エルフの国
翌朝ルークは部屋で自分の中の闇が目覚める条件を考察していた、今までの戦いを振り返る。
(判明しているのは強い怒りが引き金って事くらいだ、今までの状況を確認するか)
1 サイクロプス戦 自警団の団員が死んだ時怒りを覚えたが覚醒せず
2 ミノタウロス戦 ライラが窮地に陥った時に半覚醒
3 ミノタウロス戦 ドワーフ兵が多数犠牲になるが覚醒せず
4 ミノタウロス戦 対峙した瞬間ライラの事を思い出し覚醒
5 アンデッドオーク戦 エリザが殺されたと思い覚醒
順を追って思い出すが一貫性は殆ど無い、ライラとエリザの共通点は亜人で女性くらいだ。
(ライラは大切な人だ、だがエリザの時は何故?オレの中の何かは何に反応したんだ‥)
判断材料がまだ少ない、だが怒る度に暴走してたらこの先いつか取り返しの付かないことになる、だが怒りのコントロールでどうにかなるものでは無い‥あの闇に囚われると自我を保つのに必死で肉体の自由を奪われる。
「望みは薄いが聖女にかけてみるか」
会ったことすら無い聖女に望みを託すくらい打つ手が無かった。
そうしているとライラが目を覚ます。
「おはようルーク」
「おはよう、良く眠れた?」
「うん、昨日はごめんね」
エリザとパーティーを組むのを一度は納得したライラだったが、その夜不安になったのかナイーブになっていた。
「我慢しないで何時でも甘えて良いんだぞ」
「うん!えへへっ」
自分が特別なのを実感してライラは落ち着いた様子だった。
(不安にさせた俺が悪いな、しっかりしないとな)
「ルークも甘えたくなったら何時でも甘えてね!」
「それじゃあ早速」
ルークはライラを抱きしめて頭を軽く撫でる。
「よし!朝食でも食べようか」
「も〜ムード台無し!」
2人が笑っているとエリザの声が聞こえてきた。
「ルーク様!ライラ姉!おはよう」
「おはようエリザ、これから朝食なんだ一緒に行こう」
「いいのか!あっでも夫婦の邪魔は‥」
「これからパーティー組むんだぞ?1人だけ別とかは無しだ」
「そうよエリー!パーティーは家族も同じよ」
「ありがとう!オレ‥オレ」
エリザは今にも泣きそうだ、今まで碌な扱いを受けなかったんだろう‥ここでは余計な気を使わせないようにしないとな。
朝食を終え部屋に戻るとルークは2人に大切な話をする。
「ルーク大切な話って?」
「とても大事な事だ、2人とも良く聞いて欲しい」
ルークは順を追って説明するパーティーの決め事だ。
「3人でパーティーを組むと確実に問題が起きる」
「確実なの?」
「2人なら話し合えば済むことも3人だと誰かが少数派になる1番駄目なのが多数決だ、俺達夫婦の意見が別れる事は少ないそうなるとエリザが割りを食う、常に少数派になると生まれるのは疎外感だ」
エリザは思い当たる節があるのか頷いていた。
「孤立すると誰かを憎んだり行き場のない怒りに囚われる、そうならない様に俺達は多数決をしない!いいね?」
2人とも納得したようだ、するとライラが確認してくる。
「でも大事な時の判断はどうするの?」
「簡単だ自分の信念に従うんだ、俺ならライラを1番に守るとかだな物事に優先順位を付けておくんだ」
「オレもルーク様を1番に守る!」
「ルークは私が守るの!」
「まあ要するに皆で納得出来ないクエストや戦いは受けない」
「「は〜い」」
3人は話し合いを終えるとギルドに向かった、昨日の魔物退治の報酬を貰うためだ。
「魔物の数は35体ですね、金貨3枚になります!おや珍しいアンデッドになったオークが居たんですね」
「ああ、誰かが倒し損ねたのかゾンビ化していたよ」
(アレの説明をしてもこの場が混乱するだけだ黙っておくか)
「こちらが報酬になります、お受け取り下さい」
「ありがとう確かに」
「あっルーク様パーティーの名前はお決まりでしょうか?」
「あっ」
(しまったすっかり忘れていた)
「少し待っててくれ」
テーブルに座って待っていた2人に駆け寄る。
「2人とも大事な話を忘れていた、パーティー名どうしよう?」
「そういえば決めてなかったね、う〜ん?」
2人は悩み始めた。
「オレからいいのがある!「トリニティ」ってのはどうだ?」
「もし仲間が増えたらどうするんだ?」
「あっ」
(ツッコミを入れたが、トリニティで良いのかもしれない‥俺達の問題が解決するまで仲間を増やす気もない)
「やっぱりエリザのトリニティにしよう、これ以上仲間を増やす気もないからね」
「いいのか!やった!」
「ライラもこれでいいかな?」
「うん!いいと思う」
ルークは受付にパーティー名を申請する。
「トリニティですね代表はルーク様で、同名のパーティーはございません登録完了しました」
2人の待つテーブルに座り報酬を渡す。
「登録も終わったよ、これは今回の報酬1人金貨1枚」
「ルーク!お買い物していい?」
「こんな大金久々だ!ありがとうルーク様!」
「待て待て、買い物はエルフの首都に着いてからだここよりもっと良い物がある後悔するぞ?」
2人は納得したのか金貨を仕舞うとルークに出発を提案する。
「早く出発しようよ!」
「予約した馬車は夕方だそれまで自由行動、だけど無駄遣いはしないように!」
「は〜い」
各自解散し夕方現地集合にする、いつも一緒だと自由が無いこういう時こそ趣味や気分転換が必要だ。
「よし!掘り出し物探しに行くか!」
ルークの趣味は古い魔法書や魔術書漁りだ、古本屋に入ると古書を手に取り目を輝かせながら本を見つめる。
(おお!これはかなり古いぞ、色々な魔法陣が書いてある今は使われないが魔法陣はホントに美しいな)
その日の夕方
「お待たせ〜待った?」
「時間通り皆集まったな、ただ‥エリザは何でもう出来上がってるんだ?」
「ハッハッハ、我慢できずに飲んじまった!お酒サイコー!」
(確かヴァンパイアはかなりの酒好きだったな)
「エリー他のお客さんに迷惑でしょ!」
「だって〜飲みたかったんだよ〜」
ルークは馬車の乗務員に確認をする。
「すまない同じ馬車に子供は居るかな?」
乗務員は名簿を確認する、本来は誰でも乗れる馬車だが聖女が現れてからは完全予約制になっている。
「ご予約にお子様をお連れの方はいらっしゃいません」
「そうかありがとう」
この酒臭いエリザを子供と同じ空間には置けないしこの後の事を考えると‥ルークは頭が痛くなる。
(馬車に揺られたら絶対に吐くよな‥はぁ)
ルーク達を乗せた馬車は定時通り出発する、町を出発し1時間経った頃予想してた通りになった。
「オェー!ウウッ」
「大丈夫か〜ほら水だ」
エリザは用意されたバケツに盛大に吐いていた、それを見た他のお客さんはドン引きしている、ライラは必死に謝っていた。
「ルーク様‥馬車止めて‥気持ち悪い〜」
「駄目だ他の人に迷惑がかかる、我慢してくれ」
「そんな〜ウッ!ウゥ」
暫くして吐く物が無くなったエリザはルークの膝で寝ていた、ようやく落ち着いたようだ。
「膝枕いいな‥」
初めての膝枕をエリザに取られて羨ましそうに見ている。
「エリー退けていい?」
「やっと落ち着いたんだ寝かせてあげよう‥な?」
「は〜い」
ルークはライラのほっぺに手を当てる愛情表現だ。
「ライラも少し休むといい、肩貸すよ」
「うん、ありがと」
ライラは肩に寄り掛かり仮眠を取る、ルークは疲れない様に自身に身体強化をかけると寝ているエリザを見ながら考えていた。
(俺の事もだがエリザの体質の事も考えないとな)
エリザの頭を撫でようとしてふと気が付く。
(そうだこのグローブは魔力がチャージ出来るんだったな、これを使えば一時的に凌げないか?)
試しに両手のグローブに限界まで魔力を込める、ドランは魔法1回分と言ったが両手合わせると超級魔法も使えそうだ、これならエリザの魔力吸収に耐えられる‥使い道が無いと思ったがこれなら当面は大丈夫そうだ。
翌日昼過ぎエルフの首都プリマステラ
「長旅お疲れ様でした、プリマステラに到着です」
「ルーク〜到着したよ!起きて〜」
「んっ〜!もうそんな時間か」
「ルーク様頭が痛い〜」
「お前は飲み過ぎなんだ我慢しなさい」
2人は馬車を降りるとその景色に驚く、世界樹の大きさもあるがその都市の美しさに感動していた。
「まるで都市自体が芸術品だなこれは凄い!」
「噂で聞いたよりずっと綺麗だね」
「あの‥感動してるとこ悪いけど、エルフはめっちゃ性格悪いぞ」
「「え?」」
ルークとライラはエリザの発言に驚きを隠せなかった、こんなに美しい都市を作るのに性格が悪い?そんな事があり得るのかと。
「エリーそれは偏見だよ!」
「ライラ姉には悪いけどここのエルフはホントに最悪だよ、外に出てるエルフはここが嫌になって出ていくんだ」
(エリザはここを良く知っているようだな)
「ライラ、エリザも俺達に嘘を言ってもしょうがない知らない人達よりエリザを信じよう」
「それはそうだけど」
3人は宿を取るため繁華街に向かう、しかしそこは思ったより人が少なかったエルフ以外殆ど人がいない。
「ここ繁華街だよな?アレだけいた観光客は何処に?」
周囲のエルフの視線が冷たいまるで異物を見るようだ、あからさまに睨んでる人もいる。
「ルークここ怖いよ」
「2人ともこっちだよ」
エリザに連れられ路地に入り別の大通りに出るとそこには様々な種族が楽しそうに飲み食いしていた。
「ここまで露骨に区別してるのか、ホントに性格悪いな」
「エリーが言ってたのってこういう事なのね」
「ああ、エルフは自分達のテリトリーに入られるのを極端に嫌がる、あの目見ただろ?自分達以外はゴミみたいに見やがる」
(エルフに選民思想があるのは聞いてはいたがここまでとは‥)
外で出会うエルフとは全く別の生き物だわかり合えそうもない、聖女はどうなのだろうか?不安になる3人だった。
「取り敢えず宿を取って明日から聖女に会うため行動を始めよう、何か美味しい物でも食べてストレス発散だ!」
「やった!酒が飲める!」
「エリーはほどほどにね!」
ここに何も無ければルークはまた0から自分の力を調べないといけなくなる、一縷の望みをかけまだ見ぬ聖女に期待をしていた。




