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不死の王


       襲撃を撃退したその後


 ファイはもう隠し通せないと観念し、ディアスの正体だけは隠し他の全てを2人に話した。


「と、言う訳なの‥くれぐれもディアスには内緒でお願い!」


「なるほど‥ヒューマノイドと改造人間か、良くわからんが‥今のディアスを見れば嘘でも無いらしい」


「へぇ〜面白〜い」

(思い出した!確かコイツ魔王の息子だよね‥後で詳しく話させるか)


 ファイは機材を出し、急いでディアスの起動をキャンセルしている。


「今起きたら説明がつかない!此の儘寝かせないと」


「これが機械か〜」


 カタカタカタ ファイはディアスが目覚めない様に起床時間を大幅にずらした。


「これでよし‥ふぅ間に合った」


「だがこれからどうする?重量軽減の魔石があるとはいえ、馬も無しにあの量の荷物は運べんぞ」


「ねえファイ〜?僕と取り引きしない〜?」


「取り引き?」


「そう、僕が魔力で馬車を引くから〜僕のお願い聞いて欲しいな〜」


 ファイは不服そうに答える。


「私が断らないのが分かってて‥ずるい!」


「建前だよ〜建前〜仕方なく僕の願いを聞いたって事にしなよ〜」


 ファイは唇を噛み締める。


「何が望みなの?此処で言える事でしょうね!」


「妖精の森の場所って知ってる〜?」


「‥多分わかるわ、以前そこに居る妖精を攫った筈よ」


「やった!今度教えてね〜」


 異界の門を開く目的、それを果たせる事に喜びと運命を感じていた。


(これで何時でも異界の門は開ける!なら‥世界の破壊なんて何時でも良いよね、飽きるまで遊び倒すぞ!)


 パイモンは馬車を掴むと魔力を放出し、一気に里に向かって飛ぶ。


 奇しくもパイモンがファイ達に興味を示した為に、邪神ネメシスの復活は大幅に遅れることになる。ファイ達が世界を救っている事を誰も知らない。


          焔の里 


「到着〜あ〜疲れた〜」


「ご苦労だったな、先ずは宿を取りディアスを起こすぞ」


 噂通り里は小規模だった、噂通り見かけるのは亜人ばかり。


 ドクは部屋を取るとディアスを担ぎ込む。宿の従業員に怪しまれたが、寝ているだけと何とか押し通した。


「そろそろ起きるわよ、今は4日目のお昼!良いわね」


 2人は頷く。するとディアスが目覚めた。


「ん?朝か‥えっ皆どうしてここに?」


「やっと目覚めた、いっ何時まで寝てるの?もうお昼よ」


「えっ昼?」


「中々起きてこんから、皆で起こしに来たぞ」


「ディアス〜寝すぎ〜」


 ディアスはベッドから体を起こす。


「ん?ベッド??あれ?テントじゃなかったっけ?」


「もっもう!‥寝ぼけてるのね、ここは焔の里でしょ!」


「あれ?何時着いたんだ?記憶が‥んん?」


「ほれ昼食にするぞ、さっさと着替えんか」

「先に行ってるね〜」


「あっああ‥」


 ディアスは里に入った記憶は無いが‥皆が普通にしているのを見て、自分が忘れているだけだと納得するしか無い。


         その日の夜


 ベッドに機能停止したディアスが寝ている。それをメンテナンスするファイと、珍しそうに2人が見ている。


「各部異常無し‥よし、終わり」


「こんな事を毎日‥世話が焼けるな改造人間とは」


「ヒューマノイドと違い生体部品が多すぎるのよ‥毎日調整しないと直ぐに不具合が出る、こんな事ならヒューマノイド化すれば良かった‥」


「何でやらなかったの〜?」


「そっそれは‥」


 ファイは顔を赤くする。ヒューマノイド化すれば行為そのものがただの作業になる。


「終わったなら2人は部屋に、拙者は疲れたそろそろ寝る」


「えっ‥私達同じ部屋なの!?」


「何時も通りではないか、ゆっくり休め」


「他に部屋を借りるわ!ひっ1人で寝たいから」


「1つのパーティーが借りれるのは、2部屋までと言われたのを忘れたか?」


「そっそんな‥」


 ファイは固まっている。


「ねぇねぇ?ドクは僕の事は聞かないの〜?」


「ん?悪魔だったのは驚いたが、別に気にならんぞ」


「だって〜僕が魔王の仲間だったらどうするの〜?」


 ドクは顎に手を当てて答える。


「悪魔も一枚岩ではあるまい、それに知られたくない過去もあろう、一々詮索はせん」


「ドクって優し〜なら僕もその剣の事は聞かないね〜」


「それは助かる‥」


「じゃあおやすみ〜行くよファイ〜」


 パイモンはファイの背中を押す。


「ちょっ!まっ待って!」


 ファイを廊下に出すとパイモンは耳打ちをする。


「今日もいっぱい楽しもうね」

「やっヤダ‥もうヤダ!」


 パイモンは自分達の部屋に連れ込むと即座に結界を張る。


「これで邪魔は入らない、フフ‥今日も好きなだけ叫んで良いよ」

「いや‥もう嫌なの!お願いもう許して!」

「駄目駄目!そうじゃないでしょ?ほらおねだりは?」


(助けて‥誰か助けて‥)


 ファイにとって地獄の時間が始まる、悪魔による悪夢の様な時間‥頼みのディアスは何の役にも立たない。ファイは聖地から出た事、ディアスを改造した事を心から後悔していた。


(何で私がこんな目に‥チクショウ‥チクショウ)


 ファイは最初に死に物狂いで立ち向かえば、パイモンは興味を失う可能性もあったが、もう遅い。パイモンはファイに夢中だ‥丈夫な玩具を手に入れたと目を輝かせる。


          翌日


「あっ2人共おはよ〜」


「ん‥パイモンだけか?ファイはまだ寝てるのか?」


「ぐっすり眠ってるよ〜」


「おはよう、まだ寝てるなら俺達は先に朝食を取ろう」


「そうしよ〜う」


 3人は宿の食堂に向かう。


 ヒューマノイドは睡眠を取ることは無い。ファイは強すぎる刺激に耐え切れず、遂にシステム側がシャットダウンをしていた。


 ピッ!ピピッ! 何度も再起動が掛かる。数回エラーを起こした後ファイは目を覚ます。


「私は‥確か‥あっあぁぁぁぁぁ!!うっ‥はあっ!うぅぅ‥」


 ファイの体が震え上がる。シャットダウン寸前の情報が襲ってきた。


(此の儘だと殺される‥死にたくない死にたくないよ!)


「助けを‥そうだ助けを呼ばないと」


 低山だけあってまだギリギリ聖地に通信が届く範囲だった。


「誰か!誰か応答して!こちらファイ!」


「あら、珍しい‥こちらオメガ何かあったのですか?」


「助けて!此の儘だと殺される!」


「落ち着いて‥簡単に説明出来る?」


 ファイは今までの経緯をオメガに話すと。


「あらあら〜それは羨ましい、私も味わってみたいわ‥」

「巫山戯るな!あんな地獄もう沢山なの!助けに来てよ!」


「フフフ‥何事かと思ったら、気持ち良すぎるから助けてなんて馬鹿みたい、いい経験と思って楽しみなさい」

「違うの!そうじゃないの!ああ!もう他の奴に代わってよ!」


「フフ‥土産話を楽しみにしてるわ、じゃあね」


 プツッ! その言葉を最期に通信は繋がらなくなった。回線を閉じられたようだ。


「嘘‥嘘でしょ!何で‥何でよ!」


 何度信号を送っても繋がらない。


「あの馬鹿女!!クソックソッ!」


 ファイは机を何度も蹴る。段々と落ち着きを取り戻すと、絶望感に襲われた‥これからずっとパイモンの相手をするその恐怖に。


(にっ逃げなきゃ‥そうだ逃げれば良いんだ!何でこんな簡単な事思い付かないの!)


 窓から身を乗り出そうとした時、ガシャリ!鎖の音が鳴る。


「えっナニコレ?」


 ファイの首に首輪と鎖が付いていた、鎖の先は虚空に繋がる。


 ガシャン!ガシャン!窓から出ようにも鎖が張り外に出られない。


「何よコレ‥何なのよコレ!!」


 壊そうと力を入れるがびくともしない。暫く葛藤していると部屋の扉が開く。


「あっ起きてる、おはようファイ」


 パイモンが様子を見に部屋に来ていた。


「あっ貴方でしょコレ付けたの!外しなさいよ!」

「そうだよ?君みたいな最高の玩具、手放す訳無いでしょ」

「巫山戯るな!」

「も〜怖いなぁ」


 パイモンが手招きをすると、ファイの首輪の鎖が一気に縮む。


「キャッ!?」

「はい、おかえり」


「たっ助けて‥お願い」


 パイモンの顔が醜悪に歪む。


「悪魔に何お願いしてるの?助けると思う?」

「ハハッ!‥アハッ‥アハハ!!」

「いい笑顔だ!その顔だよ!」


 出口の無い暗闇。その絶望の中でファイは唯笑うしか無かった。


       2週間後 スローン城


 レヴィアタンを罠に嵌める為に、予定通り研究所を無人にした。名目は施設の改築だ、期間は1ヶ月だが‥ドレイクは直ちに行動に移す。


「レヴィアタン!今ならまだ作業員も居ない、誰にも見つからずに手術出来るよ!」


 ドレイクとレヴィアタンは無人の研究所を奥へと進む。


「それで機材は動くの?」


「うん、最低限の電源は工事用に生きてるよ、手術も十分に出来る」


「良いわ良いわ!最高よ!」


 2人は都合が良過ぎるこの条件を疑わない。機を伺っていた2人はやっと訪れたチャンスに飛び付いた。


「手術は4時間で済ませて見せるよ!」


「4時間‥もっと短く出来ないの?」

「駄目だよ!これ以上短くしたらレヴィアタンの体に負担が掛かる!」

「舐めないで、私は最強の悪魔よ?」

「でも!でも!」

「もっと短く出来たら最高のご褒美用意するわよ?」


 ゴクリッ! ドレイクの喉が鳴る、最高のご褒美に胸が高鳴る。


「がっ頑張るよ!」

「フフ‥いい子ね」


 カタカタカタ ドレイクは器官の封印を解除すると、その保管器を慎重に手元のケースに入れ手術室に向かう。勿論器官は「偽物」とすり替えられている。


「レヴィアタン手術台に乗って!始めるよ!」

「ええ」


 レヴィアタンは手術台に寝そべり体を固定する。


「少し待ってね、器官の状態を確認する」

「なるべく早くね」

「うん、えっと‥よしこれで開く」


 プシュー! 保管器の蓋を開けたその瞬間!ドレイクに対して解呪の魔法と、エリザによる血の操作で体の中の呪が打ち砕かれた。


「‥‥これは‥」

「ドレイク?何かあったの?」

「ううん、何でもないよ」


 ドレイクが正気に戻る、それと同時に今までの醜態の数々が脳裏を過る。レヴィアタンに服従し汎ゆる痴態を晒した事、尊厳を破壊する数々の行為。それを嘲笑い欲望を満たす為に貪る女‥


(思い出した‥僕は‥僕は‥ん?これはメッセージ?)


 ケースの中に「レヴィアタンはケルベロスに任せろ」と書いてあった。


 ガシャン!! ドレイクの呪が解けた直後に、手術台から拘束具が飛び出しレヴィアタンを拘束した。


「!?何よコレ!?」


 ガシャ!ガシャ! 幾重にも拘束されていくレヴィアタン。


「クソッ!罠ですって!ドレイク!コレを壊しなさい!聞いてるのドレイクー!」


(ケルベロスに任せろ?‥巫山戯るなよ‥僕を陵辱したんだ、コイツは僕が殺すべきだろ!!)


 レヴィアタンの拘束を確認すると即座に地下修練場に転送する手筈だったが。


「コイツは僕が殺るべきだろうがあぁぁ!!!」


 ドレイクは振り向きざまに手術台を粉々に粉砕した。転送陣がレヴィアタンを送る間もなく消え去る。


「ガハッ!?何を!?ドレイク血迷ったの?」


 レヴィアタンは砕けた手術台と共に壁に激突する。


「黙れ!このクソアマが!殺してやる殺してやるぞ!」


「なっ!洗脳が呪が解けてる!?どうして!」


「死ねぇ!「イグニッション」!!」


 ドレイクが全力で魔力を開放しレヴィアタンに襲いかかる。


 ドーン!ドーーン! 強烈な魔力のぶつかり合いで研究所が揺れる。


「ドレイクめ先走りおって!ルークよワシがレヴィアタンを修練場に強制転送する、よいな!」


「ああ‥任せる、研究所の外は俺の結界で覆ったもう逃げられない、奴はもう詰みだ」


 マモンは研究所に突入する。


「ガアアアア!!死ね!死ねぇ!!」

「コイツ調子に乗るな!」


 ブチギレたドレイクの猛攻を受けるレヴィアタンだが、その顔に危機感は無い。ドレイクでは最上位にはまだ届かなかった。


「効かないんだよ!」


 レヴィアタンはドレイクを叩き伏せ顔を踏み潰す。


「ガキが!恩を仇で返しやがって!」

「まっまだだぁ‥あああああ!!」

「なっ死んでない!?」


 頭を潰されたドレイクだが、損壊した頭部が徐々に再生していく。


「ガアアアア!!」


 咆哮と共にレヴィアタンを羽交い締めにする。


「じねえぇぇぇぇ!!」


 ドレイクの全身から血で出来た棘が無数に飛び出し、レヴィアタンを串刺しに蜂の巣にした。


「いいぞドレイク!そのまま捕まえておれ!」


 マモンは2人を強制転送で修練場に送った。


「聞こえるかケルベロス!そっちに送ったぞ!」


「やっと出番か、待ちくたびれたよ」


 ケルベロスは修練場の真ん中に降り立つ。そこに2人が転送される。


「クソッ!舐めるなよ‥ガキがあああぁぁ!!」


 レヴィアタンはドレイクの両腕を吹き飛ばし頭と心臓を即座に潰す。


「あああぁ‥ドレイク!ドレイク!」

「お兄様‥嫌!イヤーー!!」


 修練場に居たエリザとモリガンは叫び駆け寄ろうとするが、ケルベロスがそれを制止する様に立ち塞がる。


「退きなさい!お兄様が!」


「黙って見てろ!」


 レヴィアタンはドレイクの死体を執拗に壊し続ける。


「この!この裏切り者が!死ね死ねぇ!」


 何度もドレイクの体を踏み潰す。


「はあ‥はぁ‥私とした事が、飼い犬に手を噛まれるなんて」


 レヴィアタンはケルベロスの魔力に気が付くと、ゆっくりと振り返る。


「そう‥貴方が相手なの‥私も舐められたものね」


「ん〜オレの出番はまだかな〜ほら後見なよ?」


「はっ!そんな見え透いた嘘に‥なっ!?」


 レヴィアタンは咄嗟に距離を取る。見るも無惨な姿になったドレイクが‥蠢いていた。


「まだ生きてる?有り得ない‥頭も心臓も無いのよ!」


「お兄様‥まさか‥」

「そのまさかだよ、成ったんだねドレイク!」


(憎い憎い憎い憎い憎い‥弱い自分も勝ち誇る敵も‥全てが憎い‥このままでは終われない‥終わりたくない!)


 修練場の時が止まる、ドレイクの体がゆっくりと起き上がり強烈な霊気が辺りを包み込む。


「不死‥ヴァンパイアの始祖!不死の王の誕生だ!」


 ドレイクの魔力が変質していく‥冷たく魂すら凍る程の圧倒的プレッシャー、そして起き上がったドレイクの体の欠損は瞬時に再生した、有り得ない速度でまるで何事も無かったように。


「‥不思議だ、これが僕‥??生まれ変わった気分だ」


「巫山戯るな‥そんな都合の良い事があってたまるかあぁぁぁ!!」


 レヴィアタンの渾身の一撃が打ち込まれる。


 ドーン! 修練場が揺れる‥その一撃をドレイクは片手で止めていた。


「馬鹿な!有り得ない!何なのよアンタ!」


「ありがとう、僕を殺してくれて、心の底から憎ませてくれて‥お陰で目覚めたよ、これはほんのお礼だ受け取って欲しい」


 ドレイクが氷の様な殺意を向けた瞬間。


「ドレイクー!!!!」


 ケルベロスが叫ぶ。そいつはオレの獲物だとドレイクを睨みつけていた。


「仕方が無いな‥君に譲るよ、僕は少し休ませてもらう」


 ドレイクは一瞬でエリザ達の元に移動した。ケルベロス以外は目で追えていない。


「母さんモリガン‥心配かけたね」


 3人は抱きしめ合う。


「心配かけやがって!」

「お兄様良かった!良かった」


 ケルベロスはゆっくりとレヴィアタンに近付く。


「さあ、ここからが本番だよ!殺し合いだ、オレの初めての全力‥しっかり受け止めてよ!」


「バケモノ共め!こんな所で死んでたまるかぁぁ!!」


 レヴィアタンの体が変わっていく、今まで誰にも見せなかった戦闘形態。ルークやマモン達も知らない真の力を開放する。


「この姿は醜いから嫌いなのよ!暫くは元にも戻れない‥でも強さは折り紙付きよ!アハハハハ!さあ死になさい!!」


「グオオオオオォォォ!!!」


 対するケルベロスは咆哮と共に魔力を全力で開放する、その姿は漆黒の炎を纏う、修練場はまさに鉄火場となる。


「おお〜凄いぞケルベロス!見せてみろお前の全力を!」


 ルークは我が子の成長が楽しくてしょうが無い。既にレヴィアタンの事は気にかけてすらいない。まるでスポーツ観戦の様にワクワクしながら観戦している。


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