追い詰められた者達
各国との戦争が始まり2ヶ月
「ルーク様!戦況報告です、南のドワーフの国の3割を支配下に置き現在も戦闘中との事です」
「東の国境で偶発的に戦闘が発生しています此方の警備の穴を探している模様です」
ルーク達は地図を見ながら戦況の確認と対応に追われていた。
「魔族の介入は最小限にしろ!あくまで人間達の戦争を演出するんだ」
1人の魔族が血相を変えて入って来た。
「申し上げます!ディアス様が失踪されました!」
「どういう事だ」
ディアスの残した手紙を受け取るとその中を見てルークは落胆する。
「これは‥」
マモンが内容を聞く。
「何が書いておる?」
「冒険者になって人間として生きる人殺しはもうイヤだ‥」
「ホッホッホ予想より早かったのう」
空間が歪むルークの怒りで大地が震えていた。
「早すぎるまだ2ヶ月だぞ?我が子ながら情けない‥」
「良いではないか暫く放っておけ、蝿共を誘き寄せる餌に丁度良かろう」
「ベルフェゴール!いるか!」
王都の防衛を任せていたベルフェゴールを呼ぶ。
「ルーク様お呼びですか?」
「城の守りはもういい、それよりディアスのもとに行ってくれ」
「ディアス様が苦戦されているのですか?」
「ディアスが離反した予定通り‥イヤかなり早いがな」
「なっ!」
マモンが経緯を説明する。
「荒療治が悪い方に向かったようじゃの、何れ蝿共にも見つかろう連れ戻すより護衛を付けた方が安心じゃ」
「分かりました失踪したのはドワーフの領内ですね、ルナを連れて行く許可を」
「人選は任せるアレがどう進むか見守ってくれ」
ベルフェゴールはディアスの護衛にルナとケルベロスそれに複数の幹部を連れて行った。
「ルークよ人選を任せると言ったがわざとじゃな」
「ああ、あの2人もそろそろ夫婦になるべきだろ?」
「いつも夫婦漫才やっとるからの」
ルークはため息をつくと椅子に座る。
「どいつもこいつも‥世話を焼かせる」
「さてディアスはどう成長するか見ものじゃ」
コンコン!扉が開くとリリスが入って来る。
「パパ聞いたよ〜兄様が逃げ出したってホント?」
「ああ本当だ」
「アハハ!賭けは私の勝ちだよ〜ご褒美ゲット!」
マモンがリリスに釘を刺す。
「お嬢ここは仕事場じゃ場を弁えよ」
「は〜い!パパ忘れないでよね!」
「ルークよあの娘は危険じゃ全てに無頓着過ぎる、始末すべきでは無いか?」
その言葉に場がひりつく。
「俺を怒らせるな」
「わかったから落ち着け生きた心地がせんわい」
リリスと入れ替わりでメフィストが前線から戻り部屋に来た。
「ルーク様!これからどうされますか?」
「ディアス達の事は聞いているだろ?暫く様子を見る、ライラとステラに監視を付けろ接触する可能性がある」
「忙しいのう〜疲れるわい」
「マモンお前の子供達を使わせてもらう」
マモンは待っていたとばかりに条件を出す。
「条件がある!モリガンをお主の妻にせい!」
「今まで静かにしていたのはコレを見計らってか」
「当然じゃ!あの子は強い魔力に惹かれるヴァンパイアの性じゃ、魔王の妻になれないと知ると次に強い奴を探す‥」
メフィストがその危険性に気がつく。
「不味いですぞ次に強いのはベルゼブブ」
「そうじゃアレに行くなと言っても無駄じゃろう」
(それだけは避けたい‥仕方がないか)
ルークは深いため息をつく。
「わかった受け入れよう、ああ妻達にまた怒られそうだ‥」
「ホッホッホ!これはめでたいのう」
ルークはドレイクを幹部に昇格させる。
「ヴァンパイアとしての力はエリザ以上なんだろ?」
「気付いておったか、アレは特別じゃよワシより強くなるかもしれん」
ルークはドレイクの成長を見て実感していた、この子は力の殆どを隠していると。
「ベルフェゴールの抜けた穴を埋めてもらう王都の警備を任せる」
「ワシから伝えておこう」
「メフィストお前も昇格させる魔族のNo.2はお前だ」
メフィストはその言葉に驚きを隠せない。
「マモン様を差し置いて良いのですか!?」
「ワシは肩書なぞ要らんよ?」
ヴァンパイアの小僧がメフィストと同じ立場になれば必ず配下に不満が貯まる、それがマモンの息子でも。
「それだけお前を信頼している証だ答えてみせろ!」
「はっ!お任せ下さい!」
ルークは各方面の指揮を取るが主力はあくまで騎士団、南のドワーフの国を攻めているが抵抗激しく膠着状態になっていた。
「奴ら金に物を言わせて雑兵まで完全武装しておる、厄介じゃのう」
「レオン団長に聖剣を与えるか‥」
「どのレベルを与えるんじゃ?」
王城の宝物庫には世界中から集めた聖剣や魔剣が保管されている、放出したのは中級までここにはまだ大量の武器がある。
「デュランダルを送れ、ステラからの戦勝祈願とでも言っておけ」
「はっ!」
「そうなると問題はエルフの国ですな、まだ動きはありませんがいつ参戦してもおかしくないかと」
ルークはディアスにエルフの国に聖女が居ると聞かせていた興味を示すように。
「俺の予想通りならディアス達はプリマステラを目指すだろう、聖女に会いにな」
「ホッホッホ悪い顔じゃ」
「あの堕天使も俺の子の魔力に気が付く筈だ、セシリアの驚く顔が目に浮かぶ‥ルナとの約束も果たせそうだ」
「ディアス様がエルフと戦うと?」
「あぁ聖女の本性を知ったらディアスは戦うだろうアレは正義の味方だからな」
魔王の息子とは思えない行動だがディアスを知るものは頷くしか無い。
「ディアス様はどう向き合うのでしょうか?」
「好きにさせるさ、しかし冒険者か懐かしいな‥」
「冒険と言えばルークよ女神に会わなくて良いのか?」
王国からフローラ教を排除してから音沙汰が無い。
「一切の接触は無いな今更会う気もないが」
「それは不気味じゃのう‥もしかするとディアスに接触するかもしれんぞ?」
「何のために?」
「忘れたか?ライラの息子ならフローラの子でもある」
(確かにその可能性も考えられるか)
「ここに来てまた女神か‥アレは何なんだ?」
「ワシにもわからんアレを知るのはルシファーじゃな」
会議が終わりルークはライラのもとに行く。
「ライラ入るぞ」
「ルーク待ってたよ、ディアス逃げ出したんだって?」
「あぁ冒険者になるそうだ」
「情けないけど私達の子ね、コレからどうするの?」
「好きにさせようと思う俺は魔王でしか無いがアイツは自由だ」
「あら?育児放棄?」
「ハハハ!確かにまだ5歳だからな」
「フフ‥冒険者か懐かしいね!」
「あぁそうだな思い出すよライラに出会った時を」
ライラは悪魔から獣人の姿に変わる。
「どう?当時を再現してみたけどこんな感じだよね?」
「もう少し幼かったかな?」
「えぇ〜そうかな?」
ライラは少し若返る。
「そう!その姿だ懐かしいな」
「フフフじゃあ今夜はこの姿でいてあげる!」
「あぁ可愛いな‥俺のライラ」
「昔のルークに戻ってる!」
忘れていた人間の時の感情を思い出していた。
西の魔王城
「レヴィアタンいるか!」
ベルゼブブが部屋に入る。
「何の用だ?」
「サタンの息子が離反した此方に取り込むぞ!」
「はぁ?何の為に?」
レヴィアタンはサタンにしか興味が無い。
「お前の下僕を貸せ戦力が欲しい」
「嫌よ、あなたの部下やアスモデウスに頼みなさい」
「アスモデウスは役に立たんアレは性欲しか無い、この700年で見るも無惨な姿になった‥」
レヴィアタンはため息をつくと現状を悲観する。
「向こうはドンドン戦力が増えるのにアナタは何をやっていたの?」
「その為のサタンの息子だ、奴を此方に引き込めばお前が子供を産める戦力なぞ作り放題だ」
「そう言う事ね‥」
「3人程貸せ俺も出る」
ベルゼブブが動くことにレヴィアタンは驚いていた。
「正気?アナタが死んだら全て終わるわよ」
「今回は全力で行く失敗は許されん」
「はぁ‥分かったわ好きにしなさい」
レヴィアタンが指を鳴らす。
「カイム!バルバトス!フェネクス!来なさい」
3人が姿を表す。
「この3人を貸してあげる、無駄に死なせたら許さないわよ」
「わかっている‥俺もフルフル ベリアル グラシャラボラスを出す負けはせんよ」
ベルゼブブ達は下僕達を連れ出撃した。
「呆れた‥ここまで来ても戦力を小出しにするなんて」
レヴィアタンはルシファー側を見限り始めていた。
(勝てる見込みが無くなればサタンの所に行くのもありね‥追い詰められた蝿は確実に天使に助けを求める、天使との共闘など悍ましいわ)
数日後スローン城
マモンの息子ドレイクが正式に幹部となりルークに謁見していた。
「ルーク様お久しぶりです」
「顔を見るのは3ヶ月ぶりか、部屋に引きこもるのも良いがたまには外に出ないとな」
「ははは、父さんと実験してる方が楽しいので‥」
「聞いてると思うがお前に王都の守りを任せたい」
ドレイクは目を輝かせている。
「あのっ!それは侵入してきた賊を好きにして良いって事ですよね?」
「ん?まあそう言う事だな」
「捕らえた賊は僕のモルモットとして扱って良いですか!」
マモンがヤレヤレと肩を竦める。
「ドレイクや捕らえたら尋問が先じゃ!」
「でも父さん!実験動物今のままじゃ足りないよ?」
ルークがドレイクに尋ねる。
「実験用に捕まえた敵兵じゃ足りないのか?」
「ルーク様出来れば強い魔族か上位悪魔で実験したいんです」
「そうか‥わかった今度何匹か生け捕りにしておこう」
「やった!アレが試せる!」
見かねたエリザがドレイクを叱る。
「ドレイク!就任の挨拶位しないか!ルーク様が優しいとはいえ目に余るぞ!」
「はっはい!ルーク様此度の幹部への昇格有り難くお受け致します!並びに王都の防衛はお任せ下さい」
ドレイクは跪く。
「よろしく頼む、ジークも産まれたばかりだ警戒は密にな」
「はっ!」
コツコツとヒールで歩く音が響く。
「失礼致します、モリガンお呼びにより参上致しました」
銀髪の美しい美女が周りを魅了する。
「遅いぞ何時まで待たせるんじゃ」
「お父様女性は着飾るのに時間が必要なのです」
「メイク何て数分で終わるだろ!」
「お母様はもう少し自分を磨きになっては?お父様も喜びますわよ」
エリザはマモンの方を向く。
「マーちゃんそうなのか?」
「まっまあ着飾ったエリーは見たいのう」
「そっそうか‥」
モリガンはルークの前に立ちその場に跪く。
「ルーク様が私を妻に迎え入れるとお聞きした時は心が踊りました、僭越ながら貴方様の隣に相応しいのは私だと自負しております」
「そっそうか‥他の妻達にも説明があるからもう少し先の話になるが、よろしくな」
モリガンはルークの物言いに釘を刺す。
「ルーク様は魔王なのですよ?もっと威厳のあるお言葉でお話下さい!」
その言葉を聞いたルークはゲラゲラと笑い出す。
「ハハハハハハ!!下らない!威厳のある言葉?そんなのは弱い奴が自分を偉く見せる為のものだ、唯のキャラ付けだよ」
モリガンはルークに見透かされていた美しく着飾るのも尊大に話すのも唯のキャラ付けだと、そう中身が無いから外見だけに拘るのだと。
「そっそんな事は無い!」
「では聞くお前の価値は何だ?」
「わっ私の価値‥そっそうよこの美貌!私より美しい人なんて居ない!」
「この世で1番美しいのはライラだよ、お前はライラの本気を見たこと無かったな」
「あの獣人が?まさか!?」
今まで控えていたメフィストが忠告する。
「ライラ様のテンプテーションはお前のとは次元が違うぞ?我らも理性を失いかけたほどだ」
「なっメフィスト様達も?」
「マモンよ少し箱入り娘過ぎないか?」
「すまんのう甘やかし過ぎたかもしれん」
モリガンは焦っていたこのままでは自分には何も無いと認める事になる。
「なら力はどう?今のお兄様なら魔王より強いわよ!私知ってるんだから!」
その言葉を聞いたドレイクが頭を抱える。
「僕を巻き込むなよ!」
「だってお兄様の本気の魔力は魔王より大きかった!」
エリザが娘に現実を突きつける。
「今のルーク様の魔力は本来の3割程度だぞ?」
「えっ!?3割?」
ルークは謁見の間を結界で包む。
「良い機会だ俺の今の全力を見せてやろう」
暴力的な魔力の塊‥玉座にまるで黒い太陽が存在している錯覚に陥る。
「うっ嘘!ナニコレ‥ばっバケモノ!!」
「ハハハ!可愛い反応だ!」
ルークが指を鳴らすと辺りは平穏を取り戻す。
「俺も必要最低限のマナーや言葉使いは出来るさ、だがそれを常に使う阿呆にはならんよ」
ドレイクがモリガンに言って聞かせる。
「たまに難しい言葉を沢山使ったり専門用語で話す馬鹿がいるよね?何時ものモリガンはそんな感じだよ?」
「なっ何で指摘して下さらないの!?」
「そう言うキャラ付けしてるのかと思って」
モリガンの顔は真っ赤だ。
「コレではわたくしだけ馬鹿みたいじゃありませんの‥」
「ハハハ!可愛いな気に入った!俺の知らないタイプだ楽しみが増えたよ」
マモンがニヤリと笑う。
「良かったのう〜ルークに気に入られたようじゃ」
「あんなバケモノの妻にわたくしが!?」
「力を求めておったじゃろう目の前の男こそ世界最強だぞ?」
困惑しているモリガンにルークが切っ掛けを与えた。
「さっきはお前に何も無いと言ったが、これからは魔王の妻だそれ相応の重荷を背負う覚悟はあるか?今までの虚飾とは違うぞ」
メフィストが問う。
「我ら魔族を率いるお方を支え時には配下を率いる事にもなる、目立ちたいだけなら辞めておけ」
そこにはモリガンの求めたみなを導く強き女性像が頭を過る。
「わたくしがやりますわ!憧れた戦乙女にわたくし以外考えられませんわ!」
「なら決まりだな」
話が纏まったその時飛び込んできた配下が叫ぶ。
「大変です!ベルゼブブが動きました!」
メフィストが部下を立たせる。
「現状を速やかに話せ!」
「はっ!ベルゼブブと上位魔族6体がディアス様の失踪された辺りに向かったとの報告です」
「西の監視部隊は何をしていた!?」
「サマエル様は陽動に誘き出された模様その隙に一点突破されました」
「ルーク様どうされますか?」
ルークは少し悩んでいた。
「ベルフェゴール達なら蝿を少しは抑えれる‥問題は上位6体か、ディアスの戦力はケルベロスとルナか心許ないな」
「負けはせんが勝てるかは怪しいのう」
エリザが名乗り出る。
「ルーク様オレが行こうか?」
ルークは悪い顔をしていた。
「まさかお主‥自分から行く気か!?」
「ハハハ!そのまさかだよ!奴らどんな顔するかな!?」
ルークは久しぶりに大暴れ出来そうでワクワクしていた、ディアス達はまだ何も知らない。




