戦いの準備と魔法の成り立ち
馬車の中兵士達は魔禍の発生場所の確認を始めている、一方冒険者達は装備の確認と魔装具にはめる魔石を選んでいた。
「何が出るかわからん以上身体強化と自動治癒の魔石は絶対に付けておけよ!乱戦になるとサポートの手が回らんくなるからな!」
バルトが仲間達に魔石の指示と確認をしている、隣でリオンがゴソゴソと荷物から何かを取り出して渡してきた。
「これ使ってください!魔力回復の効果があります」
緑色の液体の入った小瓶を渡される、その色に少し戸惑う。
(エーテルは青色だったはずだが‥)
「これエーテルだよな?何で緑色に変色してる?」
リオンは笑顔で答える。
「僕の特製エーテルです!普通のより回復量が多いんですよ!」
「薬師特製か貰ってもいいのか?お金なら払うよ」
「今回の報酬があるのでお代はいりません!それよりケチって失敗したら元も子もないので」
(確かにリオンの言う通りだ)
エーテルを受け取り腰のポーチの中に入れる。
「あの‥少し聞いてもいいですか?」
「ああ、俺に答えられる事なら」
「実は魔法使いの戦いを見るのは始めてで、魔石で使う魔法と何が違うのかな?と‥」
疑問に思うのも仕方がない、魔法使いの出番は大規模討伐や国家間の紛争が主だったが、平和な時代が長く続いた現在は中級魔法まで使える魔石で十分、長い訓練の必要な魔法使いはなり手がほとんど居ないのが現状である。
「正確に説明すると魔石で発動する魔法は正確には魔術に分類されるんだ」
「魔術って魔法が発見される前のかなり古い時代のものですよね?歴史で習った覚えがあります」
魔術は触媒や魔法陣などを用いて魔法に近い力を生み出す事が出来る、しかし使い勝手はかなり悪く魔術毎に魔法陣を書き換えたり、必要な触媒が違ったり非効率の極みでもあった。
「魔石は用途に合わせて使い分けるだろ?あれは魔石に魔法陣と触媒の性質をもたせてるからなんだ、もし魔法が使用出来るなら魔石ひとつで何でも出来るはずだろ?」
(最近は魔石=魔法の認識が広まっていて魔法使いでさえもう訂正するのを諦めている、魔法使いのエレナも魔法と言っていた位だ)
正しく理解して欲しくなり詳しく話す事にした。
「魔石の効果が決まっているのはそういう事だったんですね!」
「あともう1つ聞きたいのですが魔法書を見ても呪文が書いてないのは何故なんですか?」
疑問に思うのも仕方がない、魔法書には呪文は書かれていない、そもそも魔法は創造によって習得するものである、書かれている内容は殆どの場合概念や習得するまでの修練だったりする。
「魔法はこの世界に魔力を使って物理現象や奇跡を起こす事が出来るが決められた呪文は存在しないんだ、魔法は強固なイメージがなければ発動しないそれを自分の言葉で確定させるんだ、他人が書いた呪文を唱えても正確なイメージが出来ないだろ?」
「えっ魔法ってイメージ何ですか?魔石は魔力を流すだけだから同じようなものかと思ってました‥」
「魔力自体はただの力だから何かを創造しないと効果が無いんだ、そのためにイメージで魔法を創造して最後に自分なりの言葉で対象や範囲や発動条件を追加する事が多い」
魔法使いの訓練が長いのはこのイメージが人によって違うためかなりの時間が必要な為である、言葉を自分で考えるのも想像しやすく確認の意味もある、リオンに大昔の魔法使いの大失敗の話をする事にした。
「大昔に楽にイメージをしようとした、お馬鹿な魔法使いが居て広範囲爆裂魔法に「俺様最強」と名付け修練した結果、寝言で自宅の上空を大爆発させて大騒ぎになってな、それから簡単な言葉でイメージするのが禁止になったんだ」
「はははは‥」
リオンはドン引きしていた、すると探索していた女性の兵士から声が上がる。
「兵長!魔物と魔禍の反応が出ました!」
「場所はどこだ?敵の規模は確認できるか?」
皆の視線が集まる。
「距離は約700m東の川沿いに南下してます、数は‥」
女性の顔が段々と青ざめていく。
「20‥30‥嘘まだいる37‥38‥敵の数38匹確認しました」
こちらの倍以上だ、かなりマズイしかも南下しているならこちらから撃って出ないと町にたどり着く。
「おい!川沿いだと分断しての挟み撃ちは難しいぞ、魔物は魔禍を中心として周囲を囲うように動くが、中心が川沿いなら半円になって分断の効果が薄い!」
バルトが頭をガシガシ掻きながら悩み始めた、それを見た仲間が兵長に提案をする。
「マークス兵長、カイラの町に応援を頼むのは出来ないか?町には騎士団に兵士や冒険者がいるだろ?」
マークスは首を横に振る。
「大臣からの指示で通常配備の兵士や騎士団は動かせない、国王が居ない今各都市が独立を宣言しないとも言い切れない、周辺国への対応もありギルド経由で冒険者にも協力要請が出てるはずだ」
一夜にして世界最強の王国は揺らいでいた、ヴォルグ王に頼り切っていた事が事態をより悪化させている、バルトの仲間の女性が声を荒げる。
「王様は玉座に座れなくなっただけで生きているんでしょ?なら次の王様が決まるまで今の王様に従えば何も困らないはずよね?どうして‥」
(あまり知られていない事だが玉座に座れなくなった王は玉座の呪いにより眠らされ、ゆっくりと死んでいく次の王の邪魔にならないように‥)
「王様は今頃強制的に玉座に眠らされていると思う、この混乱はそのためなんだ」
ルークの説明で皆は今の状況に納得するしか無かった、少しの沈黙の後バルトが話し始める。
「ならこの戦力で戦うか町まで向かって迎え撃つかどちらかしか無いが、どうするマークス兵長?」
「すまないが町で迎え撃つ選択肢は無いと思ってくれ‥王国が揺らいでる今、町に魔物が出たとなると国民の不安が一気に高まる事になる、人々の不安や疑念が集まると魔禍の発生源にもなり得るそれだけは避けたい」
もはや選択肢は無いようだ覚悟を決めるしか無い、バルトが気合を入れるため顔を叩く。
「しょうがねぇ!お前らも気合を入れろ!ここで勝ったら何でも欲しい物買ってやる!俺からのボーナスだ!」
仲間達も覚悟を決めたようだ各々欲しい物をバルトに言い始めた、隣を見るとリオンが女神に祈っていた。
「女神様どうかご加護を‥まだ死にたくないですぅ~」
半泣きで祈る姿はなんとも情けないが泣きたい気持ちは同じだ、最初の実戦がまさかの逃げられない戦いになるとは‥
魔物の群れとの戦いがいよいよ迫っていく。




