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ヴァンパイアの力

 王国に帰る予定だったルーク達だがテトラガーデンで足止めをされていた、与えられた屋敷とは別の交渉用の屋敷で対応していた。


「参ったなどうしたものか‥」


 ルークは頭を悩ませている帰国を代表4人に伝えた所2人が反対して出国許可が降りない、次の物資を優先的に回せと要求して来ていた。


 コンコン‥扉が静かに開く。


「ルーク様ルイ商会との接触に成功しました」


「本当か!良くやったエキドナ」


「反対派への交渉も始まっています、指示通りルイ商会に物資の交渉権を与えました上手く行くと良いのですが」


「大丈夫だ交渉なら商人同士の方が上手くいくさ、俺達だと専門的な取引は難しいからな契約の穴を突かれかねない」


 エキドナは続けてこの地の調査結果を報告する。


「天使の名を冠したこの国ですが、天使の痕跡や遺跡等はなく調べた限り無関係かと」


「そうか‥なら魔族の居る王国に当てつけて天使の名前をつけた可能性が高いって事か、なら調査は終わりだご苦労だったな」


 下がろうとしたエキドナに声を掛ける。


「エキドナ相談したい事がある少しいいか?」


「はい、私で御力になれるなら」


 2人はソファーに座り話を始める。


「その‥え〜っとな、うん言い難いな」

「???」


 エキドナは不思議そうな顔で見ている。


「ルーク様それは私に関してですか?もしかして子を授けてくれるのですか!?!」


「待て待て!そうじゃない‥嫌少し合っていると言うか、ふ〜〜いいか誰にも言うんじゃ無いぞ」


「口は硬い方です御安心を」


「俺とライラの事何だが、その出来ないんだ‥」

「出来ない?」

「ああ、子供を作ろうと頑張ってるんだが中々な?」

「あぁそういう事でしたか」


 ルークは顔が真っ赤になる。


「俺に問題があるのかと心配になってなどう思う?」


「それは‥どちらかと言うとライラ様に問題があると思われます」

「えっ!そうなのか?」


 エキドナは自分の分析を話始めた。


「ルーク様は魔王となりました今なら誰でもほぼ確実に子を宿す事が出来ます、ですが唯一の例外が神聖な力や浄化の力を持つ存在です、この世界ではライラ様や他の女神達ですね」


「相性最悪って事なのか‥」


「ルーク様が人間の時なら出来たと思われますが」

「結婚して3ヶ月で魔王になったからな‥」


 ルークは少し寂しそうな顔をしている、この話をライラにするべきか迷っていた。


「ライラ様も気が付いている筈ですあまり考えすぎない様に、いつか解決方法も見つかりましょう」

「そうだな‥でも子供が欲しいと言った時の顔が忘れなれなくてな」


 エキドナはチャンスとばかりに自分の欲望を叶えようとする。


「ルーク様私なら何時でも変わりに産みますよ?それこそ何人でも‥フフフ」

「駄目だ!ライラを裏切れない」

「ルーク様は何時まで人間のつもりで居られるのですか?」

「どう言う事だ?」

「貴方様は魔王その力で全てを奪い尽くすべきです」

「確かに俺の中には獣が居る魔族を甚振って高揚感を感じていた、アレが俺の本能なんだろう今もエキドナを欲しがっている」

「それを解き放つのです!それが本来の魔王!」

「やめておけ‥魂まで貪られる覚悟はあるのか?」


 ルークの目に闇が宿ると魔力そのものが変質する。


「ルーク様気が付かれませんか?その力こそ鍵だと」

「この力?ただ本能を開放しただけだぞ」

「今なら女神の神聖も汚せますよ?」

「なっ!それは駄目だ!ライラを闇に染める気か!」

「ライラ様ならそれも受け入れる筈です」


(大切なライラを闇に染める事は出来ない)


「意気地なし‥」

「その通りだな」


 エキドナはルークに懇願する。


「魔王としての自覚をお持ち下さい‥今のままだと必ず離反する者が現れます‥これ以上期待を裏切らないで」


「そうか‥マモンのあの目‥半ば諦めた様なあの目は俺に期待出来なかったからか、今のエキドナの目もそうだ」


「みな不安なのを隠しています、今の魔王に着いて行くべきか」


(そうだ俺に付いた魔族が裏切らないとも限らない、メフィストやエキドナそれにマモン達が俺を見放してもおかしくは無いんだ、魔族いや悪魔は 善人 ではない)


「すまないそんな簡単な事すら気が付かなかった‥俺は魔王ですら無いな」

「謝らないで!その優しさが悪魔を不安にさせるのです魔王なら力で示しなさい!」


 エキドナは震えていた目の前の弱気な王に幻滅している、こんな王見たくはないと軽蔑に近い目で見ている‥ずっと我慢していた感情が爆発していた。


(あぁ俺は何をやっていたんだ‥魔王を受け入れた筈だ、アイツと1つになったのにまだ人間のつもりでいた)


 ルークは抑えつけていた本能を受け入れる魔王として第二の覚醒が始まる。


「ようやく1つになれた気分だ」


 ルークの目が黒く染まり纏う魔力が見るものを震え上がらせる。


「ルーク様その力強さです!それでこそ我らの王」

「エキドナ褒美だ俺の妻となれ」

「私で宜しいのですか?」

「ああ俺の目を覚まさせたのはお前だその資格がある、それに配下達を納得させる為に魔族から妻を娶る、俺が王だと示す為に」

「仰せのままに」



          4日後


 ようやくルーク達の出国許可が降りた、ルークは久しぶりに屋敷に帰る。


(まだいつも通りに振る舞うか)


「ただいま」


「ルーク様おかえり!仕事は終わったのか?」


「ああ、王国に帰れるぞ」


 部屋に入るとライラ達も待っていた。


「ルークおかえり大変だったね」


「あら御付きの顔どうしたの?顔色悪いわよ」


 ルナ達はエキドナの顔を覗く。


「最近調子が悪いみたいだ交渉も長引いたからな」


 ライラがお茶を淹れて持ってきた。


「エキドナさんも一緒にどうぞ!さあ座って」

「お気遣い感謝しますライラ様」


 エキドナはライラの顔をじっと見つめた。


(ライラ様ごめんなさい)


「エキドナさん?」

「えっ?あっいただきます」


「本当に疲れてるのね、ルーク少しは労ってやりなさいよ」


「そうだなエキドナ何かあれば言ってくれ」

「はっはい!またお願いします」


「???」


 一同がその返答に不思議な顔で見ていた。



          1週間後


 ルーク達はテトラガーデンを出発して王国に帰還の途中だった、順調に見えていたがエキドナから不審な反応があると報告を受けその対策を話し合っていた。


「ルーク様この辺りにダンジョンの反応があります」


「こんな何にもない所にダンジョンが?」


「周辺に人も村も無いわね自然発生では無さそうだしどう見ても罠ね」


 ルナは当然の如く罠だと断定した、エキドナも同じ意見のようだ。


「でも放っとく訳にもいかないよね?」


「ルーク様どうする?罠だとしたら一体誰が?」


 ルーク以外が心当たり無いのは当然である、あの魔族達ならルークがボコボコにしたからだ。


「実はな‥テトラガーデンに到着した夜、俺達を監視していた魔族達を甚振ってな多分そいつらだな」


「ルーク様ズルいぞ!オレも暴れたかった!」

「わざわざ1人で行ったの?もし罠だったらどうするのよ!」

「ルーク皆に内緒は駄目だよ?」

「ルーク様そのような事は我々にお任せ下さい」


 皆から一斉に不満が出る。


「大した事無い奴らだったから顔でも拝もうかと思ってな」


 エキドナが確認する。


「ルーク様トドメは刺されましたか?」

「いや、半殺しにはしたがトドメは刺してない」


「やはりルーク様は甘い魔族にその甘さは不要です!いつか痛い目を見ますよ?」


「耳が痛いな‥もう情はかけないよ」

「はい、遠慮なくでなければ確実に復讐に来ます」

「分かった次は殺す」


 ライラはそのやり取りを見て少し悲しくなっていた。


「ルークその魔族とは分かり合えないのかな?」

「無理だな好戦的過ぎて話す余地も無かった」


 ルナがライラの優しさに少し呆れる。


「ライラは優しすぎるのよ、ルークに勝てないと分かったら多分私達を狙うわよ?その方がルークを苦しめられる筈だから」


 ルークはダンジョンに1人で潜ると提案する、もし罠でも1人なら何とかなると。


「ルーク様せめて私を同行させて下さい1人では危険です!」

「エキドナ落ち着け、俺1人ならどうにでもなるダンジョン毎消し飛ばせば良い問題ないだろ?」


 ルナがルークの答えを否定する。


「それは敵も想定してる筈その上でダンジョンを作った事が罠だと思う、中からは壊せないとか何か条件があったらルークは孤立するわよ?」


「それはそうだが‥」


「ルーク様!なら皆で入れば良い!それなら怖くないぞ」


「あんたホントにアホね!わざわざ罠に掛かりに行ってどうするのよ?」


「アホって言うな!だってこのままスルーしたら誰かがあそこに入るぞ?」


 そこが問題だった、あのダンジョンは消滅するのかそのままなのか誰にもわからない。


「このまま放って置く訳にもいかない、ダンジョンの破壊を優先してエキドナを入れた5人で中に入るぞ、その他の魔族は馬車の護衛だ」


「仕方がないわね‥皆防御魔法を重ね掛けて対策忘れないようにね!洗脳されましたじゃ笑えないわよ特にエリザ」

「心配無用だぜ!吸魔で大抵の魔法は効果無いぞ!」

「気を抜かないで!相手が上位なら終わるわよ」

「おっおう」


 ライラは心配そうな顔をしているルークはそっと抱きしめた。


「大丈夫だ皆強い何があっても切り抜けられる」

「うん、大丈夫だよね」


 5人はダンジョンに入って行った罠だと知りながら‥



    ダンジョン内で待つダンタリオン達


「臆さずに我の迷宮に足を踏み入れたか、お前達後は手筈通りにセーレが各部屋に1人ずつ飛ばす好きな相手を選べ」


「オレはあの銀髪女だ!アイツが1番強そうだオレの爪で切り刻んでやる!」


「なら僕はあのエルフだ」


「俺はあの獣人か弱そうだが仕方が無い‥いやあの魔族の女も貰う」


「セーレ2人はズルいぞ〜1人選べよ〜」


「オセ僕達がさっさと倒せば次も狩れるよ、それに緊急時はセーレを逃さないと僕達の足が無くなる弱いあの2人なら安心だ」


 セーレの距離をものともしない転送能力は貴重なものだ、緊急時は1人だけでも逃げる様に命令されている。


「魔王は我の夢幻迷宮に捕らえる持って15分だ忘れるなよ?では始めるぞ!」



      ダンジョン内ルーク達


「皆これはダンジョンじゃ無い、偽装してあるが魔族が作った物だ」


「ルーク様進まれますか?」


「そうだな‥」


 エキドナの問いに答えようとした瞬間空間に亀裂が入り全員バラバラに別れ転送されていく。


「なっこれは‥皆死ぬなよ!」

「うん!」

「「はい!」」


 ルークは強制転送で見渡す限り白い空間に放り出された。


(転送を妨害しても良かったが敢えて誘いに乗ってみた、さて何が出るか)


 少し待つが何も起きない。


「俺だけ別空間に飛ばしたか」


 ルークは全力で広域サーチを始めるとその広さに驚く。


「何だこの広さ何も無い?いや空間が滅茶苦茶に繋がってるな‥足止めのつもりか?」


 ルークは右手に魔力を込め前方に叩き込む。


「俺を舐めるなよ!空間ごと消し飛べ‥ジェノサイドブレイカー!!」


 ルークから解き放たれた一撃は空間を巻き込みながら遥か彼方まで飛んでいく、夢幻迷宮をズタズタに引き裂かれダンタリオンは苦悶の声を上げる。


「ぐああぁぁぁぁ!!バケモノめ何と言う魔力かこれ程迄とは‥急げそう長くはもたんぞ」


 ダンタリオンは全力で夢幻迷宮の補完をする命懸けの根比べが始まった。



        エリザvsオセ


 エリザは広い円形の広場に転送されていた。


「よう!ねーちゃんオレと遊ぼうぜ!」


「何だお前は?ここは何処だ?」


「つれないな〜見れば分かるだろ?今頃お仲間も1人ずつ殺られてるよ!」


「そうかならお前を倒して助けに行かないとな」


 エリザは戦闘態勢に入る。


「そうこなくっちゃな〜!んんん?まさか素手か?舐めてるのか?」


「安心しろ武器ならある、ブラッディアームズ!」


 エリザから血液が溢れ出し指先から肘まで赤黒い格闘用の武器が作り出された。


「おお〜ねーちゃんも格闘武器か!いいね!オレの爪とどちらが上か勝負しようぜ!」


「そんな暇はないさっさと死ね!」


 オセの姿が変わっていく両手の鉤爪も進化していた。


「死ぬのはお前だ!オレについてこれると思うなよ〜」


 オセは一瞬でその姿を消し圧倒的な速さで音速に到達する。


「ハハハハハハ!どうだ見えないだろ!」


「くだらないな!魔族なら魔力で戦え!足が速い位で喜ぶな」


 エリザの挑発にオセはブチギレる自慢の足を馬鹿にされては黙っていられない。


「一瞬のうちに殺してやるよ!!」


 音速を超えたオセはエリザの正面から全力で腹に爪を突き刺した。


 ガアァァァン!爪は何か硬いものに当たり防がれていた、オセは勢いを殺せずそのままエリザの後方に吹き飛んでいく。


「はぁはぁ‥何だ?何に当たった?」


 オセは振り向くと退屈しそうにしているエリザを見る。


「何だお前!今何をした!」


「ああ?まだ何もしてね〜よ?」

「嘘だ!オレの攻撃をどうやって防いだ!」


 エリザは自分の足下を指差す。


「オレはヴァンパイアだ血液を自由に操れる、周囲は細い糸のように血液を張ってる、お前が攻撃する瞬間に触れた血液が一気に絡め取り強力な弱体効果を与えた」


「弱体したとしても音速の一撃だぞ!」


「魔力障壁に体も強化済み体内の血液も硬化させた、ただの物理攻撃は効かん!」


 エリザの体は不死に近付いていたヴァンパイアとしても最上位の存在に。


「何だよそれ!ズルい‥ズルいぞ!」

「お前は弱い!ルーク様に負けたのも当たり前だ」

「ひっ‥まっ待て!待ってくれ!」


 エリザは全力で魔力を開放する。


「全力で殺るのは初めてだ!イグニッション!!」


「あああぁぁぁぁぁそんな!こんなの聞いてない!」


 エリザから迸る圧倒的な魔力にオセは絶望していた。


「セーレ!キマリス!ダンタリオン!誰か居ないのか!助けてくれ!」


 エリザがゆっくり歩いて迫る。


「来るな!来るなー!」


 オセは逃れようと全力で走ろうとするが動けない。


「何だこれ‥何だよこれ‥」


 オセの両足は血液で作られた鎖で繋がれていた逃げられないように。


「ハハハ!逃げられるわけ無いだろ?さあ!始めようぜ〜〜!!」


 エリザは全力で殴り続けるその顔は狂気で染まっていた魔族として相応しい姿がそこにあった、そう悪魔と成った瞬間だった。




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