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欲望


        聖地 地下神殿


「ここに女神が居るのか?」


「ああ、扉の奥‥祈りの間に居られる、此処から先は1人で行け」


 アルファに案内されディアスは女神と遂に出会う。


 ガチャ‥ギィィ 扉を開く。地下とは思えない明るさの中1人の女性が祈りを捧げていた。


「あっあの‥」


 女性は祈りを止め立ち上がると後ろを振り向く。


「よく来た我が子よ、待ちわびたぞ」


「‥」


「どうした?母に挨拶も無しか?」


 ディアスは女神の美しさに息を呑んでいた。


「はっはじめましてディアスです」


「妾はフローラ、知っての通り女神である‥会えて嬉しいぞディアス」


          監視室


 2人の対面をモニター越しにアルファ達3人が監視していた。


「イプシロン2人の会話を拾えるか?」


「ちょっと待ってくれ‥マイクは確かこれだな」


 出際の悪さをシグマが指摘する。


「ああ〜ジレってぇなぁ〜」


「何時もはカイがやってるんだ仕方が無いだろ!」


 アルファが地上で捜索にあたっているガンマに通信を入れる。


「ガンマ、カイは見つかったか?」


「駄目だ!記録に残ってるカイの出たエレベーター出口周辺は跡形もない」


「ヒューマノイドの残骸やカイに使われた部品の確認は出来るか?」


「残骸の数はかなり多いぞ、特定までかなり時間が掛かる‥もう死亡扱いで良くねぇか?」


「マザーは死亡扱いしていない、生きている筈だが‥どういう事だ?」


 アルファはカイの動きを不審に思っている、何故魔王に近いエレベーターを使ったのか、何故本来指揮を取るべき者が前線に出たのか。


「おっ!声が聞こえたぞ、待たせたな」


「漸くか‥さあこれでフローラ様の芝居が見られるな、見ろよあのガキの間抜けな顔‥ガハハハ」


         祈りの間


 ディアスは緊張のあまりフローラを直視出来ない。


「そう固くなるな‥ほれ妾の中に懐かしい力を感じぬか?」


 女神は力を少し解き放つ。


「本当だ懐かしい感じがする?」


「そうであろう、妾達が親子の証‥繋がりでもある」


 ディアスが感じたのは魔王の魔力、それを上手く錯覚させていた。


「母上、俺をここに呼んだのは何の為に?」


「そなたに力を与えようと思ってな‥妾の恨みを晴らして欲しいのじゃ」


「恨み?」


「そうじゃ、そなたの父ルークを倒す為に力を貸して欲しい」


「アイツを倒す‥」


 女神は作り話を始める、完全な嘘そこに真実など1つもない。


「妾は人間達と共に暮らしていた‥それをそなたの父が目を付けてな、抵抗虚しく穢されてしまった‥妾は神聖を失う迄貪られ今の弱き存在に堕とされた」


「そんな‥なんて酷い事を」


「それだけででは無い‥妾が穢れから逃した魂達も己の欲望のままに穢して行った、そなたの母ライラも被害者なんじゃ」


「母上も?」


「知っておるかライラが獣人だった事を」


 ディアスは悪魔の姿のライラしか知らない。


「アイツに悪魔にされた??」


 女神は頷く。


「妾の魂を持っていたばかりに‥魔王に狙われ悪魔にされた可哀想な女じゃ、恨んでやるな」


「何処まで‥何処まで腐ってるんだ」


 女神は最後の一押しをする。


「これを伝えるべきか迷ったが‥ルーク‥魔王はライラを捨て新たな騎士団長の女を孕ませておる、そしてシータもその毒牙に‥」


「は??何だよそれ!何なんだよ!」


 今までの嘘に少し本当を織り混ぜディアスを混乱させ正常な思考を奪う。


「ディアスよ妾の力でそなたを覚醒させる、みなの仇を討って欲しい‥」


「ああ!俺がアイツを倒す!この世界に平和を悪魔の居ない世界を作って見せる!」


 使命感に駆られ自分を物語の主人公と錯覚する、自己陶酔の極み万能感がディアスを支配する。


「ディアスよ側に‥力を授ける」


 女神はディアスの額に手を当て全ての魔力をディアスに渡す。


(ふふふ‥良い器じゃ!この穢れた力全て注ぐ‥)


 ディアスに神の力が継承される。


「凄い!なんて力だ‥勝てる!これなら誰にも負けない!」


 バチンッ! 女神が指を鳴らすとディアスはその場で意識を失った。


「はぁ‥疲れました、でもこれで生まれ変われる人間達に真の救済を‥」


 女神は監視カメラに手を振る。


          監視室


「ガハハハ!酷い三文芝居だったな!」


「全くだ、普通あんなにホイホイ信じるもんかね?」


「アレは戦力としても使う、お前達ボロを出すなよ」


「「了解」」


 女神の合図を見たアルファが指示を出す。


「継承は問題無く終わったな、イプシロン保存している女神の魂達を出せ、私が持って行く」


「いよいよ真の女神様の復活だな」


「なあ?魂だけで神に成れんのか?」


 シグマが疑問を聞く。


「神聖を取り戻せば後は各地の女神像から人間達の祈りを集め力を蓄えられる、神に成るのも時間の問題だ」


「かぁ〜人間共は馬鹿だな、自分達を殺す神を崇めるとは救いようがない」


「救いを求めた神に殺されるなら本望だろ?」


 魂の入ったケースを受け取るとアルファは女神の下に向かう。


         スローン城


 会議が行われ。カイからの情報を聞いたルーク達が事の重大さに息を呑む。


「ここに来て女神の復活か‥不味いのう」


「父さん何が不味いの?」


「アレは追い詰められた人間達の願いが生み出した者、一部の人間達は信奉しておったが‥アレは見境なく命を奪う者よ」


「人間達の敵を殺す為に?」


「悪魔や天使が居なくなれば‥人間の敵も人間すなわち全て死の対象じゃ」


 ルークが考えていた過去の自分を。


「アレは昔の俺にとっても衝撃だった、純粋無垢な殺意それに惹かれたんだな‥美しいと」


「そうじゃな、ルークは憤怒や破壊‥その猛々しさから見たらあの穏やかな殺意は珍しかろう」


 カイから次の情報が伝えられる。


「次の計画よ、数ヶ月後に北の大陸に居る悪魔達をナンバーズが襲撃するわ」


「何の為に?」


「あの地に居る強い悪魔を捕食する為よ、ヒューマノイドの進化と強化を促すの‥その為に呼ばれたのよ地獄からね」


 会議室がざわつく。


「地獄門を開けたのはルシファーでは?」

「どういう事だ!」


「詳しく話せるか?」


 カイは頷くと説明を始めた。


「四騎士が持つ天啓の本はメタトロンが正体を隠し授けた物よ、そしてそれを女神が使ってるの」


 ガブリエルが声を上げる。


「あり得ない!メタトロンが‥アイツ何の為にそんな事を?」


「続けるわよ、四騎士達を食べ尽くした後は直ぐに天使の討伐に動くわ」


 マモンが頭を悩める。


「さっぱり読めん‥メタトロンは何がしたいんじゃ」


 ガブリエルが可能性の話をする。


「もしかして‥神が居なくなったとか?この世界は大戦前の神を誰も知らない、信仰が無くなり力を失った?」


「ガブリエルは神に会った事は?」


「無いわ、メタトロンしか会えない決まりよ」


「それならまだ憶測の域じゃのう」


 ドレイクが天使の討伐に関して提案する。


「潰し合うなら傍観で良いんじゃないかな?」


「セラフが食われたら?奴らとんでもなく強くなるぞ‥勝てるのかドレイクよ」


「天使の理力の方が厄介だよ、それに比べたらヒューマノイドの仕組みを知ってる分こっちが有利だと思う」


 ルークが銃の解禁を指示する。


「機械人形相手なら剣より銃だな‥人間にも使いやすく厳しい鍛錬無しで戦力を増やせる、頃合いだなマモン銃を解禁するぞ」


「それが得策じゃのう、予てから準備していたラインを動かすとしよう」


 カイは情報を全て渡す代わりに技術者として雇って欲しいと願い出る。


「それなら私を雇って欲しい最新の技術を提供するわ、ベルゼブブで試したデータもあるわ」


「ベルゼブブ?そちらに付いたのか?」


「誘い出して実験動物としてね‥哀れな最後だったわよ」


「そうか‥カイの望み通りにしてやりたいが、まだ裏切らないとも言えない、どうしたものか」


 カイは自分の胸を指差す。


「なら裏切ったら自爆するように設定出来るわよ?」


 その目は本気だ。


「そんなに俺の側に居たいのか?」


 カイは頷く。


「仕方が無い‥これだけ重要な情報を聞けたんだ、お前の望み通りにして良いぞ」


「フフ、宜しくね私の魔王様」


(最強の魔王のデータが取れる!最高‥)


 カイはルークを知る事で更にルークに心酔して行く事になる。



        それから数ヶ月


 スローン王国を中心に新たな科学技術が広まり世界は一変していた、剣が廃れ銃が主流に、魔石の価値が下がり銃に対抗出来る魔法が再び注目を集めていた。


         スローン城


 ルークはメフィストからの報告に頭を悩めていた。


「これは酷い‥この国の法律は何のためにあるんだ」


 手元の書類に摘発された奴隷商人の名前がズラッと並ぶ。


「ほぼ全てエルフの奴隷を売っていました」


 エルフは美しく高値で取引される、法令で禁止しても人間の欲望は抑えられなかった。


「保護したエルフ達は?」


「‥」


 メフィストは黙る。


「殺したのか!?何故だ!」


「生かして置いても新たな火種になります‥」


 ダーン! ルークは机を叩く。


「それなら奴隷を買った人間も殺せ!奴らもゴミだ!」


「奴隷を買った者の中には有力貴族も多く、殺せば王国が揺るぎかねません‥」


 特権階級が許され奴隷が殺される現状にルークは怒り狂う。


「巫山戯るなよ‥」


「此方も忠告はしているのですが‥」


「ならばエルフとドワーフを王国民として扱う、幽閉してるドロシーをここに呼べ!」



          10分後


「失礼致します」


 呼び出されたドロシーが入って来た。


「ドロシー話がある」


「とうとう処刑でしょうか?」


 ドロシーの目は死んでいた。


「お前を妻に迎える事にした、エルフ達の立場も見直す」

「本当に‥?本当ですか!」


 ドロシーの目に光が戻りルークに駆け寄る。


「人間達の振る舞いが余りに酷い、許せとは言わない力を貸して欲しい」


「エルフの自治権を約束してください!それなら私は何でも致します」


「分かった何としてでも認めさせる」


 感極まったドロシーはルークに縋り付く。


「良かった‥良かった‥」


「メフィスト、ドワーフの国にも通達を出せ、直ぐに俺に嫁ぐ準備をしろと」


「はっ」


          7日後 


 ドワーフの国からやって来た女性を見て大臣達は激怒していた。


「ドワーフは何を考えている!」

「ルーク様の怒りを買うぞ!」


 ルークの前に立つ女性は高齢のおばあちゃんだった。小さく曲がった腰に杖を突き、白髪の髪を結い歳に見合わないドレス姿。


「よく来てくれた、歓迎する」


「お初にお目にかかります、ヘンリエッタと申します‥見ての通り枯れた身で御座います、どうかお許しを」


 御付きのドワーフがヘンリエッタを紹介する。


「此方に居られるヘンリエッタ様はドワーフの至宝とまで言われた美貌の持ち主、魔王様もお気に召しましょう」


 その言葉に大臣達は怒りを顕にする。


「巫山戯るのも大概にしろ!その者がヘンリエッタなら150を超えていよう、しかも今の兵団長の曽祖母ではないか!」


 御付きは答える。


「そちらからの要求は嫁ぐだけ、誰をとの指名も無かった!此方も協議の結果最善の選択をしたまで」


 メフィストが確認を取る。


「お前達此処で殺されても文句は言えんぞ?」


「覚悟の上」


 睨み合う両者をルークが諌める。


「大臣達よ見たな?これがお前達人間が迫害した結果だ、ドワーフ達の怒りは計り知れん」


「ですが‥彼らは敗北したのです!」


「俺は帰化国民として扱えと言った‥だが現実はどうだ?奴隷の横行、姑息に領地や資源を間接的に奪っていた、正直見損なった」


 心当たりのある大臣達は黙り込む。


「聖人君子になれとは言わん、俺も悪魔だ‥だが今の人間達は悪魔以下だ」


「なっ!それは!」


「悪魔達は俺がやるなと言ったら絶対に守るぞ?破れば即死が待ってるからな‥それに対してお前達はどうだ?」


 大臣達は答えられない、人間の世界では約束や法律を破っても殺されない、バレなければ良いと誰もが思う。


「ヘンリエッタ君を妻に迎える、これから宜しく頼む」


「魔王の方がまともなんて‥不思議なものですね」


「お互い苦労するな」


「本当に、私を嫁がせると言い出した愚か者達にも聞かせてあげたい」


 ヘンリエッタは聡明な女性の様だ、物腰も柔らかく品がある。


 ルークはヘンリエッタに寄り添うと‥


「その心美しいな‥気に入った、ヘンリエッタ若返りたくないか?」


「えっ?その様な事出来るのですか?」


「俺は魔王だぞ?」


「では貴方のお望みのままに」


 ルークはヘンリエッタを魔力で包むと肉体に生命力を流す。


「「おお!」」


 周りから声が上がる‥みるみる内にヘンリエッタは若返っていく。美しい黒髪に整った顔立ちドワーフとは思えないスタイルの良さ、至宝とまで言われたその姿にみな見惚れていた。


「よし!年齢的には28位かな?」


「本当に若返った‥何でも出来るのですね」


 ヘンリエッタの美しい姿に一同が驚く。


「本当にドワーフなのか?」


 御付きの者達が騒ぎ出す。


「これでは当てつけにならない!」


 ルークはヘンリエッタを抱きドワーフ達に舌を出す。


「ヘンリエッタは俺の嫁だ、もう返さん!良いな?」


「くっ‥では、ドワーフの自治権は保証して貰いたい!」


「始めからそのつもりだ安心しろ、大臣達もいいな?」


 大臣達は渋々受け入れる。


「ステラ様がお許しになられるのなら‥」


「許すさ、今の貴族達の惨状を知ったらな」


 その後説明を受けたステラは直ぐに貴族や王国内の改革を始めることになる。


       それから暫く経ち


 北の大陸を監視していたグシオンから通信報告が入る。


「ケルベロス様!四騎士に動きがあります!」


「父さんからの通達通りか、そのまま監視を続けろ」


「はっ!」


 報告を聞きルナも部屋に入って来た。


「ケルちゃんどうする?私達も動く?」


「ルナ駄目だよ休んでないと!お腹の赤ちゃんに障るよ」


 ルナはケルベロスの子を宿していた。


「も〜大丈夫だって!」


「駄目!オレが落ち着かないの!」


 父親としての自覚が芽生えたケルベロスは常時覚醒した姿になっていた。


「オレが先行して様子を見るからルナは砦の指揮をお願い、グシオンやヴィネからの報告を父さんに送って欲しい」


「私の結界なら敵の側まで近付けるのに」


「だから駄目だって!お願いだから‥」


 ケルベロスはルナを抱きしめる。


「なら約束して無理しないって」


 ケルベロスは黙る‥出来れば数人はナンバーズを減らしたい。


「ケルちゃん!赤ちゃんを1人にしないでよ!弟や妹も欲しいんだからね?」


「わかった!わかったから!」


「約束よ?」


 ルナは確認を取ると部屋を後にした。


「さあ行くか」


 ケルベロスは単身北の大陸に侵入する、ナンバーズの四騎士襲撃に合わせてカイから知らされた厄介な能力持ちを殺る為に。



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