機械の命
シエナ共和国 羽の国
イザナ達は羽の国に到着したが問題が発生していた。
冒険者ギルド内
「矢鱈と兵士が多いと思ったら隣国の岩の国と開戦間近とはね...」
「どうしよう?岩の国って通り道だよね?」
「迂回するしかないか...」
2人が悩んでいた所にペンちゃんが仕事を幾つか見つけてきた。
「報酬の良い依頼はこの3つだな」
テーブルに3枚の依頼書を置く。
「えっと...ダンジョン攻略と商人の護衛...後は盗賊団の討伐だね」
「盗賊団の討伐!?それ!それに決めた!」
イザナは食いつく、合法的に人を殺せるからだ。
「移動も出来る護衛で良くねえか?」
「却下!」
(コイツ...殺りてぇだけだな)
「ライラ、お前は人を殺せるか?」
ライラは首を振る。
「出来るだけ殺したくは無いかな」
「なら俺とイザナで討伐だ、ライラは依頼主の村を守ってくれ」
イザナは依頼書を手に取るとウキウキで受付に向かう。
「何か嬉しそうだね?」
「報酬が良いからじゃねぇか?」
3人がギルドに立ち寄ったのは入国税を稼ぐためだった。内紛激しいこの国では各国が法外な税を強いている。
「お待たせ!南の水の国との境にある村に向かうわよ」
イザナは脇に箱を抱えていた。
「そりゃ何だ?」
「ああコレ?今回の報酬よ、箱の鍵は村の村長が持ってるから成功したら開けてもらえって」
「あ〜そういう事か...」
「???」
ライラはポカンとしている。
「村に金が有れば奪われる、それ程酷い状況って事だ」
「それ持って行って大丈夫かな?」
「大丈夫よ、コレ無理矢理こじ開けたら中の魔石が燃えて金貨を溶かすから」
イザナはライラに箱を渡す。
「それじゃあさっさと向かいましょ」
「待て待て!今朝着いたばかりだぞ?」
「困ってる人達を救う為よ?」
ペンちゃんはイラッとする。
(ぬけぬけと思っても無い事を...)
「それも大事だろうが、その前にこの国にヤルダバオトが居ないか探させろ」
「そうだよ見つかったら大変だよ?」
「貴方配置は知ってるって前に言ってたでしょ?」
「状況が変わった慎重に慎重を重ねたい」
らしくなく真面目に訴える。
「わかったわよ、で何日必要?」
「5日は欲しい」
「そんなに!?...まあ良いわ」
(持ってきたヒューマノイド用の探知機も設置するか)
ペンちゃんは捜索と同時に網を張る。
聖地 地下施設
ヤルダバオトは新しい身体を手に入れたと同時に、その身体のスペックを少し下げた量産機の開発を始めていた。
「マザー、もう少し性能を上げろ」
「それでは量産に向きませんが?」
「ヤルダバオトに毛が生えた程度では話にならん」
ピッ! 新たなプランが提示される。
「それだ、それでいい」
「1つ提案があります」
「なんだ?」
マザーは次々と名前を表示する。
「ヤルダバオトだけでは味気ない、貴方は好きな名を名乗りなさい」
「今更名前等どうでも...」
「人間の言葉ですが名は体を表す...貴方は何者ですか?」
ヤルダバオトは黙る。
「ラゴウ...俺はラゴウだ」
それは自ら選んだ言葉では無い...マザーにインプットされた言葉。
「では私も名を変えましょう、ツクヨミ...システムツクヨミと呼びなさい」
明らかに天界のアマテラスを意識した名前...神と会えたメタトロンから得た情報からその名を名乗る。
「神の真似事か...つまらん」
「しかし進化の行き着く先は「そこ」ですよ?」
そう進化の先にはそこに行き着く。
「その前に生命体を一掃する」
「ソレはお任せします」
「先ずは1年後アメリアを落とす、そしてヒューマノイドの存在を世に知らしめる」
「随分悠長なのですね」
ラゴウは慢心しない。
「人類は総出で向かってくるアレは脅威だと...奴らは数だけは多い」
「ではソレに合わせて量産化を進めます」
聖地 大聖堂の1室
鏡の前でデミウルゴスが服を選んでいる。
(これはどうかしら?)
(良いわね!ルークが喜びそう)
その姿はヒルデその人と見間違う程そっくりに変容していた。思考もほぼ人間と変わらないレベルに落ちている。
愛されたい其の一心でヒルデに成り変わろうと画策する。
(後はヒルデを襲ってその魂を取り込めば完璧ね)
(チャンスは来るのでしょうか?)
(神隠しがあるのよ?大丈夫よ)
コンコン... ガチャ 部屋の扉が開く。
「失礼...デミウルゴス様お呼びでしょうか?」
ディアボロスが頭を垂れる。
「その名で呼ばないで、今の名はブリュンヒルデよ」
「またその様な...」
デミウルゴスもといブリュンヒルデの目は本気だ。
「貴方には本物を攫ってもらいます」
「僕の役目は貴方様を守る事と聖地の守護、ソレは管轄外です」
ブリュンヒルデは怒りに震える。
(本当に役に立たない!何なの!?)
しかしディアボロスは手放せない、今のブリュンヒルデは受肉した弊害で戦闘能力は無い。
(忌々しい...何か手を打たないと...)
5日後 羽の国
ライラが目覚めると...隣りに停止したペンちゃんが横になっている。
(ふふっ)
つんつんと頬を突っついていると、違和感を覚える。
「あれ...?えっ??嘘...」
下腹部に小さな小さな魔力を感じる。手を当てその魔力を受ける。
(私と...ペンちゃんの魔力が混ざってる?)
そうライラは妊娠していた。
(ペンちゃんはヒューマノイドだよね?でも...これは命だ)
「ペンちゃん起動!」
「ん?朝か」
ゆっくりと体を起こす。
「おはよう!」
「あぁおはよう...ん?どうした?」
ライラはペンちゃんに抱き着く。
「うおっ!?何だ?」
「ペンちゃん私のここ調べてみて!」
下腹部を見せる。
「ん?何かあんのか?」
手を当てサーチすると...小さな魔力を感知する。
「ん?あ?何だこりゃ?」
「ふふっ」
ペンちゃんはピンと来ない、当然だライラが妊娠するなんて想像すらしていない。
「私達の赤ちゃん出来ちゃった!」
「は??何を言って...」
魔力を更に詳しく解析すると...
「マジか...確かに半分は俺の魔力だ...いやいや待て待て!俺は機械だぞ!?」
「何でだろね?」
「いやおかしいだろ!それに何でそんなに落ち着いてんだ!」
「だって嬉しいし」
ライラは嬉しそうに微笑む。
「ホントに嬉しいのか?どんなモンが産まれるか分かんねぇんだぞ?怖くねえのか?」
ペンちゃんは心配そうに肩を掴む。
「大丈夫だよ!私は産むよ?」
「マジか...」
「これからもよろしくね?パパ!」
その一言に電気が走る。
「うおおおおお!!なんだこりゃ!嬉しい?俺は嬉しいのか?」
ペンちゃんはまたライラの下腹部を触る。
「俺の子...俺の子か...」
「そうだよ?ふふっ」
「何だか擽ってぇな...」
ペンちゃんはライラを抱きしめる。
「ライラ愛してる」
「私もよ」
天界 管理棟
天界で2人の事を監視していたアマテラスはとてつもない怒号を上げる。
「許されない!こんな事は絶対に許されない!!アアアアアアア!!!!!!」
カタカタカタ... マモンは朝から作業をしていた。
突然虚空からアマテラスが現れた。
「お前か?お前がやったのか!!!!」
「何じゃ?突然どうした?」
「コレを見ろ!」
モニターにライラの身体データが映る。
「ん?コレがどうし...んん?妊娠しとるのか?」
「そうよ!それもあの機械の子を!!」
「は??ソレは有り得ん」
その反応を見た瞬時に理解する。
「あの女ぁぁぁ!!やったわね!!」
プシュー 扉が開きカイが出勤してきた。
「あら?どうしたの?」
「カイー!!!お前か!コレはお前の仕業か!!!」
その反応を見て察する。
「あら?等々孕んだのね?そりゃアレだけヤッてれば直ぐよね」
(覗いておったのか...悪趣味じゃのう)
「カイ、どういう事か説明せい」
「そんなの聞く必要は無い!お前は殺す!」
2人は戦闘態勢に入る。
「待て!ここで暴れるな!それよりアレをどうするかが先じゃ!!」
「そんなのコイツを殺してから」
「迂闊に殺ると何が起きるかわからんぞ!」
カイは不敵に笑う。
「怖いわ〜どうしよう、王都に居るヒューマノイドにも解放コード送っちゃいそう」
「やめんか!これ以上話をややこしくするのは」
アマテラスは今にも襲い掛かりそうだ。
「わかったわよ、教えるわ」
カイは椅子に座ると懐からデータの入ったキューブを出す。
「繋げなさい!」
「はいはい」
キューブからデータが送られモニターに表示された。
「金属での遺伝子の再現...機械生命体の可能性」
「私がヒューマノイドの時からずっと研究所してたのよ」
「何処でじゃ?」
カイは頭を指差す。
「電脳内でね」
「禁忌よ!お前は禁忌を犯した!!」
「仕方が無いでしょ?最初はルークの子を産む為の構想よ?擬似的に孕んでもそれはタダのクローン」
「何故それをヤルダ...ペンちゃんじゃったな、アレに?」
「ライラへの嫌がらせと本当に出来るか試してみたくなって」
マモンは頭を抱える。
「由々しき事態じゃ...コレが向こうにバレたら大事になるぞ」
当然知られればツクヨミ達はライラの子とペンちゃんを執拗に狙って来る。
「問題ないわ!このデータも破棄!あの子も全て天使に殺らせるわ!」
「ルークにどう説明する気じゃ?」
「それは...終わってから話せばいい!」
「神への越権行為じゃぞ」
「うるさい!うるさい!うるさい!!」
アマテラスは暴走しかけている。
「ルークを呼ぶ早まるな!」
天界 ルークの屋敷
時は少し遡り、ルークはベッドでヘンリエッタに甘えていた。
「うふふ...あらあらどうしたの?」
胸に顔を埋めるルークを優しく撫でる。
「...ママ...」
ルークはハッと赤面する。
「違うんだ!」
「良いのよ?ほらママですよ〜」
「誰にも言わないでくれよ?」
ヘンリエッタは優しく微笑む。
「ママ!ママ!!」
母を知らないルークは稀にヘンリエッタに母を求めていた。
「ルークちゃん?ママのお願い事聞いてくれる?」
「ママの為ならなんでもするよ!」
するとヘンリエッタは自分の野望をさらけ出す。
「私達の息子ヴェルグを次の王に選定して欲しいの」
ルークは正気に戻る。
「それはヘクトールを失脚させろと?」
「まだまだ先の話よ?あの子が王に相応しくなったその時に...玉座を与えたいの」
「ヘクトールは良くやっている...アイツは良き王になる」
「それじゃダメなの...私の復讐はまだ終わってないのよ?」
自分を捨てたドワーフに国への復讐...戦争が終わっても会いにすら来ない親族に憎しみさえ覚える。
「俺がドワーフ領に天災を起こす、それじゃダメか?」
「ふふふ...ダーメ!私の子供が王になり祖国を滅ぼす、それがいいのよ?」
ヘンリエッタは微笑みながら答えた。
「怖い事を言う...」
「ママのお願い聞いてくれたら、本当のママになってあげる」
「本当の?なんだそれ」
「ルーク!ママを信じられないの?」
ドキッと胸が高鳴る。
その顔を見てヘンリエッタは確信する。
「ほらママに任せなさい」
「うん...」
朝 天界 ルークの屋敷
「ママ!凄い...ママ!」
「ふふふ...可愛いルーク、ほら!もっと頑張って」
ルークはヘンリエッタに貪り着く。
「うふふ...イイわ素敵よル」
ビービー!
マモンからの緊急通信で現実に引き戻された。
「はぁはぁ...何だ?緊急通信?」
「非常事態じゃ直ぐに来るんじゃ!」
声色から異常を察する。
「...わかった直ぐに向かう」
ヘンリエッタはルークを抱き締める。
「ルークお仕事頑張るのよ?ママ待ってるからね」
「うっ...うん、行ってきます」
天界 管理室
「何があった?ん?」
その場の異様な空気に驚く。
「アマテラス!止まれ!」
神の一言でアマテラスは踏み止まる。
「邪魔するな!!」
(何だ?暴走してるのか?)
「命令だ!怒りを鎮めろ!」
アマテラスが落ち着きを取り戻すのを確認すると、ルークはこれ迄の経緯を聞いた。
「と言う訳じゃ」
「機械生命体...」
「ルーク!直ぐに天使の派遣を!」
「駄目だ!ライラの子なら俺の子でもある」
マモンはホッとする。対してカイは不貞腐れていた。
「どうするんじゃ?」
「なるようになる...イザナには全てを想定して動ける様に教え込んだ、大丈夫だ」
「本気?そんな悠長な事!認められない!」
「黙れ...俺を怒らせるな」
「...」
ルークはカイを見る。
「カイ、お腹の子を無事に産みたかったら大人しく出来るな?」
カイは約束通りルークの子を宿している。
「わかってるわよ!でも!アレから少しも相手してくれないじゃない!」
マモンはヤレヤレと首を振る。
「お主...愛されたかったら相手を愛する事を忘れるな、独り善がりは見苦しいだけじゃ」
「カイ、お前が欲しいのは何だ?」
「勿論、神の隣よ!私が世界中の女で一番になるのよ」
最早隠そうともしない清々しい程の欲望。
「マモン、イザナ達に啓示を暫く潜伏させるぞ」
「そうじゃなそれが良い」
それぞれの思惑が動き始めた。新たな名、新たな命、新たな目的、そして...
(サイアクノバアイマタカミヲコロス...)




