膠着状態
旧魔王城 セラフ達
「なぁミカエル、ルールの縛りはあの場だけだろ?今からサタン達に仕掛けないか?」
ラファエルは無鉄砲な発言に釘を刺す。
「ミカエルがサタンの相手をするとして、我々2人でマモンやレヴィアタン裏切り者のガブリエルその他複数の幹部達を相手に?正気ですか?」
「俺達も部下達を連れて行けばいいだろ!」
「我らは補給も拠点も無いのですよ、今のまま全面戦争でもやる気ですか??」
ミカエルが振り向きウリエルの提案を否定する。
「サタン達が有利なのは明らか、だが奴らは来ない‥その意味を考えろ」
「俺達にビビってんじゃね〜の!?」
「逆だ、いつでも倒せるから相手をしない‥思い出せアイツは1人で我らの相手をしようとしていた事を」
ウリエルはその言葉に憤慨する。
「俺達がサタンの強さを見誤った?そんな馬鹿な!」
「ですがあの自信には何か裏があります、迂闊に動くより先ずは出来ることをやりましょう」
「ラファエルの言う通り先ずはこの地の浄化と拠点化を急ぐぞ、部下達にも伝えよ門外は安全だと」
天使達による拠点建造と周辺の浄化が始まる。
ルーク達 最前線砦
「皆よく頑張ったな、セラフ相手に損害無しは上出来だ」
「セラフ共が現れた時は生きた心地がせんかったわい、レヴィアタンの協力が無かったら全滅してたのう」
約束通りマモンはレヴィアタンの評価を上げる。
「マモン達を助けた事には感謝するが、レヴィアタン此方に付いた意図は何だ?」
「私の目的は最強の貴方が欲しい、世界中の者たちの嫉妬が欲しいわ」
「それは叶わないとしたらどうする?」
レヴィアタンは決意の目を向ける。
「叶えてみせます」
マモンはレヴィアタンの変わり様に驚いている。
「あの傲慢でヒステリックがここまで変わるとは、少しは成長したようじゃの」
「大変だったのよ、蝿が監視してたからずっとヒステリックを演じないといけなかったし」
レヴィアタンは動きがバレるのを恐れ愚かな女を演じていた、嫉妬は相手を欺く事から始まる。
「私の配下は約600名よ貴方に預けるわ」
その数にメフィストが疑いをかける。
「少なすぎる!お前達は最低でも5000は居た筈だ!」
「本当よ、この700年で激減したわ蝿の実験でね」
(実験?そうかあの研究か)
マモンが魔王城で手に入れた資料を取り出す。
「これを見てくれ、城の実験場で手に入れた物じゃ」
ベルゼブブの実験結果に皆が目を通す。
「悪魔を天使に?何だこの実験は」
「ベルゼブブの目的は天使になる事のようじゃ」
ルークは落胆していた、嘗てのライバルが天使を羨む矮小な存在になった事に。
「この実験に8割以上の悪魔が犠牲になったわ」
「それで成果はほぼ0か酷すぎるな」
「最近は自分の配下が足りなくなったから、私の配下を借りていく有り様よ?」
メフィストが魔王城がもぬけの殻だった事に納得したようだ。
「居なくなったのでは無く最初から居なかったと言うことか‥」
「レヴィアタンよアスモデウスは何故あの様な姿に?」
「アレを見たのね、アイツの色欲の力で無理矢理交配させてたのよ、自我は要らないと機械に埋め込まれてね」
「余りにも哀れじゃのう」
レヴィアタンは自分達の処遇をルークに問う。
「それで私達は仲間と認めて貰えるのかしら?」
ルークは少し考えながら。
「良いだろう歓迎する、但しお前の配下達は此処でサマエルの傘下に入ってもらう」
「天使達への捨て駒にするつもり!?」
レヴィアタンは納得出来ない、ここは文字通り最前線になる。
「仕方あるまい、敵だった者達を王都に招く訳にもいかん此処で暫く様子見じゃのう」
「我慢してくれ他の者達への建前もある、いきなり今日から仲間ですは無理がある戦争は遊びじゃない」
「‥わかりました、疑いが晴れたらそれなりの役職もお願いするわね」
「メフィスト部隊の再編を任せる、レヴィアタンの配下の指揮系統はそのままにしてやってくれ」
メフィストはサマエルや側近達と会議室に向かう。
「優しいのね配慮助かるわ」
「使えるものは使うだけだろ?俺はリアリストだぞ」
リアリストと言ったその言葉にマモンが思い出す、アノ無茶な発言を。
「ルークよガブリエルが此方に寝返らなかったら、本当にアノ場全て相手にしたつもりか?」
「ガブリエルが裏切るのは織り込み済みだ、アイツは俺達の足止めをせず合流させたからな、まるでお前達を助けるようにな」
「言われてみれば確かに‥ルークが来なければミカエル達に追いつかれ、殺られていたか」
「それにあのハッタリは会心の出来だ、アイツら真に受けて動けない筈だ‥ハハハ!」
「ワシらも疑心暗鬼にしてどうするんじゃ!」
セラフ達はルークの思惑にまんまと引っかかっていた。
コンコン! 扉が鳴る。
「入れ!」
「失礼します、ガブリエル達の取り調べが終わりました」
ドレイク達が報告に来た。
「報告ご苦労、後でガブリエルを呼んでくれ話がしたい」
「はっ!」
配下の1人がガブリエルを呼びに行く。
「ドレイクよ天使と戦った感想を聞きたい、勝てそうか?」
マモンに聞かれドレイクはウリエルとの戦いを思い出す。
「今のままだと無理かな‥強さの次元が違ったよ」
「んん?本当にそうか?俺にはそうは思えないが」
ルークはドレイクの強さを認めている、弱気な発言に疑問を投げかける。
「ルーク様は僕を買い被り過ぎです!」
「ドレイクよお主はサタンの体を取り込んだ、セラフ達に遅れは取らない筈じゃが」
「ん?俺の体食ったのか?」
ドレイクはその言葉で思い出す。
「すみません!ルシファーから奪還した後奪われない為に吸収しました‥罰は何でも受けます」
ルークはドレイクに近付き確認を取る。
「その割にはあんまり強くなって無いな?セラフと殴り合える体なんだが、ちょっと見せてみろ」
ルークはドレイクの頭に手を当てる。
「何だこれは‥色々混じってやがる」
「多分あの実験のせいじゃろう」
ルークは先程の資料を思い出す。
「ルシファーを覚醒させる為に手当たり次第因子を埋め込んだな、逆に弱体化させるとは愚かだな」
ルークは魔力を流し不要な因子を排除した。
「これでどうだ?ドレイクに合わせて調整したぞ」
ドレイクは信じられない程の魔力の昂りを感じている。
「何だこれ‥力が漲る!凄いよこの体ハハハ!勝てる今ならアイツに負けない!!!」
「ホッホッホ力が迸っておる今ならワシにも勝てるかもしれんのう」
「あっでもこれは僕自身の力じゃ無い‥借り物の力だ」
ルークはそれを否定する。
「ヴァンパイアの矜持はどうした?力を奪うのはお前達の特権だ、それにお前以外誰も俺の体を使い熟せないぞ?」
「ルークの言う通りじゃ、誇りを無くすな気高く有れ」
「あっありがとうございます!そうだ僕はヴァンパイアだ奪う者だ!もう迷わないよ」
ドレイクはヴァンパイアとしての誇りを取り戻した、セラフとの再戦を願うほどに。
コンコン! タイミングよく配下がガブリエルを連れてきた。
「あら怖いわね、何をされるのかしら?」
「座ってくれ話がしたい」
ガブリエルがソファーに座る。
「話をする前に私の仲間達の処遇を聞きたいわ」
「暫くは王都の地下に幽閉する、まあ人質だな」
「人質なら私がなります!あの子達は穢れた私に付いて来ただけよ」
マモンが堕天使達のサンプルが欲しいとルークに伝える。
「ルークよ堕天使を調べたい、数人此方に回してくれ」
「あぁ許可する俺達悪魔と何が違うのか知りたい」
ガブリエルがそのやり取りを聞いて激昂する。
「そんな事許しませんわ!」
ガブリエルが力を開放しようとしたが‥3人の魔力に圧倒される。
「此処で暴れたら仲間も皆殺しにするぞ?」
「くっ‥」
「ガブリエルお前は暫く俺の側に置くいいな?」
マモンがその理由を聞く。
「力を封じて拘束でもすれば良かろうに何故じゃ?」
「使える者は使う、ガブリエルは魔王の愛人とでも噂を流せ噂が勝手に立場を作る、その後に仲間を開放してやる此方の戦力としてな」
ガブリエルは自分の立場を理解した。
「仲間の安全が確保されるなら従うわ、私の体なんて好きにしたらいい」
「ハハハ!あくまで噂だよお前達への疑念が薄まる迄の演技でいい」
「いえ本当に愛人になるわ‥だから私達を仲間だと認めて頂戴」
ガブリエルは必死だった、それもそのはず行く宛が何処にも無い上まわりは敵だらけだ。
「俺達を裏切らないと?」
「そうよ、天使は堕天した時点で粛清対象よ悪魔にも成り切れない私達は行き場がない」
ルークは少し考える。
「ライラ達と話さないとな‥振りで良かったんだが本当に愛人になられると俺が困る」
「えっ?」
ガブリエルは驚いていた、あのサタンが誰かに許可を取ると言い出したからだ。
「驚いたじゃろ?嫁達の尻に敷かれておるんじゃぞ」
「嘘よね?あのサタンが?」
「俺は愛妻家だぞ?」
「プッアハハハハハ!何それ、もう怖く無くなっちゃったじゃない!」
シリアスだった場の空気が変わる。
「よし!王都に戻るぞ!話しはそれからだ」
ガブリエルは隠し事をしている、セシリアにやらせていた実験を。
(天使と悪魔の交配実験は黙って置いたほうが良いわね、取引に使えそうだし)
話を切り上げ外に出ようとした時、少女の声が響く。
「貴方が魔王ねやっと会えた!」
「!?何処から入って来た?」
突然現れた少女に戦闘態勢を取る。
「待って!敵じゃないよ!」
「動けば殺す!じっとしていろ!」
ドレイクが警告しながら少女の後ろに回る。
「手を後ろに回せ!従わないと腕を折る!」
「大丈夫よ、何もしないから」
「お嬢さんどうやって此処に入ったんじゃ?」
少女が答える、あり得ない答えを。
「その扉からよ?」
「巫山戯るなよ僕達に気付かれずに入れる理由無いだろ」
ドレイクの言葉には殺意が込められていた。
「魔王様この人怖い」
「ドレイク落ち着け、この子は多分女神の魂持ちだ」
少女は自分を認識した魔王に飛びつく。
「嬉しい!やっぱり分かるのね、会いたかった!」
(そう言えば最前線の砦に居ると報告があったのう)
「俺はルーク、君の名前は?」
「私はフレア!この砦の兵士長の娘よ」
「フレア正直に答えてくれ、君の力は何だ?俺にすら認識させないその力は?」
少女は嬉しそうに答える。
「私の力は[神隠し]!その名の通り隠れるの誰にも見つかった事無いのよ!」
(俺すら騙す力か‥実質最強のかくれんぼだな、マモンに力を奪わせるか?)
「凄い力だなびっくりしたよ」
「フフフ、凄いでしょ!」
「その力で俺に会いに来たんだな、嬉しいよ」
(ルークよどうするこの力厄介じゃぞ今のうちに消すか?)
ルーク達はこの少女をどうすべきか迷っていた、この力は危険すぎるが相手はまだ子供だ。
「ルーク様お願いがあるの、私を守って下さい!」
「守る?何から?」
その言葉は想像も出来ない内容だった。
「女神から守って欲しいの、他の魂持ちは皆殺されちゃった」
「何だって‥女神が?何故?」
「魂を集めて復活する為だって、「この道は間違いだった始まりに戻す」その言葉が最後だったの」
ルークはマモンに聞く能力を奪えるかを。
「マモンこの子の力奪えるか?」
「奪えるが止めたほうがいいじゃろ、いざとなればその力で隠れられるからの」
「それもそうだな‥分かった俺が保護しようフレア安心してくれ、もう大丈夫だ」
「やった!ルーク様よろしくね!」
メフィスト達が会議を終え戻って来る。
「ルーク様その子供は?」
「どうやら女神の魂持ちだ、しかも女神に狙われているらしいから俺が保護する事にした、手続きは任せるぞ」
「はっ直ちに」
ルークは大所帯になった事を踏まえ、地下のゲートを使う事にする。
「この人数で転送や飛行は面倒だ、ゲートを試しに使おう」
「おっそれはいいのう、ドレイク起動に取り掛かるぞ」
「遂に動かすんだね!」
王国はいざと言う時の為に国境や前線の砦にゲートを設置している、魔石を消費するが開通後は暫く行き来が可能になる。
「帰ったらベルゼブブ側と天使側の情報と四騎士の対策会議か、あぁ女神の事もか問題山積で頭が痛いな」
「ガブリエルよ今までの天使の予想外の動きも説明して貰うぞ?ワシらの納得の行く話をな」
「わかってるわ色々教えてあげるわよ、暗躍してるアイツのこともね」
北の地 地獄の門
「新たな天啓が降りて来ました」
デスが手に持つ本に文字が浮かび上がる。
「どんな内容何だ?」
「天使も魔王も2年は動けない‥それと門は後3ヶ月で閉まるらしいわ、その間に戦力と拠点を作り戦いに備えよと」
「相変わらず具体的な天啓だ、まるで見てきたような」
「でもそのお陰で僕達はここまで来れた」
「そうよ疑いようの無い事実よ」
四騎士達は天啓の指示通りに動く、例えそれが誰かの思惑だとしても。




