偽物
ニューVSヤルダバオト
バンッバンッ!! 両手を目の前で鳴らしニューが歩き出す。
「お前‥ベータ傷付けた!許さない!」
ピッ! ヤルダバオトの脳内でコアの該当データが映し出される。
「ナンバーズのニュー‥何だ?姿がかなり変わったな、まあ化け物みたいな大女より、今のタッパのある美女の方が歓迎だぜ」
後ろで見ていたアルファが戸惑っている。
「あれがニューなの?全然違う‥一体皆に何が??」
「それは追々話す、それより立てるか?」
「無理‥腰が抜けて立てない‥」
ルークはアルファを抱き抱えた。
(以前とは別人だな‥自信も覇気も無い、目も戦士の目では無い‥相当酷い目にあったか)
「私はいいから加勢して!2人がかりなら勝てるかも」
「此処はニューに任せる、大丈夫だ」
「そんな!」
「ほら見てみろ」
ルーク達の目の前でヤルダバオトは一方的に殴られていた。
「ガハッ!!何だコイツびくともしねえ!」
「うおおおお!!!」
ドーン!! 爆発音の様な打撃音が鳴り響き、ヤルダバオトは無様に吹き飛ぶ。
「グッ‥クソッ‥俺が‥この俺がぁぁ!」
起き上がろうと上半身を起こすと‥目の前にニューが拳を振り上げ構えていた。
「まっ!待て!ブッ!!」
「ああああああ!!!」
雄叫びと共に顔面に拳を打ち込んだ後、右足で顔面を何度も何度も踏み抜く。
「な?言っただろ大丈夫だって」
現在純粋な殴り合いでニューに勝てる者は存在しない。
「相変わらず凄いな‥桁違いのパワーだ」
足を引き摺りながらベータがやって来た。
「責めるつもりは無いがベータでも勝ててただろ?何があった?」
「面目ない、突然姿が豹変して焦った‥俺のスピードに追い付かれそうになって攻撃に転じた隙を突かれた」
ベータは姿が変わる前の映像をルークに送る。
「へぇ‥これは悪魔の力の再現か?なる程あの性欲もそれなら納得だ、今は憤怒と強欲それに傲慢も目覚めかけてるな」
「早く倒さないと‥手に負えなくなる!」
アルファは不安に駆られていた。
「問題無い、あの未熟な魂では使い熟せないよ」
ドガーーン! 両手で地面を殴り脱出する。
「はぁはぁはぁ‥何だ!何なんだてめえ等は!何で俺は勝てねえんだよおおぉぉぉぉぉ!!!!」
「はああああああ!!」
ニューのフルパワーの一撃が土手っ腹に打ち込まれた。
「ガハッ!!!」
ヒューマノイドといえど致命傷。内部の機構がボロボロに崩れる。
「ニューそこ迄だ!そいつは連れ帰るぞ!」
「コイツ‥殺す!」
ニューの怒りが収まらない。直ぐ様ベータがニューを呼ぶ。
「ニュー!手を貸してくれ、自分じゃ立てないんだ!」
ニューの顔から怒りが消えていく。
「ベータ!待って!今行くから!」
ニューがヤルダバオトの側から離れた瞬間。転送陣が浮かび上がりヤルダバオトは強制転送された。
「なっ!?」
「逃げた??あのプライドの塊が?」
ベータはルークの方を向く。
「転送の邪魔はしたが、魔法攻撃とみなされて無効化された‥効果対象の取捨選択が可能らしい厄介だな」
「助かった‥私助かったの?」
「ん?ああ、もう大丈夫だ城に帰ろう」
「ああぁぁ!」
アルファはその場に泣き崩れた。性欲処理用として飼われていたあの場から解放され、嬉しさの余り子供の様に泣く。
「よしよし‥辛かったなもう大丈夫だぞ」
「ルークに頼みがある、アルファの素性を隠して欲しい」
「仲間知る、とても辛い、心痛い」
ベータとニューがアルファを気遣う。確かに知らなくて良い事もある、昔の部下達なら尚更だ。
「そうだな、怪しまれない様に暫くは俺の侍女として置くか‥」
「それが良い!ルークの女好きは今に始まった事じゃない、1人増えた所で怪しまれないな!」
「ハハッ‥はぁ‥」
(女好きはサタンの属性が性欲に変わっていたからなんて誰も信じないよな‥)
それを聞いたアルファは震えていた。
(魔王に逆らったら殺される‥嫌だ死にたくない)
ルーク達は長距離転送で王国に帰還する。
聖地 地下施設
ヤルダバオトが転送されメンテナンスルームに運び込まれた。
「チクショウ‥チクショウオオオオオ!!!」
悔しさの余り叫び散らす。
「力だ!もっと力が欲しい!!誰にも負けない力が欲しい!!」
頭を掻き毟る。
「この世の全ては俺の物だ!アルファもあの女共も皆食い尽くしてやる!」
プシュー 扉が開きデミウルゴスとアルコーンが現れる。
(強欲、憤怒、傲慢、性欲、暴食、嫉妬、に目覚めましたね‥後は)
「ヤルダバオト残念な知らせがある、損傷箇所が多すぎる暫くはそのままだ、大人しくしていろ」
「はあ???何だと‥どれ位だ!」
「早くても2週間だ」
ヤルダバオトの顔から覇気が消える。半月も拘束されたまま、女も抱けず何も出来ない。
「あぁ‥ダリィ‥何だ?急にどうでも良くなってきた‥俺は?」
(ふふふ‥怠惰の発動も確認、もう十分ですね)
「ヤルダバオトご苦労さまでした、お陰で最高傑作になりそうです」
その一言で怒りが天を突く。
「巫山戯るなあぁぁ!!何が最高傑作だ!あんな奴等に勝てない俺を馬鹿にしてるのか!!」
「良くここ迄コアを育ててくれましたね、では休みなさい」
「何だと!?今なん‥」
ブツッ! ヤルダバオトの思考が強制停止された。
「ではコアの摘出を開始してください」
カタカタカタ‥ 量産型が命令に従って作業を始める。
「デミウルゴス様、この体は如何されますか?」
「廃棄しなさい、もう必要ありません」
「ならば我が貰い受けても宜しいですか?」
「好きになさい」
コアが取り出されると新たなヒューマノイドに埋め込まれた。
「これが最新型の‥本当の最高傑作‥七罪搭載型コードネームディアボロス」
「コアに魂を入れなさい」
アルコーンは魂のデータを見る。
「この魂は何処から?七罪を使い熟す魂等、人間では到底無理だ」
「その素材は私が長年育てました‥元になったのは魔王の子ディアスです、此処で改造された時に魂を別人と入れ替え保管していたのです」
アルコーンはディアスのデータを見る。
「この出来損ないが?失礼ですが、コイツでは力を使えない可能性が‥」
「問題ありません、生きていた時は女神の因子の影響が強く魔王の力はコントロール出来ていませんでしたが、今は純粋な魔王の因子のみ」
ピピッ! コアに魂が封入された。
「起きなさいディアボロス」
ディアボロスはゆっくりと瞼を開く。
「‥」
ディアボロスは体を動かし隅々を確認する。
「デミウルゴス様、我が母よ何也とご命令を」
「先ずはその力を見せなさい全力で」
「はっ‥」
ディアボロスは全力で魔力を高める。それを見たアルコーンは驚愕していた。
「何だこの数値は!?計測機が振り切った!?」
「素晴らしい!素晴らしい力です」
「ふううう‥それでは手土産に魔王の首を取って参ります」
部屋を出て行こうとすると。
「お待ちなさい!貴方には聖地の守護を任せます」
「何故ですか?障害は直ぐに排除すべきでは?」
アルコーンがディアボロスに理由を説明する。
「アチラに着いた女神は此処の天獄の門を狙っている、放って置いても向こうからやって来る‥それに先ずは人間共の排除とヒューマノイドの量産だ」
「わかりましたか?此処は我らの最後の砦なのです‥此処が落ちたら全てが無に帰します」
「了解しました、新たなご命令があるまで此処を守護します」
ディアボロスは部屋を後にする。
「力は本物ですが些か幼い‥我が教育するか」
「今後の方針と共に貴方に一任します、ヤルダバオトとは違い大切に育てるように」
「お任せ下さい」
聖地 大聖堂
ディアボロスは外に出て風に当たっていた。
(何だ?懐かしい‥知らない筈の世界が酷く懐かしい)
記憶は無くしたが魂が世界を感じ取る。片目から涙が流れ落ちた。
「涙‥?どうして‥」
その理由が理解できる日は来ないと実感しながらも、空を眺め続けていた。
スローン城 城内
ルークはベータ達と別れ自室にアルファをこっそりと招き入れた。
「見つかる前に侍女用の服に着替えてくれ、ほらコレだ」
部屋にある侍女服を渡す。
「はい‥直ぐに着替えます」
「何でコレがあるのかは聞かないでくれ」
「???」
アルファはキョトンとしている。
「ごめんなさい‥胸がキツイです」
「そんなにか‥カイも結構大きいけど‥」
「カイ?」
「ああああ!何でもない!気にするな」
ルークは慌てふためく。
「じゃあ確認だ!アルファは俺が連れて来た名前はシルファだ、ヒルデに事情を説明して匿ってもらう良いな?」
「ヒルデ?」
「俺の妻だ、彼女は頭が回る上手くやってくれる筈だ」
ルークがアルファを連れ出そうとすると‥
「どうした?行くぞ?」
(早く恩を売らないと!邪魔になったら殺される)
アルファは突然服を脱ぎ裸を晒す。
「おい‥何をしてる?」
「ご奉仕させていただきます‥この身体と男性を悦ばせる事には自信があります」
ルークはその様子を見て今迄何をされて来たのかを感じ取る。アルファは味わう様にルークに唇を重ねる。
「んっ‥チュッチュ」
(今突き離すと拒絶の恐怖でパニックに陥る‥ゆっくり落ち着かせるか)
「アルファ、ベッドに行こう」
「はい‥」
2人はベッドに座る。アルファは慣れた様子でベッドに横になり男を誘う淫らな格好で待つ。
「来て‥」
「ハハッ!何時もはそうしてるんだな‥う〜ん?俺の趣味じゃないな」
アルファはハッとする。
「ごめんなさい!何がお望みですか?何でもやります」
「なら先ずは服を着てくれ、いきなり裸は興醒めする‥下着も着けて無かったよな?」
「下着は着ける必要が無いとアルコーンに‥」
ルークはヤレヤレと肩を竦める。
「そいつは何もわかってないな!可愛い系、セクシー系、ノーマル系、色々あるから楽しいんだぞ?」
「は‥はあ‥?」
「それにそのメイクだ、若いんだからもう少し明るめの色をだな‥」
ルークは説教を始めた。
「あっあの‥抱かないんですか?」
「ん?抱いても良いが、やっぱり本来のアルファらしくないとな、演技されても俺は萎えるだけだぞ?」
「だっ大丈夫、自分で気持ちよくなれます!」
アルファは必死に食い下がる。
「それが駄目なんだ、お互いをちゃんと思えないと無意味な行為だ、これからゆっくり教えるよ‥だから今日はここ迄だ」
「今日は?‥私殺されない?」
ルークはアルファを抱きしめ落ち着かせる。
「大丈夫、俺が守るからもう安心してくれ」
アルファはまた大泣きした。暫くすると落ち着きを取り戻しルークと共にヒルデの屋敷に向かった。
ヒルデの屋敷
「あなた?これはどう言う事ですか?また新しい娘に手を出して!」
「待ってくれ!これには深い訳があってだな!」
ルークは必死にヒルデを落ち着かせる。それを見たアルファはびっくりしていた。
「あの‥魔王が怖くないの?」
「この子は甘えん坊の寂しがり屋よ?貴方も直ぐにわかると思うわ‥まあそこが可愛いんだけどね」
ヒルデはルークの方に向き直る。
「で?説明をお願いするわね、この娘は何処で拾ってきたの?」
ルークは隠さず事細かに話した。ヒルデの顔は段々と深刻になり遂にはアルファを抱きしめる。
「よく耐えたわね‥自分の家だと思って此処にずっと居ても良いのよ、歓迎するわ」
「あっありがとう」
「アル‥シルファに確認したい、今後戦う気はあるか?」
その言葉にアルファは硬直した‥ブルブルと小さく震えだす。
「あなた!!この娘の心は折れてるのよ?今は療養の時間が必要、絶対に戦わせません!」
「そうだな、今の反応でわかったよ」
震えるアルファに謝る。
「怖い事聞いてごめんな、お詫びがしたい何かやって欲しい事はあるか?」
「お願い‥デミウルゴスを殺して!プサイの仇を取って!」
「わかった、アイツは俺が殺る‥約束するよ」
ヒルデがアルファに寄り添う。
「シルファは子供は好き?私には双子の子供がいるのよ」
「えっと‥その‥」
2人は話しながら子供達の下に向かった。ルークはそれを見送りながら今後の対応を考える。
(明日にでもマモンに詳しく調べてもらうか‥相手の情報も聞き出したい、それに見た目や声も少し変えないと仲間にバレるな)
その日はヒルデに任せて休む事にした。
翌朝
「2人共おはよう、シルファよく眠れたか?」
ルークはアルファの様子を聞く。
「はい、悪夢を見なかったのも久々でした」
アルファは量産型のコアに変えられて以来夢を見るようになっていた。
「そうか、食事が済んだら研究所で色々調べるが大丈夫か?」
アルファは頷く。
(私はもう以前の様には振る舞えない‥それなら彼に協力して復讐を代わりにしてもらう、その為なら何でもするわ‥プサイ仇は必ず打つから)
アルファは覚悟を決めた、治るかわからない折れた心より目の前の剣を選ぶ。
地下研究所
ルークと変装したアルファがマモンの研究室に入る。
「ルーク様おはようございます」
「おはようカイ、マモンは?」
「もうすぐ此方に到着します、アルファ‥久し振りですね」
アルファは俯向く‥やはり今の姿を見られるのは抵抗があった。
「今はシルファだ‥カイ、口を滑らすなよ?」
「そうでしたね、ルーク様の専属侍女‥少し妬ましいです」
カイは敵意を剥き出しにする。珍しい行動だったが、リーダーとして作られたアルファと司令塔として作られたカイ。以前からのライバル心がお互いを警戒する。
「羨ましいからってそんなに当たらないで‥迷惑よ」
「!?思ったより元気ね?ルークの側で気が大きくなったのかしら?」
2人は睨み合う。
「待て待て待て!どうしたんだ2人共!?」
アルファはルークの腕を取る。
「ルークは私を守るって言ってくれた!私もルークに全てを捧げるわ!」
「まるで泥棒猫ね‥情けない!」
ルークは慌てふためく。
(何だ?この2人こんなに仲が悪いのか!?)
カイはアルファの力は認めていた。しかし今目の前に居るのは雌に堕ちた情けない女‥それが許せなかった。
プシュー 扉が開きマモンが入って来た。
「ん?何じゃ?修羅場か?」
「マモン助けてくれ!」
一部始終を聞いたマモンが語り始める。
「アルファよお主、完璧なる復讐を使ったな?」
「私の能力を知ってるの?」
「うむ、カイから各自の能力は聞いていた‥データも見たがアノ能力はトラウマになる」
アルファは頷き話し始めた。
「死ぬのが怖いの‥アレを使ってから戦いになると足が震えて仕方がなかった」
「そうじゃろう、アレは死ぬ事が前提‥リバイブで蘇生するが1度死ねば女神のコアの魂は霧散する」
カイが疑問を呈す。
「そのまま生き返るのでは無い?」
「霧散した魂を掻き集め再構築するんじゃが、その時点で最早別の魂となる‥電脳の記憶を読み取り人格が構築されるが、それはアルファの記憶を持った別人じゃのう」
「私は別人??」
マモンは頷く。
「おかしいと思わなかったのか?本来のお主はミカエルを倒す程の力の持ち主、それがあのヤルダバオトとやらに負ける筈がない」
「それなら私は誰なの!?この記憶も!この苦しみも!今迄の事は‥」
アルファは現実を受け入れられず取り乱す。
「アルファの記憶を持つナニカじゃのう‥本来のアルファはミカエル戦で死んでおる」
「ズルい‥私に苦しみだけ押し付けて死んだなんて!!ああ‥ああああああ!!」
ルークは直ぐにアルファを抱きしめる。
「落ち着くんだ!俺の顔を見ろ!ほら」
「はぁはぁはぁ‥ルーク!ルーク!」
自己否定から不安定になったアルファを繋ぎ止める。
(このままだと自己が崩壊する‥仕方ない俺に依存させるしか)
「アルファ‥イヤ、シルファ!お前は俺が貰う、側に居て欲しい」
アルファはルークの胸に顔を埋める。
「離さないで‥」
「ああ!もう大丈夫だ」
マモンは内心安堵していた。遅かれ早かれ事実を知る事になる、その場合強制停止も視野に入れていた。
(ルークには悪いが上手く行ったのう‥コレでデータ解析も順調に行くじゃろう)
カイも別人とわかると敵意を無くしていた。
「ごめんなさい‥その‥」
「もう大丈夫、私にはルークが居るから」
落ち着きを取り戻すと、アルファあらためシルファのボディとコアの交換が提案された。
「そのボディとコアは此方で解析します‥代わりのボディを用意していますから、好きなのを選んで下さい」
「ルークはどんなのが好み?貴方の好きな姿で居たいな」
「そうだな一緒に選ぶか」
シルファは以前とは面影すら無い新たなボディを選んだ。少しでもアルファの頃を思い出さない様に‥
数時間後
シルファは新たなコアとボディに魂と記憶を移し目を覚ます。
「なんか変な感じ‥」
シルファは銀髪にスレンダーな体型、以前の筋肉質でセクシーな体からは想像つかない変わりようだ。
「直ぐに慣れるさ」
「うん!ルークが選んでくれた体‥嬉しい」
シルファにはアルファの面影は無くなっている。
「シルファ大事な話しがあります、ルーク様には大勢の妻が居ます決して和を乱さないように‥立場をわきまえてね」
カイが釘を刺す。
「‥知らない、ルークは私を選んだのよ」
「シルファ、ヒルデの事嫌いか?」
「あっ‥ヒルデ様は好き‥」
「なら家族は大切にしような?」
「うん」
ルークはホッと胸を撫で下ろす。
(最初にヒルデに預けて正解だったな)
3人を余所にマモンはアルファの電脳内のデータの解析に夢中だ。
(ヤルダバオト、デミウルゴス、アルコーン、それに新型ヒューマノイドや量産型、ホッホッホ!大漁じゃわい!)
新たな資料に目を輝かせながら聖地の解析が進んで行く




