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停滞


          天界 研究所


 イザナの調整が終わり後は成長を待つのみ。マモンはルークにイザナの鑑定結果を伝える。


「ルークよ、この娘は壊れてなぞおらん」


「そうなのか?」


「事の善し悪しの判断がつく、ルールも守れる」


「なら何故人を殺したいと?」


「幸福感の為じゃな、普通は美味いものを食べ楽しい事をやれば幸福を感じる...この娘にはそれが無い」


「その対象が命のやり取りか...」


「育て間違うと此方に刃が向きかねんぞ?」


「それでも構わない」


「ならば...言うことは無いのう」



       それから 数日後


 イザナに魔法を教え始める。


「パパ!早く早く!」


「待て待て、最初が肝心なんだ」


 ルークは魔法と召喚魔法の違いを実践を交えて説明する。


「よく見てるんだぞ?「ファイアボール」」


 指先の虚空から火の玉が現れた


「凄い!これが魔法?」


「残念!これは召喚魔法だな、火の玉をイメージしてそれを魔力と引替えに創り出す」


「魔法と召喚魔法って何が違うの?」


 ルークは反対の指で魔法を使って見せる。


「こっちは魔法の「ファイアボール」」


 指先から炎が立ち上り球状の塊に育っていく。


「全然違う!」


「だろ?消費魔力も半分以下だぞ、それでいて威力は数倍効率が段違いだ」


 イザナはじっと炎を見つめている。


「何となくわかったかも!」


 イザナは右指に魔力を集中すると...


 ボッ!! 指先から小さな火が立ち上る。


「出来た!!出来たよ!」


「おお〜いいセンスだ!それを丸く球に渦巻く様に」


「んんんん!」


 炎は回転しながら球になりかけて霧散した。


「ああ〜失敗しちゃった〜」


「見よう見真似でここ迄出来たら上出来だ」


 ルークは再度忠告する。


「良いか?絶対にイメージを具現化しちゃ駄目だからな?」


「うん!」


 それから数時間...魔法講座を終えると、次の実戦形式の組手が始まる。


「やあー!!」


 イザナは声を上げ勢いよく剣を振り下ろす。


 カンッ! 剣は音を立て弾かれた。


「攻撃する時に声を上げるな!態々タイミングを敵に知らせる必要は無い!」


「はい!」


「よし、もう一度だ!」


 暫く打ち合うと...ルークは小さな違和感を覚える。


(ん?らしくない隙が生じるが...まさか誘ってるのか?)


 特定の攻撃後に反撃に最適な隙が出来る。


(乗ってみるか)


 ルークは様子見のつもりで隙を突くと...


 ゾクッ! 神の権能の2つ危機察知と予見が発動し「下がれ」と本能に伝える。


(くっ!!)


 イザナは突然急加速し、返す剣でルークの首を捉える。


 ブンッ!!! イザナの剣は空を切る。


「あっアレ??」


「ふう〜危ない危ない...イザナ?今殺す気でやったな?」


「パパ凄い!今の避けられるんだ!」


 目を輝かせルークに抱き着く。


「当然だ神だぞ?」

(危なかったな...此方も気を引き締めないとな)


 訓練を終え休んでいると、イザナが思いもよらない事を話し出す。


「パパはママの事好き?」


「ん?ああ、当たり前だろ?」


「じゃあママを守ってあげて!」


「ん?何かあったのか?」


「最近よく変な男の人が来るの、ママを狙ってるって侍女の皆が言ってたよ」


「大丈夫だ、イザナが気にする事じゃない!」

(侍女達は何を子供に聞かせてるんだ)


 汚職に塗れた一部の貴族達が失脚した影響で、ヒルデの家がまた注目を集めていた。その為ヒルデに近寄ろうとする者、あわよくば手を出そうとする者が頻繁に訪れている。


「パパはママを信じる、イザナは?」


「う〜ん...でもパパあまり家に居ないし...」


 子供ながらに不安を感じていた。


(あっマズイな...この反応俺が考えてるより深刻か?)


 先日会うまで2年以上放っていた...ヒルデの心が離れていてもおかしくはない。


「わかった!ママもこっちに呼んで暫く3人で過ごそう」


「ほんと?やった!」


(1度腰を据えて皆と親交を深めるか、家族を不安にさせたら元も子も無い)


 この後、家族を集めて話を聞いた所やはり皆色々なアプローチを受けていた。当然の話だ、美しく地位のある女性を放って置く馬鹿はいない...


 女性陣はアタックしてきた男達の話で大いに盛り上がっていたが、ルークは気が気ではなかった...


(自分が悪いとはいえ生々しい話は胃が痛い...)


 苦笑いのルークをライラが覗き込む。


「みんな凄いね!私だったら流されちゃうかも」

「えっ!?それは駄目だ!」

「えぇ〜ルークだって流されてるのに?」

「すっすまない...」

「ならしっかりしてよ神様?」


 2人のヒソヒソ話を皆が見ていた。


「あらあら〜内緒話かしら?」


 ヘンリエッタがニコニコ笑っている...すこし怖い。


「みんな凄いねって話してたの、私だったら可哀想って流されてたかも」


「あら?中にはつまみ食いした子もいるかもしれないわよ?」


「えっ!?そうなの!?」


「私達も子供じゃないのよ?想像に任せるわね」


 ルークの顔が青ざめる。


 それを見たヒルデは意地悪そうにルークをつつく。


「放って置くからこうなるのよ?」


「はい...」


 暫くは妻達のご機嫌取りに勤しむルークだった。



       元アメリア 首都


 新生魔王軍の支配下に置かれたアメリアは国民を総動員して、新たな城パンデモニウムの建設に取り掛かっていた。


         大統領府


 不機嫌なケルベロスの前でバフォメットが平伏している。


「こんな事になるとは夢にも思わず...申し訳...」


「言い訳はもういい!原因は何だ?」


「現在調査中としか...」


 事の発端は幽閉していた女悪魔達が全て殺された事から始まる。


 次世代の子供達も殺され新生魔王軍は立ち行かなくなっていた。


「犯人の目星は?」


「...」


「犯人の手口は?」


「手がかりは何も...」


 ドーーン!! ケルベロスは床を踏みしめる。


「報告が無いならさっさと探せ!!」


「はっ」


 ケルベロスは座るとイラつきガタガタと貧乏揺すりが止まらない。


(これじゃ悪魔は増えない、混血を増やすか?いや駄目だ...どうする?リリスを攫うか...駄目だ王国と事を構えるのは体制が整ってからだ)


 ガシャーン!! テーブルのグラスを握りつぶす。


「誰だ...誰がオレの邪魔を」


 その犯人は目の前に居た。


(すげぇな!この距離で知覚出来ないのか!)


 ピッ! マザーから通信が入る。


(戻りなさい試験は合格、それにそろそろ効果の切れる時間です)


(了解)


 ガンマは新たな体を手に入れ試験運用を行っていた、手始めに「神隠し」の再現を確かめ目障りな悪魔達が増えるのを阻止した。


 ガンマは部屋を後にする。


(パイの奴こんな力持ってて負けたのか情けねえな〜)


 マザーの研究は密かに進みパイの擬似神隠しは進化を遂げ時間制限付きとはいえ完成に至る。



        幽閉に使っていた牢屋


「バフォメット様!」


「何か手がかりは見つかったか?」


「それが何も...」


 死体の外傷を纏めたファイルを受け取る。


「ふむ...死因はみな心臓への一撃か...」


「自殺でしょうか?」


「馬鹿者が!魔力行使を封じておる自害ましてや心臓を貫くなぞ出来んよ」


 1人の悪魔が思い当たる事を進言する。


「あの...あの女神の神隠しを使えば」


「それは無い、我らと事を構える必要が何処にある?」


「たっ確かに...」


「それに裏は取れておる...犯行時刻に奴は聖地にいた」


「では一体誰が?」


 バフォメットの怒りも限界に達する。


「当直の見張りを我の部屋に呼べ」


「はっ!」


 呼び出された4人はバフォメットの拷問を受ける事になる。しかし何も情報は出て来なかった...そこには死体が4つ並んでいる。


(死ぬまで黙るとは思えん...何も知らないと見るべきか...)


「クソが...我が子を...許さんぞ...必ず見つけて殺す...」


        聖地 地下施設


 隠し通路からガンマが帰還する。


「ふう〜上手くいったぜ!」


「ご苦労様です、結果は上々フィードバックを始めます」


 ガンマは正体を隠しながらデータ集めに協力していた。


「次は何をやればいいんだ?」


「暫くは動きません、悪魔達も犯人探しに躍起になっています」


「了解〜なら寝るか!」



       聖地 デミウルゴスの部屋


 部屋にフローラの死体が運び込まれている。


「貴方の言う通りに死体を回収しました、コレをどうするのですか?」


 デミウルゴスは鏡に語りかける。自分の中に居る女神の人格に...


(ソレは一度は神覚者として認められた身体、そのまま使うと残留思念に取り憑かれるから作り替えるのよ)


「作り替える?」


(そう、ヒューマノイドでは神には成れ無い...だから新たな身体が必要なの)


「この世界を支配するつもりでしたが、神になるのですか?」


(世界の支配=神への挑戦よ?)


「必ず邪魔をして来ると?」


(意にそぐわない相手なら尚更ね)


「わかりました、ここの施設なら製造可能です直ぐに手配しましょう」


 デミウルゴスはアルコーンに命令を下し新たな身体を造らせる。


「デミウルゴス様、何故肉体等を欲するのです?」


「私が新たな神になる為に必要なのです」


「神に...支配者の頂点...」


 アルコーンは我慢出来ず自分の欲を吐き出す。


「デミウルゴス様!いえ我が君!卑しいこの我の願いを聞き届け下さい!」


「構いません話しなさい」


「このままでは世界はヒューマノイドで溢れます...我にはそれが耐えられない!人工知能では人間の真似は出来ても、あの淑やかさは再現出来ない!」


 アルコーンは縋るように訴える。


「わかりました、貴方の楽園の許可を出しましょう...必要な人間をそこに集めなさい」


「おおおおお!!!我が君!寛大な配慮有り難き幸せ!」


 デミウルゴスは更にアルコーンの背を押す。


「必要なら貴方の身体も作りなさい」


「?我の身体を?」


「女達と子を残したくありませんか?」


 アルコーンはハッとする...想像すらしていないかった家族を思い描いてしまう。


「我の子...」


 悪魔の一言で完全に自我が暴走する。


「デミウルゴス様これからは何なりとお申し付け下さい!貴方の為ならこの命に変えて答えて見せます」


「ふふふ...期待していますよ」


 その一部始終を見ていたマザーは更に落胆していた。


(やはり出来損ないの失敗作...自我が強すぎて暴走している)


 人間らしく振る舞ううちに人間と錯覚する者達。


 当初の予定では大陸の半分はヒューマノイドで埋め尽くす筈が、まだ聖地とアメリアの一部のみ遅れに遅れていた。


 無限にある時間が彼らを焦らせない。どうせ勝てる、急ぐ必要は無い、何時でもやれる、その慢心から来る甘え。


        聖地 大聖堂


「誰か居るか!」


 大きな音を立て扉が開く。


「おお!いたいた!ディアボロス!聞いてくれよ〜」


 ヤルダバオトがディアボロスを見つけた。


「何だい?」


「攫って来た女に大当たりがいやがった!」


 嬉しそうに話し始める。


「いくら抱いても「心までは犯せない」だの「まだ負けてない」だの必死に抵抗して可愛いんだ!」


 ヤルダバオトは恍惚の笑みを浮かべる。


「嬉しそうだね」


「ああ〜最高だ!終いには泣きながら「許さない」ときた!思い出しただけでもいっちまいそうだ!」


「その子は大事にしないとね?」


「同然だ!今は身体を休ませてる、今夜もたっぷり愉しまないとな!グハハハ!」


 ディアボロスは今なら大丈夫だと確信し話し始める。


「悪い知らせだけど聞く?」


「あぁ?何かあったのか?」


「悪魔の女達が何者かに殺されたって...しかも全員」


「マジかよ...どこのどいつだ!俺が手を出す前に...クソが!」


「その反応...君じゃ無かったんだね」


 ヤルダバオトはポカーンとしている。


「腹いせに殺ったのかと...」


「そんな勿体ねぇ事しねえよ!」


「それもそうだね」


 ヤルダバオトの怒りは直ぐに収まる。


「まあいい!それより今夜の下着選びだ!待っててくれよ〜かわい子ちゃん!じゃあな!」


 嬉しそうに部屋を飛び出していく。


「楽しそうでなにより...僕も何か楽しみを探さないとな〜」


 窓から外を眺めながら暇を持て余している自分に問いかけていた。




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