偽物と本物
3ヶ月後 聖地
「んっ‥んん?‥」
ディアスは目を覚ますと周囲を見渡す。
「何だこの部屋、ここ何処だ?」
プシュー 部屋の扉が開いた。
「えっ?なっ何で起きてるの!?」
ファイは驚きを隠せない、ディアスの目覚めは予定に無かった。
「ファイ!会いたかったよ!ここは君の部屋?」
ディアスは起き上がりファイに駆け寄る。
「そっそ‥そう、あっあっあの‥」
根暗のファイはまともにディアスの顔を見れない。
「顔赤くして可愛いなファイ‥」
「あぁああ、まっ待って!待って!‥何処だ‥何処に置いた??」
ファイは机の上に積み重なったガラクタを漁る。
「あっあった!」
ピッ!見つけ出した装置を押すと、ディアスはその場で動かなくなった。
(どうして起きてるのよ!うぅ〜怖かった〜)
ファイはその場にへたり込むと不気味に笑う。
「ぐふふ‥わっ私の事をシータと誤認してた、記憶の改竄は成功、ぐふふ‥コレはもう私の物」
それから2時間後
散らかった部屋を片付けたファイはディアスを再起動させる。ディアスは徹底的に改造され、既に体の半分は機械化されていた。
ピッ!手元の装置を押す。
(この装置も不自然だから、起動と停止は専用コードを作らないと駄目か)
「ん?あれ俺何してたっけ?」
「おおおっおはようディアス」
ディアスは部屋の時計を見る。
「ファイおはようって今昼間だぞ?」
「えっ!あっああ、そっそうだった‥あはは」
(駄目だ怖い‥視線が怖い)
ファイは下を向き固まっている、根暗で誰とも関係性を持たない彼女は他人との距離感が掴めない。
「ファイ?どうしたの?」
ディアスがファイに寄り添う。
「あああっ‥ちっ近い近い!」
「ん?俺達恋人同士だろ?」
ピッ! 耐え切れず装置を押す。
(はぁはぁ‥動くとここ迄違うの?寝ていた時は何ともなかったのに!)
それから1週間
そこには異様な光景が‥
「ディアス、キスして!んん〜」
「仕方ないな‥チュッ」
「ぐふふ!」
2人は施設内でいちゃつく、それをエントランスで見ていたガンマとベータがドン引きしている。
「何だありゃ?等々おかしくなったか?」
「ファイが奴の記憶を弄ったらしいな、それにほら」
ベータがディアスの改造結果を見せる。
「うげっコイツもヒューマノイドかよ‥」
「ナンバーズでは無いが‥量産型でもない、クラス2ndだとよ」
「何だそれ?」
「要は改造人間だな、面白い試みだが‥本人に自覚が無い分メンテナンス性も悪く大変だぞ」
「それよりあの女の格好やべぇな」
普段オシャレをしないファイ、女子力の低い彼女は服選びのセンスが壊滅していた。
「まあ2人の世界に入ってるし問題無いだろ」
「なんか、アイツが可哀想になって来た」
ガンマは哀れみの目で2人を見る。
「ぐふふ、ディアス愛してる?」
「愛してるよファイ」
「キャー!もう1回!もう1回言って!」
そこにシグマとタウが2人の前を通り過ぎガンマ達の所に来た。
「何だアレは?怖くて声かけれんかったぞ」
「同じく‥スルーしちゃったよ」
2人は気不味そうに振り返る。
「ファイがアイツの記憶を弄って、今はラブラブだってよ」
「キツイね‥尊厳破壊か、僕だったら耐えられない」
タウは首を振りその光景を否定する。
「なあ?シグマはあの女でもいけるのか?」
「んん?ハッキリ言うと無理だな、女が全て美しい等とは言わん!特にアレは心が醜い、お前達もそう思うだろ?」
「おっおう‥まさかお前の方がマトモとはな」
ベータが2人の用を聞く。
「それより何か用だったのか?」
「おお、そうだった!ずっとここに居ても退屈だ、どうだ狩りに出ないか?」
(ここに居ても外の情報が殆ど入ってこん、外に出る口実が欲しい)
「どうするガンマ?暇だし行くか?」
「何処に行くんだ?」
タウが答える。
「魔獣のデータが欲しいから、スローン王国内のマーロに向かおうと思うんだ」
「おお!魔獣と戦えるのか!ならイイぜ、おいベータも魔獣相手ならアレが試せるだろ、行こうぜ」
「ん〜そうだな久々に運動するか、それで現地まではどうする?」
「旅も良いけどローのワープゲートを使うよ、帰りは歩きだけどね」
「了解だ、ガンマ準備するぞ」
「おう!」
4人はファイ達の前を通る。
「ねぇねぇ今日も部屋で良い事しよ〜ぐふふ」
「ファイは甘えん坊だな」
「ぐふふ‥」
((見てられんな))
ファイはわざと人通りの多いここを選んでいた、初めて出来た彼氏を見せびらかす為に。
(ああ!満たされる!羨ましいでしょあなた達!)
女性陣を散々馬鹿にしていたファイだが、初めて彼氏ができ豹変していた。自分が馬鹿にしていた女性像そのものに成っているとも知らずに。
スローン城 中庭
「最近調子はどう?少しは強くなった?」
リリスが中庭でルシウスとデートをしていた。
「うっうん、剣の腕はからっきしだけど‥銃が正式採用されてからは成績は良いよ、僕に合ってるみたい」
「へぇ〜そうなんだ?じゃあ今度見せてよ、うちも撃ってみた〜い」
「危ないよ!女の子が持つものじゃ無い!」
「残念でした〜うちは銃なんかより強いよ?魔王の娘なの忘れてる?」
「そうだとしても駄目だよ、もし怪我なんかしたら大変だ」
リリスは少し不服そうにすると椅子に座る。
「過保護過ぎ〜つまんな〜い」
「そうだ今度射撃試験があるんだ見に来てよ、教官達が一緒ならリリスさんも撃てるはずだよ」
「も〜何時までうちに「さん」をつけるのよ!うちら付き合ってるんだよ?呼び捨てにしてよ」
ルシウスは恥ずかしそうに答える。
「まだ無理!もう少し待って欲しい‥」
「なら正式に許嫁としてパパに申し出てよ‥うちら付き合ってるけど、今のままだと結婚は出来ないんだよ?」
「それも待って欲しい!君に相応しい男に成ってから申し出たい!」
ルシウスはルシウスなりに将来の事を考えてはいた、理想は数年後、貴族の息子ではなく騎士団での地位を確立してからと。
(はぁ‥頑固ね〜それまで何も起きないと良いけど)
「わかったもう何も言わない、それにお腹空いちゃった何か食べましょ」
2人は中庭から城に入ると侍女に食事を頼んだ。
「食べ終わったらうちの実験に付き合ってね」
「また?」
リリスは実験と称しルシウスの体を強化していた、ルシウスも気付かない程少しずつ。
「今度のは自信あるんだ!ほら!」
リリスは緑色の液体が入った小瓶を取り出す。
「毎回凄い色なんだけど‥」
ルシウスは仕方が無いと肩を落とす。
同日 ルークの部屋
コンコン 部屋の扉がノックされた。
「入れ!」
「失礼致します、ブリュンヒルデ様をお連れ致しました」
侍女とヒルデが共に入って来た。傍らには年配の執事も居る。
「よく来た!会いたかったよヒルデ!」
「ふふ、私も会いたかったわあなた」
2人は抱きしめ合いお互いの愛を確かめる。
「もうすぐ6ヶ月か体は大丈夫か?何か困ってないか?」
「心配性ね、私もお腹の赤ちゃんもとっても元気よ」
ルークは屈み大きくなったお腹を撫でながら嬉しそうに聞く。
「聞いたぞ双子の兄妹だって?良かったな」
「はい!この子達のお陰でルシウスの肩の荷が降ります、これであの子も自由に生きられる」
部屋にヒルデの侍女が報告に来た。
「失礼致します、ヒルデ様のお部屋が整いました何時でもお使いになられます」
「ありがとう、爺や先に行って確認をお願い」
「畏まりました」
執事と侍女は一礼し部屋を後にする。
「あなた‥本当に私がここに居ても良いの?」
「当然だ、自分の屋敷と思ってくれ」
「でもエキドナ様の出産も近いのでしょ?城も忙しいのに私の世話まで」
「俺の我が儘でもあるんだ、産まれてくる赤ちゃんを一緒に抱きたい」
ルークはヒルデの手を取りじっと見つめる。
「もう‥そんなに真っ直ぐ見つめられたら断れないわ」
「なら決まりだ!それとだな‥」
ルークは少し恥ずかしそうだ。
「ん?どうしたの??」
「あ〜えっと‥」
ルーク顔を見てヒルデの女の勘が働く。
「あらあら‥久々会えてに甘えたくなったの?」
コクリと頷く。
「ふふふ、可愛い‥おいで」
ヒルデはギュッと抱きしめる。ルークにとって甘えられる数少ない女性だ。
(あぁ安心する‥俺ってやっぱりマザコンなのかな?)
聖地 大聖堂
アルファはルークに壊された大聖堂の再建や街の復興の指揮を取っていた。
「以上が午後の仕事だ、このペースなら後2ヶ月で終わる、各自励めよ」
午後の作業が指示され司祭達は部下を引き連れ外に出る。
(慣れない仕事は疲れる‥外の空気でも吸うか)
アルファは3階のベランダに出て外を眺める。
(魔王の爪痕‥あぁ早く戦いたい、何故女神は私を出撃させない?今直ぐにでも殺しに出向くのに何故‥)
アルファはフラストレーションを溜めていた、前回の四騎士襲撃時もアルファだけ戦闘許可が降りなかった。今も戦闘行為自体禁止されている。
ビー!ビー!ビー! 頭の中で警告音が鳴り響く、産まれて一度もメンタルケアをしていないアルファのストレス値が等々限界に近付いていた。
「ああ!五月蝿い!!またか‥コレで何度目だ!!」
「ひっ!?‥ゴメン‥キキキ」
アルファを見つけ側に来ていたプサイが謝りながら出てくる。
「そこに居たのかプサイ、すまないお前を怒った訳じゃない‥気にするな」
「アルファ顔色悪い、メンテナンス必要」
「ストレス値が下がらないんだ‥原因は分かっているんだがな」
プサイが地面を這いながらアルファの隣に並ぶ。
「アルファ大丈夫?プサイ協力する」
アルファは隣のプサイの頭を撫でる。
「お前は優しいな、その気持ちだけ受け取ろう」
ビー!ビー!ビー! 警告音が鳴り止まない。
「クソッ‥どうすれば」
「アルファ!メンタルケア必要、誰か頼む!」
プサイが通信回線を開こうとしたその時、アルファが声を上げ制止する。
「やめろ!誰にも知られたくない!」
「ゴメン‥プサイとても心配」
ビー!ビー!ビー! 頭に鳴り響く警告音。
(頭がおかしくなりそうだ‥メンタルケアか)
アルファは隣のプサイを見る、プサイはあたふたしていた。
「プサイは何故私に構う?こんな私に‥」
「アルファ優しい!プサイ大好き!」
プサイはその軟体で醜く忌み嫌われる姿だが、心は綺麗で優しい青年だ。何処にでも侵入出来るその力を戦い以外で悪用したことが無い程に。
「お前なら良いか‥嫌これは失礼だ、お前が良い」
「???」
「協力すると言ったな?プサイ私のパートナーになれ、メンタルケアをしたい」
「ダメ!プサイ醜い!アルファ嫌われる」
自分の事ではなくアルファを心配するプサイ。
(何だ?コアが温かい?ドキドキする‥)
「誰にどう見られようと関係無い、プサイに聞いている、私といるのは嫌か?」
「‥プサイ、アルファ大好き!‥一緒嬉しい!」
いつの間にか頭の中の警告音が止まっていた。
(こんな事でストレス値が下がるのか‥ただの言葉で‥愛‥私の知らない感情)
「プサイ‥その宜しく‥恥ずかしいな」
産まれて初めて顔を赤く染める。
「アルファ!一緒!プサイの宝物!」
この後愛を知ったアルファは新たな進化を迎える事になる、強力なカリスマ的存在に、そして新たな能力を獲得する事になる。
数日後 武装都市マーロ
シグマ達は冒険者に扮しマーロに到着していた。各自髪色を変えたり多少の変装はしている。一目でバレる事はない。
「お〜?魔獣の森の真っ只中なのに活気があるな、どうなってる?」
タウが簡単に説明する。
「ここは手練れのパーティーが辿り着く最終目的地だね、森に湧く魔獣と戦える猛者ばかりだよ」
冒険者達の装備を見てベータが驚きの声を上げる。
「おい!何で冒険者が銃を持ってるんだ!まさか流通してるのか?!」
聖地ですらまだ銃は流通させていない。
「ヤバいな‥一応報告しとくか、タウ頼んだ」
「君がやらないんだね‥まあ良いけど」
ガンマだと適当な報告になると思いタウは引き受けた。
(サタンは何故隣国オルテア連邦に攻め込まない?情報が足りん‥暫くは此処で様子を見るか)
「おい!見ろよシグマ!強そうな女も一杯居るぞ、良かったな」
「ん?ああ、そうだな‥」
「ん〜?なんかシグマらしくねぇな」
「ベータの懸念がお子様には分からんのか?今全面戦争になるとワシらは確実に負けるぞ、それこそ戦いにすらならん」
「そうだとしてもよ〜、いつものお前なら女だ〜!って見境なく襲うだろ!」
「お前の中のワシはそんなに節操が無いのか‥」
(このクソガキが‥)
ベータも気になった点を聞く。
「だが以前より女を喰わなくなったのも事実だ、何があった?」
(マズイな‥疑われている、仕方が無い‥実際女を喰う数は激減した、シグマが異常すぎた週に5人も‥胸焼けしてそんなに喰えんわ!)
「う〜む‥ヘルを喰ってからか?其の辺の女では満足出来なくなった、アレはそれ程美味かったぞ」
それとなく理由をつける。
「ああ〜なるほど味覚が変わったのか、それは辛いな」
「なんか貧乏症みたいだな」
「ガンマ‥それは言い過ぎだよ」
「ワシの話はもういい、それよりアレを見ろ武器屋だ」
シグマは武器屋を指差す。
「銃も売ってるな‥見てみよう何か分かるかもしれない」
ベータを先頭に武器屋に入る。カランカラン! 扉に付いた鈴が鳴る。
「いらっしゃいませ〜」
ベータは女性の立つカウンターに向かう。
「オススメの銃を見せてくれないか?」
「はい!こちらになります!最新のモデルですよ」
ゴトッ アサルトライフルがカウンターに置かれた。
「持って見て良いかな?」
「はい!どうぞ!」
ベータは銃を手に取ると解析を始めた。
(ここからは通信で伝える、皆は武器を物色しながら聞いてくれ)
((了解))
「結構軽いんだな、この魔石みたいなのは??」
女性は不思議そうに見た後ハッとする。
「ああ!お客さん銃は初めてですね、それはレゾナンスギアといって持ち主を識別するんです、それに登録していないと撃てない仕組みなんですよ」
「何の為に?」
「昔は武器欲しさに運搬中の馬車を襲ったり、武器屋そのものを襲うこともありました、女王様はそれを懸念して武器に誓約を付けたんです」
「なるほど、確かに登録してないと撃てないなら奪う意味は無いな」
(この銃思ったより厄介だぞ、弾の規格そのものが俺達のとは違う、機構も簡略化され大量生産に向いている)
(それより気になるのが管理が厳重過ぎる、個人の武器すら登録が必要?‥一体何の為に?)
(国民の裏切りが怖えぇんじゃねぇの?魔王だし)
(ガンマ、そもそも悪魔は普通の銃で殺せないよ?)
(例えだって!オレも殺せるなんて思ってねぇよ)
女性が黙ったベータをじっと見ていた。
「あの‥お客さん?」
「あっすまない、つい珍しくてな」
「お客さん何処からいらしたんですか?」
「アメリアからだ、此処には魔獣を狩りに」
「アメリア!?そんな遠くから‥向こうは田舎だから大変ですね」
アメリアは東の強国で聖地の守護国だ、それを田舎扱いする女性に聞き返す。
「アメリアが田舎は聞き捨てならないな」
「あっすみません!でも選挙?なんてやって普通の一般人が国を運営してるんでしょ?国民が可哀想よ、それに比べたらこの国は玉座が有能な王を選ぶ、安心して暮らせるわ」
「それはどうかな?魔王なん‥」
(おい!下らない話に乗るな!お互いの国を比べても、そもそも交わらない話だ!答え等そこには無い!)
シグマが一喝する。
(すっすまんつい熱くなった‥)
「どうしました?」
「あ〜何でもない、郷に入れば郷に従えか‥確かにこの国は面白い仕組みだな」
「そうでしょ!」
「次いでに聞きたいんだが、これって他国で使えるのか?」
「あっそれは無理です、王国とその同盟国以外に持ち出すと、レゾナンスギアが作動してロックが掛かります」
「そうかありがとう、これ1つ買うよ弾も頼む」
「お買い上げありがとうございます!」
ベータ達は武器屋を後にする。
「う〜む、分からんな‥他国で使えんとはどういう事だ?」
「シグマは何に悩んでんだ?タウ分かるか〜?」
タウはヤレヤレと両手を上げる。
「他国で使えないって事は‥戦争に使えないんだよコレ」
「あっ‥そうか‥んんん?ならこの武器何の為に作ったんだ?」
「そのままの意味を捉えると自衛の為かな?他国は攻めないけど、攻めて来たらコレで迎え撃つぞって」
「魔王ってそんなにゲロアマなのかよ‥聖地で見境なく暴れた奴だよな‥何か極端だな」
(奴め何を考えている‥)
ベータが足を止める。
「しまった!!」
「どうした!?」
「登録の仕方聞くの忘れた!すまん先に宿に行っててくれ」
「何だよ脅かすなよ‥」
タウが宿に案内する。
「明日から魔獣狩りだよ、倒した魔獣は僕に吸わせてね」
「シグマは喰わないのか〜?」
「女以外はもう喰わん!!」
(‥ん?もう?もうと言った?)
タウの視線がシグマに向く。
(まさか‥ベルゼブブを喰った記憶がある??)
「ん?どうしたタウ?」
「何でもないよシグマ」
(通信は駄目だ聞かれる‥僕が先に帰るのも不自然だ、調べるのは此処での狩りが終わってからか)
シグマに疑念を持ったタウだが今は調べる手段がない、暫くは様子見‥予定通り魔獣狩りが始まろうとしていた。




