新生そして
翌日 昼 王都大聖堂
「失礼致します、ルーク様をお連れしました」
ルークはシスターに連れられ大聖堂の女神の部屋に通された。
「いらっしゃい!」
「ルーク?どうしたの?」
部屋にはフローラとライラそれにメフィストの妻ニーナが居た。
ライラはナンバーズの代わりにフローラの護衛兼話し相手として女神と共に居る。
「これからナンバーズを起こす、フローラが居ないとアイツらも不安だろ?」
「えぇ~折角お茶会してたのに、あんなの放っといてルークも一緒にどう?」
「これも仕事だ」
「ぶ〜」
フローラは不服そうに頬を膨らます。
「それはそうとニーナ久しぶりだな、どうして此処に?」
ニーナは丁寧にお辞儀をする。
「ご無沙汰しておりますルーク様」
「ニーナを大司教に選んだのよ、司教も皆女性!男は邪魔だから排除しちゃった!」
フローラはニコニコ笑いながらとんでもない事を口にする。
「大丈夫なのか?ジジイ共が許さないだろうに」
「平気平気!」
後にフローラの判断が災いし教会高位の男達はみなデミウルゴス側に寝返って行く。
「しかしニーナを選んだのは流石だな、彼女は多くの孤児院を運営しながら日々の奉仕活動まで熟していた才女だ」
「へえ〜そうなんだ」
「‥まさか知らないで選んだのか?」
フローラは頷く。
「綺麗な魂だったから、この子に決めちゃった」
「そっそうか‥」
呆気にとられるルークだった。
「それにしてもメフィストの奴また黙っていたな‥めでたい事があれば言えとあれ程言ったのに」
「ふふふ、あの人ああ見えて凄く恥ずかしがり屋ですから」
フローラの準備が整った様だ。
「フローラそろそろ行くぞ」
「は〜い、それじゃあ2人共また後でね」
地下研究所
ルークとフローラが地下の実験棟に到着した。部屋に入るとマモンとカイが準備を終えくつろいでいる。
「待たせたな」
「やっと来おったか、待ちくたびれたぞ」
ルークはガラスの向こうに並ぶナンバーズ達を見る。
「ん?数が足りなくないか?」
「そうじゃ言い忘れておったわい!ドクとファイは離脱したぞ、お主に協力は出来んが敵対するつもりも無いから2人で国に戻るとな‥」
「そうか‥」
「ファイは最後まで悩んでおったがドクを選んだ様じゃ」
「後1人居たよな?」
マモンは難しい顔をして答える。
「カッパじゃな‥アレは解体したぞ」
「解体!?始末したのか??」
カイがあるデータを提示する。
「コレを、改修作業の最中に判明した事なんですが」
カッパの脳内メモリのデータ、大量の秘匿領域が占めている。
「何だこの量は‥何を隠していた?」
「普通は記憶まで覗くことはないが、怪しすぎたからの〜解析してみたんじゃが‥出て来たのがコレじゃ」
モニターに数々の画像が写し出される。
「は??」
そこには無数の盗撮データ、数万以上の画像や動画が溢れていた。
「此奴は監視魔石を使って隠し撮りを日常的にやっておった様じゃ‥」
「あ〜なる程‥犯罪行為は駄目だな、でも解体はやり過ぎじゃないか?」
「コレを見てもそう言えるか?ホレ」
そこにはルークの妻達の盗撮データが並ぶ。それを見たルークの顔がヒクヒクと引き攣り怒りに染まる。
「最悪だなコイツ‥解体もやむ無しか」
「便利な能力は解析済みじゃ、簡易的な物をガンマに付与した自分で装備を出せた方が早いからのう」
フローラがナンバーズ達を見ながらその変化に気付く。
「この子達‥以前と比べ物にならない位、強くなってる」
「姿も大分変わったな」
「説明はこ奴らを起こしてからじゃ、一緒に聞くといい」
カタカタカタ‥ 端末を操作しナンバーズ達を起こす。
ピピッ! 各自起動し目を覚ましていく。ゆっくりと起き上がりカプセルを出る。
「ん~~よく寝たぜ〜」
「やっぱりお前だけは寝られるんだな?俺なんてずっと闇の中だったぞ」
ガンマとベータが部屋から出てくる。ニュー、エータ、ゼータが続く。
「もしかしてお前ニューなのか??」
暗い部屋から外に出て各自の姿を見ると、その変わりように驚く面々。
「これが私??」
困惑するのも無理はない。巨大な体は180cm程まで縮み筋骨隆々だった骨格は女性らしいラインに、そこには美しい女性が立っていた。
「ベータ、どうしよう‥姿変わっちゃった」
「ん?ニューはニューだろ?気にするな」
エータも自分の身体をペタペタと触っている。
「これが私‥」
おデブだった姿はぽっちゃり体型に、アノ醜い姿にも成れそうに無い。
「お前達席に、フローラも来ておる」
ナンバーズ達は敬礼すると席に座る、フローラが頷くと激励を送った。
「強くなりましたね、なんと頼もしい‥これからの貴方達の活躍に期待しています」
「さて、では説明を始めるかのう」
各自の脳内に改修データが送られると、一斉に声が上がる。
「おお!性能が段違いだ!凄えな」
「以前より体が軽いのはその為か?」
「その事で話がある‥お主達はまともなメンテナンスを今迄受けていない、誤魔化す為にナノマシン迄入れられ結果ボロボロの状態じゃった」
「そんな筈は!?ナノマシンも俺達を強化する為だと」
ベータが取り乱す。
「良く考えてもみよナノマシンは常に魔力を吸う‥戦闘中でもお構い無しじゃ、お前達は常に魔力を削られながら戦っておったんじゃ」
カイが予測データを提示する。
「貴方達が戦闘に使えた魔力は8割程、強化どころか弱体化しています」
「そんな‥」
「俺達を修理せずに誤魔化していた時点で、マザーの思惑だな」
「そのマザーの事じゃが‥デミウルゴスと言う名に覚えはあるか?」
ナンバーズには心当たりが無いが‥フローラが反応する。
「その名は‥確かマザーの元になったシステムの名です」
「そうか‥聖地に現れた新たな女神の名がデミウルゴスじゃ」
「マザーの裏切りが確定したな」
ガンマが早速名乗りを上げる。
「さっさと叩き潰しに行こうぜ!」
「落ち着け向こうが何も準備していないとでも?」
「そうですわ、恐らく私達から集めたデータで何か用意している筈ですわ」
カイが立ち上がると‥ルークの方を向く。
「ん?どうした?」
「‥「絶対命令権」を発動します」
その言葉が発せられると、ルークやナンバーズ達は動けなくなる。
(何だ?体が動かない!マモン何をしてるカイを止めろ!)
「新たなナンバーズのリーダーをルーク様に指名します、貴方達は従うように以上です」
命令を終えると束縛が解かれた。
「おい!どういう事だ!何でコイツがオレ達のリーダーなんだよ!」
「ルーク様もヒューマノイド化されました、適任です」
「説明になって無い!」
不満をあらわにする者達にマモンが補足する。
「自分達の立場を考えよ、ルークの配下になれば好きに動ける、従わないならば常に拘束具を付けるぞ?」
当然の話だ。いきなり現れた正体不明の者達が跋扈していたら、不審でしか無い‥しかしルークの配下となれば安心できる。
「なら絶対命令権を使わなくてもいいだろ!」
「逆らわれても困りますし、保険の為です」
「フローラ様!良いのですか?」
ベータ達はフローラを見る。
(ああ〜面倒臭い‥ルークに押し付けちゃえ!)
「貴方達のリーダーなら私の配下となります、旧魔王が女神に下った形に‥後はわかりますね?」
ベータ達はその言葉で察する。
「そうか!この国の最高権力者が名実共にフローラ様に!実質この世界の頂点‥」
「そりゃあ良いぜ!」
「旧魔王‥いえルーク良いですね?」
ルークは複雑な心境だ。
「わかったよ、それで納得するならそれでいい」
ナンバーズ達は勝ち誇る様に自信に満ちていた。魔王を討伐せずに配下に加えた、女神の懐の深さに感服していた。
「さて、話が終わった様じゃな‥ではお前達の改修のお披露目じゃ」
大きなモニターに各自の改修結果を表示する。
・ガンマには励起の出力調整による継戦能力の向上と、重すぎるフルアーマーの軽量化。
・ベータは反射の邪魔になる獣化の調整、本能を刺激しない部分的な運用に。
・ニューは巨大過ぎる身体を新調、憤怒に耐える強靭で柔軟なフレームに変更。
・エータは醜悪な見た目になる暴食を調整、バアルの協力で捕食口は腹から掌に変更。
・ゼータは人格にまで影響していた怠惰の調整、範囲、対象、条件を付与可能に。
・全員のナノマシンの除去と修繕、改修最適化によりフルスペックで戦える様になる。
「もうあの姿には成らない?」
エータの目から涙が溢れる。
「あ?何泣いてんだよデブ」
ゴンッ! ベータの拳が脳天に。
「いってえな!何だよ!」
「デリカシーの無い奴だな」
エータは化物を演じていた。普通の美的感覚があれば醜い自分を受け入れるにはソレを演じるしか無い。だから口癖の様に自分が美しいと言っていた‥自己暗示として。
「あ〜良いかな?」
ルークが立ち上がり話し始める。
「お前達は俺がフローラを守る特戦隊として結成した事にする、専用の服でわかりやすくアピールしてくれ」
「仕方ねえな〜」
「俺が結成したがリーダーなのは伏せておく、これなら問題無いたろ?」
ナンバーズ達は納得したようだ。対外的に独立した部隊なら好きに動けるからだ。
プシュー 扉が開くとメフィストが駆け込んできた。
「ルーク様!!」
「何だそんなに慌てて?」
「異界の門が開きました!冥界から奴らが来ます!!」
「なっ!?封印が破られたのか?」
「詳細は不明、現在ケルベロス様が騎士団を連れマーロへ向かわれています」
マモンの顔が青くなる。
「マーロは今モリガンが統治しておる‥マズいマズいぞ」
「安心しろモリガンが危険なら俺が察知出来る、まだ繋がりも感じる大丈夫だ」
ルークは少し考え込む。
「対処はケルベロスに任せる、俺達は隠れて動くぞ」
ナンバーズ達の方を向くが‥
「あ?勝手にやってろよ」
「協力する義務は無いな」
「貴方達そこ迄おっしゃらなくても、仮にもリーダーですわよ?」
「なんだ?もう靡いたのかよ」
統制の取れないナンバーズ達にマモンが忠告する。
「奴等の目的がフローラでもか?ネメシスと言う女神を探しておったが、この世界に女神は1人‥十中八九フローラの事じゃ」
「フローラ様を?なんの為に?」
「そこ迄は分からん、直接聞くしか無いのう」
しびれを切らしたフローラが命令を下す。
「ルーク、ナンバーズを連れて行きなさい!貴方達も従うように、敵を前にして身内で争わないよう肝に命じなさい」
「「はっ!」」
「メフィスト!俺達はモリガンを守りに行く一団として動く、騎士団や王国兵にはそう通達してくれ」
「直ぐに手配します」
ルーク達は地下のゲートからマーロに向かう。ケルベロスや騎士団達の邪魔をしないよう注意を払いながら。
武装都市 マーロ
騎士団でごった返す本部を横に、モリガンの屋敷に入る。
「ルーク様!」
子供を抱えたモリガンが待っていた。
「2人とも大丈夫だったか?」
「ほらメイヘ、パパが助けに来ましたわ」
「パパ!」
「もう大丈夫だぞ、ハハッ!大きくなったな!」
悪魔や魔族の成長は早い、もう言葉を少し話せている。
「後ろの者達は?」
「新しく作った特戦隊だ、此処に1人置いていく」
統治者のモリガンは先に逃げる訳にはいかない。護衛としてニューを置く。
「任せたぞ」
「ベータ頑張って!此処で待ってる」
ベータは苦笑いをしていた。
「おいおい、そのヴァンパイアをちゃんと守るんだぞ?」
「わかった!守る」
ルーク達は現地のヘクトールから情報を受取ると解析を始めた。
「へぇ〜騎士団長が協力的なのは有り難いな」
「ルークの義理の息子だそうだ、ほら情報を見てみろよ」
ナンバーズ達の脳内にはスローン王国の内情が書き込まれている。
「で?リーダーさんよコレからどうすんの?」
ゴツン! ベータの拳が落ちる。
「いってえな!」
「フローラ様のお言葉を忘れたのか?真面目にやれ」
「わかったよ!」
情報を精査しナンバーズ達に送る。
「異界の門は見ての通り要塞化している、正面で騎士団がやり合ってる間に侵入するぞ」
「目的は?」
「門の再封印だが‥最悪の場合は敵の殲滅だ、以前戦った相手の情報を送る目を通してくれ」
ベータ達にタナトスの能力を知らせる。
「へぇ〜死の鎌か‥まあオレ達には効かないな」
「ガンマ油断してコアを砕かれるなよ?」
「そんなヘマしねぇよ」
「幸い門は狭い、軍隊を送る広さは無い‥通れるのは2人迄だ、まだ数える程しか居ないだろう」
「ちょっと待てよ!ならこの要塞は何だ?」
「恐らく何らかの能力だな」
門の周りには突然要塞が現れた。マーロの冒険者達もそれを見て混乱していた様だ。
「ねえ?態々敵の待ち構えるとこに行くの?」
ゼータが初めて口を開く。
「お前あの喋り方直ったんだな」
「ええ、怠惰の力もコントロール出来るから今は楽よ」
「相手の言っていた事が気にかかる‥あのお方と戦って居るようだと、恐らく向こうに俺と同格がいる‥そいつが此方に来たら分かるな?」
「どちらが勝つにせよ、この辺りは一面灰燼と化すか‥」
ガンマの目が輝く。
「そんなに強え奴が居るのか!?戦いてえ!」
「おいおい‥勘弁しろよガンマ、そんな化け物手に負えるか」
「だってよぉ〜」
エータが手ぶらのガンマを心配する。
「貴方装備はどうされましたの?まさかそのまま行くのでは無いでしょう?」
「ん?ああ〜ホラ見てみろよ」
ガンマは虚空から装備を取り出した。
「それはカッパの能力?」
「オレが持ってた方が役に立つからって付加されたらしい」
「ではカッパは何処に??」
「そう言えば‥アイツ何処行った?」
「それについてだが‥コレを見てくれ」
ルークはカッパの処遇と罪状を見せる。
「はあ??覗き!?」
「まぁ‥悪趣味ですわね」
「流石に犯罪行為は容認出来ない、フローラにも許可は取ってある」
その言葉に一同は納得する。
「フローラ様が判断されたのなら従う迄だ」
「あの野郎‥戦場でも盗撮してやがる、筋金入りだなこりゃ」
「あの子普通に話せるのに、良くどもると思ったら覗いてたのね」
皆のカッパの株が一気に底を突く。
「それじゃあ移動を始めるぞ」
異界の門 要塞内
「エレボス〜そろそろタナトスが来る頃じゃない?」
(そうだね‥タルタロスの方は終わったの?)
「終わったよ〜要塞化完了!」
エレボスと呼ばれた青年の顔は目も口も無い。一方タルタロスと呼ばれた少女は全身に鎖が巻かれていた。
(なら要塞内に冥府の魔物を放つよ)
「どうぞどうぞ〜」
パチン! エレボスが指を鳴らすと要塞内に闇が広がり魔物達が溢れ出る。
(此処はあくまで仮拠点、誰かが入ってきても魔物達が追い払う)
「あっ!来たよ」
要塞の奥、異界の門からタナトスが現れた。
「此方に来るのも久々じゃな‥タルタロス!エレボス!」
(此処に)
「居るよ〜」
2人がタナトスの前に跪く。
「要塞化は上手くやったようじゃな、ヒュプノスが本隊を連れてくる迄此処を守るぞ良いな」
(はい)
「了解〜」
その時。 ドーーン!! 要塞が揺れる。
「何事だ!?」
「外に何かいるよ!」
タナトスが冥力で外を見渡す。外では騎士団とケルベロスが攻撃を始めていた。
「タルタロス!お前は魔物と一緒に奴等を追い払え!」
(僕は?)
「儂と此処の守りじゃ、陽動の可能性もある」
(わかった)
ルーク達 森の中
「騎士団が攻撃を始めたな、よし!潜り込むぞ」
「了解」
ルーク達は回り込み側面から突入する。
「うえっ!?何だよコレ魔物だらけじゃねえか」
「蹴散らすぞガンマ!」
「よっしゃ!やってる!」
ベータとガンマが先陣を切る。
「見たことも無い魔物ばかりですわね‥本当に異界の?」
「や〜ん!ルーク様怖い〜」
ゼータがルークに抱き着いた。
「おい‥何のつもりだ?」
「そうですわ!ズルいですわよ!」
「だって〜私も男が欲しいし〜」
ルークはゼータの顔を寄せ囁く。
「やるならもっとムードのある場所でな?」
「はっはい!」
ルークはヤレヤレと内心呆れていた。
(ヒューマノイドって変な奴ばかりだな‥まぁフローラから生み出されたのならしょうがないか)
特戦隊は要塞の奥深くに進んで行く。タナトスとエレボスの待つ門の元へと。




