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本来の魔法

 ルーク達が開放されて数日が経った、次の目的地には移動手段が無く歩いて向かう為の準備に追われていた。


「ルーク様必要なテントやキャンプ道具一式を揃えてきました、確認をお願いします」


「ありがとうルナ、君のお陰で買い物には困らないよ」


 救世主とは認識されているがここはエルフの国人間に対する当たりは強い、エルフのルナが居てくれたお陰で道具が普通の値で買える。


「お役に立てて光栄です!」


「そんなに畏まらなくて良いって言っただろ?」


「はい、ありがとうルーク様」


 ライラとエリザには食料の買い出しを頼んでいる、観光客用の繁華街ならぼったくられる事も無いだろう。


「確認終わり!後は2人を待つだけだな」


「それならルーク様の特訓をしましょう基本はもう出来てますから、これから覚えるのは魔力の変換です」


「魔力の変換か‥今までやって来たイメージトレーニングが裏目に出るとは」


 魔法を使うのに必要だと教わったイメージの定着

当たり前だと思っていた事が効率の悪い使い方だとルナに教わった。


「本来魔力を別の力に変換して魔法を発動させるのです、ルーク様がやっているのは魔法の召喚ですイメージを投影する形になるので万能ですが複雑過ぎます」


「[クリムゾンエッジ]」


 ルークは真紅の片手剣を出す。


(言われて見れば確かにこれは召喚魔法だ)


「エリザを眠らせたのは確か直接睡眠魔法を流したからだったよな」


「はい、魔力の変換が思うように出来れば触るだけで相手を眠らせる事も出来ます」


 呪文もイメージもいらない最大効率で魔法が使える

確かに魔王もセシリアも呪文すら唱えてなかった、始めから同じ土俵に立ってすら無い事を痛感する。


「ルナ正直に答えてくれ、俺が魔法をちゃんと理解し使いこなせていたらセシリアに対抗出来たと思う?」


「それは‥言っても仕方が無い事です」


(対抗出来たって事だな違う未来もあったのに俺は‥)


 ルークは自分の不甲斐なさに落胆していたそれを見たルナは感謝を伝える。


「ルーク様が捕らえられなければ私達は出会いませんでした、少なくとも私は救われたんです!」


「そうだな今更後悔しても何も変わらない特訓の続きをやろう」


 ルークは指先に集めた魔力を火に変換しようと集中する。


(魔力を燃料として捉え火に変換する‥魔力を燃やす)


 火を出そうとすると長年イメージし続けた創造が頭に浮かぶ、これを発動させると召喚魔法になる。


「癖でイメージが浮かぶ!思ったより厄介だな」


「手本を見せます良く見て下さいね」


 ルナの指先から細い火が立ち昇る。


「出力を上げたらこの火がドンドン大きくなります、これを火球にしたりそのまま放射したり出来ます」


「細かいコントロールはどうやるんだ?」


「そこは呪文で補強します、業火の竜巻とか炎の壁等魔力をその形にコントロールします」


「それなら俺もやってたな、対象を絞ったり範囲を決めたりそこは同じなんだな‥いやそこだけ残っていたと言うべきか」


 ルナの魔力の変換が正しい魔法の形なら本来誰でも魔法が使える、今のイメージの召喚魔法が主流になったのは魔法使いを減らすためだと理解した。


「ルナの魔法の使い方はエルフなら常識?」


「いえ、私が生まれた時は既にイメージによる召喚魔法が主流でした、ですから私の力が異端視され幽閉される事に」


 2人は最悪の出会いだったが運命も感じていた、この出会いが無ければ魔法の本質を理解しないままだった。


「辛い事思い出させてごめんな」


「気になさらないで下さい今は幸せですから」


(幸せか‥俺はどうすればいい?)


「魔力の変換は常に練習しておくよ」


 廊下から足音が聞こえてくる2人は帰って来たようだ。


「ただいまー!沢山買ってきたよ」


 マーロまで歩いて13日程かかるその為大量の食料を買ってきていた。


「ルーク様言われた通り水は買わなかったけどいいのか?」


「ああ、水は魔法で出せるから大丈夫」


 出発の準備は整った各自荷物を分け明日に備える。


「そろそろお休みしよっ!ルーク、暫くはベッドで一緒に寝れないから今日はゆっくりしようね!」


「あっああ、そうだなそろそろ休もう」


「おやすみライラ姉ルーク様!ついでにルナもな」


 ルークはルナに目配せをする今日も睡眠魔法でライラを眠らせる為に、ライラと接触しているとセシリアを強烈に感じるその不快感に耐えられなかった。


「ルーク私も頑張るから強くなろうね!」


(こんなに愛おしいのに今は触れることも辛い)


「あぁ強くなろう、もう間違えない為に」


 部屋のドアからルナが入って来る、消音に匂い消し様々な魔法をかけ認識をさせない様にしている、獣人の五感すら騙せる程に。


「おやすみなさい」


 ルナが触れるとライラは深い眠りに落ちる、見事と言うしか無いまるで暗殺者を思わせる手際の良さ。


「ルーク様お待たせいたしました」


「いつもすまない、俺が魔法を使えたらこんな事させなくて済むのに」


「この国を出ればセシリアの影響が薄くなるはずです、ライラ様にもきっと触れることが出来ます」


 セシリアを強く感じるのは説明の通り近くに居過ぎた為だ、力を起こされた時の繋がりが切れていないこの国を離れれば繋がりは切れるはずだと。


「ルーク様部屋に行きましょう」


 手を引かれルナの部屋で横になるルークは疲れ切っていた、セシリアへの不快感 ライラへの後ろめたさ それぞれの思いに心が軋む。


 ルナがルークにかけた支配の魔法を強める。


「俺の弱さが招いた結果だ‥この力を手に入れてこの国全て壊してやる」


(何だ頭がぼーっとする)


 ルークの目に黒い魔力が灯るエルフの国を滅ぼす事に最早躊躇も無い、魔王の器としての完成が近付いていた。


「ルーク素敵よさあ、いらっしゃい」


 ルナは強力な魅了の魔法をかける。


「ルナ俺のルナ!愛してる!」


「フフッ‥私もよ」


(ルークなら世界も滅ぼせる私が魔王にしてあげる)


 ルナの100年の怨みは底が見えない‥セシリアから開放されたら即自殺をしてリッチに生まれ変わるつもりだったが、ルークに出会い魔王の力の利用に切り替えたより確実に復讐する為に。



          翌日


 4人は黒い森に向かい出発したマーロまで約13日長い旅が始まる。


 エルフの首都を離れ3日目ルナの言った通りライラからセシリアの存在を感じ無くなった。


(これでライラに触れられる良かった)


 喜びも束の間7日目に異変が起きる、ルークとルナは誰かが監視に付いたことを感じ取る。


「ルーク様この感じは誰かが見ています」


「あぁこの感じは覚えがある」


 ライラが心配そうに2人を見る。


「何かあったの?」


「何かが近くにいる探りを入れてみる」


 ライラとエリザは武器に手を掛けるとルナが静止する。


「戦闘にはなりません、相手も隠れています」


 ここ数日でルークも魔力の変換に少しずつ慣れ始めていた、イメージを止め魔力を直接魔法に変換する。


(イメージでは無く魔力を使うまだ難しいが言葉で補強する)


 [サーチ]


 ルークの頭に周辺の情報が入って来る成功だ、たった一言で魔法が発動した。


(出来た!コイツは凄い、魔力を込めなければ発動しないなら暴発しないし無駄なイメージも要らない)


「ルーク様?何か居ましたか」


「何も居ないな視線も感じなくなった」


「今の一瞬で隠れたのなら相当な強さですね」


 エリザは不満そうにしていた。


「私やライラ姉は暇だ〜」


「まだ7日目だぞ音を上げてどうする」


「暴れたい〜!」


 ライラが地図を見ながらエリザを落ち着かせる。


「エリー後2日で黒い森に入るよ、多分そこから魔物が出ると思う」


「ライラ様の言う通りです、森は魔獣も居ますし魔禍も自然発生します全滅とならないよう覚悟をして下さい」


「大丈夫!全部ぶっ倒す!」


 3人は仲良くなっていた、ルナもライラに懐いて姉妹の様だ。


「男1人だと寂しいな」


「ルークこっちは毎日女子会出来て楽しいよ!」


 女は怖いなと思うルークだった。



       黒い森の入口付近


「やっと着いたな、ここからが大変だぞ森を4日かけて抜ける気の休まる時は無いと思ってくれ」


「私とルーク様で交互に探索魔法を常に張ります、どちらかが常に起きている状況になります」


 それを聞いた2人はその過酷さを初めて実感する、いつどこで魔物や魔獣に合うかわからない以上常に警戒をしなければならない、約4日間緊張しっぱなしになる。


「初日は全員で動く、夜になったら俺が朝まで警戒するから皆は休んてくれその後で3人は交代制で行こう」


「それだとルーク様はいつ寝るんだ?」


「俺はほぼ寝ないぞ?1時間仮眠取れれば十分」


「ルークの体は持つの?」


 2人は心配していたがそれは余計な事だ。


「前衛の2人は常に万全な状態で居てくれ、森の中では魔法使いの動きは制限される2人が生命線なんだ」


「わかったルークは絶対に守るね!」


「オレに任せてくれ!」


(2人とも今の話聞いてたよな?)


 見かねたルナが2人を諌める。


「ルーク様は私がお守りするので2人は守るより敵を倒す事に専念して下さい!守りに入ると敵が延々と湧いてきますよ!」


「はっはい!」


 2人はルナの剣幕に気圧されようやく事の重大さに気が付く。


「よし!行こう」


 4人は森に入って行く魔物の巣窟に数分歩くと空気が変わる。


「ルーク様噂通りです探索魔法には既に120匹の魔物の反応があります」


「そんなに居るのか範囲は?」


「今の設定は2km先まで見ています」


(予想より多い休む暇はあるのか?)


 前衛の2人が武器を抜く周囲の殺気に急かされて。


「2人とも落ち着け!今からそんなに警戒すると持たないぞ」


「ルーク何ここ周りからは魔物の臭いしかしない」

「背中がゾクゾクするヤバい」


「2人とも落ち着きなさい!ルーク様を守るんでしょ怖気づくなら森を出なさい邪魔です!」


 ルナがいて良かったと実感する、ルークだけだとマーロには辿り着けない力尽きて全滅していたはずだ。


「大丈夫向かってくる敵を倒せばいい全部倒す訳じゃない」


 ルークは2人に優しく語りかけると2人は頷くここなら良い修練になると確信したルークだった、長い4日間が始まろうとしていた。



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