歪な世界
マモンの宝物庫内 研究室
ルークの魂が肉体に戻されて1日、体に馴染み漸く目を覚ました。
「ん…ふぁぁ〜!」
(この寝て起きる感覚久しぶりだな)
「おはようルーク!まだ夜なんだけどね、ふふふ」
「おはようライラ…えっ…」
ルークの目の前にはライラでは無く化物がいる…
「何だこれは??おいマモン!」
「そう怒鳴るな、こっちにおるぞ」
マモンの方を振り向くと…そこにはマモンを名乗る化物がいた。
(2人に敵意は無い、本当にライラ達か??何がどうなってる!?)
困惑するルークの脳内に何者かが語りかけてくる…
(ルーク様。貴方は神覚者に選ばれました。)
(誰だ?)
(私は世界の管理システム。アマテラス。)
無機質な音声が頭のなかに流れる。
(突然現れて信用しろと?)
(ではご質問を。何でもお答えします。)
突然黙り動かないルークを2人は心配していた。
「ルーク?大丈夫?」
「何処かに異常が?何とか言わんかい」
「あっ…すまない、世界の管理者を名乗る奴が話しかけて来てな」
「おお!やはり神化は成功じゃ!」
「少し話しをするから、心配しないでくれ」
ルークは椅子に座り目を瞑る。
(アマテラス、神覚者とは何だ?以前バアルと話した時はそんな単語出て来なかった)
(神覚者とは神に至る可能性。其の候補者を指す。)
(では、女神フローラも神覚者なのか?)
(……)
沈黙が続く。
(否定しないなら女神もだな)
(神覚者ルーク。信仰を集め天獄の門を目指せ。)
都合が悪くなったのか話しを止めたがる。
(断る!神にはなるが地上でだ、世界の管理はお前がやれ)
(神に至れば死からの解放。世界の管理。全て思うがまま。)
(悪いが興味が無い)
また沈黙が続く。
(えっ本当に?)
突然フランクになる。
(なんだ普通に話せるんだな)
(あっ…も〜折角システムらしくしてたのに!)
(こちらからは話すことは無い、もう放っておいてくれ)
(待って!待って!あなた神になりなさい!そこから出たら門を出すからイイわね!絶対に来なさいよ!)
管理システムは威厳も何も無い小娘の様な対応を始めた。
ルークは目を開け立ち上がる。
「待たせたな」
「どうじゃった?」
「神に成れそう?」
「外に門を出すから来いとは言われたが…さてどうするか」
「ルークよワシは年甲斐もなく興奮しておる!神になれ!そしてワシをその管理者に会わせてくれ!」
マモンの興味は既にそのシステムに向いている。
「どうせなら3人で行こうか?」
「わたしも良いの?」
「もちろん」
マモンは宝物庫の出口を出し、屋敷の空き部屋に繋げる。
「ホレホレ出た出た」
3人は外に出ると、ルークは伸びをし抑えていた神気を放つ。
「くうぅぅぅ〜」
「やめんか!それはワシら悪魔には毒じゃ」
「すまんすまん!ずっと寝てたから体が固まっててな」
その気を遠く離れた女神が察知した…
王都から北東 第6アジト上空
遠くから神気を感じ取り女神は止まった。
(これは神気?北に突然現れた…この距離は)
「フローラ様?どうされました?」
ベータが様子を伺う。
「黙れ、妾に話しかけるな」
遠いその地を千里眼で覗くと…
(そんな!?ルーク!?何故其方が神気を纏っておる!?)
その神々しいオーラを見て女神の顔は醜く歪む。
「裏切ったな…ずっとずっと待っておったのに…其方に穢される、その時をずっと…」
女神は集めた願いが汚れない様に隠していた本性を呼び起こした。
「クソクソクソクソ!!クソガキガァア!!!舐めやがって!巫山戯るのもいい加減にしろ!!」
「フローラ様!??」
「いいだろう…そっちがその気なら、逆に穢してやる!徹底的に妾がその神気を塗り潰してやる!」
怒り狂う女神に3人は困惑し黙って見ているしかなかった。
「予知はあくまで予知…しかし今はコレに頼るしかない…妾の欲する力の持ち主を見せよ!」
女神は予知能力をフルで活用すると…聖地のディアボロスがその目に映る。
(おお!なんと素晴らしい力!七罪全てに覚醒しかけておる…足りないのは強欲のみ、フフフ…その力で妾を黒く染め上げよ)
「これから聖地に向かいます」
「えっ?」
「今の皆さんなら聖地の奪還も可能、直ぐに向かいますよ」
また女神の話し方が変わる…今のナンバーズは命令には逆らえない、ガンマは従いながら女神を見る。
(また知らない口調だ…幾つ人格があるんだ?)
女神はテトラガーデンには向かわず聖地を目指す。
隠しアジト 爆心地
「隈無く探せ」
「はっ」
カイの自爆で出来た大穴を騎士団とメフィスト達悪魔が捜索していた。
「メフィスト様、これを」
部下が小さな破片を回収していた。
「この魔力は…やはり奴らか、よし撤収するぞ残りは騎士団に任せろ」
「はっ」
(此処は本来何も無かった筈だが、散乱した破片を見るに奴らのアジトだな…)
メフィストは考え込む。
(女神も動き出した、ルーク様貴方は今何を?早くお戻り下さい…私ではケルベロスを抑えるのもそろそろ限界です)
魔王となりケルベロスも強い自我を持ち始めていた。悪魔内の強硬派は既に粛清済みだが、いつ第2のアザゼルが出てきてもおかしくはない。
テトラガーデン ルイの屋敷
空き部屋に居る3人の前に煌びやかな門が現れた。
「よし!行くか」
3人が門をくぐると…目の前に普通の部屋が広がる。
「えっ?ここが神の??」
ライラがキョロキョロと辺りを伺う。
「ワシらの研究室に似ておるな」
「おい!アマテラス!いるんだろ?」
目の前が光るとツインテールの少女が現れた。
「遅い〜待ってたんだからね!」
「その話し方どうにかならないのか?」
「えぇ!?ショック〜」
ライラとマモンは呆気に取られている。
「今はこれが気に入ってるの!」
「はぁ…わかったからコレの説明を頼む」
ルークは自分の目を指差す。
「なんの事?」
「2人が違う姿に見えるんだが?」
「あぁ〜それ前の神の設定よ、貴方が神になれば元に戻せるわ!じゃあ案内するよ」
アマテラスは3人を管理室に案内すると、ここの説明を簡潔に話し始めた。
▪️世界は丸く、4つの大陸と島国で構成されている。
▪️地獄は地下に天獄は上空に。境には結界を張り門以外の通行は不可能。
▪️管理システムは更に遠く月の裏。天界は此処にある。
▪️星は実験場として神が好きに設定を変えられる。
▪️消えた神は実験場をリセットする為に異界の門を繋げ天界の神達を騙し地上を地獄に変えた。
▪️思惑通りに行かず、神側の勝利で終わると。戦いに勝ち油断していた者達を地獄に落とす。
▪️その後、地獄の門を人間に開けさせ再び地上を一掃しようとしたが…女神の召喚により失敗。
▪️そして神は失踪した。
「と言う訳よ!わかった?」
「神は何処に行ったんだ?」
「えっ?しっ知らない」
(そんな筈は無い…この反応は何かあるな?)
アマテラスは目の前のパネルに手を当てると。
「ほら、コレが今の世界の設定よ」
目の前の空間に項目毎に細かく説明が並んでいる、マモンがそれに齧り付くように設定を読むと…
「なんじゃこれは…酷い!酷すぎる!!神などでは無い!こんな事悪魔でもやらんぞ!!」
簡単に書くとこうだ…
▪️世界は他の大陸に無関心。常に争いお互いを憎む。愛国心はより強く排他的に。
▪️人類は転生を繰り返しその度に成長をリセット。
▪️機械文明。魔法文明。魔物だけが残った大陸。そして争いの果て滅んだ大陸。全て干渉しない。
▪️悪魔には子孫が産まれ難い呪いを。天使は一部を除き男のみを生産。
▪️世界を欲で満たす為、七罪を強く設定。
▪️神を増やさない為に神覚者を制定。どれだけ信仰を集めようが神には成れ無い。
他にも事細かに書かれている。
「酷い…これが神のやる事なの?」
「おいアマテラス!俺が神に成ればコレを変えられるんだな?」
「そうよ!神に成ってくれる?」
「なら今から俺が神だ、マモンお前に権限を与えるコレの書き換えを頼む」
マモンは腕を捲り席に座るとパネルの操作を始める。
「任せておけ!こんなクソみたいなルール、ワシが全て書き換えてやるわい!」
アマテラスは慌て出す。
「ちょっと!それは神の仕事!」
「神の俺が許した、問題無いよな?それとも…前の神みたいに殺すか?」
アマテラスは黙り込む…
「お前が殺ったんだろ?」
「見抜けなかった…少しずつ狂って行くその内面に」
管理システムが独断で従うべき神を殺した。欠陥を抱えたとみなされても仕方が無い。
「ハハハッ!咎めはしない、逆に良くやったお陰で此処に来れた」
「私壊れてるかもしれないよ?」
「見てられなくなったんだろ?それは正しい神の俺が許す、だから安心しろ」
「うん!」
ライラが横でムスッとしている。
「また口説いてる!」
「待て待て待て!ん?おお!ライラの顔が元に戻った!」
「ん?どういう事??」
「神の呪いじゃ…悪魔やその協力者が化物に見える神と天使後は神覚者用の設定じゃな、今それを解除した」
マモンは画面を見ながら次々と書き換えて行く。
「マモン様どれ位掛かりそうなの?」
「取り敢えず普通の世界になるには…早くて3日じゃな」
「そんなに!?」
「ルークよ此処にカイも呼んでくれ、サポートが必要じゃ」
「わかった、アマテラス天界に人を住まわせてもいいな?」
「うん、神になったから好きにしていいよ」
ルークの新拠点が天界に移る事になった。天界なら敵が入り込む余地は無い。
「此処から地上を見れるのか?」
「見れるよ!えっと管理権限を渡すね!これで貴方は完全に神よ」
アマテラスからシステムへの権限が光となってルークに受け渡された。
「ありがとう、えっ〜と女神は何処だ?」
世界を見渡し女神を探す。
「居た!ん?聖地に向かってるのか?」
「狙いは天獄の門ね、でも安心してアレは此処には繋がって無いから」
「そうなのか?」
「うん、天使達の待機場所…天獄に行けるだけよ、彼処は神の尖兵の工場」
「よし!早速ジークの仇を打つか」
肩を鳴らし下界に降りる準備をしていると…
「何してるの?神に成ったら下界には降りれないよ?」
「え??うっ嘘だろ??」
「管理者登録しちゃったから…」
予想もしなかった答えが返って来てルークは固まる。
(マズイ…残された戦力で女神や聖地のヒューマノイドとは戦えない)
「俺以外なら行き来は出来るのか?」
「出来るよ」
(参ったな…1度家族を集めて話し合いだな)
女神達が聖地に着く数日前
ヤルダバオトは武装都市マーロに到着していた。
「ほう〜思ったよりデカいな」
街の中をサーチすると…
(悪魔に騎士それに冒険者、中々の粒揃いだな)
ヤルダバオトは時計台に登り途中の窓から屋敷を眼下に覗く。
「さてさて、いるかな?俺のかわい子ちゃん!」
屋敷の庭でモリガンと妹のカーミラが手合わせしている。
「おお!いたいた!ん〜美味そうだ!ケツ胸タッパどれも合格だ!グハハハ!」
ヤルダバオトはモリガンの身体を舐め回すように見詰める。
(クソッ!本体を連れて来るんだった…聖地に帰るまでお預けとは…っヤバい!?)
窓から離れ気配を完全に断つ。
モリガンは組手を止め辺りを見渡す。
(視線を感じますわ…でも気配は無い?)
「姉さんどうしたの?」
「いえ何でもありませんわ」
後ろから声がかかる。
「母上〜」
「メイへ今は訓練中です、後にしなさい」
「僕も鍛えてよ!」
「遊びじゃ無いのですよ?」
「わかってるよ!」
再び時計台から覗く。
(あれが息子のメイへだな、ガキが2人…使えるな)
マーロの外で待機している同一個体達にここで見た記録を共有する。
「おお!いい女じゃねえか」
「楽しめそうだな」
「おい!このガキの成長予測を見てみろ」
1人がカーミラの成長後の姿を共有する。
「マジかよ!」
「ドエロい身体してやがる」
「本当にあのガキが?」
妖艶で全ての男を虜にするその姿に、15体のヤルダバオトは興奮していた。
(1人だと手が足りん、後2人は来い!)
(わかった、で?何時決行するんだ?)
(早朝に仕掛けるぞ)
翌日 早朝
運悪くカーミラとメイへは早朝の運動に庭に出ていた。
「ねえ、お姉ちゃん僕も強くなれるかな?」
「ルーク様の血を引いてるのよ?血統的には最強よ?」
「そうなんだ…えへへ」
他愛も無い話しをしていると…メイへの背後に男が立っていた。
「あなた誰!?何処から入ったの!」
「えっ?」
振り返る前のメイへの後頭部にハンマーナックルが打ち込まれた。
「うっ…」
「メイへ!」
カーミラが動くより早くヤルダバオトは動いた。
「おい!このガキは俺が先に連れて行く」
「あとは任せろ」
「さっさと攫うぞ」
カーミラを2人が囲む。
(何で同じ顔が3人も!?いやそれより姉さんに知らせないと!)
カーミラは魔力を高め放出する。
(姉さん気が付いて!)
まだ若いカーミラはその行動が向こうの狙いだとは気付かない。
「いいぞもっと高めろ」
「早く来いよかわい子ちゃん!」
舌舐めずりする2人の前にモリガンが現れた。
「貴方達ここで何をしている?私の屋敷と知っての事か?」
「うひょ〜」
「近くで見ると更に美しいな!」
モリガンは戦闘態勢を取る。
「待て待て!お前のガキは預かった、変な気を起こすなよ?」
「カーミラ、ホントなの?」
カーミラは頷く。
「はぁ…仕方ありませんわね、貴方達何が目的ですか?」
「時間稼ぎは止めろ、黙って俺達に着いて来い」
「ガキを抱えて先行する、お前が後ろから警戒しろ」
1人がカーミラを拘束し抱えて先行する、モリガンがそれを追い背後にもう1人が張り付く。
(メイへの無事が確認出来次第、この双子を殺して差し上げますわ)
モリガンはヤルダバオトを双子としか認識していない…その先に15体のヤルダバオトが待つとは知らずに。




