親子喧嘩
6年の月日が流れた
「うあぁぁん!うあぁぁん」
「ん?おむつかな‥やっぱりか、よしよし今変えるからな〜」
ルークは赤ん坊のおむつを手際よく取り替える。
「フフフ、あなたも慣れたものですね」
ステラが嬉しそうに眺めている。
「それはそうさもう5人目だからな、ステラも初めてなのに慣れたものだろ?」
「ライラやエキドナの子供達でいっぱい練習しましたからね」
ステラは赤ん坊を嬉しそうに撫でる。
「可愛い!フフ‥」
「目元なんかステラそっくりだな」
2人は仲睦まじく話していると外からルークを呼ぶ声がする。
「父上〜!」
「おっこの声はディアスだな」
ベランダから外を見ると中庭で金髪の青年が手を振っていた。
「父上!師匠から1本取ったよ!」
「凄いじゃないか!流石俺の息子だ」
中庭ではエリザによる実践訓練が毎日行われている。
「ディアス!まだ訓練の最中だぞ戻って来い」
「は〜い」
ステラが外を眺めながらルークに聞く。
「ねぇあなた?この子もディアス達みたいに早く大人になるの?」
「いやジークは人間と同じ速さの筈だ、ディアス達は悪魔だからな子供でいる時間は短い」
成長が早く無ければ地獄では死活問題だからと説明する。
「早くディアスみたいに大きくなって欲しい」
「ディアスは子供だよ見てくれは大人でも中身はまだ5歳だ、あのはしゃぎ様を見ただろ?」
「フフ‥確かに」
コンコン!部屋にメフィストが緊急会議を知らせに来た。
「ルーク様ご報告も兼ねて、後程マモン様達と幹部で会議を開く予定ですアノ話もそこで行います」
メフィストが定例以外で幹部を集めるのは珍しい事だ。
「分かった」
「あなたアノ話とは?何かの悪巧みですか?」
「まあそんな所だ」
ルークは赤ん坊をステラに渡すと会議室に向かう。
会議室
「皆集まってるな、メフィスト始めてくれ」
会議には悪魔だけが集められていた。
「それでは今までの進捗を説明します」
メフィストはテーブルに広げられた王国の地図の各都市や砦に駒を置く。
「各都市の貴族や代表の取り込みが完了しました、彼等は魔族に興味を示し魔人化を受け入れ我らの配下に加わっています」
マモンが捕捉する。
「魔人化による不老を教えたら奴ら食い付いてきおったわい、寿命の短い人間には魅力的よな‥ホッホッホ」
「それと戦況ですが上手く膠着状態を演出出来ています、国民の士気も高く経済も活発です」
スローン王国は北の自由都市以外全ての国と敵対していた、それでも尚揺るぎない王国に世界は驚愕し国民は自信に満ちていた。
「ホッホッホ、馬鹿共を騙すのは簡単じゃな勝たなくとも負けなければ勝手に思い上がるからのう、我々は無敵だと」
「マモン発言には気を付けろ、俺は人間も蔑ろにはしない」
マモンは慌てて取り繕う。
「すまんすまん言い過ぎたわい」
「それとルーク様、フローラ教の変わりに複数の新興宗教が確認されましたがいかが致しますか?」
「まさか悪魔崇拝か?」
「いえ‥その‥ステラ様を信仰する女王教、ライラ様を信仰する美獣教、エキドナ様を信仰する美魔教が流行っています」
「皆女なのは国民性の現れなのか?」
「少数ですがベルフェゴール様を信仰する者もおります」
「それはただのファンクラブじゃな」
「放っておけ信仰なんて好きなものを選ばせてやれ、過激にならなければ心の拠り所になる」
「はっ!」
メフィストは次代の子供達についてのこれからを話始める。
「ライラ様との子ディアス様とリリス様は成長著しく、最早上位悪魔では太刀打ち出来ません戦力として十分かと」
「ディアスは俺の子の中では最強だ、アレは俺に届きうる‥此方の切り札にもなるが問題はアノ性格だな」
「蝿共に変化が無ければワシらの勝ちじゃのう」
「続いてエキドナ様との子ケルベロス様と妹のオルス様ですが、2人は魔王の力に振り回されています安定には程遠いかと」
「2人に才能はあるがまだコントロールは無理か、マモンどうにか出来ないか?」
マモンはテーブルに首輪を置く。
「これで力を抑える事は出来るぞ?」
「俺の子供に首輪を付けろと?」
「そう怖い顔するでない、これは透明にも出来る様にしておる」
「分かったエキドナと子供達も交えて話し合うよ」
続いてマモンが研究成果の発表をする。
「それではワシの番じゃな、知っての通りエリーとの子が出来たお陰で一気に研究が進んでな他の悪魔達も子が残せるぞ」
「おお!マモン様それは本当ですか!」
「我らにも子供が!」
「どんな方法ですか!?」
マモンは瓶に入った薬を置く。
「落ち着け今から説明するわい、この薬を種付けしたい女に飲ませればよい唯それだけじゃ」
「マモン言い方に気を付けろ人間は下等動物では無い、それに同意したらステラを裏切る事になる」
ルークはハッキリと言い切った。
「お前達もいいな?人間を攫ったり無理矢理子供を産ませたら殺すぞ」
「ルークよ我らは悪魔!本能のままに動いて何が悪い?」
「俺が言ってるのは体裁の事だ、好き勝手やればその先は破滅だよ‥無理矢理産ませた子も無法で動き出せばこの国は崩壊する統制の効かない奴らなぞ必要無い、その上なら好きに女を抱けばいい子も沢山作れ我ら魔族が世界を取るその力になれ」
「回りくどいがそれが1番なのかのう‥」
「それにマモンも我が子は可愛いだろ?エリザ以外を孕ませる気は?」
「それを言われたら言い返せん、我が子ドレイクとモリガンが腹違いの子を認めはせんだろう」
マモンの子はヴァンパイアである事に誇りを持っている。
「メフィストお前が最初に子を作れ」
「るっルーク様!本気ですか?」
「相手が居るのは知っているぞ」
メフィストは教会が運営していた孤児院の支援をしていた、教会が排除され立ち行かなくなった施設を自分の庇護下に置き管理している。
「ニーナとはそんな関係では!」
「向こうはそうは思って無い筈だ」
孤児院のシスターを纏める代表のニーナはメフィストに惚れていた、知らないのはメフィスト位だ。
「それともあの女は下等動物なのか?」
「ルーク様でも今の言葉は許せませんぞ!あの様な聡明な女はそうはいません!」
「ならさっさと結婚しろ!人間の人生は短いぞ!」
迷っているメフィストにマモンが追い打ちを掛ける。
「よいのか?ニーナが他の男と結婚しても?想像してみい‥ホッホッホ」
ダーーン!!メフィストがテーブルを叩く。
「駄目だ!受け入れられない!」
「答えは出てるじゃないか大切ならそばに置け」
「申し訳ありません」
「ルークは相変わらず優しいのう」
ルークは癇に障ったのか口調が変わる。
「俺が優しい?ハハハ昔の俺ならまだしも今は魔王だぞ」
「なら何故人間を気に掛ける?」
「俺に人間としての記憶を植え付けたお前が言うのか?」
ルークは本音を漏らす。
「今思えば俺の最初の記憶はギルド前からだ‥俺は子供達とそう年齢が変わらないんだよ、それに人間だったお陰でライラ達に出会えた少しは感謝するさ」
「愛妻家な魔王になるとは想像もしておらんかったわい」
「お前達も妻は慎重に選べよ」
「はっ‥」
ルークの本質は魔王そこは変わらない、しかし人間としての自分を捨てても人間達は捨てない。
「ルーク様アレ‥天使の事ですが」
「進展はあったか?」
「いえ、依然手掛かりは見つかりません」
6年探させた天使の痕跡‥だが未だに見つかっていなかった。
「ここまで何も無いとはのう‥」
「最早この世界には居ないのでは?」
「それは無い、4大天使は倒していない何処かに天獄への入口がある筈だ」
3人を含めた幹部達が頭を悩ませていたが1人が気が付いた事を話始める。
「不躾ながら申し上げます、探していないもしくは探せない場所があるのでは?」
「そんな場所は無い!世界中北の滅びた大陸さえ探したんだぞ」
「いや‥待て!そうだ彼処は探して無い!そういう事か!」
ルークが答えに辿り着いた。
「西の魔王城だ!天獄の門を城で隠したな!」
「「あっ!」」
「それなら天使達が降りて来ない説明がつくのう、門を閉じられて動けないか既に蝿共が攻め落としたか」
「ルーク様それならば蝿共を攻めましょう!今なら確実に勝てます!」
「待て!最悪のケースも考えろ天使と蝿共が組んでいたらどうする?」
「まさか!?そんな事は有り得ません!」
答えの出ない議論が続く。
「鍵はあのルシファーじゃのう、蝿はアレに何かを見出したそれは間違いあるまい」
「俺が神聖に触れて産まれた魂‥まさか奴ら天使になるつもりか?」
「一部の悪魔は元々天使だったとの噂もある、その可能性も否定できん」
「ルーク様危険ですが此方からスパイを送りますか?」
「送るだけ無駄だタイミングが悪すぎる」
天使達の所在が分かった以上もう我慢する必要はなくなった。
「メフィスト戦争の準備だ、エルフに偽装してる天使を先に叩くドワーフ領から落とすぞ」
「はっ!敵国に潜伏させている者達に戦火を起こさせます、あくまで王国は被害を受けた側その方向で国民を扇動します」
「ホッホッホ忙しくなるのう」
「ディアス達も前線に立たせて経験を積ませろ!敵国に情はかけるなよ!」
「はっ!」
悪魔達の会議が終わり国取りが始まる。
ルークの執務室
コンコン!扉が鳴る。
「入れ!」
ディアスとリリスが入って来る。
「父上!本当に戦争を始めるのですか!?」
「あぁそのつもりだ」
「今の世界は敵対していても平和です!それをどうして!」
(その甘さ昔の俺を見ている様だ‥やはりリリスと芝居をするか)
ルークはリリスに目配せする。
「兄様はホントに優しすぎ!ねぇパパいっぱい殺して良いんだよね!?」
リリスは嬉しそうに聞く。
「好きなだけ殺せ!それでこそ我が子だ」
「アハハ!やった!それにいい男がいたら皆食べちゃお〜」
「リリスは心が痛まないのか!?」
「キャハハ!ゴミを哀れむなんて兄様らしいわ」
ディアスは次期魔族の長としての自覚が薄い、ステラに憧れを抱く程に人間で在ろうとしていた。
「ステラ母様に何と説明するのですか!?」
「俺が世界を取る事は昔から了承済みだ」
「そんな‥あの優しい母様が許すはず無い!」
「兄様ホントにあの女が好きね〜」
「リリス失礼だぞ!」
ルークはその姿に呆れていた。
(お前はそれでいい自由に生きてみろ)
「ディアスそんなにステラが恋しいか?」
「父上何を?」
「ハッキリ言おう‥そろそろステラを闇に染めようと思ってな」
ディアスはその言葉を聞き怒りをあらわにする。
「それだけは絶対にさせない!例え父上と言えど!」
ルークはその言葉に力で返す恐ろしい程の魔力が渦巻く。
「俺を止められるとでも?お前程度が?」
「命に変えても止める!」
「兄様マジ!?そんなにあの女がいいの!?」
ドン!部屋の扉が勢いよく開いた。
「何をやっているの!?」
「あなた何事ですか!」
「ルーク様一体!?」
妻たちを始めメフィストも入って来た。
「唯の親子喧嘩だ」
「違う!これはステラ母様を守る戦いだ!?」
「「えっ?」」
その言葉に周囲は冷静になって行く。
「あなたどう言う事ですか?」
「ルーク?ディアスがここ迄怒るのは珍しい事よ?何を言ったの!」
「私の事で何があったの?」
「何でもない気にするな」
「父上!皆の前では言えないのですか!」
(正義感が強すぎるな‥ハハハ!魔王の息子とは誰も思わないだろう)
「何があったのか説明して下さい、私の事なら尚更です!」
ステラ達が聞き始める自分が闇に染められる事を。
「と言うことだ、ディアスがキレた意味がわからん」
「なっ!父上何故わからないのです!?」
「ディアス落ち着きなさい!」
ライラが我が子を落ち着かせる。
「ルーク私もステラちゃんを闇に染めるのは反対よ」
「ライラまで反対するのか‥」
「今この国を支えてるのはステラちゃんよ?それを忘れたの?」
「別人になる訳じゃない人間には見破られないよ」
「あなた‥分かる人には分かります」
エキドナも反対の様だ。
(流石に心が痛む後で皆に謝らないとな)
「ステラはどうなんだ?」
「私はあなたに従いたいけれど‥ディアスの言いたいことも分かるから‥」
リリスがその場の空気を壊す。
「何この仲良し空間?うちら悪魔だよ?パパの言ってることが当たり前なのに何でパパが責められてるの?」
「リリス!母様達に対して何て事を」
「兄様は黙ってて!」
(俺の味方はリリスだけ上手いぞ我が娘よ!)
ルークはため息をつくと両手を上げた。
「分かったそれなら俺の負けだ、ステラは今のままだ」
「父上!」
「えぇ〜パパ!何で?」
「リリスは残ってくれ説明する」
ライラ達はこの後お茶会をするらしく皆を誘う。
「ルークも来るんだよ?いいわね」
「ああ、後から行くよ」
執務室にメフィストとリリスを残し皆を帰す。
「ルーク様‥ディアス様は人間になりたいのでは?」
「えぇ!マジ?」
「そうみたいだな‥暫く自由にさせてみるか」
「それよりパパ〜うちの演技凄かったでしょ!」
リリスはルークの膝に乗る。
「ああ、リリスなら舞台に立てるぞ!」
「えへへっそうかな〜?」
ルークはリリスを抱きしめる。
「ハハハ!本当に可愛いやつだ!」
「ね〜パパ〜ご褒美頂戴!ママのドレス!私も素敵なのが欲しいな〜」
「リリス様!ルーク様に失礼ですぞ!」
「構わん、お前は本当に自分に正直だな」
「だっていつ殺されてもおかしくないもん、生きてる間は楽しまないと!」
リリスは自分の立ち位置を本能で理解していた、魔王の娘その可能性、他の魔族の子を簡単に宿せる誰もが欲しがる母体。
「安心しろリリスお前は誰にも渡さん」
「パパ大好き!チュッ!うちもパパの子が欲しいな〜」
「それは無理だな!」
メフィストはこの数年でルークが王として君臨している事に感動していた。
(ルーク様は我らの王になられた‥なんと感慨深い事か!)
「でも良いの?兄様に恨まれちゃうよ?」
「構わんよアレが育つなら何でもするさ‥ただ周りに感のいいヤツが多くて演技するのが大変だよ‥」
「アハハ!パパは演技下手だもんね」
メフィストが今後のディアスの方針を決める。
「ルーク様、ディアス様を予定通り最前線に送ります宜しいですね?」
「最前線で戦いを経験させろ音を上げるまでな」
「はっ!」
「パパ〜うちも行っていい?」
「俺やマモンがいる時は許すそれ以外は駄目だ」
「は〜い」
ルーク達はお茶会に向かう。
西の魔王城
「駄目だ駄目だ!何度やっても上手くいかん!」
ベルゼブブは焦っていた、ルシファーに子を産ませても大した悪魔は産まれずその尽くを殺していた。
「魔王の体だけじゃ駄目みたいだね‥」
「その様だな魂が悪魔でない事がここ迄裏目に出るとは、この6年此方の戦力は全く増えていない!」
「流石にこのままだと負けちゃうね、天使達に助けを求めるかい?今の僕なら門を開けるよ」
「ミカエル達に要求されたのはサタンの魂だ!」
ベルゼブブ達は天使達が戦力を整える間門を守りサタンの魂を差し出す事で神に会おうとしていた。
「でもこのままだと普通に押し負けちゃうよ?何度か仕掛けて全て負けてるんだろ?」
「リリスを奪えれば‥しかし奴のそばには何時もサタンとマモンが居る隙がない」
ベルゼブブもリリスを狙っているルークはそれも織り込み済みだ。
「リリスよりその兄を狙ったらどうだい?」
「どうやって引き抜く?」
「レヴィアタンは?サタンの息子なら興味を示すと思うんだけど‥それに息子なら父親に反感を持っててもおかしくないよ」
「奴の嫉妬が上手く行けば此方に引き抜けるか‥」
ベルゼブブは思考を巡らせる。
「当初はサタンの魔力でルシファーを魔王に置き、その後サタンの魂で天使と交渉する筈がここ迄予定が狂うとは‥」
ディアスを標的に変えベルゼブブ達は動き出す‥




