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手遅れ


         天界 神の座


 ルークは神にしか座れない椅子に座る。神の座と言うにはあまりにも普通の玉座だった。


「ここがこの星の頂点か…おお?」


 椅子に座ると下界の様子が手に取る様に理解出来る。


「凄いなコレは…正に全知全能、全てが見える」


「でしょ!?普通はその椅子から世界を動かすのよ」


 ルークは宙を見渡す…


「あの星々にも神が居るのか…で、行き来は無理なんだな?」


「そうアレは次元の向こう、見えてるけど実際には行けないわ」


 星々の観測や調査は出来てもあくまで映像。そこに辿り着くことは無い。


「まあ…前の神はお互いの利害が一致して異界の門として他の星を繋げたわ」


「命を望む死の世界と、この世界の滅びを望んだ結果か」


「世界のリセットは許されないの!」


 ルークは神へのオーダーを見る。


▪️究極の生命体の作成


▪️群体では無く個としての自立


▪️死を超える


(この三項だけ…神では駄目だと言う事か?それとも神を量産しろとでも?)


「アマテラス、このオーダーは創造主からなんだな?」


「そうよ!頑張ってね!」


「何処にいるのか聞いても無駄か?」


「むっ無駄よ、教えな〜い!」


(この反応は知らないな…)


 ルークは目を瞑り下界を覗く…妻達の安全を確認しようと思ったが、最悪な光景を目にする。


(モリガンとヤルダバオト!?それにカーミラと…メイへを人質にされてるのか!マズイ直ぐに助けに!)


「マモン聞こえてるか!」

「駄目!地上への直接的な干渉はルール違反よ!」


「…はぁ…成程な、前の神が狂った訳がわかったよ」


 何が起きても手が出せない、それは苦痛を伴う…唯見ているだけその辛さ。


「ルークどうしたんじゃ?」


(言うべきだな、隠しても後でバレる)


「モリガン達がヤルダバオトに襲われてる」

「なんじゃと!?」

「天界からは手が出せない、どうすればいい?」


 マモンも状況を理解し管理室からモリガン達を確認する。


「今のモリガンなら何とかなる、それに息子のメイへを信じよ」


「見守るしか無いのか…」


 ルークが椅子から立とうとすると。


「駄目よ!神なんだから行く末を見守るの!」

「死ぬかもしれない妻と子を見続けろと?」

「それがお仕事よ!」


 ルークは拳を握り締める…そう神は見ているだけ、祈っても願っても地上には現れない存在だ。


「出来る事はあくまで世界の設定変更と、この座で見守るだけか…」


 ルークは神の不自由さに呆れ果てる。何でも出来るのに何も出来無い、最早蚊帳の外に置かれた感さえある。



        マーロ 壁外


 カーミラを抱えたヤルダバオトを先頭に、マーロから2km離れた地点まで移動していた。


「何処まで行くのです!」


「うるせえ黙ってろ!もう着く」


 4人は開けた場所に出ると、目の前には大きな崖がそびえ立つ。


「あら?逃げ場を少なくしていいのかしら?」


「馬鹿が逆だ逆!お前が崖に背を向けろ!」


 モリガンは距離を測りながら崖に歩く。


(この距離なら一瞬の隙さえ作れば奪い返せる)


 すると森からメイへを拘束した3体目のヤルダバオトが出て来る。


「動くなよ?動いたらコイツの首を折る」


(同じ顔が3人…3つ子?)


 2人を人質に取られ冷静な判断が出来ていない。


「貴方達の要求はなんですの?お金?それとも」


「は?グハハハ!お前だよお前!」


わたくし?」


「お前を攫いに来た、俺の女になれ!」


「巫山戯ないで…そんな事に子供達を巻き込むなんて!」


「あぁ!?こうでもしねえと着いて来ねぇだろ?」


わたくしが屈するとでも?」


「女は皆そう言う…俺を知った後は態度が変わるがな!」


「汚らわしい」


「人間や亜人には飽きた!ヴァンパイアはどんな味か愉しみだ!」


 2人のやり取りを見ていたカーミラが叫ぶ!


「私なんか気にしないで!こんな奴ら倒して!」


「ガキが…躾が必要だな」


 ヤルダバオトは右手を振り上げると。


「止めなさい!」

「黙って見てろ!」


 カーミラを脇に抱えた。


「きゃっ!?何?何するの!」

「こうするんだよ!」


 パシーン! カーミラのお尻を引っぱたく。


「やっやめて!」

「ほらほら!悪い子にはお仕置だ!」


 何度もお尻を叩かれカーミラは涙目になっていた。


「嫌!もうやめて!」


 その顔を見たヤルダバオトは満足気に頷くとモリガンの方を見る。


「知ってるか?ただの痛みは時間が経てば忘れ去る、だが辱めは別だ!お前も子供の頃や大人になっての恥ずかしかった事は鮮明に覚えてるだろ?」


 ヤルダバオトの顔が醜く歪む。


「こうやって女を辱めるのさ!暫く経てばそのうち従順になって行く…鮮烈な記憶と共にな!グハハハ!」


「ゲスめ…」


「おっと…動くなよ?」


 モリガンは攻撃のタイミングを伺う。


「その顔まだ諦めて無いのか?はぁ〜仕方ねえな、おい!取り敢えずそこで裸になれ!」


「断れば?」


「このガキをひん剥く」


 ヤルダバオトはカーミラの服を掴む。


「ひっ!?嫌!やめて!」


「止めなさい!わかりました脱ぎます」


 お互いの立ち位置はほぼ向かい合わせ、2人は人質の拘束動けるのは1人。


(一瞬でも死角を突けば殺れる)


「さて…お愉しみだ!ゆっくり脱げよ?」


 モリガンはドレスをゆっくりと脱ぐと…目の前に翳す、自分が隠れるように。


「おい!見えねえぞ!さっさと下ろせ!」

「ブラッディドレス!」


 モリガンが真紅のドレスに包まれると、即座に戦闘態勢に入る…が…


 ドシーン! 崖の上から4体のヤルダバオトが落ちて来た。


「えっ?」


 突然7人に増え判断が遅れる。


「捕まえた〜かわい子ちゃん!」


 4人が同時に掴みかかると。


「直で見るとますますいい女だな!」

「離れなさい!この…」


 例え4人でもモリガンには勝てない、それはヤルダバオトも理解している。


 振り解かれる前に4人は同時に自爆した


 辺りを閃光と爆音が包み込む。


「姉さん!姉さ〜ん!!」


「グハハハ!残念だったな、実は見えてんだよ!」


 煙が履けるとモリガンが薄っすらと姿を現す。


「はぁはぁはぁ…うっ…はぁはぁ」


 フラフラになりながらも耐えきった。


「おお〜4人じゃ足りなかったか?いいねぇ〜」


「覚悟しなさい…ブラッディドレス!」


 再び真紅のドレスを纏う。


「おい!上見てみろ!上!」


 モリガンは先程の自爆を警戒して、つい上を見てしまう。


(誰も居ない?しまっ…)


 その隙を逃す筈も無く、森に潜んでいた5人のヤルダバオトがモリガンを押し倒す。


「グハハハ!!馬鹿だな!お前には実戦経験が全く足りん、その力も宝の持ち腐れだ」


 藻掻くモリガン、5人を吹き飛ばそうと魔力を高めるが…先程の焼き直し同じ光景がそこにあった。


 閃光と爆音が再び巻き起こる。暫くして煙が晴れると…


「グハハハ!2度目は耐えられなかったか!」


 モリガンはボロボロになり地面に倒れていた。


「姉さん…嫌!いやぁぁぁ!!」

「黙ってろ!」


 バキッ! カーミラは殴られ気を失う。


 ヤルダバオトは残りの3人と合流しモリガンの傍に集まっている。


「ヴァンパイアは頑丈とは聞いてたが、ここまでとはな」


 モリガンを引っ蹴り返す。


「これだけ頑丈なら色々試せるな…愉しくなりそうだ!」


「グハハハハハハ!!!!」


 ヤルダバオトの1人がモリガンの身体を触り始めた。


「少し味見するか!アレは無いが躾も兼ねてな」


 同調しワラワラと群がり始めると…


「うっ…」


 後頭部が挫傷し意識の無いメイヘが回復し目を覚ました。


「カーミラお姉ちゃん?…」


 隣で気絶したカーミラを見つけると、音のする方を向く。


「ああああああああぁぁぁ!!!」


 メイヘは声にならない声を発していた。


 目の前には母に群がるヤルダバオト6人、その光景に目の前が真っ赤になっていく。


「ちゅっちゅ…ん?おい!ガキが目を覚ましたぞ」

「ちっ!回復しやがったか」

「流石はヴァンパイアだな」


 メイヘは血の涙を流していた。


「おいおいおい!そんなに悔しかったか?」

「安心しろ、お前の母ちゃんはコレから最高に気持ち良くなる」


 2人が立ち上がりメイヘに近付くと…


「死ね」


 渾身の一撃をメイヘに放つ。


「あ?」


 ヤルダバオト2人は一瞬でバラバラに切り刻まれた。


 2人は崩れ落ちスクラップに成り果てる。


「母上から離れろおおお!!」


 メイヘの周りが歪む、あまりの魔力量に空間に影響を与えていた。


「このガキ…」


 残る4人はモリガンから離れると…思わせて1人がモリガンを抱え飛び出す。


「グハハハ!コイツは貰っていくぞ!」


 森に逃げ込み追撃から逃れようとしたが。


「ぶっ!?ガハッ…」


 森に入る前に何かの壁に阻まれた。


「壁!?なんだこりゃ」

「おい周りを空を見ろ!」

「マジか…」


 空は真っ赤に染まっている、辺りも赤い霧が漂っていた。


「逃がさない」


「この女は諦めるぞ、コイツはヤバい…ここで仕留める!」

「待てよ!おい動くな!母親が…」


 モリガンを抱えていた1人が瞬時にバラバラに切り刻まれた。


「はぁ〜駄目だなこりゃ」

「とんでもない化け物を起こしちまったな」

「これだからガキは…」


 その言葉通りヤルダバオト達は呆気なく撃退された。


「母上!姉ちゃん!今助けるね」


 ヴァンパイアとして覚醒したメイヘは血を完全に操り回復も思いのまま、足りない血も魔力で補える。


「うっ…メイヘ?」

「母上!」

「貴方がやりましたの?」

「うん」


 周りでバラバラになったヤルダバオト達を見てモリガンは確信する。


(お父様とルークの血を継ぐこの子は、やはり魔王の格を持つ…良かったまだ誰にもバレてませんわ)


 カーミラも起き上がり3人の無事を確認する。


「良かった…ぅぅっ」


「母上街に戻ろ?」


「いえ、戻りません…このまま姿を消しますわ」


「えっ?何で?」


(この子は恐らくケルベロスを超える…いえ超えますわ、今この子の存在がバレたら消される)


 モリガンはボロボロのドレスを広い身体に巻き付ける。


「捜索隊が来る前に行きますわよ!」


「母上!後ろ!」


 モリガンの後方に絢爛な扉が現れた。


「なっ!?2人とも逃げますわよ!」

「待て待て待て!ワシじゃ!モリガンよ落ち着かんか!」


「お父様??」


 扉の向こうからマモンが現れると…


「おじいちゃん!!」

「お父さん!」


 子供達がマモンに飛び付いた。


「ホッホッホッ!無事で何より、メイヘよ見事じゃ流石はワシの孫じゃ」


「お父様?一体何処からいらしたの?」


「話しは後じゃ捜索隊が来る前に天界に行く、ルークが待っておるぞ」


 マモンは3人を天界へ…状況が飲み込めず3人はキョロキョロしている。



        天界 神の座


 モリガンの姿が見えるとルークは傍に駆け寄り抱きしめた。


「ごめんな…助けに行けなくて…無事で良かった」

「ルーク?泣いてますの?」


 マモンが軽く説明を入れた。


「ルークは神となった、その代償に地上にはもう降りれん…ここからお主達を見て苦悩しておった」


「そうでしたの…」


「メイヘこっちへ」


「うん!」


 ルークはメイヘを抱きしめ、その強さを賞賛する。


「偉いぞメイヘ!流石は俺の子だ!」


「えへへっ」


 3人を落ち着かせ休ませる為にライラに任せ天界の屋敷に通す。それを見送ったマモンは今後の事をルークに話す。


「王都のエリザとカイを此方に移すとするかのぅ」


「エリザもか?」


「モリガン達は姿を消そうとしていた、メイヘの覚醒が関係あるはずじゃ」


「ケルベロスは一体何をやってるんだ?一応確認しておくか」


 2人は管理室に移動するとケルベロスを覗く。


「何だ?なにが起きた?」

「コレは…サタンか?いやそんな筈は!?」


 映し出されたケルベロスの纏う悍ましい魔力に2人は驚きを隠せない。


「マモン!ケルベロスに魔王に関する設定はどうなってる!?」


「魔王関係じゃな…ん〜これじゃ!」


 映し出された設定…それは最悪なものだった。


▪️魔王は冷酷で惨忍、破壊を好み争いを求める


▪️慈悲は無く愛を知らない


▪️全てを奪い犯し尽くすまで満たされない


▪️この影響は魔王とその候補に少しずつ蓄積されていく


「俺が魔王の時はこんな影響無かったぞ!?」


「恐らくお主の中のサタンが魔王判定だったと思われる…思い出してみよ、魔王になった時お主は敵味方問わず歯向かうものは粛清していた」


「それは…」


「少なからずサタンの影響を受けておったんじゃ、そして今はケルベロスがその影響下に」


「何故今何だ?」


「ケルベロスが自我で抑えておったか…ん?あぁそういう事か…少し前にサタナエルが死んだ。あの子はサタンの魂を受け継いでおった…死んで全ての影響がケルベロスに集中し魔王に成り果てたと」


「魔王の設定を書き換えて元に戻せるか?」


「わからん…ここ迄染まると元に戻せるかは…」


 苛立つルークはアマテラスを呼びつける。


「アマテラス!世界の設定を変えた後、どの位で影響が出る?」


「ん〜早くて3年かな?本当に徐々によ?」


「それじゃあ間に合わない…」


「何もやらないよりはマシじゃ、直ぐに書き換えるとしよう」



        王都 魔王の間


 ケルベロスを見るメフィストの目は恐怖そのものを見る目だった。


(何故??あの優しかった面影も無い…ケルベロスに何が起きた??)


「さぁて…オレもそろそろ始めようかな?」


「何かなされるのですか?」


「この世界を滅ぼす…が、その前に女神を捕まえに行く」


「お待ち下さい!どうしてその様な事を!?」


 メフィストの顔が青ざめていく。


「魔王に成ってから湧き上がるんだ…破壊衝動が…あぁ早く暴れたい!」


(マズイ!ここで暴れられたら王都が壊滅する!)


「女神の行方は此方で把握しています、現在聖地へ向かっております」


「何だ準備が良いな!そうだな…先ずは女神と聖地辺りに城を作るか!それが良い!此処を先に滅ぼしたら楽しみが無くなっちゃうしな」


 ケルベロスは椅子から立ち上がると、配下の者達に命令を下す。


「暴れたい奴はオレに着いてこい!世界をひっくり返すぞ!」


 悪魔達は動揺する者、歓喜する者、悲喜交々…


(アザゼル達を消して正解だった…最悪の場合全ての悪魔がケルベロスに着いて行く)


「メフィストはどうする?来るか?」


「お断りします」


「オレが怖くないのか?」


「妻も子も裏切れません、ですがタダでは死にません…抵抗はさせてもらう!」


 メフィストは戦闘態勢に入る。


「ハハハッ!冗談だよ、此処に残る悪魔達を頼むぞ…殺しに来るから必死に抵抗しろよ?そうじゃないと面白くない!」


 変わり果てたケルベロスが笑う。


「ルナ様や子供はどうされるのですか!」


「ん?殺すよ?当然だろ?あんなの魔王に相応しくない」


「なっ!?」


 最悪の言葉に周りは凍りつく。


「駄目だ!それだけはおやめ下さい!」


「悪いけどもう決めたんだ」


「やめろと言っている!!!」


「なら止めてみろよ?」


 メフィストは怒り狂いケルベロスに襲い掛かる!



        天界 管理室


「俺が行けば抑えられるのに…クソッ!」


「駄目だよ?貴方は見てるだけ」


 ドーーン!! ルークは壁を殴りつける。


「アマテラスよ何も出来ぬのか?流石に堪えるぞコレは」


「何の為に天使がいたと思う?」


「そう言う事か…なるほどのぅ」


 ルークがため息をつく…


「また天使と悪魔を戦わせろと?何度繰り返すんだ…」


「終わるまでよ?」


「何時終わるんだ!?」


「さあ?知らな〜い」


 終わりの見えない延々と続く暗く長いトンネルのなかに居る、ルークはそんな感覚に陥っていた。



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