ふと気付く身近な恐怖
ルークは走りながら魔物の数を確認する、目視出来るのは7体人影は無い右手に魔力を込め地面にかざす。
「穿て![アースグレイブ]!!」
足元から生えた無数の岩の棘が魔物達に突き刺さる。
「ギイィィィィ!?」
串刺しになった魔物は苦痛に藻掻き苦しんでいた。
(数は‥6体!1体逃したか!)
辺りを見渡すが岩の棘で視界が悪いルークは咄嗟にライラを呼ぶ。
「ライラ!1体逃したそこから見えるか!」
ライラは建物の上から逃げた1体を視認すると、加速しながら飛び込んで行く。
「一撃で仕留めます!」
魔物はライラの接近に気付く事無く一撃で葬られた。
「ガッッ?アァ?」
オークの巨体がゆっくり倒れる、ルークは集まって来た兵士や冒険者達とまだ息のある魔物にトドメを刺して回った。
「これで最後だな」
自体が終息すると兵士達が声を掛けてきた。
「目撃情報によるとこれは君がやったらしいな?」
「ああ、被害が出る前に対処出来たよ」
兵士達は何やら話し合っている。
「ルーク!こっちも終わったよ!」
「お疲れ様、ライラが居て良かったよ危うく逃す所だった」
「もっと褒めて!って言いたい所だけど、この装備凄いよ!思った通りに体が動くからビックリしちゃった」
「ドランに感謝しないとな」
「うん!」
話をしているとドワーフ兵がゾロゾロとやって来て坑道の入口を封鎖した、すると話し合いをしていた兵士から声が掛かる。
「冒険者とお見受けするが、この街に来た理由は?」
「妻の冒険者登録と装備の新調を兼ねてここに来たんだ」
「なるほど夫婦で冒険者なのか、ここに来た理由も分かった‥先程の活躍を見てお願いがある」
(兵士からのお願いとは珍しいな聞くだけ聞いてみるか)
「内容次第だがそのお願いと言うのは?」
「実は‥今は使われていない古い坑道に魔禍が発生してる疑いがある、その調査に同行して欲しい」
ライラが疑問に思った事を聞く。
「魔禍は騎士団や教会から発生の報告が来るはずよね?疑いって?」
「我々も対応に苦慮してるんだ、魔禍の確認は出来ないが坑道からは確かに魔物が湧いてくる、騎士団に応援を頼んでも現場で対処しろの一点張りだ」
(今の騎士団はまともに動けないから仕方が無いとして、教会は何をしているんだ?)
「教会の反応は?」
「教会にも掛け合ったが、坑道を塞いで関わるなとしか‥」
塞いだ所で解決にはならない魔物で溢れたら別の坑道から出てきかねない。
「調査はいつからの予定なの?」
「これからギルドにクエストを出す所だ、部隊の編成を考えると早くても明日の夜」
正直坑道で戦うのは魔法使いとしてはかなりキツイ、ドワーフの坑道はかなり広いとはいえ魔法を使うにはあまりにも狭い、炎系でも使おうものなら酸欠で大変な事になる。
「どうするライラ?」
「私が決めて良いの?!」
「正直決めかねててな、場合によってはかなりの厄介事になりそうだ」
ルークの真剣な表情に事の重大さを感じたライラは
「気になるんでしょ?だったら参加しようよ!」
「坑道だと魔法使いはあんまり役に立たないんだよな〜」
「大丈夫!私が守るから!」
ライラは自信満々に胸を張っている。
「今回は頼らせて貰うよ、でも無理だけはしないでくれよ?」
「無茶はするけど無理はしないよ!」
(不安だ‥何があってもライラだけは守らないとな)
「これからギルドでクエストを受けてくる、明日はよろしく頼む」
「こちらこそ受けてくれて感謝する!報酬は出来るだけ出すつもりだ、そう言えば自己紹介がまだだったな調査隊の隊長を務めるグエンだ」
グエンは握手を求めてきた2人は握手を返す。
「俺はルーク」
「私はライラよろしくお願いします!」
「では、私は封鎖の確認もあるのでここで失礼するまた明日に」
グエンと別れてギルドに向う、歩きながらルークは坑道内でどう戦うかイメージしていた。
(炎 風 は駄目だな 土 も坑道が崩れる可能性がある‥ 水 も駄目だ場合によっては浸水する、雷 は使える 氷 も行けるな得意では無いが 木 も用意するか)
ブツブツ言いながら歩いていると。
「ルーク!おーい!ギルドに着いたよ〜」
顔の前でライラがブンブンと手を振っていた。
「悪い!考え事してた」
「明日の事考えてたの?」
「ああ、狭い坑道でどう戦うか考えててね」
「大丈夫!なんとかなるよ!」
ライラの明るさには本当に救われる。
「そうだな取り敢えずクエストを受けよう」
ギルドに入ると昨日とは違う異様な空気が漂っていた、冒険者達がドワーフに詰め寄っていた。
「また坑道の調査かよ‥何人死んだと思ってんだ!」
「今回は精鋭を揃えた!前回の様にはならない!」
「ふざけるなよ!信用できるか!」
「報酬も倍に増やす!我々も本気だ!強力を頼む!」
冒険者達と兵士達が睨み合いのようになっていた。
(何だこれは?)
「話を聞ける状況じゃないな受付に行こう」
怖がるライラの手を引き受付に向かう。
「これは何の騒ぎなんだ?」
「坑道の調査クエストがまた行われるようで、前回、前々回と失敗続きだったので冒険者達の不満が爆発して今のような状況に‥」
「2回も失敗してるのか?あのグエンって奴はわざと言わなかったな‥」
「失敗した2回とも冒険者を最前線に立たせた事で、被害の殆どが冒険者達で全滅したパーティーも出まして‥」
(冒険者達が怒り狂うのも仕方が無いな、被害者に親しかった者もここにいるだろう、それより問題なのがこんな危険なクエストに俺達を誘ったアイツだ、仲間内で話してたのも俺達が盾に使えるかどうか話していたとしてもおかしくはない)
「ライラこのクエストは危険すぎる、今回は受けるのをやめよう」
「ルーク昨日話してくれたよね?最強の魔法使いになるために冒険者になったって」
婚姻届を出した後お互いの事を知るために色んなことを話した。
「それはそうだが‥」
「このクエストが成功したらギルドの評価も凄く上がるはず!」
ライラは受付の男性の顔を見る。
「おっしゃる通りこのクエストの評価はここのほぼ最高値です」
「それだけヤバいって事でもあるんだぞ!」
(この感情は何だ?怖いのか?一体何に?)
「私達なら出来るよ!」
ライラの笑顔を見てこの感情に気が付く。
(これは恐怖だライラを失いたくない‥)
散々訓練でイメージを続けていた筈なのに、一度もイメージしなかった大切な人を失うと言う強烈な絶望感、ルークは初めて心の底から恐怖を感じていた
「駄目だ‥」
耐えかねたルークはライラに抱きついていた。
「ルークどうしたの?!」
「失いたくないんだ、こんなに大切に思っていたなんて‥」
ライラはルークの頭を撫でながら。
「実は一目惚れだったのルークが先だったりして?」
(そうなのかも知れない初めて見た時に可憐だと思って見惚れていた)
「どうすればいい?恐怖で動けないなんて初めてだ」
「私も怖いよ、でも大切な人だからこそ守りたいって強く思った!ルークについて行こうって決めたの!」
「ライラは凄いな俺にも出来るかな?」
「私の事絶対に守るんでしょ?」
(そうだ最初に答えた事だジノンとも約束をした、絶対に守ると‥)
覚悟を決めると不安が軽くなっていく。
「ああ!絶対に守る!守って見せる!」
すると周りから一斉に拍手が挙がる、興奮して周りが見えなくなってたここはギルドの真っ只中だ。
「お客様イチャつき過ぎです」
「すまん‥お騒がせをした」
恥ずかしさで顔から火が出そうだ、周りの冒険者や兵士達の睨み合いも収まっていた、兵士の1人が話し出す。
「皆落ち着いて聞いてくれ!今回は首都からの精鋭も来る絶対に成功させる!報酬も1人金貨10枚約束させていただく!」
「マジかよ!金貨10枚!」
「本気って事だよな?」
「俺達を盾にしないと誓えるか?」
兵士は頷くと宣言した。
「冒険者達を盾にしないと約束しよう!」
冒険者達は色めき立っていた。
「今回は行けそうだな」
「ここに居ない奴らにも声をかけるぞ!」
ギルドはいつもの賑やかさを取り戻していた、早く去りたかったが兵士がお礼がしたいと言ってるみたいだ。
「あなた達のお陰で何とかなりそうだ!本当にありがとう!」
「感謝されることは何もしてないんだが‥」
「いや皆恐怖していた、君達のやり取りを見て誰かを守ると言う気持ちを思い出したんだ」
(改めて言われると何やってんだ俺は)
恥ずかしさで死にそうだ。
「これはお礼に受け取って欲しい」
「これは?」
「幻影を生み出す事が出来る魔石、動きの速い獣人なら使いこなせるはず我々ドワーフには向いて無くてね」
ライラなら使いこなせそうだ。
「ライラスロットはまだ空いてるか?」
「うん、まだ2つ空いてるよ1つは身体強化」
「これで2つ目だな」
ライラはガントレットに魔石を嵌めた。
「早く宿に帰ろう、少し休みたい」
「いっぱい泣いたもんね!」
宿につくと直ぐに部屋に入るどっと疲れがのしかかる、ライラが嬉しそうに聞いてきた。
「一緒に寝る?」
誘惑に負けそうになるが踏みとどまる。
「一緒に寝たいけど、まだ‥早い!」
「ふふっおやすみルーク」
「おやすみ」
今日は色んなことがあった、正直サイクロプスとの再戦も頭に過った何処かで出会わない事を願っている自分もいた、恐怖していたのかも知れないでもそれ以上の恐怖を知った今もう怖くは無い、絶対に守るその覚悟を力に変えて‥




