子供心
黒の森を出て2日
4人はテントの外を片付け就寝の準備をしている。
「ルリア、キャンプ地まではどの位なの?」
「もう直ぐです、明日の昼には到着出来ます」
カチャカチャ... イザナが食器を片付けていると偵察に出ていたペンちゃんが戻る。
「ざっと見てきた、周辺に魔物の気配はねえ安全だ」
「そう...なら今日は皆休みましょ」
「だっ大丈夫ですか!?」
「私が魔物避けの結界を張るから問題無いわ」
外にいる魔物は低級ばかり黒の森程警戒する必要も無い。
「じゃあペンちゃん一緒に寝よ?」
「おう!」
2人はまるで恋人の様にテントに入って行った。それを見送るイザナは...
(もう隠す気も無いわね...お熱いことで)
「お二人は夫婦なのですか?」
ルリアが小声で聞いてきた。
ズキッ! 心が軋む。
(ん??ナニコレ?)
「まあそんなもんね、邪魔しちゃ悪いしさっさと寝ましょ」
「ですね」
イザナはペンちゃんの変化には気が付いていた。
(最近セクハラは止めてるし、見境なく女を口説く事も無い...実際ルリアには見向きもしてないし)
イザナは2人がくっつくていると確信する。
(これで人殺しも楽に...なんだろ気持ち悪い?)
湧き起こる黒い感情と知らない苛立ちを覚える。
(まぁいいや...でもエカルラートは恐らく無法地帯...あぁ...早くイキたい)
目の前のルリアを殺害する誘惑に耐えながら眠りについた。
翌日 昼
ライラ達はキャンプ地へ到着した。
「結構大きいね〜」
「マーロへ向かう最前線ですから」
「その割にはここに来るまで誰にも合わなかったわね」
「冒険者にとって黒の森は死地ですから...中々パーティーが決まらないんです」
ペンちゃんは冒険者達を品定めしていた。
「マーロに居た奴らと比べると、大分見劣りするな」
「あそこに居るのは冒険者の上澄み、比べるのはナンセンスよ」
「にしてもだな...」
未熟な冒険者の多さに呆れ果てる。
「最近は銃が当たり前の様に使われてるから、冒険者自体の質は落ちてきてるの」
「そりゃそうか」
4人はキャンプの中を歩いていると...
「おお!ルリアじゃないか!戻って来たのか」
「ポルコさん!」
「誰?」
「ここのパーティーの斡旋役よ」
ポルコと呼ばれた爺さんは3人を見ると。
「んん?誰だ?他の面子はどうした?」
「駄目よ全滅」
ルリアは首を振る。
「なんと!経験者が居ても駄目だったのか...」
「逆よ...経験者が足を引っ張ったの」
ルリアは事の経緯を説明すると。
「ふむふむ...なるほどなるほど」
「って訳で...皆疲れ果てて崩壊したわ」
「魔物には苦戦してないんだな?」
ルリアは銃を手に持つ。
「コレがあるからね、問題は弾数くらい」
「ふむ...他の者にも伝えておくか...疲れただろ?ここでゆっくり休んで行くといい」
「そうする」
ライラ達は食料や必要な物を手分けして買い出しすると、今日はここで休む事にする。
「色々補給出来て良かったね〜」
「本当に助かったわね...後5日食事無しなんて無理!」
ルリアが居る以上高速移動は出来ない、それにヤルダバオトの目もある。目立つ行動だけは避けたい。
「色々見てきたが、ここに宿はねえな〜残念残念」
ペンちゃんは残念そうに報告する。
「テントで十分でしょ?」
「そりゃそうなんだがよ...」
ペンちゃんはライラの方を見る...
察したライラは照れていた。
「あぁ〜そういう事?それは残念だったわね、それよりいつくっついたのよ?」
「色々あって...」
「愛のなせる技よ!グハハ!」
イザナは少しだけ不機嫌になると、突然イラつき始めた。
「パパの事はいいんだ?」
(アレ?私何を言ってるの?)
「それは...その...」
ペンちゃんが割って入る。
「これだからガキは困る!」
「はあ?何よそれ?」
「女は同時に多くの男を愛せるし忘れられる、男とは度量が違う」
イザナは反論出来ない、自分も男漁りをしていたからだ。もう抱かれた男の顔すら思い出せない。
「男は惨めだぞ?女に執着するわ独占したがるわ!言ってて悲しくなってくるな!グハハ!」
しかし子供の部分が顔を出し納得出来ない。
「でも夫も子供も居るのよ?悪いと思わないの?」
(今更私は何を?何に苛ついてるの?)
「おいおい!急にどうした?らしくねえぞ?」
イザナはハッとする...母がルーク以外と関係を持つ事を想像しライラに重ねて勝手に嫌悪していた。
「私のママがそんな事してたら絶対に許せない!」
「ごっごめん...」
「ライラ謝るな!ガキが喚いてるだけだ」
「でも...」
ペンちゃんは胸を張る。
「ライラが俺を選んだライラの人生だ、俺が全力で守る...他の誰にも譲らねえ!お前にもねえのか?」
「何よ!?もう旦那づら?」
「落ち着け...この先死ぬ可能性の方が高いんだぞ?1人でその恐怖と戦わせるのか?」
「そんなの私だっ...」
言葉が詰まる、イザナは殺し合いを楽しんでいる。恐怖等感じたことは無い。
「俺は群体から切り離されて孤独を知った...無限だった命も1つ限り、その恐怖を知った...だからライラを支えるし支えて欲しい」
イザナは2人とは分かり合えないと実感した。
(何よそれ...そんなの弱者の傷の舐め合いじゃない!)
「理解出来ない!何でそんなに弱いの?」
「お前...いや何時か分かる俺達を見てろ」
大人になりきれない部分が理解を拒む。アレだけ焚き付けていたのにも関わらず、目の前の2人を受け入れられない。
「もし...もし2人が生き残ったらどうするのよ?ソイツ放ったらかし...」
「ペンちゃんと地上で生きていくよ!」
ライラはペンちゃんを捨てて天界に帰る事は無い。
「パパを捨てるの?」
「ルークは神よ時間も永遠、なら残されたペンちゃんの傍に居る」
ペンちゃんはデミウルゴス製、天界のアマテラスが受け入れる筈もない。システムその物をイジればペンちゃんではなくなる。
「まさかライラ...貴方が死ぬ迄?」
ライラは無言で頷く。
「ライラの最後は俺が看取る!残りの人生を俺と添い遂げたら神に返してやるよ」
2人の覚悟に気圧される。
(遊びでやってんじゃないのね...私とは違う...)
イザナは孤独に慣れすぎていた故に他者を思いやらない、気にせず殺せる。
「わかった!わかったわよ...何か...ごめん...」
昂った感情が鎮まり冷静になると申し訳なくなる。
「何時かイザナにも大切な人が見つかると良いね」
「そうね...」
複雑な顔で答える。すると...
「あの...終わりました?」
ルリアが物陰から出てきた。
「スマンな見苦しい所を見せた」
「いえいえ!冒険者ですから慣れてます!それに内容は聞いてないですから!」
パーティーを組んでいたら口論などよくある事だ。
「よし!テントを張るぞ!」
「何でアンタが仕切ってんのよ」
「ホレホレ!いいからいいから」
ペンちゃんはこの数日で風格が出てきた。
4人は2つのテントを張ると就寝の準備に入る。
「ライラ!一緒に...ん?何だ?」
イザナがライラに近寄ると手を引きテントに連れていく。
「今日は私と、アンタはそっちね」
「はあ!?」
ライラはペンちゃんを宥める。
「今日は色々あったからね?」
「でもよぉ...」
ライラは小声で耳打ちする。
「我慢よ「旦・那・様」出来るよね?」
「ふあっ!?」
旦那と呼ばれ変な声が出る。
「ふふふっ」
「しっ仕方ねえな」
ライラ達がテントに入ると...ルリアと2人になる。
「何してんだ?寝るぞ」
「...何もしないですよね?」
「するか!!俺はライラ一筋だ!」
その夜ライラとイザナは語り合った、ルークの事も家族の事もコレからの事も。そしてイザナは戸惑いながらも納得した。
翌朝
眠い目を擦りながらライラがテントから出る。
「おはよ〜」
「ライラ会いたかったぜ!」
ペンちゃんはライラを抱きしめる。
「ん〜ペンちゃんおはよ」
「朝から暑苦しい!ほら朝食に行くわよ」
4人は朝食を終えると直ぐにエカルラートへ出発した。まだまだ先は長い。
5日後
「おっ見えてきたな!」
森の中、旧エルフの国の城壁が見えてきた。
「入国は予定通りライラとルリアはゴールド、私とペンちゃんはシルバーで」
「ホントに良いの?」
「その方が動きやすいの!」
4人は入国税を払いエカルラート自治区に入る。
イザナはキョロキョロと辺りを見渡す。
(ハハッ!いるいる殺しても誰も気にしないゴミがわらわらと)
「何か珍しいもんでもあったか?」
「ん?別に?少年兵が多いなって」
「それ!私も気になった!」
3人はルリアを見る。
「アレは治安維持の少年兵です」
「は?ガキに治安維持をさせてんのか?」
「使い易いんですよ...正義感で勝手に張り切りますし、悪と決めたら自分から突っ込みます」
「悪趣味ね」
その証拠に少年兵達は生き生きしている。自信に満ちた顔立ちで歩いている。
「見た所15前後だな...1番突っ走りやすい時期だな」
「スラムの方に同じ位の子供達がグループ作って犯罪行為に及んでいるので...それを抑えるのにも使われてますね」
子供は社会を知らない。知らないうちに利用されている事にも気が付かず、使命感や正義感に駆られ安い命をはる。
「ふぅ〜ん?スラム街ね」
「近寄らないで下さいね?シルバーだと襲われちゃいますよ?」
「それより宿が先よ、もう日が暮れる」
宿と聞いてペンちゃんの鼻息が荒くなる。
「等々キタァァァ!!待ってました!」
「うるさい!」
「あの!」
ルリアが足を止める。
「あっそうか!ここまでだったね」
「はい!お世話になりました!」
「これからどうするんだ?」
「ゴールドの特権を使わせて貰います!仕事なんて選び放題ですよ」
「なら心配ないわね」
ルリアは別れの言葉を3人と交わし別々の道へ...
宿屋
ペンちゃんを先頭に大きな宿に入る。
「いらっしゃいませ、ご予約は?」
「無い、今日着いたばかりだ」
「お部屋は3部屋でよろしいですか?」
「2部屋で良い」
「畏まりました、鍵をお渡しします」
鍵を受け取ると3人は部屋へと向かう。
「あ〜疲れた!今日はさっさと寝ましょ、おやすみ」
「おう!」
イザナが別の部屋に入ると...ペンちゃんはウキウキしていた。
「もう...落ち着きなさい!」
「この時をずっと待ってたんだぞ!早く!早く!」
(なんかワンちゃんみたい...ふふふ)
2人は部屋に入る。
「ペンちゃん私お風呂に入ってくるね〜」
「マジかよ...」
ペンちゃんは自分の体を嗅ぐ。
「くんくん...俺も入るか!」
部屋に荷物を置くと大浴場に向かった。
夜
2人はベッドで向かい合っていた。
「いよいよだね...」
「こんなに嬉しいのは初めてだ!」
「ありがと」
「俺に任せてくれ!たっぷり鳴かせてやるぜ!」
「駄目だよ!」
ライラはペンちゃんの顔を指で突く。
「私が大切なら2人で気持ち良くなるの!独り善がりは駄目!」
「すまねぇ...つい...」
ライラは服を脱ぐ。
「とても綺麗だ...愛してる」
「私もよペンちゃん」
その言葉に反応しライラに施した封印が光り一時的に解かれた。
「あっ!?アレ??封印消えちゃった?」
「そういう事か...ライラが誰かを心から愛したら消える様に...」
「どうしよ」
ペンちゃんは下腹部に手を当てる。
「消えてない...一時的に解かれただけだな」
「良かった」
「グハハ!しかし意味ねぇな!俺はヒューマノイドだからな」
ペンちゃんはまだ知らない...自分の身体のある秘密を...
イザナの部屋
暫く横になっていると...隣の部屋から声が漏れてきた。
(おっ?始まったかな?)
フィジカルブーストで聴覚を強化すると。
「ぁ...ぁぁ...」
息を潜め壁に張り付く...傍から見るとみっともない姿だ。
壁に耳を当てると。
「はっ!んんっ!ああ!!」
(よしよし!今だ!)
イザナは壁をドンドン叩いた。
ライラ達の部屋
行為の最中に壁がトントン鳴る。
「んんっ!...んぁ...えっ??」
「ん?向こうまで聞こえてたか?」
ライラの顔が真っ赤に染まる。
「やだ...どうしよ」
その時、部屋を結界が包む。
「コレは消音魔法か?気を遣わせたな」
「恥ずかしいよう〜」
「グハハ!これなら気にする必要も無くなったな!俺も本気で行くぞ」
「えっ!ちょっ...んん...チュッチュッ」
イザナの部屋
数分待って出て来ない事を確認すると気配を断ち部屋から出る。
(待ちに待ったのは私もよ!さあ獲物を探しますか)
イザナは深夜のスラム街に向かう...待ちに待った狩の日、己の欲望を解放する為に。




