表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/128

新人類


          宿り木の村


 盗賊団を壊滅させ、攫われた村人達を救出し村へと帰還した。


「あっ!帰ってきた!」


 ペンちゃん達を見つけライラが駆け寄る。


「ペンちゃんおかえり!どうだった?」


「全員助けたが...ちょっとマズイ状況だな」


 後ろの村人達は皆沈み込んでいる。


「ライラ、取り敢えず村長の家で話すわ」


「うん」


 村人達の事は気になるが、先に成功の知らせを伝えるべきだ。



          村長の家


「その様子どうやら成功した様だな」


「ええ、楽勝だった」


「奴らの溜め込んだ武器も金も持ち出した、当分困らないだろうが...問題はそこじゃねぇな」


 村長は怪訝な顔をする。


「何があった?」


「数人だけど孕まされてるわ...後、子供達も数人トラウマで話せなくなってる」


「死者が居ないとはいえ...これは...」


 ライラが村長に確認を取る。


「村長さん盗賊団が来たのは何時からなの?」


「2ヶ月前だ、花の国から遠征に来てそのまま居着いた...」


 イザナは依頼書を見て違和感を覚えた。


「この依頼書おかしい...盗賊団はかなりの大所帯だった、その討伐を2人の冒険者が受けられる筈が...」


「あ〜なるほどな...ギルドもグルって訳か」


 イザナ達は規格外に強く気にも止めなかったが、よくよく考えれば冒険者が戦う規模では無い。


「村長さんギルドから渡された箱開けてみて」


 ライラが箱を両手に持ち村長がギルドから渡された鍵で開けると...


「やっぱり...」


 箱の中は石が詰められていた。


「確定だなギルドもグルなら、その内仕返しに来るなこりゃ」


「はぁ...面倒な事になったわね」


「ねぇ2人共、この村私達で守らない?」


 ペンちゃんは胸を張る。


「おう!任せろ!」


「本気?」


 ライラは関わった以上見過ごせない。勿論ペンちゃんはライラに絶対服従で、多数決ではイザナは勝てない。


「私の出産も近いし、落ち着ける場所が欲しいよね?」


「それはそうだけど...」


 村長がイザナの手を取る。


「頼む!金なら何とかする!村を!村を守って欲しい!」


「わかった!わかったから!」


 その時村長はイザナの腰の剣に気が付く。


「それは!追撃の魔剣!?」


「ああ、コレね戦利品として貰うわよ?」


 村長は話し始める...村を守っていた守護者がその剣を使っていた事。魔剣の特性がバレ、敵が魔剣にしがみ着き封じられた事。


「初見殺しもバレてちゃお終いね...そもそもコレ振るより突くべきなのよね〜」


 イザナは剣を抜き高速で突きを繰り出す。


「エグいな!確かに突きなら避けるか捌くかしかねえ」


「でしょ?」


「えっと...話を戻すね?」


 ライラが脱線した話を戻す。


「村長さん、村の女性や子供達を治せる方法があるの...」


「本当か!?」


「でも1つだけ約束して欲しい」


「何でも言ってくれ!」


 ライラはペンちゃんの荷物から厳重に封印された箱を取り出すと...箱に手を当て唱える。


「解放」


 箱が開くと中にライラソックリの女神像が納められていた。


「それは?」


「う〜んとね...簡単に説明すると私、神様の元妻なの」


「は???」


 当然の反応だ、突然そんな事を言われても唖然とするばかり。


「ライラそれ何?」


「ルークにね御神体が欲しいってお願いしたの、アレ何でも治せるでしょ?でも王都の御神体しか駄目って言われて...」


 王都の大聖堂で管理運用されるなら問題無いが、それが外に存在しては争奪権になる。


「そりゃそうだ、アレ何でも願いが叶うんだろ?」


「うん、最初だけ正しい願いなら何でも叶うよ!後はその人の信仰心次第だけど」


 村長もルーク教の話は耳にしていた。


「アレは本当の話しだったのか?その女神像にも同じ効果が???」


「うん」


 村長は考え込む...コレは助けにもなるが災いにもなる。


「約束とはコレを秘匿する事か?」


「ううん!情報は何処からか漏れると思う...ならコレを使って村を繁栄させて欲しいの」


「自分達で守れと...」


 村長は悩む...コレを使えば此処はメッカとなる。絶え間なく人が訪れ繁栄もするが野心を持った者も多く引き寄せる。


「...使わせてもらうぞ、私の独断だが村の崩壊よりはマシだと思おう」



           村の広場


 村長により村人が中央広場に集められてた。


「皆の者よく聞け!盗賊団は討伐された!だが心や体に傷を負った者も多い!」


「うっ...ぅぅぅ」


 泣き出す者...絶望を思い出す者...村人達は沈み込む。


「だが!今日此処に!女神様が降臨なされた!!コレを見よ!」


 広場の壇上に女神像を置く。


「信じられないだろうがコレには皆を治す力がある!私を信じて願いを捧げて欲しい!約束する!必ず治ると!」


 ザワザワ... 広場は騒然としていた。


 村人は皆、信じられないと疑いの眼差しを向ける。


 すると...1人の女性が壇上に上がった。


「おっ!おい!」


「あなた...コレを見て...」


 女性は皆の前で服を脱ぐ...それを見たもの達は絶句した。


「なんて酷い...」

「あんまりだ...」

「うっ...うっ...」


 夫はその姿に叫び声をあげる。


「あぁぁぁぁ!!!」


 女性の身体には無数の傷跡...他人には見せられない所有物としての数々の刻印が刻まれていた。


「村長...本当に治せるの?...こんな醜い身体でも?」


「信じてくれ」


 女性は女神像の前に跪き両手を重ね願う。


(お願い...元の身体に...忌わしい記憶も...全て元に戻して!)


 女神像が輝く! ルークの神の力で作られた本物の御神体、その効果で女性は光に包まれる。


「見ろ!傷が!!」


 広場は歓喜の声で沸き起こる。


「嘘...傷跡が消えた?記憶も...あぁ!全部思い出せなくなってる!」


 攫われて救出された事しか記憶に無い。


 夫婦は抱き締め合い涙を流す。


 その光景を遠くからイザナが見つめていた。


(はぁ...大事になって来た...パパも何考えてんのよ)


 その後...村長から村人達にライラ達が紹介され、女神像と共にこの村の一員として受け入れられた。



        天界 マモンの研究室


 カタカタカタ... マモンはルークの生体データが映るモニターで何かを操作していた。


(ふむ...安定しておるの〜やはり母親に甘えたい願望を強くして正解じゃな)


 神と成ったルークだが魂の根幹はマモンが設計している。未だに生みの親の呪縛からは解き放たれてはいない。


(残るはアマテラスの端末の排除...システムの方は問題無く動いておるのにアレだけは暴走しておる)


 カタカタカタ... 計画を立て準備を進めていると。


 ガチャ! 扉が勢いよく開く。


「マーちゃんご飯だぞ〜!」


 ピッ! 即座にモニターを消す。


「もうそんな時間じゃったか、こちらも一区切りついたわい」


 マモンはエリザの笑顔を見て再確認する。


(この幸せは絶対に守り抜く...ルークよまだ持ってくれ...)


 ルークの人生...魔王の器としてのクローン、魔王降臨、ヒューマノイド化、そして聖杯を使い神として受肉、魂の強度に限界が来ていた。



           2ヶ月後 


 宿り木の村はアレからたった2ヶ月で人口が倍になっていた。


 以前から住んでいた村人はライラ教の創立メンバーとして、特権階級扱いされている。



          村長の家


「マルク村長!今日の分の移住申請書だ」


「多いな...ストップだ!新たな申請は止めろ!」


 村の拡張工事が人口増加に間に合っていなかった。


「村長!」


 ドタドタと村人が駆け込んできた。


「次はなんだ?」


「水の国がこの村の領有権を羽の国に主張した!ここは戦場になる!」


 マルクはため息をつく。


「はぁ...次から次へと、戦争に関しては心配するな此方にはペンドラゴン様が居られる」


 ペンちゃんはこの村に略奪に訪れた者達を全て捻り潰している。余りの強さに闘神が女神を守っているとさえ噂されていた。



         それから3週間後


「ネェェ!ネェェ!」


 子供用のベットで金髪の赤ちゃんが鳴き声を上げる。


「はいはい!その声お腹が空いたのね」


 ライラが駆け寄り抱き上げ椅子に座る。


「お腹すいたね!ほらおっぱいですよ〜」


「ちゅっちゅ...」


 ライラは我が子に乳をあげている。


「ライラ!アベルは...おっとメシだったか」


 ペンちゃんは乳を飲む息子を嬉しそうに眺めていた。


「俺達の子なんだよな!?はぇ〜何度見てもすげぇな〜」


「そうよパパ?」


「まだその呼び方に慣れねぇな〜擽ってえ」


 そう言いながらペンちゃんはライラの胸を横目で見る。


「ん?もしかして飲んでみたいの?」


「なっ!そっそれはだな...」


「飲みたくないの?」


「飲みたい...」


 恥ずかしそうに答える。


「ふふっ...じゃあお仕事終わってからね」


「身体の方はもう良いのか?」


「うん、もう大丈夫よ」


「おお!やったぜ!!さっさと仕事終わらせて来るか!チュッ!」


 ライラにキスをするとペンちゃんは急いで家を出る。


 何気ない光景だったが...突如として日常が崩れた。


「ねぇ?ママは本当にパパを愛してるの?」


 突然アベルが流暢に話し始めた。


「えっ!?アベル???」


 ゆっくりと瞼が開く...そこには虹色の瞳が輝く。


「うわっ!綺麗...凄いね!キラキラだ」


「...ママ驚かないの?」


「えっ?あっ!アベル言葉分かるの?」


「うん...僕機械だよ?赤ちゃんのフリしてるだけだし」


「凄いね〜」


 全く驚かない母に逆に驚く。


(返答次第で死ぬかもしれないのに...呑気だね)


「答えてママ」


 ライラは隠さず我が子に伝える。


「えっと...初めはね...利用するつもりだったの、アレ見える?」


 ライラは神剣を指差す。


「あの神剣はルークが作った剣、抜いた瞬間に理解したのコレはディアスを殺す為の剣で救う為じゃないって」


 アベルは黙って聞いている。


「でも神剣無しじゃディアスに近寄る事も出来ない...その時ペンちゃんが私の管理下に置かれて...」


「それでパパを利用しようと?」


「そう...意見は言えるけど逆らえない事を利用して「私を支えて」って命令したの...最低でしょ?」


 アベルはまた黙る。


「それで...せめて望みは叶えてあげたいなって、一緒になったんだけど...」


「けど?」


 ライラは嬉しそうに微笑む。


「赤ちゃん出来たって分かった時、とっても嬉しかったの!私ペンちゃんを愛してたんだって」


 それを聞いたアベルから殺意が消えた。


「ありがとうママ、そしてごめんなさい」


「ん?何で謝るの?」


「僕が完全体として産まれる為にママの身体をナノマシンで作り替えたんだ...今は僕と同じ機械生命体だよ」


 ライラは首を捻る。


「待ってね...今切り替えるから」


 ピッ! ライラの脳内で音がした。


「えっ!?嘘!」


 即座に理解する、脳内で自分の事が自分の身体が最早別物だと。


「ごめんねママ」


「ん〜?ん〜?まあいっか!」


 軽い...余りにも軽い反応にアベルは困惑していた。


(僕のママもしかして凄い人なのか?)


「ママ、僕が育つまで次の子は孕まない様に設定しててね」


「ホントだ!細かく設定出来るんだ!」


 自分の身体を完全に管理出来る機械生命体ならではの特性。


「あっ!それより!アベル!」


「???」


 ライラはアベルを抱き抱え背中を軽く摩る。


(あっ!忘れてた)


「エッ!」


 吐き戻しを防ぐゲップをする。


「よく出来ました!偉いね〜」


(必要無いんだけどな...まあママが満足なら良いか)


「パパには僕が話せるのは内緒でね?」


「パパと話したくないの?」


「子育てに張り切ってるから、僕はパパを裏切りたくない」


 ライラはアベルを抱き締める。


「良い子ね!流石私の子ね!」


 それからアベルが話す事は無かった、満足した様で赤ちゃんとして過ごす。



          その日の夜


 アベルはライラの胎内に居た時に得たライラの記憶から今の神を疑う。


(アレは多分マモンに操られている...ママが1番と言ってた癖に場当たり的に動きすぎる、ディアスにも興味すら無い)


 アベルは薄目で横を見る...


「ヤバいな久々で止まらねえ」

「はぁはぁ...まだやるの〜」

「まだまだ!」

「もう〜じゃあ後ろから...ね?」

「おう!行くぜ!」


 ライラの甘い声が響く。


 愛し合う両親を見てアベルは思う。


(僕達が新たな人間に...新人類としてこの世界を手に入れるんだ、欠陥だらけの奴らには世界は勿体無い)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ