遭遇
深夜3時
ペンちゃんの腕まくらでスヤスヤとライラは眠っている。
(最高だった...なんだこの多幸感は...こんなにちげぇのか、今までの女には悪い事をしたな...)
無理矢理と愛し合うのでは天と地の差がある。それを痛感していた。
(それにカイの奴...人間と同じ機能を付けるなんて気が利くじゃねぇか)
アレの快感を思い出しまた興奮してきた。
(マズイ...抑えろ...気を紛れさせるか)
ペンちゃんはセンサーで辺りを見渡す、すると...隣の部屋にイザナが居ない事に気付く。
(ん?こんな時間に何処に行った??)
センサーの範囲を広げると街外れにイザナの魔力を感知する。
(こんな所で何やってんだ?ん??なっ!?)
イザナの近くに居た数人の魔力反応が消失した。
(まさか...人を殺してるのか?一体何の為に!?)
街外れ スラム
コツコツコツ... イザナの足音が響く。
「姉ちゃんこんな所で1人で散歩かな?」
背後から声が掛かる。
「道に迷っちゃって...」
後ろを振り向くと首の銀のネックレスが光る。
「いけないなぁ〜シルバーが真夜中に出歩くなんて...ん?んん?」
男はイザナに詰め寄る。
「ヒヒヒヒ!!こりゃ大当たりだ!おい!殺されたく無けりゃ大人しくしろ!」
刃物を取り出しイザナに突き付けた。
「何するの?」
「決まってるだろ!レイ...」
グシャ!! 男の刃物を持つ手が握り潰された。
「ギィイ...」
バゴンッ!! 叫ぶ前に口を殴り潰す。
「キャハハハ!!これで声出せないでしょ!」
「ブッ...おっゔぉ」
イザナは男の首を掴み路地に引きずり込む。
「痛い?痛い?あぁその顔最高!イッちゃいそう!」
殺人鬼の顔が醜く歪む、楽しい楽しいと恍惚の笑みを浮かべる。
(ずっと我慢してたのよ!もっと!もっと!)
時間を忘れスラムに居るはぐれ者達を1人また1人となぶり殺しにしていく。
数時間後 宿屋
ペンちゃんは焦っていた、朝の6時を過ぎてもイザナが帰って来ない。このままではライラが起きる。
(あの女どうすんだ!このままライラが起きたらどう説明する気だ)
「んんっ...ん〜」
(マズイ...起きるな!)
ライラはゆっくりと目を開けた。
「ペンちゃんおはよ〜」
「おはよう早いんだな、まだ早い寝てても大丈夫だぞ」
「洗濯物も溜まってるから起きる...キャッ!」
ペンちゃんはライラを抱き伏せる。
(イザナ時間稼ぎも限界があるからな!それ以上は知らんぞ)
「ライラが停止しなかったお陰で朝まで悶々としてたんだ、責任取って貰うぞ」
「えええ!ちょっと!」
同時刻
イザナは急ぎ過ぎず宿に向かって歩いていた。
(ヤバッ!夢中になってたら朝になってた...ライラが起きてたらどうする?)
走って戻りたいが人目がチラホラある、死体が見つかるのも時間の問題。今走ると印象に残り捜査対象に載りかねない。
宿屋に着くと気配を消し、忍び込む様に部屋に向かう。
(起きてませんように...静かに静かに...)
ライラ達の部屋の前を通りかかると...
「ぁぁ...」
ほんの微かに声が聞こえた。
(えっまさかまだヤッてんの!?)
扉に耳を当て聴覚を強化する。
「んん!!はぁはぁはぁ...」
「ライラまだだ!」
「えっ!?まだやるの??1回って!」
「おれが満足するまでが1回だ」
「こらっ!怒るよ?」
「頼む!この通りだ!」
「...絶対最後だよ?」
「やったぜ」
部屋から甘美な声が上がると、イザナは即座に消えかけた消音魔法を再び掛け直し部屋に駆け込む。
(先ずは部屋の窓を開けて...臭いを消す為に風呂に入って洗濯だ!急げ!)
窓を開くと着替えを手に取り部屋から出て大浴場に向かう。
(助かった!人殺しがバレたらヤバい...)
暫くして...
「ペンちゃん!そこに座って!」
「おう...」
床に座る。
「これから朝は駄目!良い?」
(ライラの為だったんだがなぁ)
「分かった!ならちゃんと停止してくれよ?」
ライラの顔が赤くなる。
「久しぶりだったから!」
「そうか?」
「そうです〜」
ライラは洗濯物をカゴに入れ抱える。
「次いでにお風呂入ってくる」
「ベトベトだもんな」
「何でヒューマノイドなのに出るの?」
「カイがオマケで付けたんだろ」
ライラは首を傾げながら大浴場へ。
大浴場
「あっ!イザナ起きてたのね」
「そう朝風呂」
ライラはイザナの隣りに座る。
「昨日はごめんね、うるさかったでしょ」
「それよりアイツどうだった?」
「凄かったよ...途中で記憶無くなっちゃった」
乱れに乱れた昨夜を思い出す。
「はいはい良かったわね〜」
ライラはスッキリ顔のイザナに聞く。
「イザナも?何だかスッキリしてるみたいだけど」
「えっ!?まっまあそんなとこ」
「ふぅ〜ん?」
3人は朝食を済ませると今日の予定を話す。
「ゴールドのライラは情報集め、私達はこの自治区を調べるわ」
「2人は何を調べるの?」
「俺はヤルダバオトが潜んでないか見回りだな」
「私はここの旅団が王国に逆らってないか、不穏分子なら始末するわ」
イザナの理由は真っ当に見えるが、戦いを求めての行動だ。
「それじゃ、集合は夕方5時頃ね解散!」
3人は宿の前で散り散りになる。
捜索を初めて2時間
(センサーに反応は無し...まあ停止してたら見つけるのは無理だが)
「戻るか」
振り返ると路地裏に何かが降り立った。
ピピッ! センサーが鳴る。
「おい...お前はここで何をしている?」
ヤルダバオトの声が響く。
(直前まで反応が無かったぞ!)
「何故通信を切ってる...応えろ」
ペンちゃんは路地の方を向くと。
「わりぃな通信装置が壊れててな」
「配備場所と識別番号」
「スローン王国、黒の森、ナンバー25」
「2桁...指揮官機か...黒の森で通信が途絶えた個体がいたな、お前がそうか」
ヤルダバオトは警戒を解く。
「本体からの通達がある、手のコネクタを出せ」
ペンちゃんは躊躇する。思考を並列化されれば今の人格が消える。
(マズイ...このままだと俺が消される)
「そっその前に!極上の女を見つけた、どうだ見たくないか?」
ヤルダバオトは反応を示さない。
「女?そんなものどうでもいい!さっさと手を出せ」
「は??女だぞ!?」
「そうかお前は知らなかったな、俺の本体は生まれ変わった完全な機械としてな、最早生命体等ゴミだ何の興味も無い」
ペンちゃんは動揺していた。
(何があった?コレは知るべきだ...だが...いや待てよ!こいつの通信装置さえ壊せば!)
ヤルダバオトのコネクタと繋がる瞬間!
バキッ!! そのまま顔面にジャブを打ち込んだ。
(そうだ俺が消えたら誰がライラを守るんだ!性能が同じでも勝ってみせる!)
ペンちゃんの中で何かが外れた気がした。
ヤルダバオトは突然の攻撃に仰け反る。
「ガハッ!!」
「オラァァァ!!」
ペンちゃんはそのままの勢いでフルパワーの右ストレートを顔面に打ち込んだ!
ドガアシャァァァ!! ヤルダバオトの顔は潰れ頭が粉々に吹き飛ぶ。
「は??何だこのパワー??」
ピッ! 脳内に自分の未知のスペックが開示されると同時にメッセージが流れた。
「コレを聞いてるならおめでとうと言っておこう...ワシはマモン、お主のその体はワシが設計した最高傑作じゃ!お主がマザーと完全に決別した時にこのメッセージが流れる仕組みとなっておる...簡潔に言う「後を頼む」以上じゃ」
ペンちゃんは開示されたデータを見て震える。
「闘える...これならどんな奴とも...グハハ!!」
ピッ! 動体センサーに反応! 咄嗟に振り向く。
「待った!」
イザナが立っていた。
「見てたのか?」
「ええ、あの手を取ってたら破壊してたとこよ」
「何だ?疑ってたのか?俺はライラと生きると言ったぞ?」
「もしもよもしも」
イザナはペンちゃんを舐め回す様に見る。
「それ、どうやったの?殆ど別人レベルね」
「どうやらリミッターを仕掛けられてたっぽいな」
ペンちゃんは試しにコアの出力を上げる。
「グハハ!こりゃすげぇ!」
(こんなの作れるなら大量生産すればいいのに)
鹵獲や洗脳を恐れ機械の大量生産は出来ない、相手も機械...データを奪われれば戦局がひっくり返る。
「そのガラクタ片付けて」
「おう!」
ヤルダバオトの残骸に近づく。
「電脳を砕いたのはミスったな...ほんとにガラクタじゃねぇか」
ペンちゃんは残骸をバラバラに砕き森の彼方に投げ捨てた。
「終わったぞ」
「取り敢えず見られては無いわね」
「殺っちまった以上他が集まってくるな、どうする?」
「仕方が無いわよどっちみち」
その後ライラと合流して報告を交わす。
「私からね、夜中から早朝にかけてスラムで連続殺人が起きたって話題になってたよ」
「犯人は?」
(こいつマジか)
ペンちゃんは驚きを隠せない。
「探さないって言ってたよ、言い難いけどスラムのゴミが減ってありがたいって...」
「次は俺だな、街外れでヤルダバオトに会った!勿論スクラップにしてやったぞ!」
「えええ!!」
ペンちゃんは腕を曲げ力こぶを見せる。
「最後は私ね、エカルラート旅団は普通に此処を流通拠点にしたいだけね怪しい所も無かった...残念」
「そういう訳でさっさと移動するわよ」
「もしかして...今から??」
「そうよ、奴ら寝ずに動けるから1泊すると囲まれるオチよ」
ライラは不満そうに頬を膨らませる。
「折角ベッドで寝られると思ったのに〜」
「次の国でゆっくり羽を伸ばそうぜ」
荷物を纏めながら話を続ける。
「東のシエナ共和国を通ってアメリア領に潜り込む、シエナは人口の多い国だから入ってしまえば見つけるのは困難よ」
3人は街から出ると東へ森を駆け抜ける。
「こんなに飛ばして良いのかな?」
「平気平気!アレからずっとペンちゃんがサーチしてるから」
「アイツは恐らく偶然あそこに居た、間違いねえ」
魔力識別センサーに掛からなかった事を踏まえ今は常に動体広域サーチに切り替えている。
3人の移動速度はかなりのものだ、シエナ共和国との国境が日が昇る前に見えてきた。
「ストップ!そろそろ歩くわよ」
「は〜い」
ペンちゃんがシエナ共和国の事を話し始める。
「え〜っと...ユーラ大平原の南で山脈がある為強風は防がれ気候は安定、人口は世界一で資源も豊富と」
「でもあまり聞かない国だよね?」
「あ〜コレだ!大昔世界の覇を唱えエルフの国に攻め込むも、エルフの精鋭部隊に全滅...その後国内の小国同士の内紛が勃発」
大きな軍隊を持たないエルフに敗北それも仕方が無い。当時のエルフの精鋭部隊はほぼ天使だ、人類では勝てるはずも無い。
「ガブリエル達が居たから勝てなかったのね」
「運が悪過ぎだろ」
「まあそのお陰で大人しくなったんだから好都合よ」
国境を示す大きな石碑が立っている。
「国境警備も無しか...マジでやる気ねぇんだな」
「そりゃ内紛ばかりやってるんだから、外なんか見てられないわよ」
「大丈夫かな?」
「普通に冒険者やってたら大丈夫よ」
「この近くは羽の国だな5km先だ」
3人は歩き始める。到着する頃には日が昇る頃だ。




