表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/122

各々の試練


       1ヶ月後 聖地 地下施設


 ドシャ!! ヤルダバオトが背中から地面に落ちた。


「くっそ!何でだ!スペックでは圧倒してる筈だ!」


「まだまだ経験不足ですね、今日はここ迄にしましょう」


「まだだ!まだやれる!」


「少しは学習しなさい、今の貴方では何度やっても同じ事」


「俺は本当にお前の最高傑作なのか?今のお前に手も足も出ないのに?」


 自分の不甲斐なさに不安が募る。らしくない弱さが顔を出す。


「変な癖がつかない様に、貴方には最低限の戦闘データしか入れていません‥私は今迄蓄積されたデータを元に戦っています」


「さっさと成長しろって事か‥あ〜面倒くせぇな」


 その場に大の字で倒れ込む。


「貴方少し丸くなりましたか?」


「は?気の所為だろ」


「そうですか?最近は女漁りも止めて真面目にトレーニングをしていますね」


「アルファとフィオナより美味い女なんて早々居ないって分かったからな‥特に此処はハズレが多い」


 聖地には敬虔な教徒が多く、女性も男を喜ばせる程の経験は無い人が殆どだ。


「調教が愉しいと言っていたのに?」


「アレは撤回だ、初めての奴は泣き叫んで喰う気も失せる」


 ゆっくりと体を起こし埃を払うと確認を取る。


「俺の女達はもう戻ってるか?」


「はい、2人は外に出しても良いのですか?逃げる可能性は?」


「好きにさせろ、逃げたらその時だ」


(やはり戦闘面に特化させた為に征服欲は薄いですね‥内政を任せられる、対となる別ベクトルの最高傑作を作りましょう)


       ヤルダバオトの部屋


 部屋に入るとアルファとフィオナが街で買ってきた物を見せ合っている。


「どうだ?外は楽しかったか?」


「ええ、コレ見てよ!どう似合う?」


 アルファが綺麗なイヤリングを見せる。


「良いな‥俺好みだ」


「ねぇ〜こっちも見てよ〜」


 フィオナがネックレスを着ける。


「まあ待て、先にシャワーだ埃を落とす‥アルファ先に入ってろ!」


「待ってるわね」


 アルファは蠱惑的な仕草で服を脱ぎシャワー室に先に入る


「ねぇ〜私は?」


「お前とは昨日散々やったろ?順番だ順番」


「ぶ〜!」


 フィオナは口を尖らせ不貞腐れる。ヤルダバオトはそれを横目にシャワー室に入って行く。


「グハハハ!待たせたな可愛子ちゃん!」


 シャワー室に入るのを見送ると、フィオナは天井を見る。


(そろそろ此処も飽きてきた‥次の外出で逃げようかな)


 その考え通り、数日後フィオナは姿を消した。



      スローン王都 騎士団訓練施設


 ルークは暇な時間を潰す為に、今日行われる騎士団員補充の試験を見に来ていた。


「お義父さん!どうぞ此方に!」


「すまないな邪魔をして」


「とんでもない、もしお義父さんの眼鏡に適う者が居たら遠慮なく言って下さい」


 ルークは会場を見渡す。かなりの人数が集まっている。


「それにしてもすごい数だな‥」


「今回は試験のハードルを下げたので応募人数は過去最多です」


 試験官が全体に開始の合図を告げる。


「これより入団試験を開始する!各々番号が呼ばれたら速やかに各試験官の前に!入団定員は無い!落ち着いて日頃の成果を発揮して欲しい!」


「「はい!!」」


 敬礼が終わると次々と番号が呼ばれて行く。ルークの居る場所は1番会場だ。


 試験官が2人を呼び出す。


「私語は慎め!それでは始める!15番と57番前に!」


「はい!」


 2人が前に出て並ぶ。ヘクトールは返事をしなかった15番のチェックシートにバツを付けた。


(へぇ〜素行も審査対象なのか‥まあ軍隊だから当然か)


 ルークはヘクトールの隣で審査を見ている。


「両者線の前に立て!木剣を使った実践形式の戦闘試験を行う!」


「はい!」

「木剣ねぇ‥何で真剣じゃないの?」


 ヘクトールは15番に更にバツを付ける。試験官は無視して話を進める。


「試験内容は相手を殺す気で倒せ!以上だ!」


「はい!」


「仕方ない‥少し本気出すか」


 2人は木剣を構える。


「始め!!!」


 57番が15番の首を目掛け剣を振る。 カーン!軽く弾かれると腕と太ももに木剣が打ち込まれる。


「くっ!!?」


「ハハッ!甘い甘い!ホラ行くぞ」


 15番は力の差を見せつける様に甚振る。


「やあぁぁ!!」


 15番の心臓を狙い突きを放つ!


「見え見え何だよ!」


 カーン! 突きを弾くと、57番の両手を叩き木剣が地面に落ちる。


「そこ迄!!」


 会場がざわつく。流石の力量差に57番に憐れみの視線が向けられていた。


「あんなので良く試験を受けに来たな」

「人生一発逆転でも狙ってたんだろ」

「可哀想‥相手が悪かったわね」


 2人は試験官の前に整列する。


 ヘクトールが2人のチェックシートを団員に渡すと、それを試験官に持って行く。


「57番悪いな、まあお前にもいつかチャンスはあるさ」


「‥」


「何だよ無視かよ」


 チェックシートを見終えた試験官が結果を伝える。


「15番!お‥」

「わかってますよ合格でしょ?次の会場は何処ですか?」


 試験官の言葉を遮るように勝ち誇ると、それを見ていたヘクトールが立ち上がる。


「あれ?団長さんの目にも止まっちゃったか〜参ったな〜」


「残念だがお前は不合格だ」


「え??」


 状況が飲み込めない15番。すると試験官が57番に告げる。


「57番!お前は合格だ!7番会場に向かえ!」


「はっ!」


 57番は敬礼すると早足で会場に向かった。ルークはその姿を見て感心していた。


(言われた事を熟し私語は慎む‥技量はまだまだだが、実直で軍隊向きだな)


「おかしいな‥聞き間違いかな?何でアイツが合格何だよ!」


 詰め寄ろうとする15番の前に試験官が立ち塞がる。


「貴様は命令違反を何度も繰り返した!その結果だ!受け入れろ」


「勝ったのは俺だ!」


「命令は殺す気で戦えと言った!だがお前は相手を甚振ることに重点を置いて1度も急所を狙っていない!」


「そっそれは‥」


「返事はしない、私語を止めない、更には命令違反、お前に騎士団に入る資格はない!軍隊を舐めるな!」


 試験官の言葉に会場が静まり返る。今迄話をしていた者達全てが黙り、その目が真剣になる。


(おお〜空気が一変したな)


 ルークは会場がヒリついたのを感じ取る。


「だったら俺が団長を倒したら合格にしろよ!」


 突拍子も無い要求にルークの頭に?が湧く。


(コイツ現実が受け入れられなくて暴走してるな)


「巫山戯るな!さっさと出て行け!」


 試験官が一喝するが‥


「何だよ怖いのか?俺に負けるから逃げる気だろ!おい!勝負しろよ!」


 イキり出した結果引っ込みがつかなくなっていた。


「仕方が無い‥僕が相手するよ」


「団長!?団長のお手を煩わせる訳には」


「すぐに終わるから、さっさと始めよう」


 ヘクトールは木剣を拾う。


「ほら15番、構えな‥始めるよ?」


「余裕ぶりやがって‥後悔させてやる!」


 試験官が叫ぶ。


「始め!!」


 勝負は一瞬‥瞬きをした刹那。15番はその場に崩れ落ちた。


「がっ‥」


「瞬きは相手に合わせてやるものだよ?」


 ヘクトールの強さを見た会場に居る者達全員が息を呑む。


「みっ見えたか今の?」

「早い‥動きもだけど剣速も」

「アレが歴代最強と言われてる団長」

「カッコいい‥」


 パンパン!! ヘクトールは手を叩くと指を回す。続けろの合図だ。


「次!8番と21番前に!」


「「はい!」」


 ヘクトールがルークの隣に戻って来た。


「お義父さんお見苦しい所をお見せしました」


「大変だな、ああいう事はよくあるのか?」


「ええ、強さを勘違いした者は良く来ますね‥」


 試験は順調に進んで行き、最後の2人が前に立つと‥その片方の女性がルークを見つめていた。


(ん??俺を見てるな?)


 女性は何か言いたそうにしているが、私語禁止で話せない。


「19番と62番!お前達は魔力が使えるな、攻撃魔術は禁止する相手を動けなくしろ!」


「はい!」

「わかりました!」


「始め!!」


 19番が詠唱に入る。


「大地よ我の声に答えその‥」


 すかさず62番は魔法を唱えた。


「黒縄よ縛れ!シャドウバインド!!」


 19番の足元の影から無数の黒縄が飛び出し体を縛り付けた。


(おお!魔法使いか!珍しいな)


 無駄な詠唱が必要な魔術と違い、魔法は発動が早いその分コントロールやイメージが重要だが‥62番は本物だ。


「そこ迄!!」


 試験官から結果が告げられる。


「62番合格!次へ!」


「19番は失格!」


 ルークは立ち上がると待ったをかける。


「待ってくれ!19番も合格だ、潜在魔力は目を見張る物がある」


「はっ!では19番も合格だ!」


「ありがとうございます!!」


 19番は深々と頭を下げると次の会場に向かった。


「62番!さっさと移動しろ!」


「あっあの‥もしかしてルークさんですか??」

 

「ああ、そうだが?何処かで合った事があるか?」


 女性の顔が明るくなり、駆け寄ってきた。


「アンナです!覚えてますか!?昔魔法書を貰った‥馬車の護衛をした時の」


「ああああ!あの時の女の子か!大きくなったな!」


 ルイ商会の馬車を護衛した時居合わせた獣人の家族、その娘アンナが成長して試験を受けに来ていた。


「ルークさんのお陰で魔法学校も卒業出来ました!」


「王立魔法学校卒業なら騎士団には直ぐに入れるだろうに、どうして此処に?」


「私も冒険者をやって見たくて、世界を回ってました!」


「そうか‥いや〜本当に懐かしいな」


 ゴホンッ! ヘクトールが咳払いをした。


「王立魔法学校卒業なら試験は合格だ、何故隠していた?」


「すみません!自分の力を試してみたくて‥」


「本来受けなくて良い君が受けると、その分1席が奪われる‥本来合格していた者の人生が狂うんだぞ?」


 事の重大さにアンナが気が付く。


「ごめんなさい‥そんなつもりは‥」


「これからは良く考えて行動するように、良いね?」


「はい!」


 ヘクトールは立ち上がるとルークにお願いする。


「お義父さん、アンナの事をお任せします!僕は次の会場があるので此処で失礼します!」


「ああ、後は任せてくれ」


 敬礼すると団員を連れ次の会場に向かって行った。


「さて‥何から話すべきか‥」


「ルークさんが団長のお義父さん何ですか?」


「まあ説明するより見た方が早いか」


 ルークはアンナを城に招待する事にした。



       スローン城 応接間


 ルークはアンナに全てを話した。


「ルークさんが魔王様!?名前が同じだと思ってたけどまさか‥本当に?」


「色々あってな〜波乱の人生だったよ」


「どうしよう‥私失礼な事を」


「気にしなくて良い、堅苦しいのは嫌いだ」


 2人は今迄の事を色々話す。暫くすると応接間にヘンリエッタが顔を出す。


「ルークちゃん此処にいたのね、あら?その子は?」


「はじめまして!アンナと申します」


「これはご丁寧に、私はヘンリエッタよ宜しくね」


 ヘンリエッタがルークの方を向く。


「ルークちゃん‥また若い子に手を出して!溜まってるなら言いなさい!何でもしてあげるから」


「おい!アンナの前で何を言い出すんだ!」


 アンナの顔が真っ赤になる。


「そうだ、魔王様ならお嫁さんが沢山いる‥」


「今のは気にしないでくれ!」


「ルークちゃんその子何も知らないの?」


 ルークはヘンリエッタに経緯を説明した。


「へぇ〜昔の知り合いで騎士団に‥ルークちゃんこの子借りてくわね、お話しましょう!」


「えっ!ちょっ‥ルークさん!」


(止めても無駄だし、しょうがないか‥)


 新しい玩具を見つけたヘンリエッタはアンナを連れて行きママ会を開いた。


       それから 3ヶ月 聖地


 地下施設でデミウルゴスとヤルダバオトの前に1人のヒューマノイドが目覚める。その姿は優男、所謂イケメンだ。


「‥」


「目覚めましたね、言葉を話せますか?」


「‥」


「おい!故障してねえか?何も喋らねえぞ‥叩いてみるか?」


「野蛮な‥貴様がヤルダバオトだな」


「あぁ!?いい度胸してるじゃねえか」


「お止めなさい、アルコーン挨拶を」


 アルコーンと呼ばれたヒューマノイドはデミウルゴスの前に跪く。


「アルコーン只今目覚めました、デミウルゴス様これからの内政は我にお任せあれ」


「執政官である貴方の力存分に発揮しなさい」


「はっ!」


 ヤルダバオトが早速喧嘩を売る。


「なぁお前も強いんだろ?俺と勝負しろよ」


「はぁ‥血の気が多いな」


「2人の戦いは禁止します」


 デミウルゴスが命令で縛る。


「クソッ‥」


「畏まりました」


 すると3人の下にアルファが顔を出す。


「それが新しいヒューマノイド?」


「アルファ、どうした?」


「ん?気になって来ちゃった」


「オオオオオ!!」


 アルコーンは声を上げアルファに迫る。


「我はアルコーン!そなたの名は?」


「アルファよ宜しく」


「おい!俺の女に近寄るな」


「何だと‥貴様には勿体無い!我にこそ相応しい!」


 2人は睨み合う。それを見ていたデミウルゴスがほくそ笑む。


(コレは使えますね‥ヤルダバオトの落ち着いた感情を揺さぶれば‥)


 エゴを強化した筈が日に日に大人しくなるヤルダバオトに不満を感じていた。感情に火を付ける引き金を見つけた。


 ピピッ! 信号と共にヤルダバオトが停止する。


「緊急停止信号??どうして!?」


「アルコーン、アルファを貴方に差し上げます‥後はわかりますね?」


 デミウルゴスの意図に気付く。


「ひひひひひ!我にお任せを‥奴を狂わせて見せましょう」


「何‥何のつもりよ!」


「安心しろ、お前は我にこそ相応しい!奴の事等忘れさせてやる」


「嫌!近寄らないで!」


 それからアルコーンはアルファを妻として執拗に躾けた。蠱惑的な姿はアルコーンの躾により淑女に、より大人の色気を出す様に変えられていく。


       2ヶ月後 聖地 地下施設


「アルファ見違えたぞ‥美しい‥さあ挨拶を」


 アルコーンの前に立つアルファは別人の様に変化していた。露出の多い服は全て捨て、大人しい服装に。化粧も最低限のナチュラルメイクに。


(また塗り変えられた‥本当の私は何処‥)


「あなたの教えで私も生まれ変わりました、これからもご指導下さい」


 アルファは裾を持ち挨拶をする。


「うむ‥我も鼻が高いぞ、もう奴の事は忘れたな?」


「はい、あんな野蛮な人はもう懲り懲りです‥それにアルコーン様の方がお上手ですから」


 アルファは顔を赤らめる。


(私はこんな事を何時まで‥)


「ひひひひひ!憂いやつだ‥我以外にその顔を見せるな、良いな?」


「はい、私はアルコーン様の女‥末永く可愛がって下さい」


「ひひひひひ!!コレは堪らん!コレは良い最高だ!」


 アルコーンの征服欲が満たされる。ライバルの女を寝取り屈伏させた、その刺激に歓喜の声を上げる。


 デミウルゴスがそれを見てヤルダバオトを起こすタイミングを見計らう。


(ヤルダバオトの怒り狂う姿が目に見えます‥丸くなった性格を元の激しいものに戻せる、次は成功させます)


         聖地 周辺の森


「此処も久々だな‥」


 ベータが森の中から聖地を伺う。


「‥ん?ヒューマノイドが多いな‥コレは紛れ込めそうだ」


 ベータは単独での聖地の偵察を買って出ていた。天獄への門はこの地にある、奪還は必須そして敵の戦力を見定める為に。


「さて‥鬼が出るか蛇が出るか‥」


 ベータは聖地に潜り込む。マザーの反乱や現状の地下施設を調べる為に‥


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ