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覚醒


       聖地 アルファの部屋


 ベッドで横になる2人、スヤスヤと眠りに就いていた。


「ん‥ん?‥私は‥」


 アルファはゆっくりと目を覚ます。


(寝ていた??ヒューマノイドの私が‥何故??)


 ヒューマノイドは例外のガンマを除いてメンテナンス以外では眠らない。しかしアルファとプサイは寝ている。


「ンン‥スゥースゥー」


 プサイはアルファの隣で寝息を立てていた。


(プサイの寝顔‥可愛い‥)


 激しく求め合った記憶が蘇り顔が赤くなる。プサイを起こさないようにベッドから出ると、掛けていたローブを纏う。


(ストレス値がほぼ0‥頭が軽い‥ん?何だ?体のラインがおかしい?)


 アルファは確認する為に全身が映る鏡の前に立つと‥そこには今までの粗暴な姿ではなく美しいアルファの姿が写っていた。


「なっ!?えっ‥私なのか??」


 確認する様に顔や体を触る。


(私に何が起きた??眠っていた事と何か関係が?)


「マザー答えろ!私に何が起きた!」


 ピッ! マザーからデータが送られて来る。


・プサイとのメンタルケア後 両者の進化を確認 前例の無い現象


・アルファのストレス値の正常化 「傲慢」が新たな能力クイーンオブハートに変化


・クイーンオブハートの影響により外見が変化


・基本スペックの飛躍的向上を確認 


(こんな事が‥私達はただ愛し合っただけ‥)


 考え込んでいるとベッドからうめき声が聞こえてきた。


「ヴヴヴ‥アアア!!」


「プサイ!大丈夫か!」


 プサイの体が波打ち形状が安定しない。


「ギギギギ!!!!!!」


 プサイの体が完全に溶けスライムの様な液体状に変化した。


「プサイ!プサイ!」


 アルファの声に答えるように足下に液体が集まり、1つに纏まると人間の高さに立ち上がる。


「プサイ私が分かるか?」


 透明な体が肌色に変わり頭の辺りに口が作られる。


「アルファおはよう!何だか体が変なんだ」


「落ち着いて聞いてくれ、私達は進化したようだ」


「進化‥ん?プサイ普通に話せる!」


「そのようだな‥進化の‥」

「これでちゃんと伝えられる!アルファ愛してる!心から愛してる!」


 突然のプサイの告白に顔が真っ赤になる。


「わかった!わかったから落ち着くんだプサイ、能力に変化はないか?」


「んん?あっこれかな?」


 プサイは液体のようにプルプル震えると人間の姿になる、本来の青年の容姿に。


「何時もは軟体でグチャグチャだったからね、これでやっと普通に動ける」


「本当にプサイなのか?」


 アルファはプサイの顔を両手で触る。


「あっ信じてない?だったら続きやろ!」

「あっ!ちょっと!」


 プサイはアルファを抱き抱えベッドに寝かせる。


「まっ待て!」


「だーめ!」


「そうじゃない、違うんだ!」

「ん?違う?」


 アルファは恥ずかしそうに答える。


「姿形では無いと言いたいが‥私が好きになったのは何時ものプサイなんだ、今の姿は好みでは無い‥ゴメン」


「‥うっ嬉しい‥アルファありがとう」


 プサイは何時もの姿に変わると、更に醜く逞しく変化した。


「どう?少し凶悪になってみた!」


「あっああ‥素敵だ」

(ゾクゾクする‥)



         2時間後


 アルファはクローゼットの奥に仕舞っていた本来の正装に着替える。以前に渡された時はその綺羅びやかさから、自分には似合わないと着るつもりは無かった。


「スカートなんて初めてだ‥どう?似合ってる?」


「可愛いよアルファ、凄く似合ってる!」


「そっそうか‥」

(私が‥かっ可愛い‥)


 アルファはプサイに対する話し方が柔らかくなっていた。本人に自覚は無い。


「これからは正装でいるつもりだ‥これが私の本来の格好だから‥」


「皆に自慢するよ!プサイのパートナーだ!って」


「はっ恥ずかしいから程々にね‥」


「プサイも着替える、えっと‥こんなだったかな?」


 プサイは思い出しながら服を再現する。


「アルファどう?カッコイイ?」


「ああ、カッコイイよ」


 着替え終えた2人は一緒に部屋を出ると、女神の元に報告向かった。


         祈りの間


 女神は祈りの間で人間達の純粋な祈りを集め力を蓄えていた。


 ガチャ! ギギー 扉を開けアルファとプサイが祈りの間に入る。それを見ていたメタトロンが行く手を阻んだ。


「それ以上我が神に近寄るな‥」


「黙れ堕天使‥お前に用はない」


「なっ何だ‥その力は!?お前は何者だ!」


 生まれ変わったアルファの力を目の当たりにし、メタトロンは怯えていた。明らかにアルファの方が強い。


「フローラ様に話がある其処をどけ」


「意気がるっ‥」

「動くな‥死にたいのか?」


 プサイの腕が刃に変わりメタトロンの首を捉える。


「下がりなさいメタトロン」


 女神の一声でメタトロンはすごすごと後ろに下がる。


「フフフ‥その姿、漸く目覚めたようね」


 アルファは跪くと女神に問う。


「はい、愛を知り新たな力に目覚めました、フローラ様はコレを待っていたのですね?」


「貴方は始まり‥最強の「大罪」モデル「傲慢」、覚醒の鍵は愛‥他の6人の「大罪」タイプは愛では無く欲に塗れた、貴方ただ1人が希望だった‥苦しめてごめんなさい、誰かに教えられた愛では覚醒には至らない」


 女神はアルファの後ろで控えるプサイを見る。


「目覚めさせたのはプサイね‥最も醜く最も美しい、貴方なら納得出来る‥」


 女神はアルファの前に立つと手を取りアルファを立たせる。


「フローラ様?一体何を?」


「貴方はもう跪く必要はありません、私が神の座に座れば地上を治めるのは貴方‥これからは女王を名乗りなさい」


「女王‥私が?」


「共にこの世界を救いましょう」


「はっはい!お任せ下さい!」


 ここに新たな女王が誕生した、女神が認める名実共に真の女王が。


        祈り間 入口 外側


 アルファとプサイが部屋を出ると、ディアスとファイに出会う。


「ディアス本当に?本当に行くの?」

「ああ!もう決めたんだ!」


 アルファはゴミを見るような目でディアスを見ていた。


(まだ生きていたのか‥)


「アルファ!ディアスを誘惑しないで!」


「止めないかファイ」


 アルファは2人に見向きもせず通り過ぎた。プサイも後に続く。


「何よアレ‥行きましょディアス!」

「うっうん」


         祈りの間


「母上!会いに来ました!」


 メタトロンが2人に殺意を向ける、今にも殺しそうな位に。


(まだ居たのね‥すっかり忘れてました)


「我が子よ何用ですか?」


「はい!魔王討伐の旅に出たいのです、アイツは俺が倒して見せます!」


(厄介払いに丁度良い‥)


「なんと頼もしい‥ディアスよ冒険者となり魔王を討ち果たして見せよ!勝利の凱旋を心待ちにして母はここで待つ」


「はっ!!」


 ディアスは敬礼をすると部屋を後にする。


「ねぇディアス本当に行くの?」

「見てただろ、許しは貰えた直ぐに出るよ!」

「えぇ〜」


(マズイ‥マズイよ‥旅に出たら定期メンテナンスが出来なくなる!どうしよう‥カッパを誘うしか)


 カッパの能力「メンテナンスルーム」をあてにしていたファイだが、勿論断られる事になる。



      夜 マーロ シグマ一行


 マーロに滞在して一週間が経とうとしていた。シグマが娼館から出て来る。食べられないとはいえ魔力の補給をしていた。


(こんな事を何時まで‥俺はどうすれば良い?この体のままでサタンと戦うのは無理だ‥ヒューマノイドの体には限界がある)


 頭をガリガリと描きながら宿に向かう。すると目の前に数人の人集りが出来ていた。


「お願いします!私を買って下さい!」

「しつこいぞ!」

「他に行け他に!昔のお前ならまだしも、今のお前なんて誰が喜ぶんだ!」


「お願いします‥もう5日、何も食べて無いんです‥」


 女性は男にしがみつく。


「ああ!鬱陶しい離れろ!」


(哀れな女だ‥)


 男達は女性を振り解き娼館に向かう。


「うっ‥うぅ誰か助けて‥」


 女性の前でシグマが立ち止まると、足音を聞いていた女性が顔を上げる。


「わっ私を買って下さい!何でもします!」


「ん?その瞳‥目が見えんのか‥」


「目が見えなくても頑張ります!お願い私を買って」


(こいつなら喰っても誰も不審に思わんな‥)


「ふむ‥いいだろう買ってやる、来い宿に行くぞ」

「ほっ本当に?」

「手を出せ、連れて行く」

「はっはい!ありがとうございます」


 シグマは女性の手を取ると宿に案内する。宿に着くと夕食の残りを貰い簡単なサンドイッチを作る。


「ほら、ここに座れ‥それとコレを食え、腹が減ってるのだろう?」


「いいんですか!?」


「いいからさっさと食べろ、腹が鳴ったら興醒めだ」


 女性は5日ぶりの食事を泣きながら食べている。


(俺は何をしている‥どうせ殺すのに)


 食事を取り終わると女性は自己紹介を始める。


「私はロザリー、貴方のお名前は?」


「俺‥ワシはシグマだ」


「シグマ様ですね!精一杯ご奉仕させてもらいます!」


 ロザリーはボロボロの服を脱ぎ始めた。下着姿の彼女を見てシグマは驚く、体は細く栄養失調なのが見て取れる。


(駄目だ‥今のコイツを喰っても腹の足しにもならん‥)


「気が変わった、帰って良いぞ」


 ロザリーの顔が絶望に染まる、お金が稼げないと食べていけない。その場で土下座をし懇願する。


「お願いします‥抱いて下さい‥何でもしますから」


(鬱陶しい‥殺すか?)


 涙を流し震えるロザリーを見ていると‥段々と殺る気が削がれてきた。


「わかった、金は払う取り敢えずもう泣くな」


「それなら奉仕をさせて!」


「ワシがあの場に居たのは娼館だからだ、分かるな?」


「なら‥どうして私を?」


(お前を喰うとは言えんな)


「ワシは眠れないんだ、朝まで話し相手になれそれで良い」


「それだけで良いの?」


 シグマはロザリーを抱き上げベッドに寝かせると、隣に横になった。


「ロザリーと言ったか、お前が話をしろワシの話はつまらんからな」


「‥ベッドなんて久々‥温かい」


 ロザリーは身の上話を始めた。3年前ダンジョン攻略の手応えが無くなり、話し合いの結界パーティーはマーロを目指し森に入る。森での死闘は想像を絶しパーティーは崩壊、何とか辿り着くも視力を失い、生き残った仲間からは持物を奪われ置いていかれた。


「酷い事を‥それで路上で身売りか、死のうとは思わんかったのか?」


「子供が居るの、王都の親類に預けたまま‥あの子の声が聞きたい‥会いたい‥」


「金を稼いで誰かを雇うつもりか?」


「目が見えないと分かると誰も引き受けてくれない‥だから他の方法、ここにあるゲートを使いたいの、聞いた話だと王都まで直通って言ってた」


(ゲート?初耳だ‥)


「ゲートとは何だ?」


「外の人は知らないよね、ここに来てから知ったんだけど地下に王都に繋がる道?があるらしいの、物流の無いマーロに食料や物資を送る為に」


「ここが落ちない理由はソレか‥なるほど、ん?それならどうして直ぐに帰らない?」


「個人では使わせて貰えないの‥何とか管理者に会えたんだけど、お金を要求されて‥」


(3年で貯まらなかったのか‥法外な値段を要求されたな)


「子供に会いたいか?」


「今直ぐにでも会いたい!」


「ワシ等はここでの仕事が終わったら外に出る‥付いてくるか?」


 シグマはハッとする、らしく無い事をしている自分に。


(俺は何を言っている??俺は‥)


「良いの!?本当に?付いて行く‥連れてって!」


「まだ暫くはここに居る、それまでワシの世話をしろ‥飯も食わせてやるベッドも使って良い」


 ロザリーはシグマに抱き着き大声で泣き出した、この地獄からやっと抜け出せると。


          翌朝


 朝食の場に見知らぬ女性を迎えベータ達は戸惑っていた。


「おいシグマ!この女は何なんだ?」


「ワシが買った女だ、名はロザリー暫く共に行動するぞ」


「はあ?正気かよ!何勝手に決めてんだ!」


「落ち着けガンマ、シグマ説明を頼む‥納得出来るやつをな」


 シグマは掻い摘んでロザリーの身の上話をした。それを聞いたガンマが涙を流していた。


「うっうっ‥酷い‥辛すぎる‥何でそんな目に合わないといけないんだ!」


「落ち着けガンマ‥ロザリーさんも困ってるだろ」


「シグマ優しいんだね、そんな一面があったなんて知らなかったよ」

(どういう事?やっぱりベルゼブブでは無い??)


「捨て置けんくなった‥スマン」


「イイぜ!オレ達が王都まで送ってやろうじゃねぇか!」


「おいおい、王都までってマジかよ‥」


 魔王の根城まで行く気マンマンのガンマを見てベータは頭を抱える。


「皆さんこれからお世話になります!」


「ああ任せてくれ!絶対に送り届けてやる!」


「ハハ‥どうするのベータ?」


「もう知らん!成るように成れだ!」


 食事を終えると、魔獣狩りは昼過ぎからに決め各自自由行動になった。


「ロザリーこれから買い物に行くぞ」


「私もですか?」


「お前の服を買う、それと髪も切るぞ、そのボサボサ頭は見てられん」


「そこ迄していただかなくても‥大丈夫です!」


「抱くなら身綺麗な女が良い、これはワシの為だ気にするな」


「はっはい!」


 髪を切り洋服を買いドロシーは見違える程綺麗になった。


「ふむ‥悪くない、さて‥そろそろ飯にするか、行くぞ」


「あの‥下着や替えの服まで、何でここ迄?」


「勘違いするなワシ好みにした、ワシの為だ」


 シグマは自分の為と言い聞かせていた。らしく無い行動を肯定する為に。


「ここにするぞ」


 2人は昼食を取る為店に入る。


「メニューを読んでやろう、何が食いたい?」

「あっ‥私は1番安い物で」

「駄目だ栄養のある物を食べろ、ガリガリでは抱く気も失せる」

「はっはい!」


 2人は何気ない話をしながら食事を取った。


(何だ?‥俺らしくない、俺は何をしている‥)


 食事を終え帰り道。


「シグマさん?シグマさん聞いてますか?」


「ん?何だ?」


「も〜立ち止まったら私も動けないんですよ?」


 ロザリーは繋いだ手をブラブラしている。


「スマン、そうだったな」


「何か考えてたんですか?」


「ワシらしく無いと思ってな、ワシは本当は悪人だぞ?」


「嘘ですね!今まで会った誰よりも優しい人です!私が保証します!」


(俺は‥どうしたいんだ?何を求めてこの女を‥)


 ベルゼブブは本来の目的、天使になる事は諦めていた、ヒューマノイドの体になり女神やルークへの復讐のみで動いていたが、弱体化した体‥1人で戦える訳もなく戦意を失いかけていた。そしてロザリーと出会い出口の無いその現実に自分を少し重ねていた。


「この後は外で魔獣を狩る大人しく宿で待ってろ」


「あっあの‥帰って来ますよね?」


 ロザリーは不安に駆られていた、また置いて行かれるのではと。


「安心しろワシは強い、必ず戻る‥心配するな」


「でも!でも!」


「不安か?」


 ロザリーは頷く。目が見えない事がさらなる不安を生む。


「ならコレを預ける‥」


 懐から金貨の入った袋を渡す、魔獣狩りで稼いだ大量の金貨を。


「嘘‥これ全部金貨?凄い‥」


「もしワシが帰らなくとも、それが有ればゲートを通れるだろう、お前にやる好きにしろ」


「疑ってごめんなさい‥私最低です‥ごめんなさい」


 泣きそうなロザリーの肩を抱く。いつの間にか情が湧き始めていた。


「ロザリーよ、今夜はワシの話を聞いてくれるか?」


「はい!是非聞いてみたいです!」


「帰ったらたっぷり話すぞ、待ってろ」


 ロザリーによりベルゼブブは変わりつつあった、プサイの様にベルゼブブの覚醒の時が近づく‥


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