坑道ダンジョン
翌日ルークは目を覚ますと昨日の事を思い出しベッドで悶えていた。
「駄目だ〜!まだ恥ずかしい、あの時見てた冒険者達も今日の調査に参加するよな‥あぁ〜記憶を消したい」
ドアのノックと共にライラの声が聞こえてきた。
「ルーク〜起きてる〜?」
「おはようライラ」
ライラをギュッと抱きしめる。
「おはようルーク!良く眠れた?」
「ああ、良く眠れたよ心配かけたな」
「もう大丈夫そうだね、今日はどうするの?」
調査隊が動けるのは夜と言っていた。
「坑道調査の準備と隊長への挨拶に行こう冒険者達への説明もある筈、それに一言文句も言いたい」
「まだ怒ってるの?」
「当たり前だろ!失敗の説明もせずにライラを危険な目に合わせようとしたんだぞ」
「でもギルドの兵士さんは盾にはしないって約束したよ?」
(言われてみれば確かに‥どう言うことだ?)
「確かに矛盾してるな」
「取り敢えずお話ししてみないと‥ね?」
ライラの言う通りだ。
「その前に何か食べないと、アレから何も食べて無いからお腹が減ってしょうがない」
「ふふっ昨日のアレ可愛かったよ!」
「アレは忘れてくれ‥」
2人は食事を終えると受付と話しをする。
「昨日の武具屋の紹介助かった、お陰でいい装備が買えたよ」
「兄は元気にしてましたか?」
「ああ、会って早々帰れって言われて驚いたよ」
「兄は人間嫌いですからね、でも奥様を見て機嫌良くなったのでは?」
それが気になっていたライラが話を聞いてみる。
「お兄さんが人間嫌いになった理由が気になって、失礼で無ければ聞いても良いですか?」
「構いませんよ、よくある話ですから‥今から20年程前兄は人間の女性と結婚していたんです」
「あのドランが人間と結婚!?」
「どんな人にも別け隔てなく接する方で、兄と幸せに暮らしていました」
「当時兄は鍛冶屋としても名を馳せていて、兄の武器欲しさに争いが生じるほどでした‥そんなある日、兄が居ない日を狙って店に強盗が押し入り兄嫁を殺害しました」
「そんな辛い事が‥でも何故人間嫌いに?」
「後から分かった事ですが、人間の商人が武器の独占販売の交渉を兄に断られた腹いせに、兄嫁を強盗に見せかけて殺害したのです」
「それで人間が嫌いになりあんな隠れた所に店を出してるのか」
「ええ、昔は看板すら無かったんですよ」
ライラは何故自分達に装備を売ってくれたのかが解ったようだ。
「私達を夫婦だと知って嬉しそうだったのは昔を思い出したから?」
「そうですね、未だに亜人と結婚する方は少ないので2人を見て兄が元気になればと思い紹介させてもらいました」
(お前は偏見が無いから、と言ったのはそういう事か)
「ありがとう、ドランの事がまた好きになったよ」
「兄の店をどうぞご贔屓に」
2人は話を聞いた後、街に出かけていた。
「ルークこれからどうするの?」
「魔石屋と道具屋に寄ろう」
事前に聞いていた魔石屋に入る。
「いらっしゃいませ〜」
並べられている魔石をライラが珍しそうに眺めている。
「色んな魔石があるね、宝石みたい!」
「何かお探しでしょうか?」
「あっ‥えっと」
ライラは困ってこちらを向く。
「光源の魔石はあるかな?坑道探索に必要なんだ」
「今日の調査隊に参加されるのですね」
女性は並べられた魔石の1つを取ると。
「こちらが光源の魔石です」
「いくらになる?」
「ありがとうございます、銀貨10枚になります」
受け取るとライラに渡す。
「ライラもしもの為にこれを付けて」
「もしもって?」
「俺の近くなら魔法で明るいが別の坑道に入ったら真っ暗だぞ?」
「あっそうか」
ライラはガントレットに魔石を付けた。
「スロット埋まっちゃったね」
「そのうちいい魔装具に買い替えないとな」
「頑張って稼ごうね!」
次の道具屋に入るとルークは木の枝を選んでいる。
「ルークなにそれ?」
「これは宿り木と言って木に寄生する植物なんだ」
「何に使うの?」
ルークは木をかざして説明をする。
「いくら魔法でも生命は生み出せない、木や草魔法はそこに植物が必要になる」
「それを使って魔法を使うのね」
「ああ、宿り木を相手に投げつけ魔法を発動させると拘束魔法が使える狭い坑道なら効果的だ」
説明してると店のおばあさんが話しかけて来た。
「魔法使いとは珍しいね、その宿り木は普段薬師が買うもんだよ」
「すまない閃光弾は取り扱ってるかな?ここには無いようだが」
「ちょっと待ってな」
奥から箱を持って来た。
「店内で爆発したら物騒だからね、普段はしまってるのさ」
「閃光弾2つと宿り木を10本買いたい」
「え〜銀貨6枚だね」
銀貨をテーブルに置き商品を受け取る。
「丁度だね、まいどあり」
店を出ると閃光弾をライラに渡す。
「暗い所の魔物にはこれが1番効く間違っても直接見ないようにな」
「大丈夫そんなヘマしないよ!」
取り敢えず準備は終わった、昨日兵士に聞いていた調査隊の仮設本部に向かう。
仮設本部に入ると昨日ギルドにいた兵士に会った。
「あっ昨日の!調査隊に参加されるのですねありがとうございます!」
(そりゃ覚えてるよな‥)
「あっああ‥よろしくルークだ彼女は妻のライラ」
「私は今回の調査隊の隊長に任命されたクリフです、よろしくお願いします」
(ん?隊長?昨日の時はグエンだったはずだが)
ライラが聞き返す。
「あの!グエンさんが隊長じゃ無いんですか?」
クリフは複雑な顔をして答えた。
「グエン達は憲兵に逮捕されました、2度の調査で冒険者を先行させ大きな被害を出した事と、2度目には何人生き残るか部下と賭け事をしていたようで」
誘われる前に仲間と話していたのも賭けの対象にしていたようだ。
(救いようが無いな‥)
「正直に言うがグエンの下では戦いたく無かった、クリフが隊長で一安心だよ」
「任せてくれ、今回の調査は成功させるつもりだ!」
「皆で頑張ろうね!」
当初の不安は消えた、後は坑道内の何かが想定内な事を願うまでだ。
「失礼します!坑道内の様子を見た部隊からの報告です!」
「構わないそのまま話してくれ」
「冒険者が多数居るようですが?」
「構わないと言っている!隠し事をしてまた疑われたいのか!」
クリフが部下を叱責する、その通りだ隠し事をすると折角取り戻した信頼が地に落ちる。
「はっ!申し訳ありません!報告によると坑道内の様子がおかしいとの事です!」
(様子がおかしい?どういう事だ?)
「報告はもっと具体的にしろ!何がおかしいんだ」
「はっ!まだ確証はありませんが、ダンジョン化した可能性があります!」
「「なっ!」」
仮設本部にいる兵士や冒険者達が騒ぎ始める、ダンジョンとは魔禍が長時間滞在した場所が周囲を汚染することで形成される、魔物の巣窟である。
「魔禍との報告は無かったはずだ!教会や騎士団は何をしていた!?」
「今確認を取っています!報告は以上です!」
仮設本部が騒がしくなる現場にいた冒険者達の顔色も変わってきた。
「おい、ダンジョンなんて何年振りだ?」
「ヤバくないか?どうする?」
「騎士団に助けを求めた方が‥」
(マズイな高かった士気が見る見る下がっていく)
ダンジョンは魔物を強化する特性がある、何が出るかわからない恐怖にみな怯えていた。
「クリフ隊長今の戦力で対処出来そうか?」
「ダンジョンはまだ出来たばかり、成長する前なら今の戦力で行けるはずだ」
冒険者達がクリフに迫る。
「隊長さん!騎士団には応援を出せないのか?」
「ここはドワーフ領だ応援を出しても直ぐには受け入れられない!下手をすると数週間かかる」
「そんなに待ってたら街自体が魔物に飲まれるぞ‥やるしか無いのか」
ライラは不安そうにしていた、ルークは話をするために2人で外に出る。
「ライラよく聞いてくれ、大きな声では言えないが「ここから逃げる」選択肢もある」
ライラはルークを見つめるその目は覚悟を決めていた。
「分かった逃げるのは無しだな、すまない今のは忘れてくれ」
(ライラは本当に強い、俺1人なら多分逃げていた)
「絶対に守ってね!」
「ああ!ライラもこの街も俺が守って見せる」
仮設本部に戻るとクリフが激を飛ばしていた。
「諸君!ダンジョンはまだ発生したばかりだ!今なら我々で攻略出来る!戦力の出し惜しみはせず兵士冒険者総勢120名でダンジョンを攻略する!詳しい内容は後から通達する以上だ!」
作戦が決まってから通達される迄待機の指令だ、2人は兵士に泊まっている宿を伝えると外に出た。
「ライラどうする?まだ時間が掛かりそうだ」
「それならデートしてから宿で休んで待とうよ!」
「それ良いな!何か美味しいものも食べたいな」
2人は街でデートをしながら過ごすことにした。
ルークはこの思い出が最後にならないようにと願っていた、ダンジョンは騎士団でさえ苦戦すると聞く冒険者や精鋭とはいえ兵士達でやれるのだろうか?いざとなったら‥ルークは最悪の事態も考えながら時を待つ。




