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強襲と黒い魔石

 兵士達と冒険者達の準備が整うと短い作戦会議が始まった、兵士の1人から敵の詳細が伝えられる。


「確認された魔物はゴブリン20体ブラッドウルフ8匹オーク5体ゾンビ5体です、ゾンビの1体が魔禍になっているようです」


 マークスが魔禍と作戦の説明を始める。


「皆知っての通り魔禍は人々の不安や魔力の不安定な所に発生する、そして生み出した魔物に取り付いて魔物を生み出しながら移動を始める」


「ゾンビが魔禍の中心は珍しく数が5体‥家族か冒険者パーティーの死体に魔禍が付いた可能性がある、ゾンビが魔禍なので群れの動きは極めて遅い、側面からルークの魔法を皮切りに一気に畳み掛ける!」


 マークスがこちらを見ると周りの視線も集まった、魔法の効果対象の説明と対策を伝える味方に当たっては大事だ。


「雷魔法を使う従来の範囲魔法だと効果時間が長くその間は近づけない、なので上級単体魔法をありったけの数撃とうと思う、敵の上空で発動させる対象は [空を見上げた者] なので絶対に上空を見ないでくれ!」


 皆がうなずくとバルトが確認してきた。


「ありったけと言ったが何発撃てる?」


「20発が限界だ、意志のないゾンビ以外が対象になる」


「そいつはいい!ゾンビはほっとくとして残りは13体か何とかなりそうだ!マークス兵長数はこちらとほぼ同じだ、混乱してる魔物を各パーティーで殲滅するでいいな?」


 マークスはうなずくと馬車の御者に命令をする。


「後続の馬車にはこのままカイラに向かうように伝えてくれ、この馬車は魔物の討伐に向かう!」


 御者は通信魔石で後続に伝えると馬車を街道から外した、森に馬車を止めると馬車から降り周囲の確認をした女性の兵士が指を指す。


「この先に川を見下ろせる小高い丘があります、ルークさんにはそこで準備をお願いします!決して見つからないよう慎重に」


「リオン行くぞ!」


「はっ‥はい!」


 丘を目指し森の中を走る、残された者たちも群れの側面を取るように皆移動を始める。


「見つけた!」


 丘から覗くと魔物の群れがゆっくりと移動していた、リオンが後ろから小声で話しかける。


「ルークさん!バルトさん達も見えます!」


 作戦通りの位置だ、茂みの裏で開戦の合図を待っていた。


「リオン!絶対に上を見るなよ!」


「はい!」


 リオンはうずくまって耳を塞いだ

 ルークは両手を天に掲げると呪文を唱え始める、対象 範囲 を加えながら。


「雷槍よ!天を見上げる愚か者達に降り注げ![ライトニングジャベリン]!!」


 魔物達の上空で次々と雷槍が生み出されていく、雷槍同士が干渉しあい閃光と雷鳴が響く、雷鳴を聞いた隠れている者たちは一斉に耳を塞ぐ。


「ギッ!?ギギ?」


 魔物達が異変に気付き辺りを見渡し空を見上げると‥雷槍が閃光と共に一気に降り注ぐ、辺りに地響きと轟音が炸裂する。


「とんでもないなここまでとは‥」


 目の当たりにした者たちは絶句していた、直撃を受けた魔物は黒く焦げ煙を上げ次々に倒れていく、魔物達は何が起こったのかわからず立ち尽くしている。


「行くぞ!突撃!」


「お前たち一気に仕掛けるぞ!」


 マークスとバルトが飛び出し仲間達も一斉に後に続く。


「ルークさん!大丈夫ですか!」


 魔力が枯渇したルークは気絶していた、意識が戻るとすぐにリオンから貰ったエーテルを取り出し一気に飲み干す。


「はぁはぁ‥思ったよりかなりキツイな」


 上級単体魔法の同時連続使用は初めてだった。


(ここまで負担がかかるとは)


 仕方が無い魔装具の魔力回復の魔石に魔力を流す。


「リオン!戦いはどうなった?」


「見てください!圧倒してますよ!」


 丘から下を見るとバルトが斧を振りゾンビを蹴散らしていた。


「邪魔だ!!」


 両断されていくゾンビ達、ゾンビは最弱の魔物である、死体に低級霊が宿っただけの腐った体ゆっくり歩いたり這い回る位しか出来ない。


「兵長!頼みます!」


 大盾を持った兵士がオークを盾で殴り倒すとマークス兵長が槍をオークの頭に突き立てる。


「グオォォォ‥」

 

 オークが断末魔を上げる。

 

 次々と魔物達を倒していく、もう数えるほどしか残っていなかったがゴブリンが1匹逃げようとしていた。


「逃がすな!」

「弓兵やれるか!」


 2人のリーダーの声で弓兵とハンターは弓を構え魔石に魔力を込めると矢が風を纏う。


「「当たれ!」」


 2人の声が重なる、放たれた矢はゴブリンの頭と体に直撃した。


「ギイィィイ」


 最後のゴブリンが倒されると残りは魔禍を宿したゾンビだけとなった。


「ふ〜〜何とかなったな!お前ら大丈夫か〜?」


 バルトは振り返り仲間達に声を掛けると仲間達も手を挙げて答えていた、マークスはゾンビを槍で突き動きを止めると女性の兵士に命令する。


「魔禍の浄化を頼む」

「はい!すぐに始めます」


 ルーク達が丘から降りて合流すると浄化が始まる。


「女神フローラの名の下に[世界の歪みよ鎮まり給え]」


 女性が魔石の付いた短い杖に祈ると魔禍は徐々に小さくなって消滅した、ゾンビも浄化され動かなくなった。


「この格好からすると5人は冒険者の様だな」


 マークスがゾンビの体を調べていた‥するとゾンビから魔石が出てきた、黒い魔石だ魔石を酷使すると黒く変色することがある、中の魔法陣や触媒が劣化すると起こる現象らしいが。


 リオンが珍しそうに黒い魔石を見ている。


「普通は魔石の効果が弱くなると教会で交換するのに、この人はずっと使ってたんですね黒い魔石は初めて見ます‥何か不気味ですね〜」


(確かに黒いと言うより禍々しい初めて見るがこれが魔石の成れの果てか)


 皆が見ていると兵士が銀色の袋を持ってきた。


「教会から黒い魔石の回収はこの袋が指定されているので、見つけたらこの中にお願いします」


 手分けしてゾンビから魔石を回収して行く。


「結局黒いのは1個だけでしたね」


 リオンは残念そうにしている。


「何で残念そうなんだ?」


「だって珍しいじゃないですか」


(それはそうだが臆病なくせに好奇心は旺盛だな‥)


「それでは諸君馬車に戻りカイラに向かおう、今回の報酬もそこで支払われる事になる」


 馬車に乗り込むとさっきまでの緊張が解け皆の顔が緩んでいく。


「ルークさん金貨3枚ですよ!何に使います!?」


「う〜ん‥教会に預けて貯金かな」


「えぇ‥カイラの町は交易も盛んだから色々な物が集まるんですよ!」


(まあ薬師は色々な物が集まる所は宝の山だろうな)


 取り敢えず目的地にしているドワーフの国を目指している事を伝える。


「ドワーフの国に行く予定なんだ、そこで良い装備を整えようと思ってね」


「あぁ〜なるほどドワーフの装備は高い事で有名ですからね、でも魔法使いならエルフの作る装備の方が向いてるような?」


 魔法使いの一般的なイメージはローブを着ていると思われがちだが、あんな格好で戦闘など出来ない。


「エルフの装備は耐久に不安があって1人で戦うにはドワーフの高耐久の装備が向いてるんだ」


 リオンは不思議そうな顔をしている。


「ルークさんパーティーは組まないんですか?」


「さっきの戦いを見てどう思う?仲間とはいえ後ろからあんな魔法撃たれたらどうする?」


 リオンの顔が青くなっていく。


「困ります‥戦闘の度にあんな爆音聞かされたら鼓膜が破れちゃいますよ〜」


「だろ?魔法は桁違いに強いけど周りに与える影響も桁違いなんだ、炎だと熱風が風だと暴風が氷だと冷気が、1人だとそこを考慮しなくて良いから楽なんだ」


 自分の魔力で創造した魔法は自分には全く影響が無い、でなければ炎魔法で火達磨になる事になる。


「そうなんですね、でも1人は寂しくないですか?」


「恥ずかしいが最強の魔法使いになりたいんだ、1人だとパーティーに埋もれず目立つし名を上げやすい」


「確かにパーティーだとリーダーやパーティー名で呼ばれちゃいますね」


 ふと気になった事を聞いてみる。


「リオンは1人じゃないのか?」


「僕は家族でパーティーを組んでて皆カイラで待ってるんです!、王都に依頼された薬を届けてこの馬車はその帰りでして」

 

「それは災難たったな」


「はい‥まさか王都の周辺で魔物の群れに会うとは」


 話をしていると御者が声を上げる。


「カイラの町が見えてきたぞ〜」


 ようやく町に着く事に皆が安堵したのかどっと疲れた様子だ。


「早く休みたい〜」

「取り敢えずメシだろ?」

「報告書書かなきゃ‥」


 馬車の中は騒がしくなっていった、初めての実戦を終え確かな手応えを感じながら今日の出来事に不安も感じていた‥王の不在に初めて見た黒い魔石、あの禍々しさは?


 旅の期待と不安の入り交じる中カイラに到着しようとしていた。




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