蘇る記憶
聖地 地下施設
「ふ〜やっと着いたぜ」
マーロを出発して2週間、ベータ達は昼夜問わず走り続け聖地に到着していた。
「時間が惜しいタウは先にメンテナンスルームへ」
「分かった、報告は2人に任せるね」
タウは収集したデータをマザーで解析、最適化する為にメンテナンスルームに向かう。
「アルファは会議室か、行くぞガンマ」
「おう、オレ達の成果に驚くぞ」
会議室に入った2人だが、報告を待っていたアルファの姿を見て驚愕していた。
「えっ‥誰だ??」
「その髪の色‥まさかアルファか?」
目の前の美しいスカートローブを着た女性に話しかける。
「ハハハ!!何だお前達、その馬鹿面は」
「やっぱりアルファじゃねえか!何だよその姿は?」
「進化したんだ、生まれ変わる程にな」
ベータは困惑していた。
「ベータどうした?報告しに来たんじゃ無いのか?」
「あっああ、そうだったな」
(俺達が命懸けでデータを集めていた意味は‥)
「これが今回集めたデータだ、それとフルアーマーの実戦データ‥後は今後の計画だ」
「これは‥EXカリバーか、予定通りの出力は出てるな‥それにドラゴンに魔獣‥貴重なデータだ、良くやっ‥ん?マーロに戻りシグマと共に王都に‥何だこれは?」
「あのシグマに女が出来たんだぜ、信じられねぇだろ」
「王都にはその女性を送り届ける為にな」
「そうか‥許可する、イプシロン達も連れて行け、引き際を見誤るなよ」
「「えっ‥」」
絶対に反対すると思われたアルファの後押しに2人は驚きを隠せない。
「いっいいのか?」
「私も愛する者が出来た、シグマの思いも理解出来る」
「聞いても良いか、相手は誰なんだ?」
「プサイだ、彼も進化した後で会うと良い」
「マジかよ‥あの気持ち悪ぃ奴と?」
(プサイが進化‥捕食型が?愛だの恋だので簡単に強くなりやがって‥頭にくるな)
ベータはアルファをじっと見つめる、ベータの中に黒い感情が沸々と湧いていた。
「おいっ‥おい!ベータ!」
「んっ?何だ?」
「報告は終わっただろ、行こうぜ」
「あっああ‥」
(ベータのあの目、良い目だ‥1つヒントを与えるか)
「待てベータ!」
「まだ何か?」
「お前に与えられた力「ビースト」その本質を忘れるな」
「本質‥」
2人は会議室を後にするとメンテナンスルームに向かった。その途中でプサイに出会う。
「あっ!2人共おかえり!」
「ん?誰だお前?」
「プサイだよ!どう?普通の姿にもなれるんだよ」
「マジか、お前そんな姿だったんだな」
(コイツ‥俺より強いな‥ああイライラする、何なんだ何故こんなに苛つくんだ)
「ベータ大丈夫?」
「あっああ、アルファから聞いたぞ」
「アルファはパートナー!プサイの宝物!」
無邪気なその笑顔にベータは突然の破壊衝動に駆られる。
「ガンマ先に行くぞ俺は疲れてる様だ」
「ん?ああ、オレもフルアーマーのデータを纏めないとな、じゃあプサイまたな!」
ベータはビーストモードになっても理性的なまま、本来の力の2割も出せていない、本能の儘に力を開放出来れば比類無き存在になれる筈だったが‥強すぎる理性がその邪魔をしていた。
マーロ 小さな民家
2人は小さな家を買いそこで暮らしていた。
「ロザリー今日はここ迄だ、良く頑張ったな」
「はぁはぁ‥私だって元冒険者なんだから、はぁはぁ大丈夫まだ行ける!」
「駄目だ、無理をしても効果は無いただ体を痛めるだけだ、ゆっくり休んで筋肉を成長させろ」
「でも!」
ロザリーは早く以前の自分に戻そうと必死にトレーニングをしていた。
(やめろと言っても今は逆効果か)
「ふむ‥ロザリー今夜の体力を残しておけ、分かったな?」
ロザリーは顔を真っ赤にしている。
「‥うん!わかった」
「ロザリー汗を流して来い着替えも置いてある」
「は〜い、ありがと!チュッ!」
ロザリーはシグマの頬にキスをすると壁伝いに風呂場に向かう。最初はシグマが移動を手伝っていたが1人で移動した方が間取りを覚えやすいとロザリーは頑張っていた。
シグマは窓から外を眺めている。
(平和に見えるこの街だが、誰も俺の‥俺の愛するロザリーを救おうとしなかった‥その報いは受けさせる)
その決意を胸にした時、シグマのいやベルゼブブの魂に火が灯る、「思い出せ」と魂の奥底が叫び声を上げる。
「なっなんだ!?ぐっガアアアア!!頭が割れる!何だこれは!!!」
ベルゼブブの脳裏に走馬灯の様な光景が浮かぶ。知らない記憶見たことも無い景色。
「知らない!俺はこんな記憶知らない!」
魂が叫ぶ「思い出せ」「思い出せ」と。
「これは‥神の座?俺は俺は‥ああああああああ!!」」
蹲るベルゼブブの姿が変わっていく、ニヒルなヒゲの似合う紳士の様な姿に。今までの姿とは似ても似つかないその姿だが、内包する力はまさに桁違い。
「思い出した思い出したぞ‥クックックッ‥カッカッカッ!!」
ドタドタとロザリーが血相を変え部屋に戻って来た。
「シグマ大丈夫!?何かあったの!」
「カッカッカッ!ロザリー喜べ!我の記憶が戻ったぞ!」
ベルゼブブだった者はロザリーを抱き上げる。
「記憶!?その声はシグマよね?どうしちゃったの?」
「そうだな‥我‥いや俺の説明をしないとな、その前にその目を治すぞ」
ベルゼブブだった者はロザリーの目に手を当てると失われた視力を元に戻した。
「嘘‥見える!目が‥目が見える!」
「この姿では始めましてだなロザリー、俺の本当の名はバアルだ」
「バアル‥シグマじゃないの?」
バアルは今までの事を掻い摘んでロザリーに説明した。
「神様!?バアルは神様だったの??」
「そうだ、まあ遠い昔の話だがな」
「どうしよう‥私とても失礼な事を‥ごっごめんなさい!」
ロザリーは今までの無礼を思い出し、少し震えている。
「怖がらなくて良い、ロザリーお前を愛してる」
バアルはロザリーを強く抱きしめた。
「良いの?私汚れてるのよ」
「関係無い」
「嬉しい‥うっうぅ‥」
ベルゼブブは地獄に落とされる前は神の座に居た、異界の邪神ネメシスとの壮絶な戦いの末、勝利を収めるも穢れた神は相応しくないと、他の神や天使達と共に地獄に追いやられた。
(全て思い出したぞ!俺の敵はサタンでは無い‥女神フローラと邪神ネメシス‥そして神!ん?神の名が思い出せん??そういう事か、神はこの世界を捨て別次元に行ったか‥愚かな)
「シグ‥えっとバアルはこれからどうするの?」
「俺は神だ好きに生きる、誰にも邪魔はさせん」
「あの‥私も居てもいいの?」
「当然だロザリー、俺の妻になってくれ!‥嫌か?」
「嫌じゃない!貴方と一緒に居たい!」
2人は見つめ合っていると。
「くしゅん!」
「ん?ああ風呂の最中だったな、体を温めて来なさい」
「うん」
ロザリーは風呂に戻る。1人になったバアルは考え込む、コレからの行動をどうするべきか。
(サタンは最早敵ではない‥俺の天使になる野望を阻止してくれた事に感謝したい位だ。記憶が無かったとはいえ天使等と悍ましい‥ならば敵は女神と天使それにこの地、異界の門がある黒の森に眠る邪神の配下達か)
黒の森の魔獣達は隠された「異界の門」から染み出る魔力により産まれる。封印された門はネメシスの配下達が守るように眠っている。
(忘れていたが、確かパイモンが門を探していたな、アレに見つけられるとは到底思えんが‥)
「今ここを離れたら、ベータ達は王都に向かったと思い俺を追うだろう、聖地に行けば女神との戦いになる‥此処で待つか」
少し経つとロザリーが風呂から出て来た。
「あっ‥」
「どうした?」
「なんか恥ずかしくて‥」
照れるロザリーを見てバアルは心が熱くなる。
「カッカッカッ!可愛い奴め」
スローン城 ルークの部屋
ルークの部屋にマモン ケルベロス ガブリエル カイが集まっていた。
「そんな事になっておったとわ‥ドレイクめ迂闊な」
マモンは息子の不甲斐なさに呆れていた。
「今研究所の3人を呼んだのは向こうの動きを探る為だ、必ず何か痕跡を残すだろ?」
「そうね、普段なら気付かない事でも「何か」を探せば違和感は見つけられるわね」
「ケルベロス確認だがドレイク以外は操られていないんだな?」
「うん、魔族や悪魔の中に数名薄い匂いが感じられるけど、ドレイクが一際濃いよ」
「あっあの‥」
カイが小さく手を上げ何か言いたげだ。
「カイどうした?」
「多分ドレイクの目的がわかります、少し前からあるデータを何度も見てましたから」
「本当か!?」
「感心しないわね‥他人のアクセス記録を覗くだなんて」
ガブリエルが不機嫌そうにカイを睨む。
「ごめんなさい‥「嫉妬」に抗えなくて」
「そうかお主も「嫉妬」であったか、不憫じゃのう」
その独白はカイの裏切りの可能性も示唆していた。
「父さん、コイツもいつか裏切るよ‥此処で殺そうか?」
カイはじっとしている。最初から覚悟は決めていた。
「カイ、お前の中の「嫉妬」は俺が食い尽くす、いいな?」
「えっ‥それは、いいんですか?私は妻でも無いのに」
「今更だろう?俺はいつもミューで発散してるんだ、そうじゃないと妻達の体が持たない」
その言葉にガブリエルがドン引きする。
「呆れた!貴方その為にあの子生かしたの?」
「ミューも納得してるし、楽しんでるぞ?」
「そうだとしても!あ〜やっぱり魔王ね‥忘れてたわ」
「父さんそういう話は此処では‥」
「そうじゃ生々しいわい」
「スマンスマン!」
「そういう訳だ今夜お前の「嫉妬」を食うからな」
「はっはい!宜しくお願いします!」
ゴホンッ! マモンは大きく咳をすると、話を進める。
「カイよドレイクは何を調べていた?」
「デルタから取り出した器官とその封印方法、それと生体移植の方法に後は‥最近多いのはシスター服?の女性を街の監視魔石から見てるわ」
「監視魔石の話は置いとくとして、レヴィアタンの目的はそれじゃのう、自分に器官を移植するつもりか」
「何の為に?まさかバケモノを産みたいの?」
「奴は「嫉妬」の悪魔じゃ‥アレが有れば世界最強の生物の母になれる、その地位に「嫉妬」したんじゃろう」
その話を聞いた4人は呆れ果てていた。
「異常だよ、世界を壊しかねない狂ってる」
「私は少し分かるかな‥「嫉妬」は物凄い執着心と独占欲に駆られるの、私もルーク様しか見えてなかったし」
「カイお前のお陰で何とかなりそうだ」
「そうじゃな、目的さえ分かれば後は罠を張るだけ、生体移植に使う手術台に拘束魔法でも仕掛けるかのう」
「それならドレイク用に、器官の封印を解いて手にした時に、強力な解呪を掛けてあげたら?」
「それは良い‥次いでにメッセージも仕込むか、そうなれば敵はレヴィアタンのみ」
順調に進む中、ケルベロスが名乗り出る。
「レヴィアタンと戦いたい!オレが殺すよ!」
「ケルベロス‥そうだな最強の悪魔の一角を倒せば箔が付くか、良いだろうやって見せろ!」
「やった!初めて全力で戦える!」
その言葉にガブリエルは凍り付く、今感じる魔力でさえ推定でマモンより強い‥それがまだ強くなると断言していた。
(末恐ろしい‥流石は次期魔王ね)
アメリア連邦 首都ニューキャッスル
そこにはディアスとファイの姿があった、2人ギルドに向かう。先日張り出したパーティーメンバー募集に応募があった様だ。
「応募は2人だって、どんな人かな?楽しみだ!」
「ねぇ!ねぇ、本当に仲間を増やすの?」
根暗のファイは抗議の声を上げる、仲間とコミュニケーションが出来ない為だ。
「2人だと心許無いよ、相手は魔王だよ?」
「それはそうだけど〜」
ギルドに着くと待ち合わせの席に向かう。2人座っていた、ドワーフと人間の女性だ。
「お待たせしました!御二人が希望者ですね?」
ドワーフが立ち挨拶をする。が‥その異様な姿に驚く。
「先ずは拙者から挨拶を、拙者はドク元軍人だ」
「あの‥その武器は?」
ドクと名乗った男性は腰に背中にと、7本の剣を携えていた。
「これは形見の様な物だ‥同士達のな」
「そうだったんですね、えっと始めましてディアスです、こっちはファイ」
ファイはディアスの後から挨拶をする。
「どっどうも‥」
(何なのこのドワーフ剣だらけじゃない、調べてみるか‥)
ここは聖地に近くまだ通常通信が届く。
(えっと‥ドワーフで元軍人名前はドク‥7本の剣っと、ヒットした!)
送られてきたデータにファイは驚く、軍の特化部隊セブンスドワーフの隊長で現在指名手配中。
(何よコレ‥危険人物じゃない!)
「募集内容が魔王討伐と書いてあったが本当か?」
「ああ!奴を倒す為なら何でもやるつもりだ」
「気に入った!拙者はここに入るぞ」
「やった!これから宜しくドク!」
隣で座っている女性が不機嫌そうに見ている。
「ねぇ〜私‥僕の事忘れてない〜?」
「ごめんなさい!えっと」
「ディアスだよね〜さっき聞いたよ〜僕はパイモン宜しく!」
パイモンは以前の少女の姿から成人女性に変わっていた。
「パイモンはどうしてうちに?」
「わた‥僕も魔王に恨みがあってね〜」
(探し物が見つからないから暇つぶしだよ〜)
ファイがパイモンの名前を見た事を思い出す。
(コイツ確か悪魔だ!何かで見た!あぁどうしてこう厄介なのが集まるのよ!)
「アイツに恨みがあるなら歓迎するよ!宜しくパイモン」
「今後とも宜しく〜」
2人はディアスのパーティーへの加入申請をギルドで終えると、今後の話を始めた。
「ディアスよコレから何処に向かう?」
「西のユーラ大平原は何も無い、最近北に出来た亜人の国に行こうと思う、そこから西のアグレスト公国を目指す」
「焔の里か‥国と言うには余りにも小さいが、大平原を抜けるよりはマシか、相分かったそれで結構!」
「ドクは独特な話し方をするね〜何で〜??」
「昔北の大陸にあった侍の国の言葉だ、国の極秘文書を見て気に入ってな、まだまだ使いこなせていないが‥まあ憧れだ」
パイモンが面白がって北の大陸の事を話す。
「知ってた〜?北の大陸を滅ぼしたのも魔王らしいよ〜?」
「なっ何と!それは本当か!?」
ディアスは唇を噛みしめる。
「アイツそんな事まで‥」
「大きな戦いがあったとは聞いていたが、魔王の奴め‥必ず報いを受けさせる!」
(アハハ!コイツら面白〜い暫くはコイツらで楽しもう)
パイモンは目的の異界の門が見つからず半ば諦めている。有り余る時間を潰す為に各地で「殺し」「奪い」「犯し」を繰り返していたが、最近はそれも飽きて人間の振りをしながらパーティーに入ると、そのパーティーを崩壊させるのを楽しんていた。次の目的はファイだった。
(この2人出来てるよね‥あぁ楽しみだな〜女を奪われたディアスはどんな顔するかな〜アハハ!)
パイモンは不気味に笑う‥




