人間嫌いの武具屋
翌朝ルークは天井を眺めていた、勢いに任せて結婚したのは良いがそれが正解だったのか。
(結婚か‥思っていたのとは大分違ったな)
許嫁 お見合い 大恋愛 様々な形があるが会って数日で結婚は流石に想定して無かった。
「ライラは本当に嬉しそうだったな‥幸せに出来たら良いな」
ぼ〜っと考えているとドアのノックで体を起こす。
「ちょっと待ってくれ!」
上着を着てドアを開けるとライラが不服そうに立っていた。
「おはよう、早いんだな」
「おはよう‥」
「どうした元気無いな?」
「どうして一緒に寝てくれないんですか!」
昨日の夜一緒に寝るかどうかで押し問答があった。
「物事には順序があってだな‥まだ手も繋いで無いのに一緒に寝るのは駄目だろ!」
「それはそうですけど」
これは安心させないと蟠りになる。
「よく聞いてくれ、ライラが大切だから言ってるんだ都合の良い相手ならこんな事は言わない、一緒に幸せになろう」
(我ながらかなり恥ずかしい事を言ってしまった)
ライラは見る見る機嫌が良くなっていく、表情がコロコロ変わって本当に見てて飽きない。
「えへへっ」
ライラは嬉しそうにもじもじしている。
「じゃあ朝食を済ませたら買物に行こう」
「はい!部屋で準備してきます」
2人は食事を終えると、教会でお金を下ろしてから受付に聞いた武具店に向かう事にした。
教会に着くと預金の確認をする。
「全額下ろして金貨3枚と銀貨85枚だなライラはいくらある?」
「私は金貨2枚に銀貨40枚です、あと‥」
ライラは悩みながら続ける。
「銅貨120枚です」
「まだ銅貨で払ってる奴がいるのか‥」
銅貨とは別名亜人貨とも呼ばれ昔から金貨や銀貨で払いたくない時に亜人達に払っていた通貨だ、勿論人間の町では使えない事が多い。
ライラの少し悲しげな表情に怒りが湧いてきた。
「シスターこの銅貨を両替したい」
「銅貨の両替は人間 エルフ ドワーフしか許されていません」
「私の妻の財産なんだ問題ないはずだが?」
「確かにそれなら問題ありません手数料込みで金貨1枚と交換になります」
シスターは悪くないんだが語気が強くなってしまった、しかし教会が亜人を認めてないのが事の発端だ少しくらい我慢してもらおう。
「ありがとう、これはお礼に」
銀貨を数枚を募金箱に入れる。
「素晴らしいお心遣いに感謝いたします!」
募金すると毎回大げさに反応するのは何故だろうか?まあそういうものなんだろう。
「ライラ次に行こうか」
ライラを見ると嬉しそうに笑っている、手を握り教会を出ると武具屋に向う。
「確かこの辺りだよな?」
「ドランの武具屋って言ってました」
(あった小さな看板が掲げられている見逃す所だった)
「これは聞いてなかったら気が付かないな」
「受付のドワーフさんも、普通の人間には教えないって言ってましたね何でだろ?」
取り敢えず中に入ってみると厳ついドワーフの声が聞こえてきた。
「いらっしゃい!って人間じゃねーか帰れ帰れ!!」
「ちょっと待ってくれ!宿屋の紹介で来たんだ!」
「ん?弟の紹介か?何でまた」
ドワーフの男がルークの横を見る。
「こりゃべっぴんさんだ!弟の紹介って事はもしかして夫婦なのか?」
ライラはコクリと頷くとドワーフは自己紹介を始めた。
「ワシはドラン鍛冶屋と武具屋をやっている良く来たな!」
「私はライラ、こっちは夫のルークよ」
ドランはルークを見るとゲラゲラ笑い出した。
「お前さん運が良いな!普通は人間には装備を売らないんだが、亜人がパートナーなら話は別だ!」
「別に亜人だから結婚した訳じゃ無いぞ!ライラだからだ」
「カッー言うね〜気に入った!ワシの取っておきも見せようか!」
ドランは奥に走って行った何かを持ってくるみたいだ。
「ライラ今のうちに店内を見て回ろう?」
「はっはい!」
「ん?大丈夫か?」
「大丈夫っ!」
ドランが戻るまで店内を見て回った、どれも一級品ばかりで値段も中々高い。
「待たせたな!これがワシの最高傑作だ!」
テーブルに漆黒の片手剣が置かれた黒い剣なんて初めて見る。
「これは何の素材なんだ?黒い剣なんて見たこと無いぞ」
「これは黒竜の爪とオリハルコンを混ぜて鍛えた物で世界に1本の業物だ!」
「こんなに貴重な物買えないぞ、金貨何百枚必要なんだ?」
「悪いが売るつもりは無い!」
(なんだ見せびらかしに出しただけか‥てっきり売ってくれる物かと)
「話を進めよう、魔法使い用のコートと戦士の装備一式を頼む、あと繋がりの指輪を買いたい」
「予算は?」
「出せるのは金貨6枚までだ」
「十分だおまけも付けよう」
ライラは着替えるために試着室に入っていった、ルークはドラン特製のコートを着てみる。
「見た目と違って凄く軽いな」
「耐刃 耐衝撃 耐魔法の優れモノだ、これはおまけだ」
フィンガーレスグローブを渡される。
「コレは?」
「魔法使いは滅多に居ないからホコリを被ってたんだ、そいつは魔力を貯める事が出来るアンタなら上手く使えると思ってな」
確かに魔力のストックになるならいざと言う時に頼りになる、有り難く受け取ろう。
「ありがとう、使わせて貰うよ」
そうしていると試着室のカーテンが開いてライラが出て来た。
「ワシの思った通りだ!見違えたな!」
ルークは着替えたライラに見惚れていた、今までハンターの格好が地味だったのもあって体のラインが出る戦士の装備にドキッとした。
「ルークどう?」
「良く似合ってるよ、でも防具が少ないのはどうして何だ?」
ドランの方を見るとヤレヤレと言いそうな顔で答えた。
「獣人の特性はその動きの速さと身軽さ、防具で固めるとその良さが失われてしまう、見た目は服に見えるが貴重なエルフの作った魔力の込められた軽い金属糸で編まれておる耐久は桁違いだぞ」
ドランは説明を終えると剣と盾を持ってきた。
「この剣と盾はおまけだ!」
金属のスモールシールドに高そうなショートソード魔石も2つずつセットされている。
「獣人用の戦士特注セットの完成じゃ!」
明らかに予算をオーバーしてそうだけどドランは満足そうだし黙っておく。
「繋がりの指輪はあるかな?」
「これじゃな」
繋がりの指輪とは対になる指輪を2人が付けるとお互いの魔力が干渉せずに魔法が使える、ルークが魔法を使った場合ライラが攻撃対象にならない、魔石の効果は対象になる。
「ライラこの指輪を付けて欲しい」
「もしかして結婚指輪ですか!」
「そう言う訳では‥」
ドランが突然叫びだす。
「そういう事は早く言わんかい!ちょっと待ってろ!」
ドランは別の繋がりの指輪を持って来た綺麗な装飾がされている。
「こっちに交換じゃ!ホレ早く!」
「いいのかコレ、高そうだが」
「結婚指輪なら断然こっちしか無い!金はいいから早く早く!」
ドランは自分の事のように嬉しそうだ。
「結婚指輪って事になったが良いかな?」
「うん!大切にするね!」
ドランは拍手しながら大喜びだ。
「どうしてここまでしてくれるんだ?」
「亜人への偏見が無いからとしか言えん、それ以上は聞かれても答えんぞ!」
(聞いても駄目そうだな、宿の受付が弟って言ってたな帰ったら聞いてみるか)
「それじゃ世話になった、稼いだらまた来るよ」
「おう!ワシの最高傑作が買えるくらい稼いでくれよ!」
「ドランさんまたね!」
武具屋を出ると一度ギルドに向かいクエストを探すことにした、時刻はお昼前2人で歩いているとソレは突然起きた。
「ん?地震か?」
「ルーク!あそこ!」
ライラの指差す先に土煙が上がっている。
「行ってみよう、助けが必要かもしれない」
土煙の方に進んでいると突然叫び声が響き渡る。
「うわあぁぁぁ!」
「魔物だ!魔物が出たぞ〜!」
高台にある塔から警鐘が鳴り響く、ドワーフ兵や冒険者達も集まり始めていた。
「ライラ!生存者が居ないか探してくれ、俺は魔物の数を減らす!」
「わかった!何かあったら直ぐに呼んでね!」
ライラは壁から壁に飛び移り上から生存者を探し始めた。
「よし!行くか!」
ルークは魔物の群れに向かって走り出す、強力な魔法が使えるのは人が集まる前までだ、短期決戦が始まろうとしていた。




