知ってる」


「女王はお主が居る時は明るいが…居ない時はまるで感情の無い機械の様じゃよ」


 ルークは初めて聞く話を信じられない。


(本当なのか?いやマモンがステラを悪く言う理由が無い…なら真実??)


「駄目だまだ納得出来ない」


 頭で理解しようとしてもステラの笑顔が浮かび混乱する。


「ふ〜む?そうじゃな〜ならば質問じゃ、ライラやヒルデに他国を侵略する事を提案するとしよう…2人は従うかのぅ?」


「絶対に反対する…2人は優しいし賢い、戦いより先ずは話し合い…」


 ルークはハッとする。


「ステラはどうじゃった?ドワーフやエルフの国を攻めた時反対したかのぅ?」


「していない…」


「多大な犠牲を出した天使との戦いの時は?」


 ルークは思い出す…ステラは終始、失った戦力の補充の事ばかり言っていた。


「まさか…本当に…」


「良く考えてみよ、今迄のお主の妻達とのやり取りを」


 今迄の事をゆっくりと振り返る。


(ライラとは楽しい事も悲しい事も乗り越えてきた、ヒルデは厳しくも俺を支えてくれた…エキドナやヘンリエッタもファリスもだ)


 ステラには正された事も諭された事も無い。


「何だこれ…改めて思い出すと俺はステラと本気で喧嘩した事すら無い?」


「周りに合わせて演技した事はあったろうが、基本的にお主の忠実な犬じゃよ」


 ルークの背筋が寒くなる…ステラの本当の顔が見えなくなった。


「アハハッ!!そりゃあ良いね!それなら遠慮なくやらせてもらうよ?」


 ドーラが勢い良く立ち上がる。


「おいドーラ何をするつもりだ!?」


「兄貴には迷惑掛けないよ」


「その言い方が引っかかるんだ!」


 ドーラはルークの前に立つと。


「邪魔な役人や貴族を退場させる、良いね?」


「あぁ、それは構わないが…方法は?」


「それは秘密さ…そうだ!全てが上手く行ったら、お前さんは覚悟を決めな」


「覚悟?」


 ルークを抱き締める。


「賭けをしよう勝ったら結婚!負けたら自害!人生の大一番さね!」


「何を勝手に!?死ぬ事は無い!」


「かなりヤバイ事をやる、まあ私に任せときな…チュッ」


 ドーラは軽く口付けすると部屋を出る。そして何かを言い忘れていた様で、顔を出す。


「お前さん大切な女はこの街に呼んどきな」


 ルイが大きく溜め息を付くと。


「あいつかなりヤバイ橋を渡る気だな、王都が危険になる様な」


 ずっと黙っていたシルファがルークに提案する。


「ルーク、あの作戦必要になりそうだから一度帰るね」


「まだ早くないか?」


「多分此処に呼んでも断るよ?なら先に手を打たないと」


「分かった任せる」


「うん、行ってくる」


 シルファも部屋を後にする。


「そうじゃルーク、カイから伝言じゃ…「女神に何かを仕掛けられた此方には戻れない」とな」


「此方から打つ手は?」


 マモンは首を振る。


「余計な手を出すと此方の隠し手がバレる」


「くそっ…何もかも上手く行かないな」


「今は我慢じゃ」



        それから2ヶ月


 王国は混迷を極めていた。ドーラの流したテトラガーデンの内情や貴族達の傍若無人さに国民は怒り狂っていた。


「貴族達の特権を許すな!」

「女王は説明しろ!」

「処罰された貴族が名を変えて同じ立場に戻るなんておかしいわ!」

「この国は腐ってる!」


 王都では毎日の様にデモが行われている。


         魔王の間


「外は今日も凄いことになってるね」


 ケルベロスがデモの五月蝿さにうんざりしていた。


「申し訳ありません、強制的に排除する訳にも行かず手を拱いております」


「手は出したら駄目だよ?アレは人間達の問題だ」


「はっ」


 メフィストが下がろうとすると…


「待て」


「はっ」


「最近女神若しくはナンバーズに会ったか?」


「いえ、会っていませんが?」


 ケルベロスがメフィストに近付き匂いを嗅ぐ。


「くんくん…微かにナンバーズらしき匂いがするんだよな」


「そんな筈は…」


 困惑するメフィストは何かを察する。


「まさか!?ニーナに何かしたのか!?あのクソ共があぁぁ!!」


「待て待て!」


 外に飛び出そうとしたメフィストを羽交い締めにする。


「匂いは消えそうな位微かだ、ニーナはヒューマノイドじゃない」


「ならば何故奴等の匂いが?」


「う〜ん?まぁ直接聞くのが早いね」


「今夜にでも聞いてみます、お騒がせして申し訳ありません」


         王都 大聖堂


 ケルベロスの嗅覚は当たっていた。


「なあニーナ?良いだろ?」


「いい加減にして下さい!仕事中なんです!」


 ニーナの執務室にベータが毎日のように入り浸っていた。


「仕事なんて後でいいから、なあ一度で良いんだ抱かせてくれよ」


「私には愛する夫も子供も居ます!2人を裏切る様な事はしません!」


「いやぁ勿体ないって!そんなエロい体持て余してるだろ?」


 色欲に支配され最早以前のベータは居なくなっていた。


 バシーン!! 強烈な平手打ちが響く。


「出て行って!もう2度と来ないで!」


「んふっふふふ…殴ったな?なら正当防衛しないとなあ!」


「きゃっ!?」


 ベータはニーナに飛び付き押し倒す。


「やめなさい!離して!」


「イヒヒヒ!慰謝料代わりだ!いただきま〜す」


 服を破り胸に齧り付く。


「イヤ!イヤァァァ!」


 ニーナは必死に抵抗をする。それを嘲笑うかのようにニヤけ面を見せていたが…


 ピッ! ベータに停止信号が送られた。


 バタッ…ベータはニーナの上に力無く倒れ込む。


「ニーナ大丈夫ですか?」


「フローラ様!!」


 ニーナを抱き起こすと、ベータの頭を蹴り上げた。


「私の信徒に手を出すなと何度言ったら…この!この!」


 ガスッ!ドカッ! 


(ナンバーズの成長が予測より早い、外の影響か…妾の手を煩わせおって)


「怖かった…」


 ニーナは震えている。


「安心してこの者は処罰します、もう大丈夫よ」


 それから女神はナンバーズを地下に呼び出す。


        大聖堂 地下


「ん?ベータ何で寝てるんだ?」


 ガンマが横たわるベータを蹴って起こそうとしていた。


「起きねえな?」


「お止めなさい!それよりこっちに来なさい抱っこしてあげる」


 エータは太ももをポンポンと叩く。


「誰が座るか!」


「あら?特等席ですのに」


 特等席の言葉に傲慢が反応する。


「仕方ねえなあ〜特等席ならオレの席だよな」


 ポフッ! 柔らかいエータの膝に座ると後からエータが抱きしめる。


「ふふっ可愛い」


「何だよ」


 ガンマは初めての経験に戸惑う。


(柔らけえ…女の体ってこんなに気持ちいいのか…)


 その心地良さに浸って居ると…


「お待たせしました、皆そのままで」


 女神が現れた。


「カイ以外は集まったぞ、で?フローラ様何の話し何だ?」


「取り敢えず…」


 パチンッ! 女神が指を鳴らすとナンバーズ達は停止した。


 ガンマが次に目を覚ました時、ナンバーズはみな力を封じられ鎖に繋がれていた。


「何だよこれ!?クソッ!」


「うおおおおおお!!」


 ニューは雄叫びを上げ鎖を千切ろうとするがびくともしない。


 何の説明もされず、ナンバーズはこの地下で過ごす事になる。その時が来るまで…


       騎士団 本部 会議室


「団長!報告っす!」


「話せ」


「はっ!現在国民の不満は限界を迎えそうっす!何時暴動が起きてもおかしくないっす」


 ヘクトールは悩んでいる。


「どうすべきなんだ?国民は敵じゃない、かと言って誰を捕まえる?」


 ラミーが進言する。


「あの…女王様を捕まえるのは駄目っすか?」


 会議室がざわつく。


「おい!それはクーデターだぞ!」


「この国の王は玉座に選ばれた者と決まっている」


「でも、このままだと多分玉座に座れなくなるっすよ?」


 その言葉に一同は黙る…確かにその確率は高い。


「はぁ…仕方が無いな、皆聞いてくれ!女王が玉座に座れなくなったら即座に動くぞ!」


「女王の意向が無くなれば貴族達も捕まえられますね」


「そうだ!準備は怠るなよ」


「「はっ!」」


 着々と水面下で準備が進んで行く。


 それから数日でライラとヘンリエッタがルークの元に向かいファリスも遅れて出発した。


        ヒルデの屋敷


 シルファがルーク使いで屋敷を訪れていた。


「ヒルデ様会いたかった」


「私もよシルファ」


 2人は軽くハグをする。


 シルファは軽く探りを入れる。


「ヒルデ様はルークのとこに行かないの?」


「子供達も居るし大変なのよ〜環境も変えたくないし私は行かないわ」


(子供達には色んな物を見せたいって言ってたのに…やっぱり女神に操られてる?)


 シルファは小箱を取り出す。


「これルークから」


「何かしら?」


 箱を開けると真っ白な指輪が光っていた。


「綺麗…真っ白なのに輝いてる?」


「嵌めてみて、写真撮るから」


 さり気なく指輪を付けさせる。指輪には外したくならない暗示が掛かっていた。


「撮れた?」


「うん」


 ヒルデは手をパンッと叩く。


「ならこれからお茶にしましょう!」


「私もお話したい」


 一部始終を覗いていた女神は指輪を見つめるが…


(覗くだけでは判別は無理じゃな、まあ見た所大した物では無い…しかし妾には何も無しか焦らしてくれる)


       スローン城 地下研究所


「これでよし…」


 全裸のカイが起き上がる。


「改造は成功ね、後はこの記憶と設計データを消すだけ」


 ピッピピッ! 実験室のデータベースから今回の改造のデータが消され、カイは再起動する。


「ん?再起動…私は何を?えっ!!何で裸なの!?」


 原因を探るが何もデータに無い。監視魔石のデータもごっそり消えていた。


(復元は無理ね…別々に暗号化された上にバラバラ)


 本来なら解明しなければならないが、意図的に隠している恐らく自分がやったと確信が持てた。


(知らなくて良いって事ね…良いわ信じてあげる)


        3日後 王都


 ついに女王が玉座に座れなくなった…勿論マモンの作った代わりの玉座だ、メフィストが決断したようだった。


 王都では女王退陣の動きが活発になり始める。


        騎士団 本部


「団長!号令を!」


「行くぞ!女王の確保を最優先にしろ!玉座の力で眠っている筈だ!」


「「はっ!」」


「親衛隊が邪魔をするなら斬り伏せろ!」


 全てが上手く行かず、王国のゴタゴタは続く…その中心は女神の存在だったが、まだ誰も手が出せずにいた。



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