聖剣
翌日 スローン城
「入るぞ、おはようドロシー」
ルークはドロシーの部屋に来ていた。
「おはようございます、今日は何の御用でしょうか?」
「ん〜最近話してないから様子を見に来た」
「それでしたらお構い無く」
ドロシーは相変わらず素っ気無い。
「そう言うな、今日は1日ここに居るぞ」
「お断りします、お帰り下さい」
「大事な妻を放って置けない、何か話をしよう」
ドロシーはヤレヤレと溜息をつく。
「以前伝えた通り私は子供を望みません、子供を望む貴方の期待には答えられません」
「わかってる無理強いはしない、ドロシーを尊重するよ」
「ならお帰り下さい、私から話す事はありません」
ルークはドロシーを抱き締める。
「寂しい事を言うな‥」
「私の目的は果たされました‥最早生きる意味も」
ドロシーはエルフが自治権を得た時点で、その役目を終えていた。
「なら一緒に生きる意味を探さないか?」
「‥どうして貴方はそこ迄‥」
「エルフの国を認めた時の‥あのお前の笑顔がまた見たくてな」
「アレは気の迷いです忘れて下さい」
「嫌だ、あの笑顔を見るまで何度でも来るぞ」
ドロシーはまた溜息をつく。
「本当に変わった魔王ね、私の何処がそんなに良いんだか‥フフ」
ドロシーは久々に笑った気がした。
武装都市マーロ
「漸く朝か‥寝る必要の無いワシ等には、この時間が1番つまらんな」
「フガッ‥フガッ‥ンン〜」
ガンマはイビキをかいて寝ている。
「なぁガンマはどうやって寝とるんだ?羨ましいんだが‥」
「分からない、僕も寝たこと無いから」
本人に聞いても何となく寝られるらしい。
「寝顔見てたら何かムカついてきたな‥おいガンマ!朝だぞ!」
ゴン! ベータがガンマの頭を小突く。
「ガッ‥いってぇ!何すんだよ!」
「アホ面見せてないでそろそろ起きろ」
「取り敢えずご飯に行くよ、多少の補給にはなる」
「えぇ‥マジかよ、魔力ならお前が吸ってオレ達に分ければ良いだろ」
シグマがガンマの頭をガシガシ掴む。
「ここが暫く拠点になる、ワシらが一度も食事して無いと怪しまれるぞ」
「噂が広まるのはあっという間だ、迂闊な行動は控えろよ?」
「わかったって食うよ」
4人は食事を終えるとギルドに立ち寄る。
「ここがギルドか!おお〜強そうな奴等がいっぱい居るぞ!」
「落ち着きなよガンマ、間違っても喧嘩は売らないでね」
「でも戦って見たいだろ?どれくらい強いのか、まあオレ達には勝てないだろうけどな!」
「声が大きいって!周りから見られてるよ!」
子供の戯言に大人達は苦笑する。
「よう坊主あんまり大人達を舐めるなよ?」
体格の良いスキンヘッドの男性が近寄って来た。
「あぁ?何だオッサン?」
咄嗟にタウが間に入る。
「ごめんなさい!悪気は無いんです!コイツ何時も調子に乗るんで」
「タウ何謝ってんだよ!」
一方ベータとシグマはカウンターで魔獣の討伐依頼を受け報酬の話をしていた。
「へ〜金貨だけじゃなくて貴重な魔石や魔剣なんかもあるぞ、面白いな」
「年代物の酒もあるな‥」
「ん?シグマ酒が好きなのか?初耳だ」
「最近ハマってな、これが中々に美味い」
後ろがガヤガヤと騒がしくなる。2人は振り返ると渦中のガンマ達が喧嘩をしていた。
「何やってんだアイツ‥騒ぎを起こすなと言った矢先に‥」
「ふむ‥ガキにはいい薬だ相手の方が強い、気が乗らんが場を収めるか」
シグマの言葉通りガンマはスキンヘッドの男にボコボコにされていた。
「もう諦めろ坊主ふらついてるぞ?」
「何でただの人間なんかに‥クソが!」
勢い良く殴り掛かるガンマだが‥簡単に腕を掴まれ投げ飛ばされる。
ガシャーン! ガンマはテーブルに叩きつけられた。
「ここ迄だ坊主!これ以上は命に関わる」
「はぁはぁ‥命のやり取り上等だ!皆ご‥」
ゴン!! 脳天からシグマの一撃が入りガンマは気絶した。
「まったく‥世話の焼けるガキだ、タウ!コイツを頼む」
タウがガンマを背負うと、シグマが大声を上げる。
「お騒がせしてすまない!これはお詫びだと思って受け取ってくれ!」
シグマが注文した食べ物と飲み物が、各テーブルに配られる。
「あんたが父親か?こう言っちゃなんたが、もう少しちゃんと躾けた方が良いぞ?」
「父親では無いが、忠告感謝する今回の事でいい薬になっただろう」
スキンヘッドの男はシグマの目をじっと見る。
「あんた強いな‥どうやったらそこ迄‥」
「いやワシもまだまだよ、ガハハハ!」
「お〜い、シグマそろそろ行くぞ〜」
ベータがシグマを呼ぶ。
「おう!では失礼する」
ガンマを起こすため一度宿に戻る事になった。
宿に着き数分
「うっ‥いってぇ〜」
ガンマが頭を抱え目を覚ます。
「やっと起きたか‥」
「あのハゲ何処行った!」
「あれだけヤラれたのにまだヤルの?」
タウの言葉にガンマは顔を赤くし反論する。
「フルアーマーなら勝てる!アイツ等皆殺しにしてやる!」
ベータがガンマの前に立ち静かに怒る。
「いい加減にしろよ?俺は騒ぎを起こすなと言った‥聞けないならこの場で解体するぞ」
「でっでもよ!やられっぱなしは!」
「ハッキリ言うぞ?ここに居る冒険者達は上澄みの中の上澄み、世界最強が集まっている‥日々魔獣と戦うバケモノ揃いだ、フルアーマーなら勝てる?数人殺ったとして残りは?」
「うっそれは‥」
補給も無しに世界最強パーティー達を相手にする。その無謀さにやっと気が付く。
「戦ったお前ならよく分かるだろう?戦闘になればアイツが武器と防具に身を包み、仲間の援護強化を受ける、それが何十人も‥勝てるのか?」
「オレ達はナンバーズだぞ!人間に劣るはずが無い!」
シグマが溜息をつく。
「ここ迄馬鹿だとは‥いくらヒューマノイドでもあの体格差では勝てん、お前は特にコア出力が低い‥それを補う為のフルアーマーなのを忘れたか?」
「お前等は悔しく無いのかよ!!」
「ん?ワシらはそもそも負けんからな、相手の土俵には立たん」
ガンマはキョトンとしているとタウが補足する。
「ベータなら狙撃とあの切り札、シグマなら形態変化による超高速戦闘に捕食、僕なら接触吸収による無力化、普通に戦えば人間なんかに負けないよ?」
「答えになってねえ!あの場でどう‥」
「あの場では戦わん!まだわからんか!ワシらがやるのは殺し合い、喧嘩では無い!」
子供の意見と大人の意見、交わる事の無いやり取りが続く。メンツに拘る子供と結果に拘る大人の対比。
「兎に角頭を冷やせ」
「そうだよ、この後魔獣と戦うんだよ?」
「ぐっ‥」
「時間を無駄にした、この後直ぐに森に入るぞ」
3人は荷物から必要な武器を取り出す。
「ん?ベータ、レールガンは持って行かないの?」
「ああ、予定通りアレを試す」
マーロの外 黒い森 深部
マーロの結界の外に出ると辺りは瘴気に包まれていた。
「流石は黒の森深部‥センサーが鳴りっぱなしだ」
「ガンマ!アーマーを敵が来るよ!」
「おっおう!」
ガンマのシグナルに反応し、小型のワープゲートから装備が送られて来る。
「えっと‥これがここで‥」
「ヤレヤレ‥さっさと着ろよ、それまでここを守る!」
正面の茂みからサーペントウルフが5匹飛び出してきた。
「ガハハハ!弱い弱い!」
シグマはウルフ達を素手で殴り殺す。
「次来るよ!」
騒ぎを聞きつけ続々と魔物が集まって来る。
ダダダダダダ!! ベータは先日買った銃を試す。
「安物だったが‥反動も少なく使い易いな、威力も十分だ」
「待たせた!行けるぜ!」
「遅いよ!」
「仕方ねぇだろ初めてなんだよ!」
シグマがガンマの背中を押す。
「存分に暴れて来い!」
「おう!」
背面のブースターに火が灯ると、ガンマは浮き上がり高速で木々の間を駆け抜ける。
「こいつはすげぇ!ホラホラ行くぜ!」
ダダダダ!!左腕のシールド付き小型機銃を乱射する。
「ガンマ右!なにか来るよ」
木の陰からミノタウロスがガンマに向かって跳躍した。
「残念でした!」
ガンマは右腕のグレネードをミノタウロスの口に撃ち込む。
ドーーン!! 爆発と共にミノタウロスの頭が吹き飛ぶ。
「いってえぇぇ!?」
「馬鹿か接近戦でグレネードを使うな!」
ガンマは目の前で爆発したグレネードの爆風と音でダメージを受けていた。
「200m先巨大な反応!魔獣かも」
「おっ!先に行くぜ!!」
「アイツ調子に乗って‥シグマ頼む!」
「任せろ」
シグマの体が見る見る変わっていく、ゴツゴツした青い体に4枚の羽。ベルゼブブを吸収した時に得た姿に。羽音を響かせながらガンマを追う。
「初めて見るが気持ち悪いな‥」
「行くよベータ!」
(蝿の姿に簡単に成れた‥記憶を消した後はもっと苦戦してた筈、やっぱりベルゼブブなのか?)
先行したガンマが目標を視認する。ヒュドラだ。かなり大きい。
「いただき!!」
ヒュドラの頭にグレネードを撃ち込むと爆発と共に頭部が無くなった。
「楽勝!」
「ガンマ離れろ!!」
「えっ?ガッ‥」
バチン!! 倒したと思い油断した所をヒュドラの尻尾でガンマは吹き飛ばされた。
「ヒュドラか厄介だな‥」
首がブルブルと震え2つに別れ頭の再生が始まる。
(暴食なら殺せるが‥どうする?)
迷っていると、ベータ達が追い付いてきた。
「追いついた‥ヒュドラ!?コイツのデータが欲しい!」
タウは目を光らせヒュドラに興味を示す。
「シグマ!ガンマは?!」
「奴に吹き飛ばされた!其の辺に転がってなっ」
シグマはヒュドラの一撃を寸前で躱す。
「もう再生したか‥」
ヒュドラの首は2つになっていた。
「コイツの再生速度は尋常では無い!最大火力を叩き込むぞ!」
ドーン! 爆発音と共にガンマが飛び出る。
「やってくれたな!こいつでどうだ!」
ヒートソードで片方の首を切断した。
「もう1つ!」
返す一撃でもう片方の首も落とした。
「ハハハどうだ!」
笑うガンマの目の前で、切断された2つの首から4本の頭が生えていく。
「は??何だよこれ‥」
「ガンマ!中途半端な攻撃では駄目だ!一斉にやるぞ!」
「おっおう!」
4人が構えると同時に‥何かがヒュドラの尻尾を掴み、大きな茂みの奥に引き摺り込んだ。
「グオオオオオオオオオオ!!!!」
ドーン!ドーーン! 雄叫びと共に大地が揺れる。
「次から次に‥今度は何だ?」
グチャグチャ‥咀嚼音が響く。暫くするとソレがゆっくりと姿を表す。
「カラミティドラゴン‥竜種か‥」
「ドラゴン!?そいつのデータ!データが欲しい!!」
「見た所まだ子供だ、今のうちに殺るぞ!」
竜種は放って置くと魔物を食いどんどん成長する、敵地とはいえ無視出来ない。
「オレが1番槍だ!」
ダダダダダダ!! ガンマが機銃を撃ちながら接近する。
「は?マジか‥」
攻撃を止め即座に離脱する。弾はめり込むだけでダメージは無い。
(クソッ特殊弾は持ってきて無い)
ブヴヴヴ‥ 羽音を鳴らしながら宙に浮きシグマが加速する。
「タウ!コイツを喰うぞ!ワシに続け!」
上空に飛び立ち急降下からドラゴンの背中にフルパワーの一撃を叩き込む。
「グオオオオ!!」
(硬い!?鱗を剥がせんと捕食できん!)
シグマに意識が向いた隙を逃さずタウが首にしがみつく。
「いただきま〜す」
タウは両手から能力「吸収解析」を全力で使う、ドラゴンの魔力がドンドン減っていく。
「グオオオオ!!」
危機を感じたドラゴンは首を木々に叩きつけ始めた。
「コイツ!暴れるな!」
ガンマはグレネードを頭に叩き込むが効果は薄い。
「ベータ!アレでコイツを押さえてくれ!オレも切り札を試す!」
「分かった!いくぞ‥「ビーストモード」!!」
ベータの姿が獣人になり体が巨大化していく。補助機無しでレールガンを使用出来る程、有り余ったコアの力を開放する。
「グウウウ‥ウオオオ!!」
ベータはドラゴンを殴り飛ばし地に伏せると、馬乗りになり頭を執拗に叩き潰す。
(今ならベータに視線が集まる!ここだ!)
シグマは「暴食」を使いドラゴンの背中を深く抉り取った。
「ガアアアア!!??」
あまりの痛みにドラゴンは仰け反る。
ドーン!ドーン! ベータの拳で地響きが鳴る。ドラゴンの頭は凹み確実に弱っていく。
「聖剣展開‥フルドライブ!」
各アーマーに内蔵された小型コアの出力を限界まで上げ、右足の装備に魔力を集中させる。膝当てから足先にかけて光刃が形成された。
「タウ!離れろ!」
首にしがみついていたタウが即座に飛び退くと、一直線にガンマが斬り込む。
「EXカリバー!!」
閃光と共にカラミティドラゴンの首が一撃で両断され地面を切り裂く、光刃の切り口から崩壊が始まっていた。EXカリバーは掠っただけでも死に至る「呪」「崩壊」が付与されている。
「はぁはぁ‥やった!やったぞ!」
バチバチ!! シュー! ガンマの右足が火を吹きアーマーが焼ける。
「ガンマ切り離せ!」
「あっつ!忘れてた!」
ゴトンッ! パージされ高熱になったアーマーがゆっくりと溶けていく。光刃の出力に耐えきれなかった。
「ふ〜何とかなったな‥皆大丈夫か?」
4人は損傷の確認をする。
「ワシは問題無い、ドラゴンも多少は喰えた」
「僕も解析出来たよ!ドラゴンのデータ‥貴重なものが取れた!」
「オレは‥見ての通りボロボロだ‥情けねえ」
「何を言う!とどめを刺したのはお前だ胸を張れ!」
シグマはガンマの頭をワシャワシャする。
「そうだよ、アレを使えるのはガンマだけだよ」
「へへへ‥」
「よし、一度戻るぞ魔装具にも今のドラゴンの記録がされてる筈だ、賞金がっぽりだ!」
「金なんて稼いでどうすんだ?」
「金はいくらあっても困らん!ワシは酒を買うぞ、あと女もな」
「食べちゃ駄目だよ?騒ぎになる」
「わかっておる‥遊びじゃ遊び」
4人は街に戻る。ドラゴンが暴れた為か周囲に魔物は居ない。
「しかし‥噂通りここはヤバいな‥いきなりドラゴンとは」
先頭のガンマが振り向き皆に頭を下げた。
「皆ゴメン‥オレが間違ってた、ここで戦う奴等は本物だ遊びで戦ってたオレとは違う」
ベータが軽く肩を叩く。
「お前のEXカリバーは此方の切り札だ、「励起」を与えられた重みを忘れるな」
「ああ!」
スローン城 ステラの部屋
昼食を終えステラが部屋で休んでいると。
カタカタカタ‥ ステラの聖剣が震える、何かに共振していた。
「ん?‥カリバーンが震えてる?」
カリバーンを模したEXカリバーの存在を感じ王の剣は打ち震える。ステラは剣を抜き天に翳す。
「‥戦いたいの?そう‥敵がいるのね、私達の敵が」
ステラは微笑む、剣を抜くと実感するこの世界の王は自分だと。
「フフ‥ルークとジークの幸せは誰にも奪わせない、そう誰にも‥」
王国と魔王を守る為に女神が作った最強の聖剣と、その魔王を屠る為に新たに作られた疑似聖剣、カリバーンは震える‥偽物を倒せと。
スローン城 地下研究所
「ガブリエル!何で通信に出ないのよ!」
レヴィアタンが直接研究所に会いに来ていた。
「何でってこっちも忙しいのよ?貴方の話なんてどうせ愚痴でしょう?」
「今回は違うわよ!ドレイクに会いたいの、アイツ何度かけても出ないのよ」
「出られないのよ、今はマモンと研究所に籠もってるし」
レヴィアタンは取り出した手紙をガブリエルに渡す。
「何これ?ドレイク宛‥」
「それ渡しておいて」
「何?貴方ルークから乗り換えるの?」
「そうよ、当て付けのように子供作って頭にきてるのよ!」
ガブリエルはヤレヤレと肩を竦める。
(愛を知らないなら無理もないか‥)
「コレ渡すけど期待しないでね?」
「それを見たら私に興味を示すわよ絶対に!」
「??何で?」
(そういう暗示に掛かるからよ‥ドレイクなら確実に引っ掛かるわ)
「それじゃ!」
レヴィアタンは答えず帰って行く。
(なんか怪しいわね‥手紙を見てみる?)
手紙の裏を見ると魔法で封印がされていた、ドレイク以外が開けないように。
(あら用心深いわね)
「まあ渡してから内容聞けば良いか‥」
ガブリエルはエレベーターで地下に降りていった。手紙の中に最悪の取り引きが書いてあるとは知らずに‥




