闇の足音と可憐な獣人
翌朝ルークは目覚めると目を擦りながら時間を確認する。
「6時過ぎか‥少し寝すぎたな」
ゆっくり起きると準備を始める、外から声が聞こえて来た、窓から覗くと自警団達が忙しそうに村を見回っていた。
「村に何かあったのか?」
ルークは宿から出て昨日聞いていた自警団の詰所に向かう、小さな村と聞いていたが人も多く活気がある人や亜人も共に暮らしているようだ。
「平和でいい村だな」
詰所に着き中に入るとジノンが部下たちに指示を出していた。
「おはようジノン団長」
「ルークかゆっくり休めたか?」
「ああ、おかげさまで‥忙しそうだが何かあったのか?」
「昨日あれからルイ商会と自警団で話し合ったんだが、数日前に怪しい奴が村に来ていたと証言が出てきてな」
(怪しいとは格好の事だろうか?)
「怪しいってどんな格好を?」
「普通のローブにフードを深く被っていたそうだが、おかしな事に誰も顔が思い出せないときた‥まだ村に居ないとも限らないからな探させている所だ」
(顔が思い出せない‥認識阻害の魔法!)
ギルドで会ったあの占い師かそれともその仲間か‥
「そいつは何をしにこの村に?」
「報告によると「新たな魔王が生まれる」とか、「亜人達は戦いに備えよ」って内容らしいが馬鹿馬鹿しくて誰も相手にしなかったようだ」
「もう一つ、そのフードの人物に何かされた人は?」
「被害の報告は無いな、何か気になる事でも?」
「以前同じような顔が思い出せない奴に呪を掛けられた事があってね」
「それなら大丈夫だ、この村には教会が無いがその代わりに村全体に呪自体の発動を妨害する魔石が配置されている」
「それなら安心したよ」
取り敢えず呪の危険は無さそうだ。
魔王が倒されて700年西に追いやられた魔族達に目立った動きは無い、認識阻害まで使って話を広めてる以上何かの意図があるはずだが。
「ルイ商会を通じて王国に伝えた方が良いかもな」
「ここに王国兵が来るのを嫌がる者もいるだろうが‥仕方が無い何かあってからでは遅い」
ジノンは部下にルイ商会への依頼を頼む事を伝える。
「すまないルーク、森の捜索だが村の安全が確認されてからで良いか?」
「ああ、宿で待ってるから準備が出来たら声を掛けてくれ」
詰所を出て宿に戻ると食堂に向かう、待つ間に朝食を済ませよう。
食事が終わりしばらくすると、自警団と思われる獣人の女性が入ってきた、金髪のショートヘアで立って居るだけで様になる‥その姿から目が逸らせない。
「ルークさんはいらっしゃいますか?」
手を挙げ席を立ち女性の方に向かう。
「ルークさんですね準備が整いました!」
「ありがとう、何処に向かえばいい?」
「村の門に皆集まってます、団長から組分けの指示があるみたいです!」
宿を出ると村の入口に向かいながら話を聞く。
「君も自警団なのか?」
「はい!最近入ったばかりなんです!」
(まさかこの新米を捜索隊には入れないよな‥)
「まだ自己紹介してなかったな、俺はルーク魔法使いだ」
「私はライラ!ハンター見習いです!」
「見習い?修練が終わって無いのか?」
「いえ‥修練は終わってるんですが、ギルドに登録して無くて‥」
「なるほど、この村にはギルドの出張所は無かったな」
「はい、近くのギルドはカイラの町か山の国境を超えた鉱山都市にしか無くて、定期便も無いから登録するのが難しくて‥」
(田舎の辛い所だなカイラに行ったとしてもランド一家みたいに足止めされていつ帰れるか、ドワーフ領の鉱山都市の方がまだ確実だが新米1人で山越えか‥)
「捜索が終わったらドワーフの国に向かう予定なんだが、良かったら一緒に行かないか?」
物はついでだライラを誘ってみる。
「えっ‥本当ですか!行きたいです、いえ連れて行って下さい!」
ライラは満面の笑顔で答えると嬉しそうに飛び跳ねている。
「取り敢えずジノン団長の許可を得てからだぞ」
「それなら大丈夫です!ジノンは私のお父さんですから!」
ん?ジノンは竜人だったよな?疑問に思っていると村の門に到着する。
「すまない待たせた」
「よし!全員集まったな!これから森の捜索を行う、3人1組で部隊を分けるライラ余ったお前はルークとだ」
「はい!」
(何があるか分からない捜索に新米しかも俺に付けるのか)
断ろうかと思ったがライラの嬉しそうな顔を見ると言い出せない‥
「お父さん報告があります!」
ライラは嬉しそうに手を挙げる。
「団長と呼べと言ってるだろ!何かあったのか?」
「ルークさんから一緒に鉱山都市に行かないかと誘われたので、許可をお願いします!」
(その言い方はマズイ‥まるで俺が旅に連れ出すようだ)
「ほう‥ルークうちの娘をナンパしていたのか‥」
ジノンが振り向きながら物凄い形相で迫ってきた。
「ち‥違うんだ!待ってくれ!ライラその言い方は誤解が生まれる!」
「???」
ライラはきょとんとしている、ジノンを落ち着かせなくては‥事の経緯を説明すると。
「何だそう言う事か!ぶはははは!」
「見ての通りライラと俺は血が繋がってない、亡くなった親友の遺児でな、大事な一人娘だ!」
(なるほど、そういうことか)
誤解と疑問が解け一安心すると共に一気に疲れた‥
「よし!出発するぞ各自警戒は怠るなよ!」
森の手前までは馬車で移動する数分後ルークは御者に伝える。
「この辺りだ、ここの森からウェアウルフ達が出てきた」
馬車を降り自警団達は武器を抜くとジノンが指示を出す。
「予定通り3人1組で捜索を開始する、何かあったら直ぐに声を上げて知らせるんだ!いいな!」
森には道は無く切り開きながら入るしか無さそうだ。
「[クリムゾンエッジ]」
真紅の片手剣を出して邪魔な枝や鬱蒼と茂る草木を薙ぎ払う。
「魔法剣なんて初めて見ました!」
ライラは珍しそうに見つめている。
「魔法剣とは少し違うんだ、これは魔力の物質化だな」
「確かに紅いのに炎がバーっと出たりしないんですね」
「魔法剣はあるにはあるんだが、使い勝手が悪すぎてな‥」
「強そうなイメージなのに?」
魔法剣を使う魔法使いは今やほぼ居ない、ライラに詳しく説明する。
「炎や風を剣にしたとして実体が無く見た目が剣なだけなんだ、見栄えは良いが攻撃するには剣の間合いで戦う必要があるのに防御機能は一切無い」
「あっそれは‥」
ライラも気付いたようだ魔法剣の使い難さを。
「魔法も便利なだけじゃ無いんですね」
「まあ今は魔石の方が便利だな、簡単に武器や防具の強化が出来る」
ライラは納得したようだ自分の弓に付いている魔石を見ていた、すると遠くから声が聞こえてきた。
「お〜い!何かあるぞ!」
ライラは木に飛び付き枝に登り周囲の確認をする。
「ルークさん向こうです!」
森の右奥を指差している。
「この先だな![身体強化]」
多少の傷は覚悟して強化魔法をかけ一気に抜ける事にした、この先に何が待っているのか‥1つでも謎が解けると良いのだが。




