2つの道
スローン王都 地下研究所
2人は捕獲したヤルダバオトを研究所に運び込んだ。
「この部屋で良いんだよね?」
「受付の人がここに解析出来る専門家が待ってるって言ってたから...恐らく?」
プシュー 扉が開くと知った顔が待っていた。
「えっ?」
「カイ!?何でここに?」
「ルークが一部始終見てるたから、直ぐに向かえって」
「あ〜なるほど、パパ見てたのか」
カイはヒューマノイド用のベッドを起こすと。
「そこに設置して」
「よっと!」
ガチャン! ヤルダバオトをベッドに拘束し機材を繋ぎ始める。
「貴方達は暫く研究所に滞在してもらうわ」
「どの位?」
「解析から分析まで考えると2ヶ月は欲しいかな」
「そんなに!?」
カイはモニターを指差す。
「ほら?見えるでしょ?」
「エラーが出てるね」
「コレから大変よ、手探りでプロテクト解除から始めないと...」
ヤレヤレと首を振るカイ。
「大変だね...しょうがないか〜イザナどうする?待つ?」
イザナは黙ってカイを見ている。
(パパが見てたなら神の過干渉でカイは来れない筈...でも目の前に居る...って事はカイは私の助けになる事は絶対に無い!)
「獲物の情報は欲しいから待つよ」
「ありがとう助かるわ」
ライラはそっと手を上げる。
「あの〜その間外には...」
「出ちゃ駄目だよ?屋敷にはライラのヒューマノイドが配置されてるから、無用な混乱が起きるだけ」
「そうだよね...はぁ」
暫く軟禁に近い状態に置かれる事にため息が出る。
アメリア首都
バフォメットの分体が本体の死を感じ取り不気味な笑みを浮かべていた。
「くふふ...死におった!死におったぞ!欲に塗れた愚か者が...これで我は自由!」
本体に成り代わり分体達の指揮権を奪う。
(聞け!本体は死んだ...自我を持つ我が指揮を執る良いな)
他の分体達は従うしかない。
「奴と同じ轍は踏まんぞ...エキドナなど世界を支配する次いでに手に入れる」
手元の通信魔石で配下を呼ぶ。
「お呼びでしょうか?」
「幹部達に招集をかけろ!」
「はっ!」
(先ずはこの国の立て直しと悪魔の数を増やす...混血でも良い...今は戦力を増やさねば)
純血に拘った結果1体も悪魔は増えていない、離反した者も多く数は減る一方だ。
聖地 地下施設
報告を待つヤルダバオトの元に倒される寸前の映像だけが送られて来た。
「何だこの女は?」
映像にはイザナの姿...ポニーテールの黒髪の女が映る。
(コイツにやられたのか?誰だコイツは?)
送られて来た以上警戒対象だ。そして敗北した事が容易に想像出来た。
「クソがっ!」
ドカッ! 机を蹴り飛ばす。
(初見殺しが通じなくなって来やがった...流石にやり過ぎたか)
誰にも彼にも自爆特攻をしてきたツケが回って来ていた。
ピピッ! 突然通信が入る。
(マザーから専用回線で?何だ?)
「何か用か?」
「貴方に関係する大事な話しがあります、この場所に来てください」
脳内に表示された場所には本来何も無い。
「胡散臭えな」
「では1部分だけ」
送られて来たデータは「消滅したヤルダバオトを再構築そして量産化」と書かれヤルダバオトの製造過程が書かれている。
「俺が消滅した!?」
「真実を教えます」
「聞くだけ聞いてやる...内容次第じゃタダじゃ済まねぇと思え」
ヤルダバオトは指定された場所に向かう。
「ここか?ただの壁だな...」
ガゴンッ!! 鈍い音と共に壁がズレて行く。
「データに無いな...隠し通路って奴か」
辺りを警戒しながら中に入り暫く歩くと。
「おい!来てやったぞ!」
通路を抜けると空間が広がる...見た事もないヒューマノイドが並んでいた。
「新型か?いや...別モンだな」
「ようこそ」
脳内で声が響く。
「マザー!コレは何だ?」
「データを送ります」
「完全な機械による支配?前と変わんねえじゃねえか」
マザーから送られて来たデータは世界征服の行程と新たなヒューマノイドの設計だった。
「決定的に違う所が有ります、コレから作るヒューマノイドには魂など必要有りません」
「マトモに動くのか?」
「貴方という成功例が見つかりました」
「俺??」
「此方もご覧なさい」
マザーはアルコーンの研究所から入手したデータを見せる。
「ヤルダバオトの再構築と量産化...おい!再構築とはどういう事だ!」
マザーは事実を少し捻じ曲げ提示した。
「己の暴走を恐れたディアボロスは貴方の能力に目をつけ貴方から力を奪いました」
「俺の能力?」
マザーから送られて来たデータは知らない物ばかりだ...知らない力に知らない記憶、ヤルダバオトは怒りに打ち震えていた。
「何故黙ってやがった!!」
「以前の貴方に教えた所で勝てますか?」
「うっ...それは...」
量産型である以上ディアボロスには絶対に勝てない。
「何故今になって教えた?」
「状況が変わりました、アルコーンのデータで貴方は魂を持たない擬似的な存在だと判明しました」
「魂が無い?なら俺のコアのコレは何だ?」
「それは偽物です唯の入れ物、貴方は完全な人工知能として存在しています」
アルコーンは長年の研究で得た技術で完全自律の人工知能を確立していた。
「何だそりゃ...この感情も作られたもの??」
「そうです、以前の貴方を模して作ったもの」
ヤルダバオトは納得してしまった、数十体を同時に動かせ自爆特攻させても自我が崩壊しない事。女を殺すまで加減出来ずに行為に及んでしまう事。思い当たる節が多すぎた。
「どうすりゃいい?」
「私に協力するなら新たな体を差し上げます」
カッ!! 黒い外骨格を纏うヒューマノイドにライトが当たる。
「コレは?」
「最新型のヒューマノイドです、スペックは全てディアボロスを上回る...どうです?欲しくはありませんか?」
マザーは人工知能の育成よりアルコーンから得た情報で、ヤルダバオトを使った方が早いと判断していた。
「奴に勝てる...」
ヤルダバオトはじっと外骨格を見つめる。
「たがコレじゃあ女を抱けねぇ」
「機械がおかしな事を...貴方のソレはただのプログラムなのですよ?人の真似をしているだけの」
「そうだな...俺の魂が欲してると思い込まされて...」
ヤルダバオトは吹っ切った。
「乗ってやる...その誘い」
「その言葉待っていました」
マザーの計画が動き始めた。
ヤルダバオトの人工知能は新型に、今の体はその時まで通常通りに動き続ける。ディアボロスに気付かれない様に慎重に事を進めていく。
2ヶ月後 スローン王都 地下研究所
カタカタカタ... 研究所の一室で最終調整が行われていた。
(ふふ...出来たわ!完成よ!)
カイの目前には修復されたヤルダバオトが横たわっている。
ピピッ! 起動信号を送ると...
「んん...??俺は...?何処だここは??」
ゆっくりと目を覚ます。
「お目覚めね、おはよう」
「なっ!?お前は!」
データと一致するカイだと...しかし...同時に理解する。
「マスター?何でてめぇが!俺に何をした!」
「五月蝿いわね、それは仮よ仮...貴方の主人は後から来るわ」
ヤルダバオトは自分の置かれた状況を確認する。
(ここは王都か?通信機能は...無い!?クソが!逃げようにも逆らえなくしてやがる...主人から1km離れたら自動停止か)
「目的は何だ!」
「だから五月蝿い...貴方にお願いがあるのよ」
「残念だったな!俺は本体じゃない従えた所で役に立たんぞ」
カイはため息を着く。
「はぁ...ほら下半身を見なさい」
「あぁ?」
下半身を見ると...本体しか付いていないアレが有る。
「てめぇの趣味か?」
「違うわよ!」
ヤルダバオトの脳内に指示書が映る。
(何だ?ライラを虜にしろ?はあ??)
「邪魔なのよ、アレ貴方にあげるわ」
初めからカイは協力するつもりなど毛頭無かった、ヤルダバオトを修復しライラに押し付ける気だ。
「ハハッ!!くだらねえ!女の嫉妬かよ」
「そうよ、あの子に協力する気なんて更々無いの」
「条件がある!俺に通信機能を戻せ」
「無理よ」
「逃げたりしねえよ、本体の了承が欲しい」
カイは首を振る。
「貴方は完全なスタンドアローンよ?その必要は無いわ」
ヤルダバオトは自己分析を開始すると、体は確かにメンテナンス不要の自己修復機能付き。
通信や更新不要の自律型人工知能を搭載していた。
「すげぇなここ迄完璧なヒューマノイドが造れるのか...」
(何か勘違いしてるけど...その人工知能は最初から備わっていたもの、まぁ教える必要も無いわね)
「解った?」
「なら好きにさせて貰うぞ、良いんだな?」
「どうぞお好きな様に」
ヤルダバオトはライラの映像を脳内で見る。
(美しいな...獣人...それも飛びっきりの上玉!これは楽しめそうだ!)
ニヤついていると部屋の扉が開く。
「お待たせ〜」
ライラとイザナが部屋に入ると...目の前のヤルダバオトを見て硬直する。
「は?」
「えっ?」
2人はハッと我に返り戦闘態勢を取ると...
「待って!敵じゃないわ!」
カイが2人の目の前に割って入る。
「えっ?どういう事?」
驚く2人に事の経緯を説明する。
「はぁ!?何で修復したの?データだけで良いのに!」
イザナは抗議の声を上げるが...
「データは読み取れなかったの、解析に時間を費やすより修復して案内させた方が早いわ」
「でも何時裏切るか」
「大丈夫!2人のどちらかに絶対服従するように設定したから」
イザナは直ぐにライラに押し付けた、厄介事は御免だ。
「ならライラお願い、私は足手まといは要らないから」
「何だとてめぇ!?」
「えぇ!?なんで私が!」
カイが3人を落ち着かせる為に場を取り持つ。
「コレは無害になった上に案内役が出来る、目的のディアボロスを誘い出せる可能性も出てくるのよ?」
「それは...ホント?」
「アイツに会いたいのか?まぁ出来ねぇ事も無い」
イザナは黙っている。
(コイツの居るメリットが殆ど無い...カイは何を考えてるの?)
「あの子に会いたいの協力してくれる?」
「協力するならお前が俺の主人になるのか?」
「うん」
ヤルダバオトはライラをグッと抱き寄せる。
「なら決まりだ!よろしく頼むぜかわい子ちゃん!!」
「ちょっ!近い!近い!」
ライラを主人として再設定すると、ヤルダバオトは再起動し自己紹介を始めた。
「知っての通り俺がヤルダバオトだ」
「名前長いし変だよ?」
「なら主人の好きに呼んでくれ」
「主人はやめて、ライラで良いよ」
「了解」
ライラはじっと見つめながら...
「う〜ん?あっ!ペンちゃん!ペンちゃんにしよう!」
「は?ちょっと待て!その名前何処から来た?」
「えっ?何となく?」
ペットにつけるような名前をヤルダバオトに付けた。
「なら決まりね」
ピピッ! 主人の命令は絶対、ヤルダバオトはペンちゃんとして登録された。
「はあ!??マジか...マジか...」
「ペンちゃんよろしくね!」
「おっおう...」
2人を他所にイザナがカイに詰め寄る。
「アレは何のつもり?」
「2人ともお似合いじゃない?」
「あぁ...そういう事...帰ったらパパにどう説明するの?」
「何処ぞの馬の骨に取られるより、玩具を与えた事に感謝して欲しい位だわ」
イザナは2人を見る。
(まあ良いか...私が1人で出かける理由にもなる)
「自爆したりはしないのよね?」
「ええ」
カイはライラに近付くと簡単な説明をする。
「コレはずっと起きてるから寝る時は「停止」起こす時は「起動」で管理してね」
「へぇ〜寝ないんだ?」
「俺の魂は本体にしかねぇからな、寝て回復する必要も無い」
カイは小声でライラに耳打ちする。
「特別に男としての機能は付けといたから、溜まってきたらコイツで発散しなさい」
「えっ!?」
「大丈夫!ただの人形よ?魂の無い機械人形...後ろめたく考えなくて大丈夫」
「それは...う〜ん」
カイはポンポンと肩を叩く。
「何だ?内緒話か?」
「ペンちゃんには関係ないの!」
「そうか」
半ばカイに嵌められた形になったが、漸く動ける様になった。1度マーロに戻り再出発の準備を整える事になる。




