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ヴァンパイア

 3人は街から離れ森の中を進んていた、エリザの事前情報通り辺りは見通しが良く管理されている森だった、これなら迷う心配は無い。


「エリザこっちに魔物が多いんだよな?」


「ああ!この先に群れがいるはずだよ」


 道すがらエリザの情報をまとめる種族はヴァンパイア職業は拳闘士、体質的に魔力を吸うので魔石が使えず己の肉体のみで戦うと‥魔力の操作はからっきしで身体強化に全て注いでるらしい。


「ルーク魔物の臭いがするよ!近いかも」


 ライラの報告に周囲の警戒を始める、効果の高くなった探索魔法を使う今回は上空からではなく地上から見る。


「[フィールドサーチ]」


 周囲の情報が直接視覚に入ってくる、確かに魔物が居る結構な数だ2人に正確な位置と数を伝える。


「この先の下り坂にゴブリンにオークとスケルトン他にラミアが居る、数は13詳細は必要か?」


 2人は振り返り同時に返事をした。


「「大丈夫!」」


(息はピッタリだな)


 ライラが簡単に攻撃の説明を始める、流れはライラが突撃して相手を撹乱しその間に残りの2人で数を減らす、いつもの囮作戦だ。


「ライラ囮も良いが俺から提案がある1人の時でも戦える様に相手の数を少しでも減らす事、出来るね?」


「攻撃しながら撹乱するってことね?わかったやってみる」


「ルーク様はオレが守るから心配無い!」


「ルークは私が守るの!」


 ルークは間に入って2人をなだめる。


「大した魔物じゃ無いんだ今回のクエストは数をこなさないと報酬が出ない、俺を守るより沢山倒してくれた方が嬉しいぞ?」


「「一杯倒す!」」


「素直でよろしい、それじゃ始めるぞ!」


 3人は身体強化をかけ坂を見下ろす、魔物が複数いるゴブリン4オーク3スケルトン4ラミア2 丁度13体だ。


「いっくよ~!」


 ライラが坂を駆け下りながら最高速度で駆け抜ける、2人は追いつけるはずもなくエリザが驚きの声を上げる。


「早すぎんだろ、なんだアレ!」


 驚くのも無理はないあの速さは天性のものだ、ライラは魔物の中に入ると同時に幻影を生み出した。


「[ミラージュステップ]!!」


 もう目では追いきれない魔物達も無数の幻影に怯えながら切り刻まれていく。


「オレも行くぜ!オラァ!」


 エリザは腰の武器を腕にはめオークを思いっきり殴り倒し近くのスケルトンを粉々にした、魔物は最早半壊に近かった。


「これ俺の出番無いぞ‥」


 ルークはただ見ているだけで魔物達は全滅した。


「2人とも張り切りすぎだ!」


「ルーク!このドランさんの剣凄いよ切った感覚が殆ど無かった!」


「それはそうだろ黒竜の爪にオリハルコンだぞほぼ魔剣だよ、多分全力で切ったら相手の鎧ごと断ち切れる」


 エリザはキラキラした目でライラを見つめていた。


「姐さん!凄い‥感動したよ!」


「ねっ姐さんっていきなり何よ?」


 エリザも武人だ、ライラの凄さを素直に認める。


「良かったな姐さん?仲良くなれそうじゃないか」


「ルーク!からかわないでよ、あとその姐さんは止めて」


 2人はお互いの呼び方を話し合っている、その間にルークは周囲の探索を進める。


(この先に魔物が居るな情報通りここは群れが多い数は20大した事はないな、ん?奥になにか居る‥)


「2人ともこの先に20体魔物がいるんだが先にもなにか居る用心してくれ」


「何かって?」


「それが見えないんだ、こんなの初めてだ‥エリザここは君の情報だったよな?何か知っているか?」


「えっ!?あっいや何も知らない!」


(隠すのが下手だな、何かあるのは間違いないか)


「ルーク!魔物が見えたよ!」


 今回は数が多い、出番の無かったルークが前に出ると走り出し魔法を唱える。


「影の鎖よ拘束しろ![シャドージェイル]!」


 魔物達は自分の影や周囲の木々の影から飛び出た無数の鎖に捕縛されていた。


「ルーク様流石だぜ!」


「影の拘束は30秒だ一気に倒すぞ」


 雑魚達が相手だと30秒は十分だったライラが斬り伏せエリザが殴り倒す、ルークもクリムゾンエッジで数体を倒した。


「これで30は越えたな、1人金貨1枚エリザの路銀も稼げたな」


「ルーク様この先にも行ってみないか?」


 エリザが指差した先は姿が確認出来なかった魔物が居る方だ。


(これは誘ってるよな‥どうする?)


「ルーク気になるから行ってみよ?魔禍だったら大変だよ」


「それはそうだが‥分かった警戒は怠らないように」


 3人は森の中を進む、ルークが確認した見えない何かの場所に着くが辺りを見渡しても何も無い何かがおかしい。


「この辺って言ってたよね?」


「ああ、この辺りだったんだが」


 そこには何も無かった、ルークがもう一度探索魔法を使おうとした瞬間エリザが声を上げる。


「2人ともそこから離れろ!」


 2人はその場から飛び退くと魔法陣が地面に展開されていた、何かが出てくる。


「これは転送陣?何も無い所から‥」


(いや探索魔法では何かが見えていた、これを隠していたって事か)


 魔法陣から漆黒のオークが出て来る、両手に片手斧を持ち体はツギハギだらけ何者かに改造された跡だ。


「ルーク様逃げよう!」


「駄目だ!ここで倒す行くぞライラ!」


「はい!」


 2人は戦闘態勢を取るとライラが先に仕掛ける。


「[ミラージュステップ]!!」


 ライラに切り刻まれるオークだが、何の反応も示さずルークをじっと見ている。


(こいつ痛みを感じて無いのか?)


「ルークこいつおかしいよ、切っても手応えがない!」


 黒い体にツギハギだらけ切っても痛がらず手応え無し、このオークはアンデッドの条件を満たしていた。


「ライラ離れろ!コイツはアンデッドだ近くに死霊使いがいるはず、そいつを探してくれ!」


「ルーク達はどうするの!?」


「アンデッドなら大丈夫だ距離を取って動けなくする!それより待ち伏せされていた可能性が高い、気を抜くなよ!」


「わかった!」


 オークはまだルークを見ている死体に意思は無い明らかに誰かが操っている、ライラが探し出すまで足止めをする。


「エリザ!手を貸してくれ!コイツを動けなくなるまで削る」


「あっああ!どうすればいい?」


「足を潰して動けなくする!」


 かなりの巨体だが足さえ潰せばどうとでもなる、ライラが付けた傷も回復していない、再生能力が無いのは確定していた。


「絡め取れ![ルートバインド]!!」


 オークの足下から木の根が生え全身に絡み付くここは森の中、草木属性魔法の触媒は山程ある。


「ウゥゥゥアァァァ」


 千切っても生えてくる木の根にオークは動けずにいる。


(やはりアンデッドは弱いこのまま押し切る)


「オリャァァァァ!」


 エリザが拘束されているオークを殴り続ける、オークの顔がネジ曲がり腕も真逆に折れていた、圧倒的な火力で動け無くなったオークの足を狙う。


「吹き飛べ!バーストナックル!」


 エリザは魔力を込めた渾身の一撃でオークの足を吹き飛ばした、片足を失ったオークはその場に倒れる。


「ハハハハハハ!楽しい!楽しいな!」


 エリザは一方的に殴る快感に酔いしれ興奮している、銀髪が輝きだし周囲の魔力を吸い始めていた。


「エリザ!落ち着け!」


(マズイ何も聞こえてない!このままだと暴走する)


 ルークはエリザに抱きつきオークとの距離を取ると、彼女が落ち着くまで自分の魔力を全開にし吸わせる。


「エリザ落ち着け!深呼吸をするんだ」


「はぁはぁ‥美味しい!こんなに美味しいの初めてだ!もっともっと欲しい!」


(美味しい?魔力に味を感じてるのか)


 エリザはルークの首に噛みついた、エリザは自分を抑えられないようで泣きながら直接魔力を吸っている。


         暫くすると


「吸魔は落ち着いたな」


「ルーク様ごめん、また暴走しちまった‥」


(興奮する度にこうなるならパーティーから捨てられるはずだ)


「もう大丈夫そうか?」


「あっああ」


 ルークは少しふらつきを感じていた思ったより魔力を吸われたようだ、だが戦いはまだ終わっていない死霊使いが見つかってない。


「ライラを探す援護に行かないとな[フィールドサーチ]」


 視覚に様々な情報が入ってくるライラが丁度こちらに戻って来ていたもう目の前だ、周囲の情報も確認しようとした時思ってもいない答えに思考が一瞬固まる。


「ルーク!敵見当たらなかったよ!」


(敵がいない?そんなはずは無い!アレには意思が見て取れた)


 ルークが考え始めた瞬間に倒れたオークの腹から何かが飛び出てきた。


「ルーク!左!」


 左を向くと黒いナタを振りかぶったゴブリンが目の前に迫っていた。


(駄目だ!避けられない!)


 死を覚悟した瞬間エリザが間に割って入る。


「ルーク様!」


 振り下ろされた一撃でエリザは左肩から右脇にかけて致命傷を受け崩れ落ちる、それを見たルークは叫ぶ。


「よくも‥ゴブリン風情が!」


 ゴブリンはルークを見るなりガタガタと震え始めていた、ルークの目にはあの闇が宿っていた。


「カンタンに死ねるとオモウナよ‥」


(マズイ俺が暴走してどうする)


「ルーク!自分に負けないで!」


 ライラが追いつきゴブリンを両断する、ルークの怒りも少し和らぐと。


(今だ!抑えろ!)


「はぁはぁ‥よし、次はエリザだ!」


 エリザを起こし傷を見る、服は裂けてるが血は止まっているライラが詳しく確認する。


「ルーク!エリザの傷治ってるよ!」


「そんなはずは‥致命傷だったはず」


 ルークも確認するが確かに傷が無い、ヴァンパイアの特性か?それとも?


「息もある‥よし街に戻るぞ!ライラは周囲の警戒を、あのゴブリンは死霊使いじゃないまだいるはずだ」


 ルークはエリザを担ぎ街に入ると宿に戻った、教会に頼る訳にもいかない、教会はヴァンパイアを敵視している出来るだけ隠しておきたい。


 エリザをベッドに寝かせて暫く様子を見ることにする、一息ついてるとライラが話し始めた。


「エリザってあの場所に私達を誘導してたよね?」


「気付いていたのか、多分そうだと思う」


「でもルークを庇ってた、普通は助けないよね?」


「それなんだ、オークも俺を狙っていた‥俺が狙いなら最後の一撃を庇う必要は無い‥」


 矛盾が多く答えが出ない、2人で考えているとエリザが目を覚ます。


「んっ‥ここは?」


「エリザどこか痛くない?」


 ライラが体の確認をする、エリザも自分の体を触りながら信じられないようだ。


「オレ切られたよな?何で?」


「聞きたいのはこっちだ、あの致命傷で今は無傷どういう事だ?」


 エリザすら分からないならここで考えても答えは出ない、森に誘導した事を聞いても答えないだろう、3人は今後の話しをする事になった。


「ギルドは明日行くとして、俺達はエルフの首都世界樹のあるプリマステラに向う、エリザとはここでお別れだ」


「待ってくれ!オレも連れて行って欲しいんだ!」


「どうして私達に付いて来るの?」


「それは‥あっ、オレの暴走を止めれるのはルーク様だけなんだ」


(ホントに嘘が下手だな今思いついただろ)


 ライラはルークを見るとちょっと不機嫌に聞いてきた。


「暴走したの?」


「ああ、抑えるのに魔力を結構吸われたよヴァンパイアと言うだけはある」


「ふ〜〜ん」


(ライラの目が怖い、首の噛み跡を回復魔法で消してて良かった)


 エリザは必死に訴える。


「頼むよ〜他に行く宛なんか無いんだよ!」


「私は夫婦で旅がしたいの!ルークも何か言ってやってよ!」


 命を助けられた手前強くは断れない、それにエリザの行き場がないのは事実だ、エリザは何かを隠している見える所に置いて尻尾を掴みたいがルークは判断に困っていた。


「どうしたものか‥命の恩人だからな」


「そっそうだ!ルーク様を助けた恩人だぞ!」


「も〜、それ言われたら言い返せないじゃない!でも少しの間だけだよ?」


「やった!ありがと姐さん!」


「その姐さんは止めてって言ったでしょ」


「わかったライラ姉!」


 こうしてエリザが加わったライラは嫌がっていた割に楽しそうだ。


         その夜


 エリザは部屋で通信の魔石を使っていた。


「予定通りに護衛を始めろ」


「はっはい、しかし今日のオークは一体‥あんなの聞いてなかった」


「アレは試しに用意した物だ、あのお方の命とはいえその魔法使いが本物の確証が無かった‥だがお前がやられた後のアノ目アノ魔力、どうやら本物らしい」


「どうしてオレは助かったんですか?」


「アノ方の魔力を大量に吸っただろ?ヴァンパイア本来の不死性が一時的に戻ったと考えるべきだ」


「ルーク様にそんな力が」


「本来ならもっと力のある護衛を付けるべきだが、迂闊に動くと奴らに気付かれる、半端なお前を拾ってやったあの方の恩に報いろ!ルーク様をその時が来るまでお守りしろ」


「はっはい!」


 通信が終わると魔石を小さな小箱に入れる、箱には魔力遮断の効果があるらしく何も感じなくなる。


「あぁルーク様、またあの魔力を吸いたい‥」


 エリザは味わった事の無い初めての美味しい魔力に涎を垂らしながら悶えていた。



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