因縁の終わり
ルーク達が城に戻り4日
落ち着きを取り戻したライラは、リリスや他の者達の説得により一先ず離婚には至らなかった。
「ママ〜?まだ悩んでるの?」
リリスがライラの様子を見に来ていた。
「頭では分かってるけどね‥納得は出来ないの」
「うちも目の前でママが斬られた時そんな感じだったよ?」
「リリスはどうやって乗り越えたの?」
「簡単だよ?ママを殺そうとした奴なんて家族じゃ無いってね、割り切ったのアイツは家族の絆も斬ったからね」
「助ける道は無かったのかな?私がもっと強かったら、また違った結果に‥」
「ママ!終わった事をウジウジ考えても仕方がないよ?」
記憶を取り戻したライラは後悔に苛まれていた。
「でも‥」
「それにアイツを殺したのはパパじゃない!異界の門の側に居たなら確実に冥界の奴らだよ?」
「それは‥そうよね、ルークと仲直りしたい‥錯乱して傷付けた、酷い事言っちゃった」
「パパなら大丈夫!許してくれるよ!」
ライラはルークに会うため身支度を整え始めた。
「リリス、どれ着たら喜ぶかな?」
「任せて!コーデしてあげる」
ルークの執務室
ルークは溜まっていた仕事を熟していた。書類の束が山積みになっている。最近頭が痛い、ここ数日は特に酷い。
(あ〜疲れた約1年分か‥いつ終わるんだコレ、頭痛も酷いし‥はぁ)
コンコン! 部屋をノックする音が響く。
「入れ!」
ガチャ 珍しくマモンが出向いていた。
「珍しいな?何かあったのか?」
「もうすぐ孫の顔が見れそうでな、その報告と少し厄介な話じゃ」
「モリガンが産気づいたのか!ん?‥厄介?」
マモンが椅子に座る。
「ルークよ悟られずに結界を張れるな?」
「ああ、任せろ」
ルークは最小限の魔力で部屋を覆う。
「よし良いぞ、覗きも盗み聞きも出来ない」
「長話しは怪しまれるからの、手短に話す‥ガブリエルがミカエル達と接触した」
「なんだと?それは自殺行為だろ、どういう事だ?」
ルークはマモンの向いに座る。
「あくまでワシの予測じゃが、ミカエル達を堕天させる気ではないかと‥」
「神がこの世界を見捨てた事を伝えるのか、だがそう簡単に信じるか?」
「タイミングじゃ‥天獄の門が閉じて混乱が生じた時にソレを伝えたら?喪失からの絶望‥堕天する条件が揃う」
「最悪だな、約2万の堕天使‥ガブリエルも大手を振って合流出来るか」
「しかも新たな王‥魔王との子も堕天使達を纏めるのに丁度よい、ルークよどうするんじゃ?」
ルークは少し考え込むと、結論を出し不気味に笑う。酷く頭痛がする。
(何だ?違和感が‥)
「やる事は変わらない、天使だろうが堕天使だろうが皆殺しだ‥放っておけ」
「ほう‥何も手を打たぬと?」
「ああ‥それにガブリエルは裏切らない」
「根拠は?」
ルークは悪魔の笑みを浮かべる。頭痛が更に酷くなる。
(痛い‥頭が割れるようだ)
「俺の魔力で洗脳して、俺無しでは生きていけない様にしてやるよ‥ハハハハハ!」
(何だ?俺は何を言っている?)
「ホッホッホ!お主がその気なら心配はいらんのう」
パチンッ ルークは指を鳴らし結界を解く。
「さて、ルークよモリガンの元に行くぞ!早く孫の顔が見たいわい」
頭痛が引いていく‥
「城もベビーラッシュだな、忙しくなるぞ」
モリガンに続きエキドナ、ヘンリエッタ、リリス、オルスも出産が間近だ。
数日後 夜 ルークの寝室
ルークとライラは仲直りの話し合いを済ませ、イチャイチャしていた。
「本当に良かった!ライラに嫌われたら、生きる意味が無くなる‥」
「ごめんね、ルークは私を選んだだけなのに辛く当たっちゃって」
「ディアスを助けなかったのは事実だ‥恨まれても仕方がない」
「うん、だからもう間違えない様に一緒に考えようね」
2人は抱きしめ合う。するとルークに今までにない激しい頭痛がする。
「ライラアイシテル!」
「私もよルーク」
‥は安堵する‥ライラを手放さなくて済むと。
(この世界一美しい女は俺の物だ!誰にも渡さない!)
(違う!黙れ!今更顔を出すな!)
サタンと1つになった筈の魂が叫ぶ。女神と交わった事で覚醒した、激しい頭痛と共に叫ぶ‥俺が主人格だと。
「ルークどうしたの?」
「なっ何でもない!」
(駄目だ気を抜くとサタンが表に出る)
「今日はもう休むか」
「えっ‥仲直りだよね?」
ライラはルークを抱きしめる。頭の中でサタンが叫ぶ俺に代われと。
(不味い今興奮すると意識が奪われる‥せめてこれだけでも)
ルークは自分の胸に手を当てる。次の瞬間サタンが表に出た。
「ライラ‥オマエガホシイ!」
「うん!いいよ」
そこからルークの記憶は無い‥人間と魔王の人格、人間で太刀打ち出来る筈もなくサタンがルークを乗っ取った。ルークの意識は深い眠りにつく。
翌朝
ルークはベッドから起き上がると体を確かめる。
(フハハハ!動く!動くぞ!それにオレのままだ!魔力の方は‥イヤ今魔力を高めると怪しまれるか)
「ん?‥ルークもう起きたの?」
ライラが顔を上げる。
「ライラまたやるぞ、オレの可愛い妻よ」
「えっまだやるの?」
サタンがライラに覆い被さる。まだ誰も気が付かない、ルークと入れ替わった事に。
(暫くはルークのフリをするか‥少しずつ少しずつだ)
サタンは700年ぶりの女をじっくり味わう。目の前の女は元女神の魂の所有者、相性はバッチリだった。
その日の昼過ぎ
「ルーク様!待ってましたわ、ほら抱いてあげて」
モリガンは息子のメイへをサタンに預ける。
「おお、よしよし‥ハハハ強い子だ」
「私達の子です当然ですわ!オ〜ホホホ!」
モリガンは高らかに笑う。
「モリガン体調はどうだ?」
「順調ですわ」
サタンは舐め回す様にモリガンを下から上に眺める。
(妖艶な姿に銀髪、美味そうだ‥早く喰いたい)
「ルーク様?」
「お前が欲しくなったよ、落ち着いたら教えてくれ」
モリガンは顔を赤くする。
「はっはい‥」
暫く我が子をあやしモリガンと他愛もない話をする。2時間後城の廊下でルークに会いに来たブリュンヒルデと会う。
「あなた!お久しぶりです、旅から戻ったと聞いて会いに来ました!」
(チッ‥何だ人間か名はブリュンヒルデだったか)
「ヒルデ!久しぶりだな会いたかったよ」
サタンはヒルデを抱きしめる。
「??あなた?」
(不味い‥ルークはコイツがお気に入りだったな)
サタンは直ぐにキスをして愛を確かめる。
「すまない久しぶりで見惚れてたよ」
「あら嬉しい!こんなおばさんなのに」
「まだまだ若いし綺麗だよ」
「ふふっありがとう」
(今日はコイツで良いか)
サタンはヒルデの身体を見る。子を産み少しふくよかな体型、ルークが最も好みだった女。
「ヒルデ今日は泊まっていけ、良いな」
「う〜ん‥子供達が待ってるし」
サタンは悩むヒルデに顔を近付け暗示をかける。
「なら今からだ、お前が欲しい」
「もう!しょうがない子ね」
寝室でヒルデを味わうサタン。
(これは良い!美味いじゃないか!ハハハ!ルークがハマる訳だ)
2時間後ルークの寝室で2人は別れを惜しんでいた。
「あなた、また来てもいい?」
「ああ何時でも来い、お前なら歓迎する」
「ふふっどうしたのその話し方」
(!?不味い素が出た)
「どうだ?魔王らしいだろ?」
「似合いませんよソレ?」
「やっぱりそうだよな、ハハハ」
「それじゃまたね、チュッ」
ヒルデは帰って行く。1人になったサタンは下品に笑う。
「クックック!ハハハ!久々の女は美味いな!まだまだ楽しめそうだ!喰い尽くしてやるぞ」
サタンは本能のままに動く。今は性欲を満たすために、しかしその矮小な目的が本来のサタンとは程遠い事に気が付いていない。
(今夜はエキドナを喰うか、明日はステラだ‥その次はガブリエルあの竜人やドワーフも‥エルフも居たな、あぁ楽しみだ)
それから1週間サタンは欲望のままに女達を欲し、手当たり次第に手を出していた。
ルークの執務室
コンコン! 部屋をノックする音が響く。
「入れ」
「パパ〜入るよ〜」
リリスが部屋に入って来た。出産を終え久しぶりに城に戻って来ていた。
「リリスかどうした?」
「ママが呼んでるよ〜」
「すまない、通信器を止めてた手間をかけたな」
「パパ最近お盛んみたいだけど〜程々にね?」
リリスが釘を指す。
「10ヶ月会えなかったんだ、大目に見てくれ」
「それはそうだけどさ〜噂になってるよ?」
サタンはリリスのむっちりとした足を見つめる。
(コイツも美味そうだ‥味見するか?)
「‥あんた誰?」
リリスはサタンの視線に敏感に反応した。後ろに飛び退き距離を取る。
「なっ何を言っている?」
「パパはそんな目でうちを見ない!誰よあんた!」
「落ち着けリリス!」
「近寄らないで!そこを動くな!」
(無力化して黙らせるか)
サタンは手を翳し魔力を込める。
「後でたっぷり可愛がってやるぞ!眠れ!」
しかし何も起きない。魔力が上手く操作できない。
「やっぱりパパじゃ無い!ハッ!!」
ドゴーン! リリスは部屋の壁を思いっきり吹き飛ばす。その轟音で城は瞬時に警戒態勢に移る。
「クソッ!何故魔力が使えん!」
以前サタンはルークに力を託した。既にその魔力はルークのもの、サタンの魔力とは別物になっていた。
「ルーク様!何事ですか!」
「父さん大丈夫?」
ケルベロスとメフィストが部屋に集まる。
「ケル兄!メフィスト!コイツはパパじゃ無い!」
その言葉で2人は戦闘態勢に移る。
「落ち着けお前達!リリスは錯乱してるだけだ!」
「しっしかし‥」
「クンクン‥本当だ、微かに父さん以外の臭いがする」
(今は逃げるしかない!ルークから力を取り戻す時間が必要だ)
サタンは穴の空いた壁から逃げようとする。
「逃さないよ?」
ドスッ!バキッ! ケルベロスは容赦なく殴り飛ばしその場に押さえ込む。
「ガハッ!実の父親に何を!」
「ん〜?こういう時、父さんなら容赦するなって言うよ?」
サタンはメフィストに向かって叫ぶ。その声はルークとは別人の声だった。
「メフィスト!!オレだ!帰ってきたぞ!!」
「そっその声はサタン様!!」
「直ぐに助けろー!!」
メフィストは動かなった。動けなかった。
「何をしてる!」
「違う‥サタン様はこんな小さな存在では無い!憤怒の化身とまで言われた存在感が微塵もない」
「それはルークから力を取り戻せ‥」
「黙れ偽物!」
バキッ! メフィストの蹴りでサタンは落ちる。
「メフィストどうしたらいい?このままだと不味いよね」
「拘束してマモン様に見てもらいましょう」
「リリス、この場は任せるよ上手く誤魔化してくれ」
「オッケ〜親子喧嘩って事で後は任せて」
2人はサタンを担ぎ地下研究所に向かった。
研究所 解析室
カイが昏倒したサタンを縛り付けデータを取る。マモン、ケルベロス、メフィストがそれを見ている。
「どうやら本当にサタンの様じゃな、だがこの格落ちは‥」
「格落ち?そう言えばメフィストもそんな事言ってたね」
「はい、本来のサタン様なら対峙するだけでも相当なプレッシャーがあります‥コイツにはそれが無い」
カタカタカタ‥ 解析していたカイがある魔法を見つけた。
「これは‥催婬魔法?自らに‥とうして?」
「ホッホッホ!そう言う事か、ルークめやりおるわい」
「父さんが乗っ取られる前に自分に掛けたんだね」
「ここ1週間さかりのついた猿のようだと噂されていたのはこのせいか、なるほど道理で」
ルークの催婬魔法でサタンの格は落ちていた。魔王と呼べない程に。
「ルークの魂と人格をサタンから切り離すとするかのう‥今更サタンに目覚められても誰も喜ばん、カイよ手伝っておくれ」
「はい、直ぐに始めます」
「父さんの力はそのままなの?」
「そうじゃ今や異物はサタンの方、力を行使出来無いのがその証じゃ」
「取り出した魂はどうされますか?」
「試験中のヒューマノイドに入れる、データ取りの序にな」
作業は進みルークとサタンは切り離された。ルークは体を取り戻し静かに眠る。
「ヒューマノイドへの魂の注入が終わりました、起動させます」
ピッ! 音と共にサタンの体がビクリと跳ねる。
(うっ‥ここは?オレは一体)
「気分はどうじゃ?」
実験室の中にマモンとメフィスト、外でカイとケルベロスが見守っていた。
「おお!久しいなマモン!等々復活出来たぞ!」
「静かに眠っておれば良いものを‥」
「何だと?貴様誰に向かって‥」
サタンが立ち上がろうと力を入れるが‥
「何だコレは?足も‥腕もない!?」
「それは仮組みのヒューマノイドじゃ、まあ言っても分からんか‥お前をその器に移した」
「オレを‥オレを裏切る気かマモン!」
「裏切る?そもそも仲間になったつもりは無い!力だけで他者を従えたお主なんぞには」
「老いたな強欲のマモン!メフィスト!今のコイツならお前でも倒せる!オレを助けろ」
メフィストは哀れむように首を振る。
「マモン様は今が最も強い‥強欲の名に相応しい程に」
「欲を失い家族を持ったコイツが強い?何を馬鹿な」
「ワシの欲はここに来て深まるばかりじゃ、愛する妻愛する子供‥それに今迄ワシに付き従って支えた仲魔達、もう地獄には戻りたくない‥ならば世界のルールを変えるしか無いとな」
「オレが変えてやる!神の座を手に入れっぐはっ」
マモンはサタンの顔面を殴った。
「我らに必要なのは闇では無い!光じゃ!」
「きっ貴様‥」
「サタン様‥イヤ、サタン!格落ちした今お前はもう悪魔や魔族のカリスマでは無い!此処で消えてもらう」
「格落ち?オレが‥馬鹿な!」
「お主ずっと性欲に飲まれておったな?一度でも憤怒の力を使ったか?」
サタン顔から汗が滴る。表に出てから女達を追いかけてばかり‥そこに威厳もカリスマも無い。
「噂になってましたよ、発情した猿の様だと」
それを聞いたサタンは恥ずかしさのあまり顔が火を吹く。
「黙れ‥黙れ黙れ黙れ!!!」
プシュー 扉が開きケルベロスが入って来た。
「そろそろ良いかな?」
「そうじゃな、もう十分じゃろ」
マモンが外のカイを見るとカイは頷いて返す。データは取れたようだ。
「なっ何を‥ヤメロ!ヤメロー!」
「燃え尽きろ‥インファナルフレイム」
サタンの肩に手を当て獄炎で焼き尽くす。
黒い炎で声も無く実験台と共に燃えカスに成り果てた。
「呆気ない‥あのサタンがこうも簡単に」
落胆するメフィスト。
「安心しなよメフィスト、オレが次期魔王だよ?誰よりも強いサタンよりもね」
「おお!なんと心強い!」
「さて、皆に言うておくサタンの事は他言無用じゃ良いな?」
3人は頷いた。この事は誰にも知られる訳にはいかない。
「父さんには話すよ?辻褄合わせないと他に怪しまれる」
「そうじゃな」
メフィストがカイに訪ねる。
「サタンの子を孕んだ者は居るか?」
「いえ、1人もいません」
「アヤツは子供には興味は無い、地獄にすらヤツの子供はおらんからの」
それを聞いたケルベロスは笑う。
「ハハハ!何だそれ?愛を知らない、常に怒って力を振るう‥子供か?」
カイはボソッと呟いた。
「子供だから子供を欲しがらなかった?」
「案外あり得るかも知れんのう」
「我らも変わりましたな、マモン様」
「そうじゃな」
ルークの眠っている間に事は終息した。それから目覚めたルークは妻達への対応に四苦八苦する事になる。
数日後 ルークの執務室
「クソッ‥アイツ俺が寝てる間に手当たり次第女に手を出しやがって」
サタンの格落ちには成功したが、1週間掛かった事もあり。詳しく調べると城内の侍女や騎士団員、女性大臣にも手を出していた。
「ルーク様これで全ての模様です」
メフィストが最後の書類を渡す。
「ぇ〜っと、これで総勢15名か‥ファリスが入ってないのは?」
「副団長なら少し前から遠征に出ています」
「そうか‥助かった」
「助かった?」
「もし手を出して、バレたらヒルデに殺されるぞ」
「確かに!ハハハハハ!」
ルークは書類を纏める。
「よし、このリストの者達の記憶消去を頼む」
「はっ!」
メフィストは研究所に向かう。
ルークは部屋で1人、自分の中を確認する。
(不思議だ‥怒りもドス黒い感情も湧かなくなった、頭がクリアで気分がイイ)
「まさか‥」
ルークは悪魔の姿に成ろうとするが。
「駄目だ、姿が変わらない‥」
(だが魔力は落ちていない、以前より増えた位だ)
両手を見つめる。
「俺の体に何が起きてる?」
ルークの体に変化が起きている。何かが変わろうとしていた。




