違和感の正体
冒険者ギルドを出て時間を確認する外に掛けられた時計は14時を示していた。
(午後のニール村行きの馬車はあるかな?)
馬車の発着場は市場を抜けた先にある、少し早歩きで歩き始めると市場の方から1人の女性が手を振って声を掛ける。
「ルーク!久しぶりね」
王国騎士団の制服を着た赤い髪の女性、魔法学校の同期で名前はエレナかなりの秀才である。
「エレナその制服はやっぱり騎士団に入ったんだな」
彼女は自慢げに制服を見せながら
「まあ私の才能を発揮出来るのは騎士団くらいよね!研究職なんて肌に合わないし」
派手に魔法撃ちたいだけだろうと言いたいがぐっと我慢する。
「ルークは冒険者になったのよね?昔から魔法使いが最強なのを証明するんだ〜って言ってたし」
(言ってたのは5年も前の話だがまだ覚えてたか)
「さっき冒険者になったばかりなんだ、最強にはまだ遠いけどな」
大人になると最強と自分で言うには流石に恥ずかしさが勝ってしまう、顔が少し赤くなるのを感じる。
「ルークのご先祖様は魔王と戦った大魔法使いでしょ?自信を持ちなさい!」
エレナは笑いながら肩をバシバシ叩く、久しぶりの友人との再開に喜んでいると突然鈍い頭痛が走る。
「すまないエレナこれからニール村に行くんだった、話はまた今度な」
突然の会話の終わりにエレナはルークの目を見ながら何かを察したのか聞き返してきた。
「最初に向かうのが何も無いニール村?王国周辺は魔物は居ないから、普通は依頼のある地方か他国に行くよね?」
疑問に思うのも仕方がないがこちらは魔禍の発生場所を聞いてるエレナに伝える事にした。
「ニール村の近くで魔禍が発生してるらしく魔物が大量に出そうなんだ」
エレナは納得出来ないようで質問してきた。
「その話誰に聞いたの?騎士団にも魔禍探知や占術で魔禍の発生場所を探してる専属部隊が居るのよ?私が知らなくて何故あなたが知ってるの?」
冒険者ギルドのやり取りを話して納得してもらうしか無いとギルドに居た占い師の事を話そうとする。
「ギルドで占い師に聞いたんだ!‥ん‥何だ‥確か女だったよな‥」
(何かがおかしい思い出そうにも顔が思い出せない?)
頭痛が酷くなっていく。
「ルークあなた何か魔法に掛かってる、呪の類だと厄介だから教会に行くよ」
頭痛が酷くなる中エレナに手を引かれ近くの教会に入った。
「シスター彼を見てもらえますか!」
教会の中で声が響くと数名のシスターが駆けつけてきた。
「治療室に運びましょう」
シスター達に抱き抱えられながら奥の部屋に運ばれベッドに横になる、シスターが小さな魔石の付いた眼鏡でルークの眼を覗く。
「これは呪ですねかなり弱い魔法ですが、網膜に焼き付けるタイプで目を開いてる間はずっと呪にかかり続ける厄介な魔法です」
(網膜に焼き付ける?そうか水晶が光ったあの時か‥やられたな、ギルドに居たから冒険者だと勝手に思い込んでいた‥あのガドと同じく新人潰しかそれとも?)
「今から解呪を始めますね」
シスターが瞼に手を当てながら魔石に魔力を込める。
「女神の輝きよ呪を祓い給え」
酷かった頭痛がスッと和らいでいく、同時に何かに焦っていた違和感も無くなり気分も落ち着いてきた。
「ありがとうシスター楽になった」
感謝を伝えるとシスター達はにっこり微笑んでいたが1人が何かの紙を持ってきた。
「こちらが解呪のお代になります」
紙に書いてある金額に冷や汗が出る、金貨1枚と書かれている銀貨に換算すると100枚になる手持ちがそこまであるはずも無く。
「少し待っててもらえますか‥」
そう言って部屋の外に出てエレナを探すと礼拝用の椅子に座っている彼女を見つけた。
「エレナ頼みがある!お金貸してくれないか?頼む!」
(なりふり構って居られない教会に借金はマズイ)
教会は各地の銀行の役目も担っており北の自由都市以外はほぼ教会頼みだ。
「もー仕方がないわね立て替えてあげるからちゃんと返しなさいよ!」
エレナに助けられ支払いを終えると。
「いい?今の時代誰でも魔石で魔法が使えるんだから絶対に油断しない事!相手の顔思い出せないんでしょ?認識阻害まで使うってかなりヤバい相手だと思いなさい!」
流石に何も言い返せないこのまま村に行ってたらどうなっていたか。
「本当に助かったありがとう、冒険者になれて浮かれていたこれから気を引き締めるよ」
感謝を伝えるとエレナは腕時計を見る。
「じゃあ仕事に戻るわね冒険者として頑張りなさいよ!騎士団まで名前が広まったら一人前だからね」
そう言ってエレナは城のある方に向かっていった、これからの事も考えるために一度部屋を取っている宿に戻ることにする。
「ルーク様おかえりなさいませ」
受付の男性に声を掛けられる。
(時刻は17時今日はもう出歩くのは控えよう)
「部屋に居るので食事の時間に呼んでくれ」
受付に伝えると三階の部屋に入り椅子に座る置かれてる水瓶からコップに水を注ぎ一息つく。
「わかってはいたが冒険者になるともう気が抜けないな、外では常時呪対策の魔法をかけておくか」
この世界には女神が作ったルールのひとつとして、一般人には魔石による攻撃行為が禁止されている、女神が作った魔石だからこそこのルールを破ると魔石自体の使用が出来なくなる、一般人として生きるならこの世界は絶対に安全で安心できる、その反面冒険者や騎士団等戦いに身を置くもの達はルール外にあり今日みたいに痛い目に遭う。
「明日は取り敢えず南に向かって国境を目指しなから先にあるドワーフの国に寄ってみるか」
ドワーフの国まで行けばいい装備が手に入りそうだ途中の町で依頼をこなして資金を稼ぎながら向かう計画を立てる、いよいよ冒険の旅が始まる。




